異世界転移したんだけど周りが全員過保護なホモだった件

メル

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ツンデレガチ勢★聖騎士団編

番外編 君がいなくて毎日が無糖

 
※タイトルだけのお粗末なチョコ要素ですがバレンタインプレゼントです。
※『番外編 聖なる日の奇跡①②』を見ないと分からない内容になっています。



********************



「おはよ」

朝。
登校1番、俺が教室に入って挨拶すると、クラスメイト達がざわめき出した。
…まぁ、前の自分の姿を考えれば、当然か。

「勇輝、もう大丈夫なの?」

真っ先に話し掛けてきたのは、康治郎を除いた中で、一番の友人であり、ライバルだった瀬戸。

「ああ。迷惑かけたな」

「まったくだよ。…………ねぇ、あのさ」

珍しく、聞きにくそうに瀬戸が目配せ。要件は大体、分かるけど。

「何?」

「……もしかして、じろちゃんの夢、見た?」

「ああ。瀬戸もなんだろ? 奥野、谷川、三島、聖さんの夢にも出てきたんじゃないか?」

「え、阿山から聞いたの?」

谷川が少し驚いたように俺を見た。
お前、俺と康治郎を題材にBL本描いてるんだってな。良いぞもっとやれ。ただし女役は絶対に康治郎だぞ。同担拒否は勿論、リバもダメだ。

「おう。色々話して励まして貰ったよ。原因が何言ってやがんだって話だけどなw」

でもやっぱり、ただの夢じゃなかった。なら、あのトロフィー型の神が言った事も本当って事だ。やった。また、康治郎に会える。

「………お前らはさ、何話したわけ?」

猥談なんてしてねーだろーな。康治郎は俺のだってのに。

「俺は異世界のお話とぉ、ゲームのセーブデータ3つ貰ったよん!」

自慢げに見せられた三島のスマホの画面には、ゲーム『パズドラマ』が表示されていて、ユーザー名は『じろー』になっていた。
………まぁ、三島は康治郎に不埒な感情を抱いている訳ではなさそうなので、これくらいは許してやろう。

「私も、異世界の話聞いた! だから今は最強王国騎士団長×ヘタレ賢者の話を…」

「どうせなら召喚勇者×天然たらし転移者で頼む」

「…! そっ、それって…!!」

皆まで言うな。当然、勇者の名前は【勇輝】。転移者の名前は【康治郎】だろうがな。
谷川が『生ホモ執着ありがとーございますっ!』って言って倒れたっぽいけど、気にしない。

「俺は動物と深海と宇宙について研究しなきゃいけなくなったよ」

「何がどうしてそうなった? ……いや、やっぱり言わなくて良い。どうせ、康治郎の為なんだろ?」

「うん、そう。じろちゃんのところに行けた時、いっぱい驚かせてあげたいからね。で、俺、イギリスの大学に行ってくる」

「……急だな」

「そこの大学に行く事が、最短だから。これから毎日勉強漬けだろうけど、まぁたまには遊んでよ」

瀬戸の机を見ると、英語で書かれた参考書が何点か。専門用語の英語参考書と、俺でも名前は聞いた事がある有名大学のパンフレットが乱雑に置かれていた。
瀬戸とは康治郎の可愛さについてよく議論した中だし、共に康治郎を虫から守ってきた。
だから、是非とも頑張ってほしい。そして転生後は康治郎を驚かせてほしい。
俺には出来ないから、応援する。

「……で、杉山。テメーはなんだ」

「っ…!」

教室の中心部で、杉山がビクッと反応する。周りの頭の弱い取り巻き連中が『は?』みたいな間抜けな顔をするが、俺には分かっている。コイツは、康治郎と会った筈だ。
このクソ羽虫、康治郎を気にして何かとちょっかい掛けていたし、康治郎は康治郎でコイツに苦手意識を抱いていた。
まったく…康治郎にいらんもの抱かせるな。康治郎が抱いて良いのは俺への愛情と友情と欲情だけであって、羽虫ごときに康治郎の容量を使わせるなんてもったいない。

「え、えっと…」

「どーせ、告白したんだろーが」

「……………」

「じろちゃんは優しいから、転生してまた会えたらお友達から~、って結論に落ち着いたんじゃない?」

「…………………」

俺と瀬戸の問い詰めに、杉山は泣きそうな表情で俯いた。
いつも…康治郎が生きていたのなら、こんな風に誰かを責めるような雰囲気になった途端、何とか話を逸らそうと一生懸命大声で別の話題を持ち掛ける。そしてみんな、そんな康治郎が大好きだった。
でも、今はいない。誰も庇おうとしないし、そもそもクラスメイト達は、何の話をしているのか分かっていない。
黙ったままの杉山に、更に問おうとした時、ガラリと教室のドアが開いて担任の教師が入ってきた。
教師は俺の存在に一瞬怯えたような顔を見せたが、すぐに教室の異様な空気に気付いたようで、俺を避けながら事情を聞こうとしている。…クソヘタレが。

「何でもないですよ、先生。勇輝がやっと立ち直ってくれて、みんなで喜んでいたんです。けれど、杉山が水を差すような事を言ったので…、つい……」

瀬戸が安心安全の100パーセント偽物スマイルで、クラスを代表して説明する。嫌がらせなのか、杉山のせいにしたのは英断だと思う。
教師は優等生の瀬戸の言葉と笑顔にころっと騙され、心底ホッとしたような様子で喜んだ。
俺の立ち直りか、それとも問題が起きていなかったという安堵か…。
なんだか、康治郎がいなくなってから、人の嫌な部分ばかりが目についてしまうようになった。康治郎から溢れ出る優しさオーラで隠されていた悪意や欺瞞、保身第一が表に出てきただけなんだろうが…、やっぱり、俺には康治郎が必要なんだろう。




杉山は放課後、問い詰める事にする。







********************




「おっ、俺だって阿山が好きなんだよ!! 阿山だって、嫌がってはなかったし!!」

「開き直んじゃねーよ羽虫が! 康治郎は俺のだっつーの!! お前ごときが手ェ出して良い存在じゃねェ!!」

「嫌だ!! 俺は阿山とセックスしたい!!!」

「テメェェェェェェ!!!」

放課後。
勇輝と杉山がギャンギャン言い争っている間に、俺は教室の隅で青ざめた聖さんに話し掛けた。

「こんにちは聖さん」

「…瀬戸くん……」

「君はじろちゃんと何の話をしたのかな。まさかと思うけど、勇輝が好き、なんてじろちゃんに言ってないよね」

「…!! …ごめん…なさい……」

やっぱりか、この女。
じろちゃんは聖さんが好きだった。だから、想いを伝えた可能性が高い。
だけどこの女は勇輝に想いを寄せていて、じろちゃんは付属品のように扱っていた。当然、勇輝がそれに気付かないはずもなく、俺も勇輝もこの女を嫌悪していた。

「……最悪だよ。ほんと」

「……………」

「ねぇ、知らなかった? 勇輝は君が大嫌いなんだよ。俺もね。君を拒絶しなかったのは、君が勇輝に近付くと、じろちゃんも寄ってくるから。君さ、じろちゃんが死んでちょっと嬉しかったでしょ?」

「…………!」

「最悪だよお前。お前が死ねば良かったのに」

あ、良いなコレ。誰かに悪意をぶつけるって、結構スッキリする。
じろちゃんがいなくて溜まるストレスは、全部こうやって発散しても良いかも。

「…ぐす……、ふぇ…」

「不快だから声出さないでくれない?」

何泣いてンだか。じろちゃんの方が泣きたかったはずなのに。

「あのー、瀬戸? なんで聖さん泣いてるの?」

谷川が、恐る恐るといった様子で話し掛けてきた。
ふと教室を見渡すと、ほとんどの奴らが驚愕の表情で俺らを見ている。勇輝も杉山も。

「…聖さんね、じろちゃんが死んでちょっと嬉しかったんだって」

「は? 何それ。どういう事?」

勇輝と杉山の言い争いをおもしろおかしく観戦していた三島が、怒気を孕んだ声音を発した。
三島だけではない。どんな意味でも、じろちゃんは好かれていた。だから、すぐさま教室中に聖さんを責めるような空気が満ちる。
俺も、責め続けるつもりだったんだけど…、聖さんの顔がさらに青くなったその時、奥野が俺と聖さんの間に割って入った。

「みんな、落ち着いてよ。聖さん、吉川が好きだったんでしょ? 恋のライバルの死を願うなんて、ない話じゃないわ。吉川も瀬戸も、阿山が誰かを好きになったらさ、そいつ殺したくならない?」

「…なる」

「なら、寛大に受け止めなさい。もし私が転生出来ちゃったら、聖さんが泣かされたって阿山にチクるけど」

「………分かったよ、もう責めない」

奥野の奴…、庇うなんて、じろちゃんに感化されたかな。まぁ、チクられたらヤだし、このくらいにしといた方が良いか。

じろちゃん。俺ね、じろちゃんの事が大好きなんだ。大好きなものを否定されれば、誰だってムカッとするでしょ? だから、許してね。



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