異世界転移したんだけど周りが全員過保護なホモだった件

メル

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ハローおホモ達★ギルド入会編

5歳じゃないです

 
 
「コージくんッ!! 嗚呼見付けた!!!」

大股で駆け寄ってくるルークさん。一瞬で安心したような顔になって、すぐに悲しそうな顔になって、その後……わぁ、怒ってるぅ…!!!

「無事で良かった…! さぁ、帰ろう!!」

今ここで俺に拒絶されないためか、怒りをかなり抑えた様子でルークさんが言った。けど迫力やっばい。怒れる熊さん超怖い。
だがしかし、ここで折れるわけにはいかないのだ。
ルークさんが俺を抱き締めようとするけど、一歩下がってハラリと避ける。ハグが嫌なんじゃなくて、手に付いた土が気になったから。
そんで、俺はルークさんの言葉に首を振った。

「い、イヤです」

……ひぃっ!? ちょ、顔。ルークさん顔!! 人相で人殺せるよソレ~!!
やっぱりストレートに言い過ぎた!? もっとオブラートに包んで断るべきだった!? ド直球「イヤ」は流石にダメだったか~!!

「べっ、別にずっと帰らないわけじゃなくて! あの、ギルドに来たかっただけなんです。どうしても冒険者になりたいから。だからその、逃げたとかじゃなくて、いや逃げたんですけど、俺の帰る家はあの家なんで……」

必死の言い訳を聞こうともせず、青筋立てたルークさん、パンッパンッと手の土を払い、ガシッと片手で俺の右腕を掴んだ。
手加減はしてるんだろうけど、ギリギリと握り締められた二の腕が超痛い。そのまま、2メートルもあるルークさんが大股で引っ張るもんだから、何度も転けそうになる。
しかしルークさんは気にすることなく、入口(だったところ)に向かって、ずんずんと歩いて行く。

ルークのズンドコ節とかしょーもないことが頭に浮かんで…、いや、アレを歌うルークさんとかウケるな。……って、違うわ! 流石に今はふざけてる場合じゃねーー!!
ルークさん、このまま家まで引っ張って行く気なんだ!
ヤバいヤバいヤバいせっかくここまで来たってのに! 監禁人生なんてまっぴらごめんだぁーーーッ!!

「待っ…、痛、ルークさん! ちょっ…、離して、やだってば! 離しっ…離せよーっ!」

ズリズリズリ。俺の足が床を擦る。
怒り狂った熊を刺激するだけだと知りながらも、抵抗せずにはいられない…。ホラーやサスペンス映画で犯人を無駄に刺激する人たち、ごめん。今まで貴方達のこと単なるアホだと思ってた。自分の身が危険ってなる場面だと、どうしてもこう言っちゃうんだな……。

「おいおいおいギルマス! いくらなんでもそれはあんまりだろ!! おいお前ら!」

オッサンとマッチョマンたちがルークさんの前に立ち幅かり、怒りに震える自分らのボスを睨み付けた。
オッサン……。上司に堂々と逆らってまで、まだ俺を助けようとしてくれるなんて……! オッサンにトキメキを隠せない俺です。

「行かさねぇっすよギルマス。コージくんの意志ガン無視は無いわ」

そうだそうだー! もっと言ってやれー!!
でも虫けらを見るような目のルークさん、威圧的に「どけ」と唸る。冒険者たちは後退りするけど、動じないオッサン。かっけぇ。
おおっと、ルークさんがオッサンを避けて進もうとするが……? オッサン、更に後退し、ふたりは再び正面で向き合う形となった。いやぁ~、個人的にはオッサンに頑張って欲しいところですねぇ。オッサンが引き留めてくれなきゃ、俺は家でレイプコース間違いなしです。イケイケ押せ押せオッサーン!

「どかねぇっす。コージくんの気持ちも考えずに無理矢理家に閉じ込めるなんて、本当に好きな人にする仕打ちじゃねぇ」

オッサン、良いこと言うぜ。確かに、ルークさんのソレはただの恋心とかじゃなくて、執着とか……依存、だよな。
おかしいぞ。俺たち、まだ出会って11日目の初々しい関係なはずなのに……。ルークさんったら、俺に恋するの早すぎねぇ? 足も速ければ執着も早いってか。ハハハウケる。ウケねぇよ。笑えねぇ……。

「パートナーの身を慈しみ案じて何が悪い。他の者共に盗られるようなことがあってはならないのだ。このような容姿にこのような匂い…、私の過保護もまっとうではないか。実際、コージくんを見て不埒な感情を抱いた者もいたはずだ」

ルークさんの言葉に、9割近くの人がビクッと肩を揺らした。
…………ん? え、うそ? うそぉ…?
おいオッサンどこ見てんだちゃんと俺の目を見ろ。目を逸らすな、気まずそうに顔を背けるな!
あっ、てかパートナーじゃないからね! そこ大事。

「や…、でもそんな無理矢理監禁ってのは……」
「こうでもしないと、コージくんは私の手からするりと逃げて行ってしまう……。仕方がないのだ」

えぇーー? 逃げないよ、逃げるわけねぇじゃん。
あんな上げ膳据え膳な生活、家族以外じゃ中々ないし? 出て行ったらそれこそ、せっ…性奴隷にされる可能性もゼロじゃないって、さっきのオッサンたちの反応で分かったし? 今回はただ仕事場の下見と、赤古龍の情報収集に来ただけだし?
だから俺は、ルークさんの裾をクイクイと引っ張った。

「ルークさん、俺逃げる気ないですよ。ルークさんとリイサスさんとの生活はすごく快適で楽しいですから。セクハラは困るけど……」
「コージくん……!!」
「外が危険ってことくらい分かってるんで、心配しなくてももうしばらくはあの家にいます」

感涙を浮かべ、じ~ん、と震えるルークさん。でもすぐ、ハッとしたように首をブンブン横に振った。
やっぱり一発で丸め込むのは無理っぽいな~…。

「『もうしばらく』ということは、いつかは出て行ってしまうということかね?」
「そりゃまぁ……おふたりが俺を監禁とかしようとしたら、逃げるしかないですよね。俺自由に生きたいですし。同意の無いセッセもイヤです。シようとしたら全力で拒絶します! 耳もしっぽも触りません!」
「な…ッ! な…ッ!?」

忠告も忘れずに。
俺の言葉に『ガーン!!』って感じのお顔になったルークさん。耳がへにょって垂れる。うーん可愛い。これがあるから憎めないんだよな~~~……。
いつもワガママで独占欲が強くて、他の人…リイサスさんに構うとすぐに怒るのに。逆に俺がプンプン怒るとシュンと落ち込んで、機嫌を伺ってくる。
そんで、喧嘩の後には「ごめんなさい」って、巨体を小さくして謝ってくるもんだから、俺の兄貴心が刺激されて、ついつい許しちゃうんだよな~~……。





…………あ、そっか…。
康太郎だ。弟の康太郎にそっくりなんだ。


顔や図体は全然違うけど、子供みたいに甘えてくるから。康太郎と会えなくなって、俺も甘えてくれる存在を求めてたってことかな。だからレイプされても軟禁されても許しちゃってた…って、いう?
……そっか、納得。あーそっかー…。俺は康太郎の代わりにルークさんを…。
……あ、やべ。泣けてきた。思い出さないようにしてたのに……。……まずい。

「………ぅ……」

突然、たっぷり涙を目に溜めた俺に、周囲は雷が落ちたみたいに騒然。
ルークさんはオロオロしながら「あぁあコージくんすまなかった! 私が悪かったから泣かないでおくれ!」ってめっちゃ謝ってる。オッサンは「かっ…菓子持ってこい! いいからたくさん! あとココア新しいの! あったかいヤツ!!」と冒険者に指示を飛ばしている。
慰めようとしてくれるのはありがたいけど、俺そんなちびっこじゃないんですぅ~。もぉどんだけぇ~……。
なんてバカなこと、頭の冷静な部分で考えてみるも、涙は止まる気配を見せない。
だって、もう会えないのだ。二度と。父さんにも母さんにも弟にも。あれだけ大切に育ててくれたのに。あれだけお金と時間をかけてくれたのに。まだ何にも返せていないってのに。どれだけ悲しませただろう。どれだけ泣かせただろう。今頃、遺品整理でもしてるのかな。小さい頃のアルバムとか、見てるのかな。
そう考えれば考えるほど、涙は次々溢れてくる。手で押さえても全然ダメで、完全にドツボに嵌まった。
ルークさんもオッサンたちも困ってる。早く泣き止まなきゃなのに、俺の意思は完全に無視され、今まで殺してきた感情の導火線に火がついた。

「う゛っうっ、うわぁあぁぁああああぁぁんっ!!」

大声を上げて泣く俺は、端から見ればみっともないだろう。
だって15歳。精神的には17歳だ。幼い子供でもない男が、家族に会えなくなってピーピー泣いてるなんて、俺的にはダサいと思う。
ルークさんやリイサスさんは、「そんなことないよ!」って本気で否定してくれるんだろうけどさ。

「あぁぁぁぁコージくんすまなかった…! 君がそこまで思い悩んでいたとは……!! どうか泣き止んでおくれ、もう君の嫌がるようなことはしないと約束する!」
「こっ怖い言い争い見せちまってごめんな~! あ、ほらお菓子!! クッキーもチョコもキャンディーもあるぞ~!?」

頭を撫で回したり、背中を擦ったり、カラフルな包装紙のキャンディーを差し出したりして、必死に俺を宥めようとするふたり。
リイサスさんがいなくて良かった。いたらもっとパニックになっていたと思うから。
勿論、俺が泣いてるのはふたりのせいじゃない。ルークさんが切っ掛けだけど、それは故意ではないし、悪意もない。何にも悪くないのだ。
一番悪いのは……俺を殺した天界への介入者だな。絶対許さん。会ったら絶対殴ってやる!

「ちっ、ちがうん、ですっ…。る、ルークさんもっ、オッサンもっ、あぅっ、ひっ、ひっ、悪くなっ…くて…、悪い、のは…かいにゅ、しゃっ、だからぁっ」

喉が詰まって、支離滅裂な上にちゃんと言えない。あ、オッサンって言っちゃった。介入者も言っちゃった。
でも構わないと、俺はルークさんの巨木の幹みたいな胴にしがみついて泣いた。
こんだけ好き好き言われたんだから、オッサンはともかく、ルークさんには本当のこと……「異世界からやってきた」と、言っても大丈夫だと思う。……………多分。介入者を殺しかねないけど。

「お、オッサン…!? ……ってカイニュシャ? それが君を泣かせた奴の名前か!?」
「そうか……、安心したまえコージくん。私が直々にそのカイニュシャとやらを殲滅してこよう」

ルークさんとオッサンの目が殺意に燃える。ルークさんなんか、どこからともなく取り出したメリケンサックを嵌めて、グッと岩みたいな拳を握った。
ははっ、やっぱり殺す気満々だ。しかもカイニュシャって…勘違いしてるし。いや俺のせいなんだけどもw
集まっていた冒険者のマッチョマンたちも、目をギラギラさせてカイニュシャについて互いに「知ってっか?」とか聞いてるけど、知ってるわけないし見付かるわけもない。なんか、人智を越えた存在っぽいし?

それでも俺は、すごく安心した。きっとルークさんたちなら、介入者だってぶっ飛ばせると思ったからだ。
そんでルークさんは、きっと俺のためにぶっ飛ばしてくれる。リイサスさんもそうだ。ふたりとも、俺のために命を懸けてくれる。
そんな予感がして、俺はルークさんのベストを涙でぐっちょり濡らしながら、目を閉じた。
案外俺は、ルークさんとリイサスさんを信頼してるんだと思った。と同時に、ふたりのことがかなり好きらしいとも。


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