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第1章
2.ヘルマン公爵との出会い
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ルイスが明日三つになるのに対して、ユリアはまだ十四、成人まで四年。様々な仕事をするにはまだ年齢が足りなかった。
運よく紹介状を手に入れたユリアがたどり着いた屋敷は、首都から少し離れてはいるが豊かで広大な領地を治める、ヴェッターホーン公爵家だった。
領主はヘルマン・ヴェッターホーン、現皇帝陛下の甥である。
伯爵令息であった時にも雲の上だった人。働き出しても会えることはそうそうないとは思うが、こんな由緒正しい家門の本邸に入れるというだけで嘘のようだった。
紹介状を書いてくれたヒリスには感謝しかない。
使用人の一人一人、下働きも庭師もすべて厳格な審査ののちに雇われているはずだ。
ユリアに前科があるわけではないが、罪人の子であることは変わらない。きっとわかれば雇ってもらえないだろう。
屋敷についてからはルイスは抱っこを降り、絨毯の感触を不思議そうに踏みしめながら再び歩き出した。ユリアはその手を引いて執事に案内された部屋で面接を受けた。
書類を一通り確認して、執事はユリアに向き直った。
老齢なこの執事は、ユリアが思っていた執事とは違いとても暖かなまなざしでこちらを見てくれる人だった。
ユリアの中で執事と言えば、父の横で大層にうなずく、ちょっとうるさくて近寄りがたい中年の男だった。
この執事は落ち着いて、じっとこちらを見つめてくる。ルイスにも膝を折って挨拶をしてくれた。
公爵家の執事というと貫禄もあってやはり普通の使用人とは違うようだった。
「読み書きはできると書いてあるね」
「は、はい、できます」
「ヒリス卿の紹介なので、そんなに心配しなくても。ちゃんと仕事は差し上げられますよ」
「あの……この子は」
「公爵邸に、日中子供が遊ぶ場所があります。学校のようなもので、読み書きも教えたりしますので、子供がいても働いている人は多いです」
ヒリスからも心配ないと言われていたが、改めてそう言われると安心した。
「今まで受けた教育を聞いてもいいですか?」
「計算は、できます。ヒリス様のところでは帳簿をつけていました。あとは……」
伯爵家後継者として、十二までは教育を受けていた。まだ基本をやっと抑えられた程度だったが、領地経営に関連するものは習っていた。それを明かすことはできないが、ある程度使えると思ってもらいたい。
「字の読み書きはできます。えっと、リャシナカ語、ホールディ語は日常会話少し」
執事の少し驚いたような顔にしまった、と思った。
「あの……本当に、少しです。近所に国の人がいて」
教師はそれぞれの国から招いて住み込みで教わっていた。この公爵領と接している二国の言葉だったから必要とされるかと思ったが、珍しかったのだろうか。
「いえ、それは助かりますね。それでしたら、従僕というより……ふむ」
執事はしばらく考えてから、にこりと笑顔を見せて立ち上がった。
「とにかく、長旅で疲れたでしょう。部屋に案内しますね。仕事は三日後から。ここに来てください」
「あの、僕、すぐ働けます」
ユリアの必死さを落ち着かせるように執事はやんわりと宥めた。
「ユリア君。ここに来るまできっと大変だったんでしょう。しかし君も本当は、ルイス君と同じように学校に通う年でしょう。仕事はもちろんお願いしますが、今の君は、何より健やかに育ち、まだ大人に守られる時期だということを、我々は考えなくてはいけない。――ほら、一度ルイス君の日中通う施設を見ておくと良いでしょう」
食堂や風呂など、部屋を案内してもらう。ルイスもいるから二人で一部屋をと与えてもらった。まだ決まっていないうちから信じられない好待遇だった。
「ゆっくり休んでくださいね」
執事のその言葉にお礼を言うのがやっとで、ユリアはただただあっけにとられていた。
その日はお腹いっぱいご飯を食べ、風呂に入って、柔らかな布団で寝た。
「るい、ここでおとまり?」
「そうだよ。今日からはここが僕たちのおうちだ」
「ここしゅき。しゅごいね!あしたも?しゅごいね!」
ルイスの喜ぶ顔を見るだけで、ユリアはうれしくなった。
ベッドは二つあったけど、二人で抱き合って眠った。
ルイスは一人で眠ることができない。いつも二人でそうして眠っている。ユリアも、こうしてルイスの温かい身体を抱きしめて眠ることが、唯一安心できる時間だった。
どうかこの幸せが続きますように、と祈りながら。
次の日は、ルイスを連れて例の預ける施設を。覗いた。
いろいろな年齢の子どもがいて、ルイスは小さいほうだったが、面倒見のいい五つくらいの子ども達が随分とルイスを気に入って世話をしてくれた。
世話役の人たちもとてもいい人たちのようだった。
「ルイス、明日の明日から、ここにこようね」
そういうと、見たこともない玩具や道具に目を輝かせて、ルイスは言葉もないようだった。
世話役の人は話を聞いているようで、いつでもどうぞと言われる。ルイスはいくつかと聞かれたので今日三つになると答えると、急に驚かれて、焼き菓子を持たされた。
「ごめんなさいね。聞いていたらお祝いしたんだけど。でもどうせまた来るから。ここに通いだしたら、一緒に誕生日パーティしようね、ルイ君」
部屋に戻って焼き菓子をルイスに食べさせ、ユリアは涙をこらえるのが大変だった。
「おいち、おいち、よ!りあもたべて!」
二人で食べた焼き菓子は本当においしかった。
「誕生日おめでとう、ルイス。どんどん大きくなってね」
初めて穏やかな誕生日を迎えられた。本当に、ここに来てよかった。
仕事の初日、ルイスを施設に送ってからユリアは出勤した。
約束の部屋に行って少し待つと先日の執事と、身なりのいい青年が一人やってきた。
「おはよう、ユリア」
「おはようございます。今日からよろしくお願いします」
「私はフェルナンド・ポールマン。公爵領の男爵位で、補佐官をしているんだ。執事から、読み書き外国語ができる子が入ったって聞いてね。せっかくだから、領地の仕事の方を手伝ってもらおうかと思って」
「は、はい」
てっきり、掃除とか庭や雑用になると思っていたのに。
「そんなに心配はしなくても大丈夫だよ。雑用の雑用みたいなものだから、とりあえずお使いとか、言われたことをやればいいだけだからね」
「はい!」
では私はこれで、と執事は先に退席した。屋敷全般を取り仕切る彼と、領地経営を担う補佐官とではまるで役割が違う。管轄は外れたということだ。
「ヒリス卿からの紹介だから、っていうところも大きいんだ。今首都にいらっしゃるんだよね。ヘルマン様の古くからのご友人だからね。あの方が、君を推薦してわざわざ手紙もくださっていたから」
そうなのか。紹介状だけじゃなかったんだ。
改めてヒリスの優しさに、拝みたくなる気分だった。
「でもまあ一応聞くけど、君、どこかのいいところのお坊ちゃんってことはないよね」
「え……?」
心臓をわしづかみにされたようだった。
「金髪碧眼って平民にはちょっと珍しいからさ」
フェルナンドの顔を見ると、問いただすような雰囲気ではなかった。ただ自己紹介の延長の様な。
今のユリアはがりがりにやせ細り、肌はかさついて黒ずんでいるし、髪も傷んですぐに切れるほどだからろくに散髪もできず、毛先もはねている。だから金髪と言ってもかつての輝きはなく、くすんだ色をしている。唇も割れてかさついて色は悪いし、目の下のくまは取れない。爪は割れたり曲がったり。栄養がないと、人間は別人のようになるのだとこの二年で思い知った。
大丈夫だ、お世辞にも貴族には見えない。
「僕は、両親を亡くしたので、甥と修道院に預けられました。そこもつぶれて、点々としているところを偶然ヒリス様に助けていただいたんです。――平民で姓もありません……」
言えるのはそれだけだった。
「転々としているときに外国語を習ったの?」
「はい。でも習ったというか……ちょっと話をしてみただけなので、どれくらい覚えているかは、自信ないです。でも、辞書とかあれば」
「うんうん。無理なくね。君、まだ十四だからね」
「でも……甥と二人、生活していくのに、仕事が欲しいんです。お願いします」
「大丈夫だよ、万一仕事を失っても、ちゃんと保護するからね。――あ、公爵領の法で、未成年の就労にはいろいろ制限があってね。時間とか、内容も。だから大人ほどは働けないんだ。でも、生活はちゃんと私たちが保証するから、心配しないでね」
公爵領に来てからというもの、子供扱いというのをされてユリアは変な感じだった。
これまでは必死に仕事をしてお金をもらうことが何よりだった。
体力や能力的にではなく、ただ子供だから働けない、大人の保護に入れと言われるのは、なんだか不思議な感じだった。
「余った時間を将来のために勉強に充てるもよし、ルイス君との時間に充てるもよし。何もせずぼーっとするもよし。自分探しの旅に出るもよし」
「自分、探し……?」
最後のが意味が分からなくて聞き返すと、フェルナンドは困ったような笑みを浮かべた。
「君が自分探しをするほどになったら我々も安心するってことかなー」
言っていることはよくわからなかったが、自分のことを案じてくれているのはわかる。
「まあ、今日からよろしくね」
フェルナンドから差し出された手。一瞬だ、と自分に言い聞かせてぎゅっと握り返す。
途端、せり上がってくる熱い内臓の感覚。
「すみません、ちょっとトイ……」
我慢できなくてユリアはトイレに走り、嘔吐した。朝ごはんが全部出た。
冷たい水で手を洗い、顔も洗って、急いで気持ちを落ち着ける。
慌てて戻ってから、心配するフェルナンドにできるだけ精一杯の笑顔を見せた。
「すみません、僕、今まであまりちゃんと食べてなかったので。豪華なご飯に、ちょっとお腹がびっくりしちゃって」
「それはいいんだけど、医者を呼ぼうか。顔色も良くないよ」
「とんでもありません!すみません。お願いします。働かせてください」
ユリアの切迫感が伝わったのだろうか。くれぐれも無理をしないように言われて、それを了承してやっと職場へと出発することができた。
――あの地獄の日々から、気が付けばユリアはルイス以外の人の肌に触れることができなくなっていた。
フェルナンドは首席補佐官なので、補佐官室で一番若い補佐官のバートという人が直接の上司だと説明された。
バートは二十五歳で、街に新婚の奥さんがいる気のいいお兄さんといった雰囲気の男性だった。
ユリアはそこで、バートの手足となって働くように言われた。
手紙を分類したり、ごみを捨てたり、執務机を片付けたり、計算が間違っていないかチェックをしたり。
本当に子どものお遣い程度の仕事だった。体力仕事でないというのもとても楽だった。
手紙の分類の時に、時々重要でないものは中身も読んで分類していた。そうして辞書で調べながら仕事をすると勉強していた当時を思い出し、それも楽しかった。
補佐官室には他にも十人程度の人が働いていたが、皆忙しく領地内を行き来しており、あまりその部屋に常駐している人はいなかった。誰もいなくなる時はユリアも休みになるし、その日の給料も払われるという。
間違いなく、今までにない好待遇な職場だ。
明日は給料日という日の夜。
「ユリア、明日初給料だろ?休め休め!そして何かいいもの買って来い!俺も休むから!」
そういってバートは休日申請というやつをうきうきしながら一緒に出してくれた。
だから明日はルイスと二人で街に買い物に行く予定だ。
楽しみすぎて絶対眠れないと思う。そんなユリアの様子を感じて、ルイスもきゃっきゃとご機嫌で過ごしている。
いつも施設であったことをたくさん話してくれるルイスと抱き合って、話を聞きながらいつの間にか眠っている、というのが流れで、でも今日はルイスはなかなか眠らなかった。
「洋服と靴は買おうね」
ヒリスにもらった服は、もういい加減ボロボロになってしまっている。
「くっく、んー、みおりね。りあのいろね」
ルイスは緑が大好きだ。ユリアの色、といつも言う。瞳の色だろう。
「いいよ。じゃあ服は?」
「ふく?みおり!」
「緑ばっかりじゃおかしいよ」
くすくす笑うユリアにルイスは真剣な顔で身体をよじった。
「おかしく、ない!」
三歳になってだいぶ発音がよくなってきた。はいはい、と宥めながらルイスが寝たのはもう日付が変わろうとしているときだった。
深夜二時。
屋敷は静まりかえっていた。
時折見回りの兵士の足音が微かに響くだけで、周りには音もない。
早番が目覚めるまでも随分と時間がある。
ユリアは自分に抱きついているルイスの手をゆっくりと離し、布団からそっと抜け出した。
それは気が付いた時からずっと続いていた習慣のようなもので。この時間になると、つい目が覚めてしまうのだった。
まだルイスが一歳の頃は、夜泣きが多く、少ない日でも夜中に二、三回は泣いて起こされた。その度に抱いて歩いてあやし、またそっと眠りにつく。孤児院を出てからは特に、日中は手足が棒になるまで働いて、夜中はそうしてルイスの守りをして――。
体力も、心も限界になった時、ふと、寝床を抜け出した。
涙が出るわけでもない、ただ乾いた感情のままにふらりと夜の野に出た。
目が覚めるほどの星、ひやりと冷たく撫でる風、りんと響く虫の声。
そこで何をするでもなく、ぼうっと景色を眺めている時間が、ユリアにとって唯一自分だけの時間だった。
夜泣きがなくてもつい目が覚めてしまう。そうして自然と足が外に向かうのだった。
見回りの兵に誰何されるのは面倒なので、少し辺りを伺いつつ外に出る。
しばらく庭園を歩けば、人のいない寂れた裏庭にたどり着く。
最低限の手入れはされているが、誰に見せるでもないここは花もなく自然の野花が少しあるだけ。あとは遠くに荷物をしまう物置小屋と、厩の屋根が見える。
ユリアは誰も来ないここを夜の休息場にしていた。ここで少しだけぼうっと空を眺めたら、また明日から頑張れる。
いつもの岩の上に腰を下ろし、屋敷の壁に頭を預けて空を見上げる。今日は月が満月に近い。明るい夜だった。
大きく深呼吸して、また星を見上げる。
ずっとこうしていたい。
「星が好きなのか」
突然耳元で話しかけられ、心臓が飛び出そうになる。体は文字通り跳ね上がり、驚きのあまり足はもつれて尻餅をつく。慌てて逃げようとして、でも体がいうことをきかず、結局手足を数回ばたつかせただけだった。
「……大丈夫か?」
「はっ、はい……」
怪訝そうに問われて、ようやく呼吸することを思い出した気がする。姿勢を正して声の主に向き直った。
よく目を凝らすと、闇に溶け込むような紺の上着を着ている男性だった。体を壁にもたれかけ、手にはワインボトルを持っていた。
一歩前に出てきて、その顔が見える。
ユリアは息を呑んだ.
肖像画で見た。この屋敷の主人だ。いつ戻ってきていたのだろう。
慌ててその場に膝を折る。
「ご主人様、申し訳ありません」
「何を謝る?」
低く落ち着いた声だった。
「勝手にこの場所に…」
「ここは誰の場所でもない」
なぜ人に気づかなかったのだろう。半分寝ぼけて歩いているからだ。そもそもこんな時間に誰かに出会ったことがなかったから。
一体何をしているんだろう……。
「星を見に来ているのか?それならここより、星の庭へ行けばもっとよく見える」
「い、いえ……」
何と言ったらいいのだろうか。怪しくないのだと説明したいが、緊張して声が出にくい。
「好きなんです、あの…この時間の散歩が」
はっきりと表情は見えないが、首を傾げたような気がする。
「こんな時間に?屋敷は安全だが…いい趣味とは言えないな。痛くない腹を探られることになるかもしれないぞ」
ユリアは慌てて頭を下げた。
そうだ。ここは公爵家の屋敷。街や村のように気軽に行動していい場所ではない。
怪しい動きをしていると拘束されても文句は言えない。
「申し訳ありません。軽率でした。その……習慣で」
「夢遊病のような習慣だな」
「一人に……なりたくて。あの、もう、やめますので。どうかお許しください」
ヘルマンの顔色は読めない。そちらを向くこともできずに、ユリアは次の言葉を待った。
「私と一緒だな」
ヘルマンが指したところに、扉があった。使われていない古い扉だと思っていたら。
「そこは私の寝室と繋がっている。時々目が覚めると私もここへ足を運ぶ」
ヘルマンがくくっ、と笑った。
「まさか真横に、私に気づかず座り込む影があるとは思わなかったな」
「も、申し訳ありません」
情けない。こんなことで職を失うようなことになったら、後悔してもしきれない。
「心配するな」
心を読んだかのような言い回しだった。
「こんなことで暇を出したりはしない」
ヘルマンの影がすっと動いた。かと思ったら、目の前に膝をつき顎を取られる。
人との触れ合いを避けてきたが、不意打ちに避けられなかった。後ろに飛びのきそうになるのを必死で堪えた。
身近に整った顔が突然現れて、目が合う。
月の光でヘルマンの肌は際立って白く照らされている。冷たいほどの美貌だ。黒い髪が闇に溶け込みそうだ。これほど夜が似合う人をユリアは知らない。
ただそこにいるだけで圧迫感のある人、というのに会ったのは初めてだ。触れられているのに、不快感より前に体が硬直したように動かない。
銀に近いような青の瞳が、じっとこちらを見ていた。
「星を見上げていたものとは、別人のようだな。俺が怖いか?」
「い、いいえ…」
「そう怯えるな。名は……ああ、ユリアと言ったな」
「――はい」
知っているのか。少し驚いた。たかが雑用で雇われた自分のことを。
「ここには慣れたか?字が書ける者は貴重だからな。長く勤めてもらいたいと思っているが」
「こんなにいい働き場所は、初めてです」
嘘のない言葉だった。
――が。ヘルマン卿の手はまだユリアナを上向かせた顎にある。
「あ、あの…お手を…」
ヘルマンの手は冷たかった。外に出ていて冷えたのか、酒を飲んでいる人間とは思えない冷たさ。だから耐えられたのかもしれない。いつもならとうに吐いているだろうに、緊張し全身が鳥肌がたっている気はしたが吐きそうなことはなかった。
手が離れ、ほっとした――と思うと、その手は頬を包み込むように触れてきた。
ひっ、と言いそうになってヘルマンの顔を見るが、何を考えているのか。じっと観察するような視線を向けてくるだけだった。
なんと言えばいいのかわからず、固まったまま時間が過ぎる。
大きな手だった。そして意外にも固い。
その手はすっと離れていった。
しばらく沈黙が流れ、ユリアは勇気を出して声を絞り出した。
「夜分に、申し訳ありませんでした。僕、あの……私、これで失礼させていただきます」
ヘルマンは何を考えているのか読めない表情を向けた。
「ああ…」
ユリアは慌てて部屋へ戻る。
ヘルマンの視線を背後に感じていた。
運よく紹介状を手に入れたユリアがたどり着いた屋敷は、首都から少し離れてはいるが豊かで広大な領地を治める、ヴェッターホーン公爵家だった。
領主はヘルマン・ヴェッターホーン、現皇帝陛下の甥である。
伯爵令息であった時にも雲の上だった人。働き出しても会えることはそうそうないとは思うが、こんな由緒正しい家門の本邸に入れるというだけで嘘のようだった。
紹介状を書いてくれたヒリスには感謝しかない。
使用人の一人一人、下働きも庭師もすべて厳格な審査ののちに雇われているはずだ。
ユリアに前科があるわけではないが、罪人の子であることは変わらない。きっとわかれば雇ってもらえないだろう。
屋敷についてからはルイスは抱っこを降り、絨毯の感触を不思議そうに踏みしめながら再び歩き出した。ユリアはその手を引いて執事に案内された部屋で面接を受けた。
書類を一通り確認して、執事はユリアに向き直った。
老齢なこの執事は、ユリアが思っていた執事とは違いとても暖かなまなざしでこちらを見てくれる人だった。
ユリアの中で執事と言えば、父の横で大層にうなずく、ちょっとうるさくて近寄りがたい中年の男だった。
この執事は落ち着いて、じっとこちらを見つめてくる。ルイスにも膝を折って挨拶をしてくれた。
公爵家の執事というと貫禄もあってやはり普通の使用人とは違うようだった。
「読み書きはできると書いてあるね」
「は、はい、できます」
「ヒリス卿の紹介なので、そんなに心配しなくても。ちゃんと仕事は差し上げられますよ」
「あの……この子は」
「公爵邸に、日中子供が遊ぶ場所があります。学校のようなもので、読み書きも教えたりしますので、子供がいても働いている人は多いです」
ヒリスからも心配ないと言われていたが、改めてそう言われると安心した。
「今まで受けた教育を聞いてもいいですか?」
「計算は、できます。ヒリス様のところでは帳簿をつけていました。あとは……」
伯爵家後継者として、十二までは教育を受けていた。まだ基本をやっと抑えられた程度だったが、領地経営に関連するものは習っていた。それを明かすことはできないが、ある程度使えると思ってもらいたい。
「字の読み書きはできます。えっと、リャシナカ語、ホールディ語は日常会話少し」
執事の少し驚いたような顔にしまった、と思った。
「あの……本当に、少しです。近所に国の人がいて」
教師はそれぞれの国から招いて住み込みで教わっていた。この公爵領と接している二国の言葉だったから必要とされるかと思ったが、珍しかったのだろうか。
「いえ、それは助かりますね。それでしたら、従僕というより……ふむ」
執事はしばらく考えてから、にこりと笑顔を見せて立ち上がった。
「とにかく、長旅で疲れたでしょう。部屋に案内しますね。仕事は三日後から。ここに来てください」
「あの、僕、すぐ働けます」
ユリアの必死さを落ち着かせるように執事はやんわりと宥めた。
「ユリア君。ここに来るまできっと大変だったんでしょう。しかし君も本当は、ルイス君と同じように学校に通う年でしょう。仕事はもちろんお願いしますが、今の君は、何より健やかに育ち、まだ大人に守られる時期だということを、我々は考えなくてはいけない。――ほら、一度ルイス君の日中通う施設を見ておくと良いでしょう」
食堂や風呂など、部屋を案内してもらう。ルイスもいるから二人で一部屋をと与えてもらった。まだ決まっていないうちから信じられない好待遇だった。
「ゆっくり休んでくださいね」
執事のその言葉にお礼を言うのがやっとで、ユリアはただただあっけにとられていた。
その日はお腹いっぱいご飯を食べ、風呂に入って、柔らかな布団で寝た。
「るい、ここでおとまり?」
「そうだよ。今日からはここが僕たちのおうちだ」
「ここしゅき。しゅごいね!あしたも?しゅごいね!」
ルイスの喜ぶ顔を見るだけで、ユリアはうれしくなった。
ベッドは二つあったけど、二人で抱き合って眠った。
ルイスは一人で眠ることができない。いつも二人でそうして眠っている。ユリアも、こうしてルイスの温かい身体を抱きしめて眠ることが、唯一安心できる時間だった。
どうかこの幸せが続きますように、と祈りながら。
次の日は、ルイスを連れて例の預ける施設を。覗いた。
いろいろな年齢の子どもがいて、ルイスは小さいほうだったが、面倒見のいい五つくらいの子ども達が随分とルイスを気に入って世話をしてくれた。
世話役の人たちもとてもいい人たちのようだった。
「ルイス、明日の明日から、ここにこようね」
そういうと、見たこともない玩具や道具に目を輝かせて、ルイスは言葉もないようだった。
世話役の人は話を聞いているようで、いつでもどうぞと言われる。ルイスはいくつかと聞かれたので今日三つになると答えると、急に驚かれて、焼き菓子を持たされた。
「ごめんなさいね。聞いていたらお祝いしたんだけど。でもどうせまた来るから。ここに通いだしたら、一緒に誕生日パーティしようね、ルイ君」
部屋に戻って焼き菓子をルイスに食べさせ、ユリアは涙をこらえるのが大変だった。
「おいち、おいち、よ!りあもたべて!」
二人で食べた焼き菓子は本当においしかった。
「誕生日おめでとう、ルイス。どんどん大きくなってね」
初めて穏やかな誕生日を迎えられた。本当に、ここに来てよかった。
仕事の初日、ルイスを施設に送ってからユリアは出勤した。
約束の部屋に行って少し待つと先日の執事と、身なりのいい青年が一人やってきた。
「おはよう、ユリア」
「おはようございます。今日からよろしくお願いします」
「私はフェルナンド・ポールマン。公爵領の男爵位で、補佐官をしているんだ。執事から、読み書き外国語ができる子が入ったって聞いてね。せっかくだから、領地の仕事の方を手伝ってもらおうかと思って」
「は、はい」
てっきり、掃除とか庭や雑用になると思っていたのに。
「そんなに心配はしなくても大丈夫だよ。雑用の雑用みたいなものだから、とりあえずお使いとか、言われたことをやればいいだけだからね」
「はい!」
では私はこれで、と執事は先に退席した。屋敷全般を取り仕切る彼と、領地経営を担う補佐官とではまるで役割が違う。管轄は外れたということだ。
「ヒリス卿からの紹介だから、っていうところも大きいんだ。今首都にいらっしゃるんだよね。ヘルマン様の古くからのご友人だからね。あの方が、君を推薦してわざわざ手紙もくださっていたから」
そうなのか。紹介状だけじゃなかったんだ。
改めてヒリスの優しさに、拝みたくなる気分だった。
「でもまあ一応聞くけど、君、どこかのいいところのお坊ちゃんってことはないよね」
「え……?」
心臓をわしづかみにされたようだった。
「金髪碧眼って平民にはちょっと珍しいからさ」
フェルナンドの顔を見ると、問いただすような雰囲気ではなかった。ただ自己紹介の延長の様な。
今のユリアはがりがりにやせ細り、肌はかさついて黒ずんでいるし、髪も傷んですぐに切れるほどだからろくに散髪もできず、毛先もはねている。だから金髪と言ってもかつての輝きはなく、くすんだ色をしている。唇も割れてかさついて色は悪いし、目の下のくまは取れない。爪は割れたり曲がったり。栄養がないと、人間は別人のようになるのだとこの二年で思い知った。
大丈夫だ、お世辞にも貴族には見えない。
「僕は、両親を亡くしたので、甥と修道院に預けられました。そこもつぶれて、点々としているところを偶然ヒリス様に助けていただいたんです。――平民で姓もありません……」
言えるのはそれだけだった。
「転々としているときに外国語を習ったの?」
「はい。でも習ったというか……ちょっと話をしてみただけなので、どれくらい覚えているかは、自信ないです。でも、辞書とかあれば」
「うんうん。無理なくね。君、まだ十四だからね」
「でも……甥と二人、生活していくのに、仕事が欲しいんです。お願いします」
「大丈夫だよ、万一仕事を失っても、ちゃんと保護するからね。――あ、公爵領の法で、未成年の就労にはいろいろ制限があってね。時間とか、内容も。だから大人ほどは働けないんだ。でも、生活はちゃんと私たちが保証するから、心配しないでね」
公爵領に来てからというもの、子供扱いというのをされてユリアは変な感じだった。
これまでは必死に仕事をしてお金をもらうことが何よりだった。
体力や能力的にではなく、ただ子供だから働けない、大人の保護に入れと言われるのは、なんだか不思議な感じだった。
「余った時間を将来のために勉強に充てるもよし、ルイス君との時間に充てるもよし。何もせずぼーっとするもよし。自分探しの旅に出るもよし」
「自分、探し……?」
最後のが意味が分からなくて聞き返すと、フェルナンドは困ったような笑みを浮かべた。
「君が自分探しをするほどになったら我々も安心するってことかなー」
言っていることはよくわからなかったが、自分のことを案じてくれているのはわかる。
「まあ、今日からよろしくね」
フェルナンドから差し出された手。一瞬だ、と自分に言い聞かせてぎゅっと握り返す。
途端、せり上がってくる熱い内臓の感覚。
「すみません、ちょっとトイ……」
我慢できなくてユリアはトイレに走り、嘔吐した。朝ごはんが全部出た。
冷たい水で手を洗い、顔も洗って、急いで気持ちを落ち着ける。
慌てて戻ってから、心配するフェルナンドにできるだけ精一杯の笑顔を見せた。
「すみません、僕、今まであまりちゃんと食べてなかったので。豪華なご飯に、ちょっとお腹がびっくりしちゃって」
「それはいいんだけど、医者を呼ぼうか。顔色も良くないよ」
「とんでもありません!すみません。お願いします。働かせてください」
ユリアの切迫感が伝わったのだろうか。くれぐれも無理をしないように言われて、それを了承してやっと職場へと出発することができた。
――あの地獄の日々から、気が付けばユリアはルイス以外の人の肌に触れることができなくなっていた。
フェルナンドは首席補佐官なので、補佐官室で一番若い補佐官のバートという人が直接の上司だと説明された。
バートは二十五歳で、街に新婚の奥さんがいる気のいいお兄さんといった雰囲気の男性だった。
ユリアはそこで、バートの手足となって働くように言われた。
手紙を分類したり、ごみを捨てたり、執務机を片付けたり、計算が間違っていないかチェックをしたり。
本当に子どものお遣い程度の仕事だった。体力仕事でないというのもとても楽だった。
手紙の分類の時に、時々重要でないものは中身も読んで分類していた。そうして辞書で調べながら仕事をすると勉強していた当時を思い出し、それも楽しかった。
補佐官室には他にも十人程度の人が働いていたが、皆忙しく領地内を行き来しており、あまりその部屋に常駐している人はいなかった。誰もいなくなる時はユリアも休みになるし、その日の給料も払われるという。
間違いなく、今までにない好待遇な職場だ。
明日は給料日という日の夜。
「ユリア、明日初給料だろ?休め休め!そして何かいいもの買って来い!俺も休むから!」
そういってバートは休日申請というやつをうきうきしながら一緒に出してくれた。
だから明日はルイスと二人で街に買い物に行く予定だ。
楽しみすぎて絶対眠れないと思う。そんなユリアの様子を感じて、ルイスもきゃっきゃとご機嫌で過ごしている。
いつも施設であったことをたくさん話してくれるルイスと抱き合って、話を聞きながらいつの間にか眠っている、というのが流れで、でも今日はルイスはなかなか眠らなかった。
「洋服と靴は買おうね」
ヒリスにもらった服は、もういい加減ボロボロになってしまっている。
「くっく、んー、みおりね。りあのいろね」
ルイスは緑が大好きだ。ユリアの色、といつも言う。瞳の色だろう。
「いいよ。じゃあ服は?」
「ふく?みおり!」
「緑ばっかりじゃおかしいよ」
くすくす笑うユリアにルイスは真剣な顔で身体をよじった。
「おかしく、ない!」
三歳になってだいぶ発音がよくなってきた。はいはい、と宥めながらルイスが寝たのはもう日付が変わろうとしているときだった。
深夜二時。
屋敷は静まりかえっていた。
時折見回りの兵士の足音が微かに響くだけで、周りには音もない。
早番が目覚めるまでも随分と時間がある。
ユリアは自分に抱きついているルイスの手をゆっくりと離し、布団からそっと抜け出した。
それは気が付いた時からずっと続いていた習慣のようなもので。この時間になると、つい目が覚めてしまうのだった。
まだルイスが一歳の頃は、夜泣きが多く、少ない日でも夜中に二、三回は泣いて起こされた。その度に抱いて歩いてあやし、またそっと眠りにつく。孤児院を出てからは特に、日中は手足が棒になるまで働いて、夜中はそうしてルイスの守りをして――。
体力も、心も限界になった時、ふと、寝床を抜け出した。
涙が出るわけでもない、ただ乾いた感情のままにふらりと夜の野に出た。
目が覚めるほどの星、ひやりと冷たく撫でる風、りんと響く虫の声。
そこで何をするでもなく、ぼうっと景色を眺めている時間が、ユリアにとって唯一自分だけの時間だった。
夜泣きがなくてもつい目が覚めてしまう。そうして自然と足が外に向かうのだった。
見回りの兵に誰何されるのは面倒なので、少し辺りを伺いつつ外に出る。
しばらく庭園を歩けば、人のいない寂れた裏庭にたどり着く。
最低限の手入れはされているが、誰に見せるでもないここは花もなく自然の野花が少しあるだけ。あとは遠くに荷物をしまう物置小屋と、厩の屋根が見える。
ユリアは誰も来ないここを夜の休息場にしていた。ここで少しだけぼうっと空を眺めたら、また明日から頑張れる。
いつもの岩の上に腰を下ろし、屋敷の壁に頭を預けて空を見上げる。今日は月が満月に近い。明るい夜だった。
大きく深呼吸して、また星を見上げる。
ずっとこうしていたい。
「星が好きなのか」
突然耳元で話しかけられ、心臓が飛び出そうになる。体は文字通り跳ね上がり、驚きのあまり足はもつれて尻餅をつく。慌てて逃げようとして、でも体がいうことをきかず、結局手足を数回ばたつかせただけだった。
「……大丈夫か?」
「はっ、はい……」
怪訝そうに問われて、ようやく呼吸することを思い出した気がする。姿勢を正して声の主に向き直った。
よく目を凝らすと、闇に溶け込むような紺の上着を着ている男性だった。体を壁にもたれかけ、手にはワインボトルを持っていた。
一歩前に出てきて、その顔が見える。
ユリアは息を呑んだ.
肖像画で見た。この屋敷の主人だ。いつ戻ってきていたのだろう。
慌ててその場に膝を折る。
「ご主人様、申し訳ありません」
「何を謝る?」
低く落ち着いた声だった。
「勝手にこの場所に…」
「ここは誰の場所でもない」
なぜ人に気づかなかったのだろう。半分寝ぼけて歩いているからだ。そもそもこんな時間に誰かに出会ったことがなかったから。
一体何をしているんだろう……。
「星を見に来ているのか?それならここより、星の庭へ行けばもっとよく見える」
「い、いえ……」
何と言ったらいいのだろうか。怪しくないのだと説明したいが、緊張して声が出にくい。
「好きなんです、あの…この時間の散歩が」
はっきりと表情は見えないが、首を傾げたような気がする。
「こんな時間に?屋敷は安全だが…いい趣味とは言えないな。痛くない腹を探られることになるかもしれないぞ」
ユリアは慌てて頭を下げた。
そうだ。ここは公爵家の屋敷。街や村のように気軽に行動していい場所ではない。
怪しい動きをしていると拘束されても文句は言えない。
「申し訳ありません。軽率でした。その……習慣で」
「夢遊病のような習慣だな」
「一人に……なりたくて。あの、もう、やめますので。どうかお許しください」
ヘルマンの顔色は読めない。そちらを向くこともできずに、ユリアは次の言葉を待った。
「私と一緒だな」
ヘルマンが指したところに、扉があった。使われていない古い扉だと思っていたら。
「そこは私の寝室と繋がっている。時々目が覚めると私もここへ足を運ぶ」
ヘルマンがくくっ、と笑った。
「まさか真横に、私に気づかず座り込む影があるとは思わなかったな」
「も、申し訳ありません」
情けない。こんなことで職を失うようなことになったら、後悔してもしきれない。
「心配するな」
心を読んだかのような言い回しだった。
「こんなことで暇を出したりはしない」
ヘルマンの影がすっと動いた。かと思ったら、目の前に膝をつき顎を取られる。
人との触れ合いを避けてきたが、不意打ちに避けられなかった。後ろに飛びのきそうになるのを必死で堪えた。
身近に整った顔が突然現れて、目が合う。
月の光でヘルマンの肌は際立って白く照らされている。冷たいほどの美貌だ。黒い髪が闇に溶け込みそうだ。これほど夜が似合う人をユリアは知らない。
ただそこにいるだけで圧迫感のある人、というのに会ったのは初めてだ。触れられているのに、不快感より前に体が硬直したように動かない。
銀に近いような青の瞳が、じっとこちらを見ていた。
「星を見上げていたものとは、別人のようだな。俺が怖いか?」
「い、いいえ…」
「そう怯えるな。名は……ああ、ユリアと言ったな」
「――はい」
知っているのか。少し驚いた。たかが雑用で雇われた自分のことを。
「ここには慣れたか?字が書ける者は貴重だからな。長く勤めてもらいたいと思っているが」
「こんなにいい働き場所は、初めてです」
嘘のない言葉だった。
――が。ヘルマン卿の手はまだユリアナを上向かせた顎にある。
「あ、あの…お手を…」
ヘルマンの手は冷たかった。外に出ていて冷えたのか、酒を飲んでいる人間とは思えない冷たさ。だから耐えられたのかもしれない。いつもならとうに吐いているだろうに、緊張し全身が鳥肌がたっている気はしたが吐きそうなことはなかった。
手が離れ、ほっとした――と思うと、その手は頬を包み込むように触れてきた。
ひっ、と言いそうになってヘルマンの顔を見るが、何を考えているのか。じっと観察するような視線を向けてくるだけだった。
なんと言えばいいのかわからず、固まったまま時間が過ぎる。
大きな手だった。そして意外にも固い。
その手はすっと離れていった。
しばらく沈黙が流れ、ユリアは勇気を出して声を絞り出した。
「夜分に、申し訳ありませんでした。僕、あの……私、これで失礼させていただきます」
ヘルマンは何を考えているのか読めない表情を向けた。
「ああ…」
ユリアは慌てて部屋へ戻る。
ヘルマンの視線を背後に感じていた。
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