あたたかな鳥籠を君に、優しい口づけをあなたに

サイ

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第2章

13.鏡

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 次の日は予定通り朝食後、古代遺跡へ向かった。
 馬車で向かったが、ヘルマンはずっとユリアを膝の上に乗せていた。
「お、重いですよね」
 気を遣って言うユリアにヘルマンはなんてことない、と言った。
「昨日のせいで、君のお尻が心配なんだ。こうしていれば少し楽だろう」
 確かにガタガタしなくて良かったので、大人しく乗っていることにした。
 古代遺跡には昼過ぎに着いた。
 一部は観光地化されて商店が立ち並んでいる。それらを見物して、遺跡の方へ進んだ。
 古代というだけあって、遺構がわずかに残っているだけ。あとは石を掘った部屋が並んでいるようだった。
 この前1人の時に歴史書を読んだが、長すぎて一部しか解らなかった。とにかくこの遺構は、数百年前の城の王朝の始祖とされているさらに千年以上遡った一族の遺構ということまでは、わかった。
「古代の巨大都市だな。文明を示すものは建築物がほとんどで、文字も残っていないんだが……」
 説明してくれながら奥へと進む。一般には公開されていない、公爵家が管理している部分だ。
「ここは、おそらく貴人の部屋だった、と言われている」
「へえ……」
 といっても、スペースがあるだけで、本当に何もない。
「あれが入り口、これがベッド、こっちが椅子、だったか」
「へえ……全部石で作っているんですね」
「この湿気が古代もあったのだとしたら、夏は過ごしやすいのかもな」
「なるほど」
 ユリアは身を乗り出して部屋をのぞき、ふとベッドと呼ばれた脇のくぼみを見つけた。
「ベッドの脇のあれは何でしょう」
「あそこには、鏡が敷かれていたのではないかと思われている。もう割れて撤去している」
「鏡……?壁ではなく、床に?」
「そうだな」
「なんでそんなところに……」
「さあ。それは諸説ある」
「へえ。気になりますね」
 ヘルマンは面白そうに笑った。
「――心当たりなら一つある」
「え、すごいですね。なんですか」
「そうだな。実際に敷いてみてその効果を見たらいいと思う。
 部屋に設置してみるということだろうか。
「そうと決まったら、帰ろうか」
「え?まだ来たところですよね」
「何か見たいものでもあるのか」
「ないですけど……せっかくなら、お土産と、ご当地のものを食べて帰りませんか」
 ヘルマンはいいだろう、と言ってくれた。
 ルイスにお土産を買って、現地のフルーツに色々詰めて焼いたグラタンの様なものを食べ、ちょっと変な組み合わせに気持ち悪くなったので休憩してから、帰路に就いた。
 そんなこんなで、城に着いたら結局夜になっている。
「――もう、夜ですね」
 予定では明日には公爵邸へ帰るつもりだ。
 最後の夜と思うと名残惜しい。



 夕食後ヘルマンの部屋に来るように言われていたので、一度自分に用意されていた部屋で寝衣に着替えてから向かった。
 ノックをして部屋に入ると、ヘルマンがベッドで手招きする。
 その足元には大きな鏡が敷いてあった。
「あ、敷いたんですね。こんなに大きな鏡、よくありましたね」
「衣装室の姿見を置いただけだ。上で暴れたら割れるから、気をつけなさい」
「暴れないですし、そもそも踏まないですよね」
 長方形で長い先がベッドの下に差し込むように置かれているので、よけて歩くのは難しくない。
 そうなるとますます用途はわからないが。
 ユリアはヘルマンの横に座った。
「こうしてみても…用途はわからないですね」
 鏡には天井が映っている。
 ヘルマンはふっと笑ってユリアの肩を抱き寄せた。
「じゃあ、やってみるか」
 やってみる?
「脱いでごらん」
「………………」
 ユリアは目を見開く。
「―――え?」
 ヘルマンはまた笑って、今度は脱ぐのを手伝ってくれる。
 慣れた手つきでズボンを下ろし、ちゅ、と時折キスをしながら脱がせるから、あれ、と思う間も無くあっという間に流されてしまった。
 唇を重ね、舌を絡め合えば、すぐに興奮して余計なことは気にならなくなる。
 ヘルマンもシャツの前を開け、ユリアと肌を合わせる。
 ヘルマンの全身への愛撫が始まるとユリアはただされるがままになるしかなかった。
 硬く大きな手が首筋、鎖骨から胸へと降り、追いかけるようにヘルマンの唇が首筋に触れる。首筋は本当に、くすぐったくて弱い。全身がわななくように震えてしまう。
 それをヘルマンは宥めるように手を滑らせ、そのまま舌も滑らせた。すぐに胸の突起にたどり着き、優しく刺激する。
 舌で転がすようにしたり、ねっとりと舐めとったり。
「ご主人様……そんなとこ……」
 次の瞬間、ヘルマンの歯が軽く突起に噛みついた。
 やんわりとした刺激に慣れていたそこは、急な刺激にびっくりする。痺れるような鋭い快感が、前と繋がっているかのようにびりびりと伝わる。かと思うと、吸われて、深い快感も呼び起こされるような。
 段々ともどかしくなってユリアはヘルマンの足に自分の足を絡めた。
 ヘルマンはそれへは足を動かして答え、空いた手でゆっくりと前を刺激する。
 ユリアのそこをひとしきり刺激し快感を与えて、先走りを掬い取りながら、後ろの窄まりへ手を伸ばした。
 昨日がちょっと衝撃的だっただけに、今日は普通なんだな、と頭のどこかで考える。
 ヘルマンはそんなユリアを見て笑った。
「ユリア。考え事か?」
「いえ……っわ!」
 押し倒され、ユリアだけベッドに仰向けになって膝を立てている。ヘルマンが足の間に入っているから、ヘルマンの前に足を開く体制になる。
「これは、恥ずかし……」
 ユリアが言い終えるより早く、ヘルマンはかがみ込んで、ユリアのそこを咥え込んだ。
 悲鳴をあげそうになって、それが矯声に変わりそうで、ユリアは必死で声を抑える。
 思いがけない、強烈な快感。
 濡れた舌が敏感な部分を覆い、強弱をつけて刺激する。
「ふう、う、うぅ……」
 初めてのことに、あまりの気持ちよさにくぐもった声しか出なかった。
 やがてヘルマンの指が、後孔にゆっくりと侵入する。
 ユリアは暴れそうになって、必死で思いとどまった。
 前の気持良さと、後ろの気持ちよさで目の前がチカチカする。
「あ、ごしゅ……、だめ、です。それ――」
 きっと何を言っても止まってくれない。わかっていたが、とんでもないことが起こりそうな予感があった。
 くぼみに沿うように舌を這わせ、敏感な先端の部分を吸うようにしてとがった舌が刺激する。最後はすっぽりと覆われて、少し強いくらいの刺激で舐め取られる。
 後ろは、前回で早くもユリアの弱い部分を見つけたのか、はじめからそこを刺激する。
 前のゆるりとした刺激と、後ろの突き上がる刺激。
「あ、だめ、だめだめ――!!」
 急激に快感を持ってこられたようで、ユリアはただ頭が真っ白になって達した。
 肩で息をするユリアから離れ、ヘルマンは口に放たれたそれを掌に出す。
「ユリア、立てるか?」
「は……い」
 まだ呼吸を整えながらも、ユリアは必死で返事をした。まだ頭は混乱している。
「ベッドに手をついて、ここに立ちなさい」
「え……」
 どうした、とヘルマンは尋ねる。
 ユリアの戸惑いをわかっているくせに。
「そこ……に、立つと、み、見えてしまいます」
「そうだな。割れるから、あまり暴れてはいけない」
 そうじゃなくて。
 ユリアが懇願するように見つめるので、ヘルマンはユリアの腰を抱いた。
 抱き寄せてくれるのかと思ったら、ずるりと引き下げられ、ベッド脇に立たされる。鏡の上だ。
「足を開きなさい」
「ご、ご主人様」
「ユリア」
 後ろから抱きしめられ、髪を横から前に流されて。あいた首筋に口づけをされる。
 聞き分けの悪い子を窘めるように。
「そっと、動かすんだ。ちゃんと立っていないと危ないからな」
 ユリアはがくがくと震えそうな膝を立たせた。
 耳元でヘルマンの低い声に囁かれると、どうしても逆らえない。
 恥ずかしくて見ていられなかった。かといって目をつぶることもできず、ユリアはベッドについた自分の手を見つめた。
 ヘルマンは掌に持っていた白濁の滑りを借りて、ユリアの後孔に再び侵入した。
「ふっ、うう……ん、んあっ」
 ヘルマンの指の動きに合わせて声が漏れてしまう。
 先ほど達したはずなのに、またすぐ、それより大きな波がやってくるようだ。
「ユリア、下を見なさい」
 ヘルマンが言うことに反射的に従ったものの、ぎょっとして体が固まる。
 自分の中に、ヘルマンの指が出入りしているところがしっかりと見えてしまった。しかもそこから、ぽたぽたといやらしく密があふれ零れ落ちている。
「――ふ、ユリア。そんなに締めて……早く入れてほしいか」
「ち、ちがっ、ご主人様、これは、恥ずかし――あぁっ!」
 ぐり、と中で指が回転し、強制的に熱を集められるような感覚。達しそうなのに、そこまでの刺激ではなくて、もどかしい。
「――力を抜きなさい。目は離すな」
 そう言ったかと思うと、そこにヘルマンのものがあてがわれた。
「え……う、うあ、あぁぁぁぁぁ!」
 昨日ほど慣らされていない中での、圧迫。突然の挿入にユリアは悲鳴を上げた。
 痛いわけではない。けれど、過ぎた快感がつらすぎるように、突然もたらされた刺激に頭がついて行かなかった。
 ヘルマンは一気に奥まで挿れた後は、そのままじっと動かずにいた。
「ユリア。ちゃんと見なさい」
 息も絶え絶えなユリアの腰を支え、もう片方の手でヘルマンはユリアの顔を下に向けさせた。
「――っく、ゆりあ。そんなに締めたら……」
 そんなことを言われても。鏡を見下ろせば、ヘルマンのものが自分の中に入っているのが、しっかりと見えてしまった。
「はっ、あ、あぁ、あぁっん」
 ヘルマンが動いていないのが分かっているのに。そこを見ているだけで、きゅうきゅうとそこを締め付けてしまう。その締め付ける様子すら、鏡で見えてしまう。
 僕のあそこは……なんて卑猥に、嫌らしく咥えこんでいたんだろう。
 そう思うともうたまらなかった。
 意識しないように、と思うのに、つい締めてしまう。締めるとヘルマンの存在感を感じて、より一層感じてしまう。その繰り返しを何度かしただけで、もう息は上がり、声も抑えられなかった。
「あ、あ、あ――」
「ユリア。こら……私は動いていないというのに。一人で勝手に締め付けて、気持ちよくなって……悪い子だ」
「そ、な……こと、言われても」
 ユリアは泣きそうになって、それでも視線を動かせなかった。釘付けになって、そこを見続けてしまう。
 ヘルマンはゆっくりと出し入れを開始した。
 抜かれるときも、入るときも、ゆっくりだから見えすぎるくらい見えてしまう。
 まるで必死に喰らいつくようにうごめくそこが、自分のものだとは到底信じられなかった。
 しかしもっと困惑するのは、それを見ることでさらに興奮してしまう自分自身にだった。
 恥ずかしくてたまらないはずなのに、それを見ろと言われ、興奮している。
 もうわけがわからなくなって、ユリアは悲鳴のような嬌声をあげた。
「ほら、そんなに早く締め付けたら……すぐに終わってしまう。ユリア……あまり堪え性がないようなら、前を縛っておかないといけないよ」
「あ、ああ、や、やぁぁぁ!」
「ああ、またそんなにびくびくと反応して。――可愛いユリア。もしかして、ずっといってるんじゃないか」
「や、も、わからな……ん、んん、あああ!」
 気持ち良すぎて、頭が真っ白になる。体全体にわたって気持ちいいのに、ヘルマンの動きが少しも止まらないから、もう立ってもいられなかった。
 ほとんど抱えられるようにしてヘルマンの動きに合わせて動かされている。
「中に……出すぞ」
 ヘルマンの唸るような声と、肩に軽く噛みつかれるように歯が当たり、ユリアは深くまで突かれ、熱いものを注がれて。
「ふ、ああ、あああ!!」
 気持ち良すぎて太ももが痙攣する。ユリアも前から白濁を放っていた。
 ずるりとヘルマンのものが抜かれ、その穴から、ポタポタとヘルマンの出したものが落ちてくる。
 穴はまだ余韻に震えながら、くぱ、と口を開けているようだった。
 ユリアは身震いした。
 気持ちいいやら、恥ずかしいやら。
 今回ばかりは幸せなど感じる間もなく、ただただ翻弄されて終わった気がした。
 ヘルマンはそんなユリアをそっと抱き直し、ベッドへと運ぶ。
 唖然としたままのユリアの額、瞼、頬、そして唇、と順番に口付けを繰り返した。
「ユリア。愛している」
 そうしてようやくユリアは満ち足りた気分になるのだった。
「少し……驚かせてしまったか。嫌だったか?」
「いや、というか……よくわかりません」
「だが、ちゃんと言うことを聞いてくれた。素晴らしかった。ユリア。ありがとう」
 あんなことで本当に喜んでいる様子のヘルマンに、ユリアはホッとするような、驚くような、複雑な気持ちだった。
 縛るとか、痛めつけるとかが一切ない。
 ヘルマンは自分の命令をユリアがどこまで聞くのか、慎重に見極めようとしているようだった。そして今までは全て従順にしてきた。
 恥ずかしくてたまらないが、嫌ではない。
 きっと嫌だと思ったら、ヘルマンはそれを察して命令を取り下げるかしないんじゃないだろうか。
 ユリアにはそう思える不思議な安心感があった。そしてその安心感が、ヘルマンに任せていればいいという絶対的な心地よさでもある。
「落ち着いたら、体を流そう。あまり長くとどめておくと腹を壊す」
 やんわりと下腹部を撫でれる。きゅん、と受け入れていたところが反応し、またたらりと後ろから出てくるものがあった。
 ヘルマンはユリアの髪を手櫛ですいてやりながら、落ち着くのを待った。


 落ち着いてくると、ユリアはどうしても疑問が湧き上がってくる。
「ご主人様……古代遺跡から鏡の話、嘘ですよね」
 そろそろお風呂に行こうかと思いヘルマンは準備をし始めていた。
「諸説ある」
「諸説って、ご主人様だけじゃないんですか」
「気づいたか」
 ヘルマンはふ、と声を出して笑った。
「昔の鏡は金属を磨いただけの代物だ。敷いたところでここまで鮮明には見えないだろう。飾りに敷いたんじゃないか」
 ユリアは返す言葉もなかった。
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