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第4話 常識が違いすぎる!お風呂も一苦労
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シンシア地区ボコレ村
毛皮の男の村だ。
村の入り口の脇には、【魔女撲滅運動実施中】 【魔女に人権無し】と書かれた壊れた看板が捨ててある。
行くところも頼る相手もいない真奈美は、しばらくこの男の家に厄介になることになった。
お風呂を借りると、体や着ていたもの靴に至るまで全て洗った。
当初、勧められるがまま初対面の男性宅で入浴するのには抵抗はあった。
とはいえ、そんな事言ってられる状態ではない。
「私、二時間ぐらい前まで、ホントはまだ公園にいたんだよね?⋯⋯はぁ。いったいこれからどうなっちゃうんだろ?」
想像に反して、4~5人は入れるのではないかという広い檜のお風呂。
ゆっくり湯に浸かると、今日一日のことを思い出す。
朝から大きなミスをし、途中で会社を帰らされた。
草原に放り出されたかと思えば、大きな人食いオオカミに追われて、気づいたら異世界にいる。
⋯⋯とんだ厄日だ。
いや、厄日なんて言葉で許していいのだろうか?
「私⋯⋯帰れるのかな?けど、帰っても⋯⋯仕事⋯⋯ツライな」
チャプンと小さな音を鳴らすと顔を鼻まで沈めた。
「お~い!姉ちゃん、手拭い置いとくぞ」
男は、髪を拭く為のタオルを持ってくる。
普段、自分は使わないのでいまいち女性の勝手がわからない。
とはいえ、なんとなく髪はタオルで拭いてから整えているという事は聞いていた。
「あっ、ありがとうございます。あの~、バスタオルも借りられると助かるんですが?」
「あん?バス⋯⋯なんだって?」
「⋯⋯バスタオルです」
「バス⋯⋯タ⋯⋯オル?なんだそれ?」
(はっ?)
最初は、軽いジョークだと、少しでも緊張を和らげようとしてくれているのだと真奈美は思った。
しかし、どうも様子がおかしい。
「えっと⋯⋯大きめのタオルの事です!」
「いや、だからタオルってなんだ?」
イラっ。
「じゃあ、大きい手拭いはありませんか?」
「⋯⋯そんなもん、何に使うんだ?」
はぁ?
「だから、体を拭きたいからです」
「はぁ?いや、そんなもん乾かせばいいだろ?」
どうも、話が噛み合わない。
「いや⋯⋯だから、少しでも早く乾かしたいから拭きたいんです!イジメないでくださいっ!!」
苛立ちを見せながら、声を抗える真奈美。
しかし、違和感を覚えていたのは男も一緒だった。
「おいおい。⋯⋯姉ちゃん、本当に自分で乾かせねえのか?」
小馬鹿にされている気がしてどうにも気分が悪い。
「自分で拭けますし、服だって干すことぐらいできますっ!その間の服も無いのでバスタオル貸してくださいっ!ドライヤーですぐ乾かしますから!」
もう、真奈美は泣きそうだ。
男も、頭を抱える。何を言ってるのかわからない。
しばらく考え込むと、フッと村に着いた直後の会話を思い出した。
(そういえば、この姉ちゃん二重の月を知らなかった。どこの国のガキンチョだって知っているような常識中の常識をだ。まさか⋯⋯)
「姉ちゃん、今すぐ服を着な」
男は、扉越しに優しく声をかける。
「だから、その服がないんですって」
「その濡れた服でいいから」
「ええっ?そんな事したら寒くて風邪引きますっ」
「んん?風なんて吹いてねぇし、寒いってなんだ?さっきから訳わかんねぇ事ばっかり。とにかく、着なって」
お世話になる以上、トラブルになる訳にはいかない真奈美は観念する。
「⋯⋯着ました」
ベタベタのブラウスは透けて肌にピッタリと張り付く。
スーツは想像以上に重く動けたものじゃない。
靴の中もベチャベチャで気持ち悪く、何より滑って仕方がなかった。
そして、濡れた服がどんどんどんどん真奈美の体温を奪っていく。
「一体どんな嫌がらせだよ」と、思いながら少しでもこの男を信じた自分を悔やみ始てしまう真奈美。
「じゃ、入るぞ」
「えっ?ちょ⋯⋯ちょっと!!」
男は、彼女の許可を待つことなく入っていく。
そして、その光景に目を丸くした。
「⋯⋯何やってんだ?」
「⋯⋯⋯⋯だから⋯⋯さむいんです」
彼女は、服を着たまま体操座りのようにして湯に浸かっていた。
そして、男をキッと睨む。
そんな視線など気にするそぶりも見せない男は構わず続ける。
「⋯⋯出てきな」
「嫌です」
男は、「はぁ~」と一つ溜息をつくと頭をポリポリ掻く。
「なぁ、姉ちゃん。別に何もしな⋯⋯いや、するけど、とにかく大丈夫だから。とりあえず、出てきなって。そのまま “ヤる” と風呂ん中えらい事になるんだからよぉ」
男は困り顔だが、彼女の表情はいっそう厳しくなる。
男は観念すると、両手を上げながら後ずさる。
「わかった。一度、風呂から出るから、姉ちゃんも一旦そこから出てきな。なっ?」
ようやくゆっくり出てくる真奈美。
しかし、警戒心は一切切らさない。
(何かしようとしたら、その股思い切り蹴り上げてやるから)
そう、固く心に決めていた。
男は再びゆっくりと近づく。
そして、彼女の両肩にそっと手を置くと静かに目を閉じた。
(このっ!!)
思い切り蹴り上げ体制に入る真奈美。
すると、男の両手がサーフライトを当てられたかのように赤く光りだした。
その途端。
熱く熱せられた鉄板に水を注いだかのような大きな音と共に、真奈美の身体中から水蒸気が吹き出す。と、共に蝕んできた寒さが何処かへ飛んでいった。
「乾いたろ?これでいいか?さっさと出るぞ。風呂場で使うと蒸してしょうがねぇ」
そう言うと、男はそそくさと出て行った。
「へっ?⋯⋯うそぉ?」
真奈美は、呆気に取られしばらく呆然としていた。
家の玄関先。
三段ほどの石の階段に男は座っていた。
右手にはビール瓶を持ち、大きく煽っている。
外は何やらガヤガヤと賑やかだ。
松明もあちらこちらに付けられ、先程とは比べ物にならないほど村は明るくなっていた。
カツーン カツーン
甲高いヒールの音がゆっくりと男の背後から近づいてくる。
「やっぱり、できねぇんだな」
男は振り返ることはせず話しかける。
「さっきのですか?」
真奈美は、ゆっくりと男の横に腰掛ける。
「手拭いと、櫛ありがとうございました」
返事の代わりだろう。目を合わせることなく男の左手が上がる。
「⋯⋯あんた、一体どんな家で育ったんだ?王宮とか余程いい環境で育ったか?それとも地下とか劣悪な環境で育ったか⋯⋯いや、最初、森で会った時は小綺麗だったからなぁ。後者はねぇか」
真奈美は、俯いたまま静かに口を開く。
しかし、どんな反応されるのか怖かった。
密入国?
不法侵入?
この国が、どんなルールになっているのかわからない。
隣国と戦争中なら、スパイ容疑もある。
「家は、ごくごく普通の家庭です。ただ、信じてもらえるかは分かりませんが、生まれはこの国ではありません」
「だろうな。さっきのは、この国の人間なら3歳ぐらいのクソガキでも当たり前に使うような基本中の基本のスキルだ。生活必需スキルで、もはや当たり前過ぎて名前すらないぐらいなんだよ」
どうやら、他国の人間である事は気にはしていない様子だ。
もっとも、他国ですらないのだが。
⋯⋯⋯⋯。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
暫し息の詰まる沈黙が流れる。
男にも思うところがあるのだろう。
「まぁ、できねぇもんはしょうがねぇ。また濡れて困ったり寒かったりしたら遠慮なく言いな!まぁ、その度に “玉” 蹴られたんじゃ堪らねぇけどな!」
深いしわを刻みながら、真奈美を見てニィと笑う。その表情は、どこか吹っ切れたような感じすらした。
「ごめんなさい。まさか、そんな事できるなんて知らなくて。けど、言葉選びは勉強した方がいいですよ。誤解しか生みません」
人差し指を立てながら注意する。
「ははは。女の扱いに慣れてなくてな!すまねえ。」
そう言うと、男は残ったビールを一気に飲み干した。
その男の表情や言動に、少し安堵する真奈美だった。
「おぉ!そういえば、暫くここに居るって言うんならそろそろ名前ぐらい教えといてもいいかもな。オレの名前は⋯⋯」
この男の名は《ザイラス》
自己紹介が遅れた理由は、すぐに去る相手には安全上名乗らない事にしているからと言うことだった。
この村には、色々な事情を抱えた人が流れてくるらしく、それは致し方無い事だった。
事実、ザイラス自身もこの村の出身ではなく、数年前に流れ着き住み着いた一人らしい。
「で、姉ちゃん、名は?」
「えっ?あっ⋯⋯真奈⋯⋯」
(⋯⋯ちょっと待って。ここが、異世界ならいっその事⋯⋯)
せっかくだから改名してみよう、前から一度源氏名とか付けてみたい!なんて思っていた真奈美。
思い切って自分に名前を付けてみる事にした。
えっと⋯⋯「え~~、マナ。マナです」
パッと思いついたのが結局本名とほとんど変わらない。
どうやら、脳みその瞬発力は低かったらしく、なかなか残念な女らしい。
「マナか。よし!マナ、景気づけに一杯やりに行くか?実は、今日この村は二重の月の祭りでよぉ」
「えっ?ホント??お世話になりますっ!!」
そう言うと、二人は夜の祭りに消えていった。
毛皮の男の村だ。
村の入り口の脇には、【魔女撲滅運動実施中】 【魔女に人権無し】と書かれた壊れた看板が捨ててある。
行くところも頼る相手もいない真奈美は、しばらくこの男の家に厄介になることになった。
お風呂を借りると、体や着ていたもの靴に至るまで全て洗った。
当初、勧められるがまま初対面の男性宅で入浴するのには抵抗はあった。
とはいえ、そんな事言ってられる状態ではない。
「私、二時間ぐらい前まで、ホントはまだ公園にいたんだよね?⋯⋯はぁ。いったいこれからどうなっちゃうんだろ?」
想像に反して、4~5人は入れるのではないかという広い檜のお風呂。
ゆっくり湯に浸かると、今日一日のことを思い出す。
朝から大きなミスをし、途中で会社を帰らされた。
草原に放り出されたかと思えば、大きな人食いオオカミに追われて、気づいたら異世界にいる。
⋯⋯とんだ厄日だ。
いや、厄日なんて言葉で許していいのだろうか?
「私⋯⋯帰れるのかな?けど、帰っても⋯⋯仕事⋯⋯ツライな」
チャプンと小さな音を鳴らすと顔を鼻まで沈めた。
「お~い!姉ちゃん、手拭い置いとくぞ」
男は、髪を拭く為のタオルを持ってくる。
普段、自分は使わないのでいまいち女性の勝手がわからない。
とはいえ、なんとなく髪はタオルで拭いてから整えているという事は聞いていた。
「あっ、ありがとうございます。あの~、バスタオルも借りられると助かるんですが?」
「あん?バス⋯⋯なんだって?」
「⋯⋯バスタオルです」
「バス⋯⋯タ⋯⋯オル?なんだそれ?」
(はっ?)
最初は、軽いジョークだと、少しでも緊張を和らげようとしてくれているのだと真奈美は思った。
しかし、どうも様子がおかしい。
「えっと⋯⋯大きめのタオルの事です!」
「いや、だからタオルってなんだ?」
イラっ。
「じゃあ、大きい手拭いはありませんか?」
「⋯⋯そんなもん、何に使うんだ?」
はぁ?
「だから、体を拭きたいからです」
「はぁ?いや、そんなもん乾かせばいいだろ?」
どうも、話が噛み合わない。
「いや⋯⋯だから、少しでも早く乾かしたいから拭きたいんです!イジメないでくださいっ!!」
苛立ちを見せながら、声を抗える真奈美。
しかし、違和感を覚えていたのは男も一緒だった。
「おいおい。⋯⋯姉ちゃん、本当に自分で乾かせねえのか?」
小馬鹿にされている気がしてどうにも気分が悪い。
「自分で拭けますし、服だって干すことぐらいできますっ!その間の服も無いのでバスタオル貸してくださいっ!ドライヤーですぐ乾かしますから!」
もう、真奈美は泣きそうだ。
男も、頭を抱える。何を言ってるのかわからない。
しばらく考え込むと、フッと村に着いた直後の会話を思い出した。
(そういえば、この姉ちゃん二重の月を知らなかった。どこの国のガキンチョだって知っているような常識中の常識をだ。まさか⋯⋯)
「姉ちゃん、今すぐ服を着な」
男は、扉越しに優しく声をかける。
「だから、その服がないんですって」
「その濡れた服でいいから」
「ええっ?そんな事したら寒くて風邪引きますっ」
「んん?風なんて吹いてねぇし、寒いってなんだ?さっきから訳わかんねぇ事ばっかり。とにかく、着なって」
お世話になる以上、トラブルになる訳にはいかない真奈美は観念する。
「⋯⋯着ました」
ベタベタのブラウスは透けて肌にピッタリと張り付く。
スーツは想像以上に重く動けたものじゃない。
靴の中もベチャベチャで気持ち悪く、何より滑って仕方がなかった。
そして、濡れた服がどんどんどんどん真奈美の体温を奪っていく。
「一体どんな嫌がらせだよ」と、思いながら少しでもこの男を信じた自分を悔やみ始てしまう真奈美。
「じゃ、入るぞ」
「えっ?ちょ⋯⋯ちょっと!!」
男は、彼女の許可を待つことなく入っていく。
そして、その光景に目を丸くした。
「⋯⋯何やってんだ?」
「⋯⋯⋯⋯だから⋯⋯さむいんです」
彼女は、服を着たまま体操座りのようにして湯に浸かっていた。
そして、男をキッと睨む。
そんな視線など気にするそぶりも見せない男は構わず続ける。
「⋯⋯出てきな」
「嫌です」
男は、「はぁ~」と一つ溜息をつくと頭をポリポリ掻く。
「なぁ、姉ちゃん。別に何もしな⋯⋯いや、するけど、とにかく大丈夫だから。とりあえず、出てきなって。そのまま “ヤる” と風呂ん中えらい事になるんだからよぉ」
男は困り顔だが、彼女の表情はいっそう厳しくなる。
男は観念すると、両手を上げながら後ずさる。
「わかった。一度、風呂から出るから、姉ちゃんも一旦そこから出てきな。なっ?」
ようやくゆっくり出てくる真奈美。
しかし、警戒心は一切切らさない。
(何かしようとしたら、その股思い切り蹴り上げてやるから)
そう、固く心に決めていた。
男は再びゆっくりと近づく。
そして、彼女の両肩にそっと手を置くと静かに目を閉じた。
(このっ!!)
思い切り蹴り上げ体制に入る真奈美。
すると、男の両手がサーフライトを当てられたかのように赤く光りだした。
その途端。
熱く熱せられた鉄板に水を注いだかのような大きな音と共に、真奈美の身体中から水蒸気が吹き出す。と、共に蝕んできた寒さが何処かへ飛んでいった。
「乾いたろ?これでいいか?さっさと出るぞ。風呂場で使うと蒸してしょうがねぇ」
そう言うと、男はそそくさと出て行った。
「へっ?⋯⋯うそぉ?」
真奈美は、呆気に取られしばらく呆然としていた。
家の玄関先。
三段ほどの石の階段に男は座っていた。
右手にはビール瓶を持ち、大きく煽っている。
外は何やらガヤガヤと賑やかだ。
松明もあちらこちらに付けられ、先程とは比べ物にならないほど村は明るくなっていた。
カツーン カツーン
甲高いヒールの音がゆっくりと男の背後から近づいてくる。
「やっぱり、できねぇんだな」
男は振り返ることはせず話しかける。
「さっきのですか?」
真奈美は、ゆっくりと男の横に腰掛ける。
「手拭いと、櫛ありがとうございました」
返事の代わりだろう。目を合わせることなく男の左手が上がる。
「⋯⋯あんた、一体どんな家で育ったんだ?王宮とか余程いい環境で育ったか?それとも地下とか劣悪な環境で育ったか⋯⋯いや、最初、森で会った時は小綺麗だったからなぁ。後者はねぇか」
真奈美は、俯いたまま静かに口を開く。
しかし、どんな反応されるのか怖かった。
密入国?
不法侵入?
この国が、どんなルールになっているのかわからない。
隣国と戦争中なら、スパイ容疑もある。
「家は、ごくごく普通の家庭です。ただ、信じてもらえるかは分かりませんが、生まれはこの国ではありません」
「だろうな。さっきのは、この国の人間なら3歳ぐらいのクソガキでも当たり前に使うような基本中の基本のスキルだ。生活必需スキルで、もはや当たり前過ぎて名前すらないぐらいなんだよ」
どうやら、他国の人間である事は気にはしていない様子だ。
もっとも、他国ですらないのだが。
⋯⋯⋯⋯。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
暫し息の詰まる沈黙が流れる。
男にも思うところがあるのだろう。
「まぁ、できねぇもんはしょうがねぇ。また濡れて困ったり寒かったりしたら遠慮なく言いな!まぁ、その度に “玉” 蹴られたんじゃ堪らねぇけどな!」
深いしわを刻みながら、真奈美を見てニィと笑う。その表情は、どこか吹っ切れたような感じすらした。
「ごめんなさい。まさか、そんな事できるなんて知らなくて。けど、言葉選びは勉強した方がいいですよ。誤解しか生みません」
人差し指を立てながら注意する。
「ははは。女の扱いに慣れてなくてな!すまねえ。」
そう言うと、男は残ったビールを一気に飲み干した。
その男の表情や言動に、少し安堵する真奈美だった。
「おぉ!そういえば、暫くここに居るって言うんならそろそろ名前ぐらい教えといてもいいかもな。オレの名前は⋯⋯」
この男の名は《ザイラス》
自己紹介が遅れた理由は、すぐに去る相手には安全上名乗らない事にしているからと言うことだった。
この村には、色々な事情を抱えた人が流れてくるらしく、それは致し方無い事だった。
事実、ザイラス自身もこの村の出身ではなく、数年前に流れ着き住み着いた一人らしい。
「で、姉ちゃん、名は?」
「えっ?あっ⋯⋯真奈⋯⋯」
(⋯⋯ちょっと待って。ここが、異世界ならいっその事⋯⋯)
せっかくだから改名してみよう、前から一度源氏名とか付けてみたい!なんて思っていた真奈美。
思い切って自分に名前を付けてみる事にした。
えっと⋯⋯「え~~、マナ。マナです」
パッと思いついたのが結局本名とほとんど変わらない。
どうやら、脳みその瞬発力は低かったらしく、なかなか残念な女らしい。
「マナか。よし!マナ、景気づけに一杯やりに行くか?実は、今日この村は二重の月の祭りでよぉ」
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