転生した鍛冶師の娘  〜鍛冶師の常識?それって何?〜

ルカ

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#27

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「ねぇ……ユウキさん、なんだか少し……感じませんか?」

薄暗い一本道の中、ポピィがポツリと呟く。

「お前も気づいたか?ーーこの魔気……ただ事じゃねえなーー」

眉をひそめるユウキ……と、ポピィはーー。

「はい……私も今気づきましたーースライムちゃんが…………私の代わりに武器を持って警戒してくれている事にーー」

「そうだな……スライムが武器を持ってーーん……?スライム?」

と、後方を振り返るとそこには、ポピィの短剣を持ったスライムがいたーー。

「…………お前何やってんだよ?」

「にゅにゅい(ボクも守る!)」

意気揚々と、短剣を高らかに掲げるスライム。

その姿に、セシリアは感嘆の声を漏らす。

「さっきからずっと思っていたのですが……ポピィさんってすごいんですね~!《魔物使い》なんですか?」

ポピィはふるふる、と首を振り。

「ううん、鍛冶師だよ~?」

「え……?か、鍛冶師……ですか?なんで……スライムが一緒に?というか……なんで鍛冶師さんがこんな所に?」

色々複雑な事情があるのだ……と、目で訴えかけるように苦笑いするポピィ。

「う~ん…………まあ、その辺はおいおいにしておいて…………頑張って!スライムちゃん!!」

グッと両手でガッツポーズをとるポピィに、敬礼するスライム。

「はぁ~……お前ら、おままごとじゃねえんだから……」

そんな様子を呆れ顔で眺めるユウキであった……。



……………………。



迷路と言うにはあまりに面白味のない一本道を一時間程歩いた後、少しばかりの休息を取る。

当初反対していたセシリアだったがーー、

「すみません、私のために足を止めてしまって……」

ずっと何も食べていないだろうと推測した、ユウキによる粋な計らいであった。

そんな二人のすぐ側ではスライムが短剣を振り回して、素振りの練習をしていた。

そんな中ポピィはーー、

カンカンッーー、カンカンッーー

鉄をバーナーで炙り、金槌で叩いて直していたーー。

「すげぇな……こんな所でも武器って直せるものなのか?」

今ポピィが治しているのは、セシリアの防護服に仕込まれている鉄だ。

「ふっふ~ん!これでも鍛冶師なので当然です!加熱するだけですぐに加工できるスズを持ち歩いているから、応急処置くらいならいつでもできますよ!」

軽快に答え、グッと親指を立てるポピィ。

そんな姿を見て感嘆するセシリアだったーー。

「すみませんポピィさんーーまさか防護服の仕込み版がこんなに傷んでいただなんて気がつかなくて……って言うか……すごい……!えっ、そんな……《ステータス付与》が付いてる……しかもこんなに……え?」

「あ~こいつ確か凄腕鍛冶師ーーすげぇ!?何この防護服ーー!?普通に王都とかで一流騎士がドワーフに作ってもらうレベルの出来じゃね!?」

「ふふ~ん♪お祖父ちゃんにも教わった鍛冶術なので当~前!」

あまりのべた褒めに、ちょっと調子にのるポピィ。

しかし確かにその出来具合は、即興と言っていいレベルを遥かに超えていたーー。



……………………。



「そうですか……知らなかったとはいえ、ほとんどのモンスターを倒してしまいすみません……」

「それじゃあ、やっぱりB3階層以降にモンスターがいなかったのって?」

少しの休憩の後、ユウキはセシリアにこの事態が起きた事情を聞いていた……。

「本当は軽い調整のつもりだったんです……B5階層までたどり着いて、特に問題もなかったから帰ろうとしたら、地下への入り口が開いて……ちょっとだけ様子を見に行くつもりだったんですが、行き止まりだったので帰ろうとしたら……」

「そのまま落ちてったーーって訳ね」

再びコクリ、と小さく頷く。

「でもここって〝茶のダンジョン〟ーーなんですよね?こんな所があったら普通〝色付け〟の騎士さん達が気付くんじゃないですか?」

ポピィのその返答に、重苦しい空気で答えるユウキだったーー。

「確かに……な。〝普通〟じゃあありえない事が起こっているーー。今まで誰も気が付かなかっただけか、〝気づいた奴全員〟帰・っ・て・来・な・か・っ・た・だけかーー」

その一言にゾッとするポピィとセシリア。

「皆さん……無事……でしょうか?」

歩きながら、小刻みに震えるセシリア。

「さあな……生きている、なんて無責任な事は言えねえ……でもなセシリアーー」

ユウキはセシリアに向かって真剣な眼差しを向ける。

「お前がそいつらを信じねぇで、誰が信じるんだ?」

その言葉にハッーーとするセシリア。

「珍しくユウキさんがまともな事言ってる…………」

「…………何か言ったか?」

サッーー、とスライムを盾に隠れるポピィ。

そしてしばらくの沈黙の後、セシリアにわずかばかりの光が灯る。

「そう……ですね、私が……あの人達の所に行かなくちゃーー」

グッと握り拳に力を込める。

「お願いします!わたしを……皆さんの元に連れて行ってください!」

そう深々と頭を下げ、懇願するセシリアだったーー。
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