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第4章:市場の熱狂、レルナ村の夜明け
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収穫したヴェリーナは、まだ数が少なかった。まずは、この奇跡の味を村の人々に知ってもらう必要がある。私は収穫したヴェリーナの半分を、村で一番協力的だったエリオット村長と、なんだかんだ言いながらも私を気にかけてくれていたカイルに渡した。
「……なんだ、こりゃ。宝石か?」
カイルは金紅色のヴェリーナをまじまじと見つめ、その美しさに目を奪われている。
「食べてみてください。私の、努力の結晶です」
二人は半信半疑でヴェリーナを口にした。その瞬間、彼らの顔が驚愕に染まる。
「こ、これは……! なんだこの美味さは!? こんな果物、生まれてこの方、一度も食ったことがない!」
「信じられん……。アメリアさん、君は一体、何者なんだ……?」
村長の目には、畏敬の色さえ浮かんでいた。
彼らの反応を見て、私は計画の次の段階に移ることにした。残りのヴェリーナを持って、数日に一度開かれるレルナ村の小さな市場へ向かった。
ゴザの上にヴェリーナを並べると、その異様な美しさに村人たちが足を止める。
「なんだい、この綺麗な実は」
「売り物かい? いくらだ?」
私は笑顔で試食を勧めた。一口食べた人々は、皆、カイルたちと同じ反応を示した。
「うめぇ!」「こんなの初めてだ!」「一つくれ!」
あっという間に人だかりができ、私が持ってきたヴェリーナは即座に完売した。値段は、この村の物価を考えればかなり高く設定したにもかかわらず、だ。
そして、幸運が重なった。その日、偶然にも王都から来たという一人の行商人が市場を訪れていたのだ。彼は食通で知られる貴族に商品を卸しているらしく、噂を聞きつけて私の元へやってきた。
「お嬢さん、その不思議な果実を一つ、私に売っていただけませんか?」
私は最後の一つを彼に売った。彼はその場でヴェリーナを味わい、その場で天を仰いだ。
「……神よ。私は今日、至上の味に出会った。お嬢さん、この果物は一体どこで!? なんという名前なのですか!?」
私はにっこりと微笑んだ。
「ヴェリーナ、と申します。このレルナ村だけで採れる、特別な果実ですわ」
その行商人は、ヴェリーナの価値を瞬時に理解したのだろう。彼は目を輝かせ、必ずまた来ると約束して慌ただしく帰って行った。
この出来事を境に、レルナ村の雰囲気は一変した。
「アメリアさん! 俺にもあのヴェリーナってやつ、作らせてくれ!」
カイルが先頭に立って、村の若者たちが私の元に集まってきたのだ。彼らの目は、以前の覇気のないものではなく、希望と熱意に満ち溢れていた。農業なんて儲からない、つまらない仕事だと思っていた彼らが、ヴェリーナの可能性に目覚めたのだ。
「もちろん。ただし、私のやり方に従っていただきます。これは、ただ植えれば育つような簡単なものではありませんから」
私は彼らに土壌改良の技術、水やりのタイミング、そして何よりもヴェリーナという作物を慈しむ心を教え込んだ。最初は戸惑っていた若者たちも、私の的確な指示と情熱に引き込まれ、真剣に農業に取り組むようになった。
痩せこけていたレルナ村の畑が、次々と緑に覆われていく。それは、村の未来が明るく色づいていく様を見ているようだった。
王都から追放されたあの日、私は全てを失ったと思っていた。
だが今、私は新しい仲間と、希望という名の果実を手に入れた。
レルナ村の、そして私自身の夜明けは、もうすぐそこまで来ていた。
「……なんだ、こりゃ。宝石か?」
カイルは金紅色のヴェリーナをまじまじと見つめ、その美しさに目を奪われている。
「食べてみてください。私の、努力の結晶です」
二人は半信半疑でヴェリーナを口にした。その瞬間、彼らの顔が驚愕に染まる。
「こ、これは……! なんだこの美味さは!? こんな果物、生まれてこの方、一度も食ったことがない!」
「信じられん……。アメリアさん、君は一体、何者なんだ……?」
村長の目には、畏敬の色さえ浮かんでいた。
彼らの反応を見て、私は計画の次の段階に移ることにした。残りのヴェリーナを持って、数日に一度開かれるレルナ村の小さな市場へ向かった。
ゴザの上にヴェリーナを並べると、その異様な美しさに村人たちが足を止める。
「なんだい、この綺麗な実は」
「売り物かい? いくらだ?」
私は笑顔で試食を勧めた。一口食べた人々は、皆、カイルたちと同じ反応を示した。
「うめぇ!」「こんなの初めてだ!」「一つくれ!」
あっという間に人だかりができ、私が持ってきたヴェリーナは即座に完売した。値段は、この村の物価を考えればかなり高く設定したにもかかわらず、だ。
そして、幸運が重なった。その日、偶然にも王都から来たという一人の行商人が市場を訪れていたのだ。彼は食通で知られる貴族に商品を卸しているらしく、噂を聞きつけて私の元へやってきた。
「お嬢さん、その不思議な果実を一つ、私に売っていただけませんか?」
私は最後の一つを彼に売った。彼はその場でヴェリーナを味わい、その場で天を仰いだ。
「……神よ。私は今日、至上の味に出会った。お嬢さん、この果物は一体どこで!? なんという名前なのですか!?」
私はにっこりと微笑んだ。
「ヴェリーナ、と申します。このレルナ村だけで採れる、特別な果実ですわ」
その行商人は、ヴェリーナの価値を瞬時に理解したのだろう。彼は目を輝かせ、必ずまた来ると約束して慌ただしく帰って行った。
この出来事を境に、レルナ村の雰囲気は一変した。
「アメリアさん! 俺にもあのヴェリーナってやつ、作らせてくれ!」
カイルが先頭に立って、村の若者たちが私の元に集まってきたのだ。彼らの目は、以前の覇気のないものではなく、希望と熱意に満ち溢れていた。農業なんて儲からない、つまらない仕事だと思っていた彼らが、ヴェリーナの可能性に目覚めたのだ。
「もちろん。ただし、私のやり方に従っていただきます。これは、ただ植えれば育つような簡単なものではありませんから」
私は彼らに土壌改良の技術、水やりのタイミング、そして何よりもヴェリーナという作物を慈しむ心を教え込んだ。最初は戸惑っていた若者たちも、私の的確な指示と情熱に引き込まれ、真剣に農業に取り組むようになった。
痩せこけていたレルナ村の畑が、次々と緑に覆われていく。それは、村の未来が明るく色づいていく様を見ているようだった。
王都から追放されたあの日、私は全てを失ったと思っていた。
だが今、私は新しい仲間と、希望という名の果実を手に入れた。
レルナ村の、そして私自身の夜明けは、もうすぐそこまで来ていた。
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