16 / 17
番外編3:『恵みの皿』は今日も大繁盛!
しおりを挟む
女王リナが、時々お忍びで厨房に立つ。それは、フロンティア国の国民の間では、公然の秘密となっていた。
その日も、『恵みの皿』は開店と同時に満席だった。
「女王様、いや、リナシェフ!今日は新作デザート、あるかい!?」
店のカウンター席で、ドワーフのギルが大きな声で尋ねる。
「ふふ、もちろんよ、ギルさん。今日はとっておきがあるんだから」
エプロン姿のリナは、悪戯っぽく笑った。女王の威厳はどこへやら、彼女はここでは一人の料理人だ。
そこへ、店の扉が勢いよく開いた。
「リナさーん!すんげぇ珍しいもん、手に入れてきたぜ!」
獣人のモコが、怪しげな木箱を抱えて駆け込んでくる。箱の中には、南の島でしか採れないという、虹色に輝くベリーが入っていた。
「まあ、なんて綺麗なの!これは……酸味と甘みのバランスが絶妙ね。パイにしたら最高かも!」
リナの目が、料理人としてキラキラと輝きだす。
店の隅のテーブルでは、エルフのシルが、数種類のハーブティーをテイスティングしていた。
「うん。この虹色ベリーの香りには、ミントよりもレモンバームの方が合うだろうね。後味を爽やかにしてくれる」
「さすがシルさん!じゃあ、パイ生地に少し練り込んでみようかしら」
リナは早速、シルやモコと新しいレシピの相談を始める。
そんな活気あふれる店の一角を、夫となったレオンが、客に紛れて静かに見守っていた。彼は用心棒と称して、いつも妻の一番近くにいるのだ。
常連客たちが、レオンに気さくに話しかける。
「旦那様も大変だなあ。うちのかかあも、料理に夢中になると周りが見えなくなるんだ」
「ははは。だが、あんなに楽しそうな女王様を見られるのは、俺たちの誇りですよ」
レオンは何も言わず、ただ小さく頷いた。その口元には、優しい笑みが浮かんでいる。
やがて、リナの新作デザート『幸せの虹色ベリーパイ』が焼き上がった。
サクサクの生地に、甘酸っぱいベリーのクリームがとろり。一口食べれば、誰もが幸せな溜息を漏らす。
「「「うまい!!」」」
店中に、ギルやモコ、そして客たちの歓声が響き渡った。
その笑い声を聞きながら、リナは心から思う。
(ああ、ここが私の原点。私の、一番好きな場所)
仲間たちの笑い声と、美味しい料理の匂いに包まれて、女王は今日も、世界で一番の幸せを噛みしめるのだった。
その日も、『恵みの皿』は開店と同時に満席だった。
「女王様、いや、リナシェフ!今日は新作デザート、あるかい!?」
店のカウンター席で、ドワーフのギルが大きな声で尋ねる。
「ふふ、もちろんよ、ギルさん。今日はとっておきがあるんだから」
エプロン姿のリナは、悪戯っぽく笑った。女王の威厳はどこへやら、彼女はここでは一人の料理人だ。
そこへ、店の扉が勢いよく開いた。
「リナさーん!すんげぇ珍しいもん、手に入れてきたぜ!」
獣人のモコが、怪しげな木箱を抱えて駆け込んでくる。箱の中には、南の島でしか採れないという、虹色に輝くベリーが入っていた。
「まあ、なんて綺麗なの!これは……酸味と甘みのバランスが絶妙ね。パイにしたら最高かも!」
リナの目が、料理人としてキラキラと輝きだす。
店の隅のテーブルでは、エルフのシルが、数種類のハーブティーをテイスティングしていた。
「うん。この虹色ベリーの香りには、ミントよりもレモンバームの方が合うだろうね。後味を爽やかにしてくれる」
「さすがシルさん!じゃあ、パイ生地に少し練り込んでみようかしら」
リナは早速、シルやモコと新しいレシピの相談を始める。
そんな活気あふれる店の一角を、夫となったレオンが、客に紛れて静かに見守っていた。彼は用心棒と称して、いつも妻の一番近くにいるのだ。
常連客たちが、レオンに気さくに話しかける。
「旦那様も大変だなあ。うちのかかあも、料理に夢中になると周りが見えなくなるんだ」
「ははは。だが、あんなに楽しそうな女王様を見られるのは、俺たちの誇りですよ」
レオンは何も言わず、ただ小さく頷いた。その口元には、優しい笑みが浮かんでいる。
やがて、リナの新作デザート『幸せの虹色ベリーパイ』が焼き上がった。
サクサクの生地に、甘酸っぱいベリーのクリームがとろり。一口食べれば、誰もが幸せな溜息を漏らす。
「「「うまい!!」」」
店中に、ギルやモコ、そして客たちの歓声が響き渡った。
その笑い声を聞きながら、リナは心から思う。
(ああ、ここが私の原点。私の、一番好きな場所)
仲間たちの笑い声と、美味しい料理の匂いに包まれて、女王は今日も、世界で一番の幸せを噛みしめるのだった。
408
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢発溺愛幼女着
みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」
わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。
響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。
わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。
冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。
どうして。
誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。
醜貌の聖女と呼ばれ、婚約破棄されましたが、実は本物の聖女でした
きまま
恋愛
王国の夜会で、第一王子のレオンハルトから婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リリエル・アルヴァリア。
顔を銀の仮面で隠していることから『醜貌の聖女』と嘲られ、不要と切り捨てられた彼女は、そのまま王城を追われることになる。
しかし、その後に待ち受ける国の運命は滅亡へと向かっていた——
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
悪役令嬢の私、計画通り追放されました ~無能な婚約者と傾国の未来を捨てて、隣国で大商人になります~
希羽
恋愛
「ええ、喜んで国を去りましょう。――全て、私の計算通りですわ」
才色兼備と謳われた公爵令嬢セラフィーナは、卒業パーティーの場で、婚約者である王子から婚約破棄を突きつけられる。聖女を虐げた「悪役令嬢」として、満座の中で断罪される彼女。
しかし、その顔に悲壮感はない。むしろ、彼女は内心でほくそ笑んでいた――『計画通り』と。
無能な婚約者と、沈みゆく国の未来をとうに見限っていた彼女にとって、自ら悪役の汚名を着て国を追われることこそが、完璧なシナリオだったのだ。
莫大な手切れ金を手に、自由都市で商人『セーラ』として第二の人生を歩み始めた彼女。その類まれなる才覚は、やがて大陸の経済を揺るがすほどの渦を巻き起こしていく。
一方、有能な彼女を失った祖国は坂道を転がるように没落。愚かな元婚約者たちが、彼女の真価に気づき後悔した時、物語は最高のカタルシスを迎える――。
【読切短編】婚約破棄された令嬢ですが、帳簿があれば辺境でも無双できます ~追い出した公爵家は、私がいないと破産するらしい~
Lihito
ファンタジー
公爵令嬢アイリスは、身に覚えのない罪で婚約破棄され、辺境へ追放された。
だが彼女には秘密がある。
前世は経理OL。そして今世では、物や土地の「価値」が数字で見える能力を持っていた。
公爵家の帳簿を一手に管理していたのは、実は彼女。
追い出した側は、それを知らない。
「三ヶ月で破産すると思うけど……まあ、私には関係ないわね」
荒れ果てた辺境領。誰も気づかなかった資源。無口な護衛騎士。
アイリスは数字を武器に、この土地を立て直すことを決意する。
これは、一人の令嬢が「価値」を証明する物語。
——追い出したこと、後悔させてあげる。
追放された落ちこぼれ令嬢ですが、氷血公爵様と辺境でスローライフを始めたら、天性の才能で領地がとんでもないことになっちゃいました!!
六角
恋愛
「君は公爵夫人に相応しくない」――王太子から突然婚約破棄を告げられた令嬢リナ。濡れ衣を着せられ、悪女の烙印を押された彼女が追放された先は、"氷血公爵"と恐れられるアレクシスが治める極寒の辺境領地だった。
家族にも見捨てられ、絶望の淵に立たされたリナだったが、彼女には秘密があった。それは、前世の知識と、誰にも真似できない天性の《領地経営》の才能!
「ここなら、自由に生きられるかもしれない」
活気のない領地に、リナは次々と革命を起こしていく。寂れた市場は活気あふれる商業区へ、痩せた土地は黄金色の麦畑へ。彼女の魔法のような手腕に、最初は冷ややかだった領民たちも、そして氷のように冷たいはずのアレクシスも、次第に心を溶かされていく。
「リナ、君は私の領地だけの女神ではない。……私だけの、女神だ」
地味で役に立たないと言われて捨てられましたが、王弟殿下のお相手としては最適だったようです
有賀冬馬
恋愛
「君は地味で、将来の役に立たない」
そう言われ、幼なじみの婚約者にあっさり捨てられた侯爵令嬢の私。
社交界でも忘れ去られ、同情だけを向けられる日々の中、私は王宮の文官補佐として働き始める。
そこで出会ったのは、権力争いを嫌う変わり者の王弟殿下。
過去も噂も問わず、ただ仕事だけを見て評価してくれる彼の隣で、私は静かに居場所を見つけていく。
そして暴かれる不正。転落していく元婚約者。
「君が隣にいない宮廷は退屈だ」
これは、選ばれなかった私が、必要とされる私になる物語。
「華がない」と婚約破棄されたけど、冷徹宰相の恋人として帰ってきたら……
有賀冬馬
恋愛
「貴族の妻にはもっと華やかさが必要なんだ」
そんな言葉で、あっさり私を捨てたラウル。
涙でくしゃくしゃの毎日……だけど、そんな私に声をかけてくれたのは、誰もが恐れる冷徹宰相ゼノ様だった。
気がつけば、彼の側近として活躍し、やがては恋人に――!
数年後、舞踏会で土下座してきたラウルに、私は静かに言う。
「あなたが捨てたのは、私じゃなくて未来だったのね」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる