帰還のヘルズゲート

生獣屋 芽怠

文字の大きさ
11 / 23

第10話 訪問者

しおりを挟む

  休日の朝はどうして機嫌が良くなるのかな? いっぱい寝れるから? 今日は何をしようかワクワクするから?
 早朝、世界は光で満ちていく。そんな中、私、皆川真は目が覚めた。

「う~ん……今何時?」

 ベットの上で時を刻んでいた時計は私の手の中に包まれ、時を知らせる。

「何だ、まだ、六時じゃないか……」

 予想外の時間にホッとする。いつも家では休日だろうと、七時半に起きる事になってる。ママが休みだからと寝ていたらだらけてしまうから駄目だと言うのだ。
 さて、つまり後一時間三十分も時間があると言う訳だ。何故かその時間が嬉しくって仕方ない。

「もうちょっと寝れるぅ……クゥ~」

 何処の場所が居心地が良いと聞かれたら、私は迷わず布団の中と答えるだろう。我ながら変だ。そう言えば中学の時そう言ったら笑われたっけ。

「ん……んん?」

 あれ? 変な感じがする。
 誰かもう一人布団に入っている、そんな感じ。

「あれ、……ん? 何?」

 変な感じの方向へと手を伸ばす。すると手は何かに当たる。
 何これ? 柔らかくて、温かくて、人間みたいな物体?
 はっとする、すぐに目を見開いた、それは目の前にいた。

「おはようございます、お久し振りです!」

 誰かがいた。

「きゃあああああああああああああああ!」

 勢いよく布団を吹き飛ばしながら起き上がった。

「な、何してんの、って言うか、何で一緒に寝てるのよ!」

 そこに居たのは知った顔、ルベスさんだった。彼はにこやかに微笑んだ。

「真、朝から元気ですね!」

「誰のせいよ!」

「ふふふ、怒らないで下さいよ。それにしても、真の寝顔、とってもキュートでしたよ!」

「こ、このバカー!」

 腹に一発正拳突きを食らわせる。見事にミゾにはまり、顔を真っ青にしながら苦しんでいた。さすがにつらいみたいだ。ざま見ろ!

「どうしてくれるのよ! 目が覚めちゃったじゃない!」

「良いじゃないですか! 早起きは何とかの得って言いますよ!」

「これは早起きじゃなくて、早起こされよ! ああもう! 許さない、私の祝福の時を邪魔して!」

 そう言うと彼に飛び掛かった。

「痛い、痛いですよ~!」と叫んでいたけど気にせず続ける。
 彼の服は乱れ様がお構いなくだった。こいつの髪の毛を引っ張る。

「ハゲます、ハゲちゃいます~!」

 ふん、こいつめ、ハゲてしまえ! 私は彼に跨がり、髪の毛を強く引っ張る。すると彼は痛がりながら何故かニヤニヤしている。気持ち悪いな。

「これは、なかなかヤバイですね~! いろんな意味で」

 その時、下の階から足音が近付いて来る。そして、部屋のドアが勢いよく開いた。

「まことさん! どうかしましたか!」

 ママの登場だ。丁度良かった、この変態を退治してもらおうかなって、ってあれ? ママは動かなかった。いや、私達を見て固まっているんだ。
 どうしたのかな?

「ま、まことさん……何しているの?」

「へ?」

「すごい展開になりそうですね!」

 えっと私は、こいつに跨がっていて、こいつの服を掴み、はだけさせている。
 この状況って、つまり? しばらくの沈黙の後、私は理解する。
 これって、まるで私が彼を襲ってるみたい。

「ひゃあ! ち、違う、ママ違うの!」

「何が違うんですか? まことさん、あなたには峻さんが居るはずなのに……まさかそんな事を!」

 そんな事って、どんな事?

「ち、違うの! こいつが悪いの! 私は何も悪くない!」

 あれやこれやと言い訳を放つが、無意味だと知っている私がいた。

「モンドウムヨウです!」

「待って、グーはやめて……へ? 今日はもっとひどい?」

「にゃはははは~」

 こいつはゲラゲラと爆笑しているし、ママは睨みをきかせながら怒るし。私は……。

「ぎゃああああああああ!」

 吠えていた。





 ママのお仕置が終わり、彼が事情を話した。何とか色々誤魔化しながら納得させママを退室させる。
 良く納得させられたね? そこは感心するよ。

「それで? 何か用なんでしょ?」

「いえ別に、ただの暇潰しです!」

「出ていけーー!」

 力一杯腹の底から叫んだ。何だその理由は! そんな事のために私の幸福の時を邪魔したのか!
 何だかまた腹が立って来たよ。

「嘘ですよ、虚実ですよ!」

 疲れる。この人といると疲れ果ててしまうよ。もう分かったから、なんで来たのかを問い掛けた。

「いやですね、あなたはどんな人か、どんな日常を送っているのか、知りたいと思いましてね」

「それはどういう事?」

「オホン、つまりですね、本来ヘルズゲートは普通の人間が見てはならないのです。この世界と向こうの世界には、その世界の秩序があります……秩序ってわかります?」

「馬鹿にして、それくらい分かるわよ! いいから話の続きしてくれる?」

「おや、怒らせてしまいましたね。申し訳ありません、は何もの続きをしますね? こほん、向こうの世界のものがこちらに現れるのは、普通有り得ません。それを見てしまったあなたはどんな人間か、前に見せていただきました」

 そっか、そうだよね、普通知らない事を知っている人間って、どんな奴か見たくなるよね。

「あなたは秩序を乱すか、乱さないか……そこを見ました」

「そ、それで? 私はどうなの?」

「答えは前回、伝えましたよ?」

 前回? 何か言ったっけ?

「私は、あなたに惚れたと。あなたは素晴らしい人間です。私が保証しますよ! 今日私が来たのは、あなたに自分の立場を忘れないで欲しいからです。知らない事を知っている人間……言うなれば異端なる存在。秩序を狂わせてしまう可能性があります。……難しい話ですね、簡単に言うと、知らない事を知っているから、世界のルールを壊さないようにって話ですよ」

 世界のルールに従って行動しろって事ね。彼はそれだけですよと笑って語っていた。

「あの……壊すってどうやって?」

「さぁ? 私の話は、心得って事ですよ! そのうえで、これからを過ごしてください」

「はぁ……」

 彼の真面目な話は何となく言いたい事が分かった。
 特別な状況の私は、異端だと言う事。それを忘れるなって事何だと。

 世界のルールに従って行動しろって事ね。彼はそれだけですよと笑って語っていた。

「さて、これからどうしましょうか?」

 これからって帰らないつもりなの? はぁ、もう少し寝たかったけどもう起きる時間だ。

「一緒にお風呂入りますか?」

「アホ! バカ! スケベ!」

「何ですか、冷たいですね~」

 本当、話してたら、頭痛くなるよ。
 何だか身体の力が抜けていく感じがした。いや、実際に抜けていると思うよ。そんな中、ルベスは妙な事を言い出した。

「なら、人格を変えましょうか?」

「へ? 人格を変える?」

「私はケルベロスです。頭が三つあり、それぞれに人格があります……じゃ、いきなり二人めの私が登場です!」

 すると、体が一回り大きくなりルベスの顔が険しく、彫り深い顔に変化した。髪は短髪になり顔が怖くなった。

「ふ~、出て来たぜ! よぉ、女、俺はゲイズだ」

「え、えっと、ゲイズさん?」

「おうそうだ。……へへ、お前良い体してんな!」

 目がやらしい。私を上から下まで舐める様に眺めてきやがる、あんまりジロジロ見ないでよ、気持ち悪い! 腕で身体を隠す。

「がはは! 良いじゃね~かよ……な?」

 そう言うと、いきなり私を押し倒して来た。

「何するのよ!」

「女何て、何百年ぶりかな~」

 更に嫌らし目付きになっていく。ゲイズは「いただきまーす!」と叫んだ。何がいただきますだ、いい加減にしろ!
 勢い良く足を彼の男の急所へ、おもいっきり蹴飛ばす。すると奇声をあげ、涙目になり、ピクリとも動かなくなった。
 そのまま床に落ちた。

「こ、この女~」

「何よ、また蹴られたい?」

 すると、顔が元に戻り、スッと立ち上がった。どうやら元に戻った様だ。まったく、なんなのよ!

「いや~、すいませんね、彼はすごい女たらしでしてね」

「最初に言えー!」

「じゃ次ですね」

「もういい!」

「遠慮しないで下さい!」

「誰が遠慮よ!」

 また彼の顔が微妙に変わっていく。今度は子供の様に可愛くなっていった。

「あ、あの、僕スルル、……仲良くしてね?」

「あ、はい、どうも……」

 何だか気が弱そうな奴だった。

「あの、僕の事、スルルちゃんって呼んでよ」

「男がちゃんって」

「ぐすっ、僕、女の子だもん」

 え! 女の子? 涙目になる彼女、すぐにごめんなさいと謝った。だって、ルベスさんが男だったから、てっきりまた男だと思ったから。

「僕達はね、人格が変わると身体の構造も変わるの……ほら」

 そう言うと服を脱ぎ捨て、上半身だけ裸になった。うわ、私よりでかい! ま、負けた。

「僕だって、胸があるんだよ」

「スルルちゃんね、分かったから服を着てよ」

「うん」

 服を取りに歩き出したが、足が足に引っ掛かり、勝手に転んで私の上に落ちてきた。痛いなもぉ。

「うえ~ん! ごめんなさい~」

「謝らなくていいから、早くどいて?」

 起き上がると、手に何やら柔らかい感触がする。手を見るとスルルちゃんの胸を鷲掴みしていた。

「ひゃん!」

「あ、ごめ……」

 その時、部屋の扉が開いた。ちょうど良くママが入って来たのだ。

「まことさん、お茶とケーキ……」

 また固まっている。何でこうタイミングがいいんだろう。

「は! 違う、違うの!?」

「ま、まことさん、あなたにそんな趣味が……うそ、私、育て方を間違えたのかしら?」

 この後はお約束ですが、さすがにママの顔が青ざめていた。
 事が済み、何とか誤解は解いたけど。
 ルベスさんは逃げるようにいなくなっていた。

「アイツら、もう二度と来るなーー!」

 私の声が天に響いた。
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

氷結の夜明けの果て (R16)

ウルフィー-UG6
ファンタジー
Edge of the Frozen Dawn(エッジ・オブ・ザ・フローズン・ドーン) よくある異世界転生? 使い古されたテンプレート? ――そうかもしれない。 だが、これはダークファンタジーだ。 恐怖とは、姿を見せた瞬間よりも―― まだ見えぬまま、静かに忍び寄るもの。 穏やかな始まり。ほのかな優しさ。 だが、石の下には、眠る獣がいるかもしれない。 その時が来れば、闇は牙を剥く。 あらすじ 失われた魂――影に見つめられながら。 だが、英雄とは……本当に常に“光”のために戦う者なのか? 異国の大地で、記憶のないまま、見知らぬ身体で目を覚ます。 生き延びようとする本能だけが、彼を前へと突き動かす。 ――英雄か、災厄か。それを分けるのは、ただ一つの選択。 冷たく、謎めいた女戦士アリニアと共に、 彼は武器を鍛え、輝く都市を訪れ、古の森を抜け、忘れられた遺跡へと踏み込んでいく。 だが、栄光へと近づく一歩ごとに、 痛みが、迷いが、そして見えない傷が刻まれていく。 光の道を歩んでいるかのように見えて―― その背後で、影は静かに育ち続けていた。 ――これは、力と希望、そして自ら築き上げる運命の物語。 🔹 広大で容赦のない世界が、挑む者を待ち受ける。 🔹 試練と沈黙の中で絆を深めていく、二人の仲間。 🔹 「居場所」を探す旅路の果てに待つものとは――。 ヴェイルは進む。 その選択はやがて、一つの伝説を生み出すだろう。 それが光か、闇か。――決めるのは、あなた自身だ。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...