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第三章 覚醒

【二十六】味方(才蔵)

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左京を酒庫に残し、隠し通路から我が師匠の元へと向かった。

『おやおや?幽霊のお出ましかのぉ?』

到着するなり、こちらを振り返りもせずに言い放った小太郎師匠。少しは心配でもしてくれているかと思いきや…

「小太郎師匠。この通り存命にあります。おや…?そいつはもしかして…」

師匠の視線の先に横たわるぐったりとした
人影を見て我が目を疑った。

『おぉ、あの騒ぎの後、偵察に出ておったらお主の三日月を持った若い忍びが河川敷で冥国の忍共に、殺られそうになっておったから、連れてきたのじゃ。こいつが弥助じゃの?あの赤ん坊が大きくなったのぉ。』

弥助がそんな出来事に見舞われていたとは…ワシが死んだことで動揺し、本来の実力を発揮できなかったのだろう…弥助には本当に可哀想なことをした。

「我が弟子を助けてくださり、忝ない…」

そして、小太郎師匠にこれからの事を相談することにした。

「私は、左京の中のもう一人の人格を抑えることが先決かと思っておりまする。師匠はどうお考えでしょうか?」

親の愛情を知らずに育ち、闇に心を奪われてしもうた哀れな左京。ワシがもう少し気にかけていればこのような事態にはならなかったかもしれないという、自責の念に苛まれ教えを乞うことにした。

『才蔵よ、お主の所為ではない。元々封印されていたものが、佐助の手によって呼び起こされただけ。悪いのは恐山の性悪陰陽師と佐助じゃな。推測ではあるが、奥方も洗脳されておるのじゃろう。人格を抑える…簡単ではないがまぁお主ならできるであろう。あそこへ行くつもりか?』

「はい、恐山の古寺にある封印の古文書を参考に何か手を考えようかと思っております。あのお方にもお会いしなくてはなりませぬしな。師匠、重ね重ねお願いばかりして申し訳ないが暫く弥助の面倒を見てもらうことは可能でしょうか?こやつは私に取って最後の弟子、この様な形で離れてしまって大変悔やんでおるのです。右京封印の方法が完成次第連絡差し上げる所存。どうかそれまでに鍛えあげてやってほしいのです。」

『ん~……ええよ?ワシも暇じゃしな。こちらも準備が整い次第そちらに向かう事にしようぞ。酒の調達場所を壊した罪は重い!何としても佐助とインチキ陰陽師に報いを受けさせてやるわ!』

酒の怨みが大半を占めていそうではあるが、小太郎師匠が味方についてくれるのは大変有難い。今でこそ軽いノリの酒呑み爺さんではあるが、昔は泣く子も黙る”風魔小太郎”として名を馳せておられた方。焼け跡から探してきた酒を渡し左京の元へと向かう途中、地下通路の中を

”こら、才蔵!酒呑み爺さんとは
誰のことじゃ!”

という小太郎師匠の言霊が響き渡っていた。
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