少女漫画の当て馬に転生したら聖騎士がヤンデレ化しました

猫むぎ

文字の大きさ
29 / 98

お誘い

しおりを挟む
仕事を始める前に風呂に入ろうかと思っていたら、コンコンと部屋のドアがノックされた。

もう家に一人しかいないと思っていたから、心臓が飛び出そうなほど驚いた。
まだドキドキと聞こえているが、急いでドアに向かった。

ドアを開けると、イヴが微笑んでいて俺の頬も自然と緩む。
まだいたんだって、安心した。

イヴを部屋に招くと、イヴの手には綺麗に畳まれた服が何着か重なっていた。

「ユーリ、着替えがないと困るだろ…これ」

「いいんですか?給料から差し引いてください」

「…そんな事気にしなくていいのに」

「俺はちゃんとしたいんです、なんでも屋で教えてもらったルールですから」

「…面倒な事を」

「え?」

「いや、分かった…ユーリの仕事場にはもう連絡したから気にせず仕事をしてほしい」

「はい!お風呂に入ってからすぐに朝食の準備しますね!」

イヴに頭を下げると、イヴは部屋から出て行った。
さすがに体を綺麗にしないと仕事が出来ないから、シャワーだけでも浴びようと考えていた。

風呂の場所なら昨日教えてもらったから覚えている。
イヴも後ろから付いて来る、俺が風呂場の場所が分からないと思っているのかもしれない。

昨日から、何故だかイヴはとても心配性だった。
まだ信頼関係がないから当然の事だろう、早くイヴが何でも任せられるように信頼関係を築きたいな。

「イヴさん、俺一人でも大丈夫ですよ…お風呂場の場所は覚えてますから」

「俺も体を洗うのを忘れていたんだ、一緒に入りたい」

「えぇっ!?一緒、ですか?」

まさか一緒に入るという発想がなくて、驚き過ぎて素が出てしまった。
口元を押さえて頭を下げると、イヴは優しい顔をしていた。

別に男同士だし、気にする事は…何もなくはないな。
雇い主と使用人が一緒に風呂に入っていいのだろうか。

もしかして、風呂で背中を洗えとかそういう命令なのかもしれない。
だとしたら、風呂に二人で入るのは当然だ。

「分かりました!俺に任せて下さい!」

「うん?」

イヴはよく分かっていなさそうな顔をしているが、俺はイヴの家なんだけど…まるでイヴを風呂場まで誘導するように歩いた。

風呂場だと昨日教えてくれた扉の前に立つ。
昨日は中まで見なかった事を思い出して、使い方が分からなかった。

イヴが一緒に来てくれて良かった。

扉を開けて中に入ると、広々とした脱衣所が見えた。
脱いだ服をカゴに入れて、ガラスで出来たドアの向こう側に風呂があると教えてくれた。

こんな高そうな風呂に入るのは初めてで緊張する。
それに、別の意味でも緊張してしまう。

俺が上着を脱ぐと、横から熱い視線を感じて隣を見た。

すると、イヴが自分の服を脱がないで俺の事をジッと見つめていた。
俺の体がそんなに珍しいのだろうか、貧相な奴はイヴの周りにはいなかっただろうけど…

それとも、俺の考えとは逆でイヴは聖騎士だから他人に体を見せてはいけないのかもしれない。
だからイヴは服を脱がないのかもしれない。

俺はズボンと下着を急いで脱いで、すぐにイヴに背中を向けた。

「俺、先に行ってますね!」

「え…あ…」

イヴがなにか言いたげな声を出していたが、俺はすぐに風呂に入った。
俺が想像していたより大きな浴槽があり、驚いた。

これ、何十人が入れるんだろう…泳げてしまうほど広い……さすがに人の家の風呂で泳いだりはしないけど…

とにかくイヴが来る前に体を洗っておこうと思って、シャワーの場所に向かった。
ここがお湯だから火の魔力と水の魔力で、ここが冷たい水だから水の魔力で動くと確認していたら下を見ていた俺の視界に影が重なる。

頭の上から「ユーリ」と俺を呼ぶ声が聞こえて上を見上げると、そこに肉体美があった。

無駄のないすらりとした男らしい筋肉に、それに見合う美しい顔のイヴがしゃがんでいる俺の上に覆い被さるように後ろで立って見下ろしていた。

聖騎士だから体を見せてはいけないと予想していたが、俺の予想は違っていた。
イヴに体を隠す気はさらさらないようだった。

俺は直視出来なくて、すぐに下を向いたが仕事のためには見なくてはいけないと覚悟した。

「お背中流します!」

「してくれるのか?」

「はい!」

「…それも、仕事か?」

「は、はい」

イヴは可笑しな事を聞いてくる、俺と一緒に入るのは背中を流してほしいからではないのか?

イヴの方を見ると、一瞬だけ眉を寄せていた気がしたがすぐにいつもの顔に戻った。

イヴの手には体を洗う布と、シャンプー代わりになる植物の葉をすり潰した液体が入った瓶が握られていた。
これがこの世界で体を洗う時に皆が使うものだ。

最初にイヴが体を洗うのかと思って、シャワーの前から退こうとしたがイヴの手によって座らされた。

後ろにいるイヴも膝立ちをして、俺を後ろから抱きしめてきた。
裸の男二人が抱き合っていたら、第三者が見たらいろいろと勘違いしてしまう……ここは家の中だから事情を知っている俺達しかいないから勘違いはされないだろう。

…いや、この状況…なに?

「い、いいイヴさん!?」

「俺が洗ってあげる、背中でも…どこでも」

背中以外は俺が洗うからしなくてもいい、何なら背中も雇い主に洗ってもらうわけにはいかない。
そう言いたいが、言葉にする前にイヴの手で口が塞がれた。

耳元で「洗い終わるまで我慢してて」と脳を揺さぶるほどの甘い声で囁かれて、力が抜けた。
ただ体を洗うだけなのに、なんつー声を出してるんだよ…

イヴは肩に触れて、そのまま腕に滑り下りる。
俺の肩には包帯がしてあり、俺はとっさにイヴの腕を掴んだ。

イヴに見られるわけにはいかない、イヴは聖騎士だから俺がいくら魔騎士ではないと口で言ってもイヴに殺されるかもしれない。
イヴの慈悲でその場で殺さなくても、漫画の展開のように街を追い出されて魔物に殺される未来しか思いつかない。

どちらにしても、腕に刻まれた魔騎士の刺青は隠さなくてはいけない。
なんで魔騎士に一番程遠い俺にこんなものがあるんだよ。

俺の口を覆っていた手を外された。
しおりを挟む
感想 59

あなたにおすすめの小説

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

ヤリチン伯爵令息は年下わんこに囚われ首輪をつけられる

桃瀬さら
BL
「僕のモノになってください」 首輪を持った少年はレオンに首輪をつけた。 レオンは人に誇れるような人生を送ってはこなかった。だからといって、誰かに狙われるようないわれもない。 ストーカーに悩まされていたレある日、ローブを着た不審な人物に出会う。 逃げるローブの人物を追いかけていると、レオンは気絶させられ誘拐されてしまう。 マルセルと名乗った少年はレオンを閉じ込め、痛めつけるでもなくただ日々を過ごすだけ。 そんな毎日にいつしかレオンは安らぎを覚え、純粋なマルセルに毒されていく。 近づいては離れる猫のようなマルセル×囚われるレオン

転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。 酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。 性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。 そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。 離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。 姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。 冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟 今度こそ、本当の恋をしよう。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

処理中です...