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静かな怒り
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家に帰ってきて、玄関で突然イヴに腕を掴まれた。
驚いてイヴの方を見ると、手の痣が出来ている腕を舐められた。
突然の事で、驚いていたらヌルッとした感触がしたと思ったら痛みが走った。
イヴに噛まれて、皮膚が破けて暖かな血が流れた。
「い、痛い…イヴさん…」
「我慢して、消毒してるから」
消毒の意味が分からず、俺の腕から流れた赤い血を綺麗に舐めとっていた。
軽く吸われると、ピリッと痛みが走り小さく声を出す。
傷を付けられたところが熱い。
イヴは目を細めて俺を見つめていて、視線が絡み合う。
なんでいきなりこんな事をするのか、戸惑っていたらさっきまであったはずの痣が綺麗になくなっていた。
イヴに腕を離されて、自分で見るとイヴが噛んで血が滲んでいるところ以外はいつもと変わらなかった。
イヴが治してくれたのかな、でも…傷を治すのにまた傷を作っても仕方ない気もする。
「何したんですか?」
「ユーリの体に俺の体液を流して、内側から治療しただけ」
「そう、だったんですか……だから噛んで」
「ふっ」
イヴは小さく笑うだけで噛んだ行為の話はしなかった。
噛むよりナイフで少し傷を付けた方が確実だと思うけど、イヴは自分の口に少し付いた俺の血を舐めた。
明らかに今朝のイヴとは違う姿のイヴに恐怖を感じた。
イヴが一歩前に出るのと同時に俺の足も後ろに下がる。
イヴは俺が後ろに下がるのが不思議でしょうがないという顔をしていた。
イヴは魔騎士になっているのか、それを聞きたかったが言葉に詰まる。
「…ユーリ、なんで外にいたの?今日ので分かった筈だ、外は危ない…ここにいれば俺が誰からも守ってあげられる」
「が、学校があって…卒業するには、休め…なくて」
「学校?……あぁ、忘れていた、ユーリはまだ学生だったのか」
イヴは俺の歳で卒業したから、俺が学生だという事を忘れていたそうだ。
20歳で卒業出来るのは異例なんだから、皆が皆そうだとは思わないでくれ。
イヴはなんで俺を外に出したくないんだ?使用人だから?
確かに今日は危なかったがいつもはちゃんと切り抜けられている。
今日のを見たら説得力が全くないが、学校もあるしずっといるわけにはいかない。
学校を言い訳にしない、ちゃんと使用人の仕事をする…それではダメだろうか。
「俺、ちゃんと働きます!いつも以上に……だから学校に」
「学校で何を学んでいるんだ?」
「え?…体力と勉学と戦闘力の授業を主に取っています」
「勉学と戦闘力は何を専攻している?」
「えっと、経営学と剣術です」
イヴは学校で何をしているのか気になるようでいろいろ聞いている。
きっとイヴは全部の授業を受けた事があるのだろう。
全ての授業を満点で卒業した伝説のように学校で語り継がれているから…
俺の努力はそんなものだと思うだろうけど、俺にとっては必要なんだ。
イヴはクスッと笑っていたから、きっと俺が思っている事は当たっているのだろう。
でも、イヴの口から出た言葉は俺の想像とは違った。
「ユーリがそんなに行きたいなら俺が全ての知恵をユーリに与える」
「え……それってどういう」
「ユーリの学んでいる授業は俺も知ってる、だから俺が教えられる…わざわざ学校にまで行って学ぶ事はない」
「でも、卒業出来ないと一人前のなんでも屋には…」
「ユーリは今俺のところにいる、不特定多数の相手をするなんでも屋じゃない」
イヴは俺に対していつもまっすぐに見つめてくるから、時々…まさか俺を…?なんて思う時がある。
でも、こうしてイヴを見ていると俺への愛ではないと分かる。
男同士とかそういう偏見はないが、漫画ではエマと恋仲になるイヴが当て馬でライバルの俺を好きになるわけないよな。
何だろう、なんか変な感じだな…漫画通りに結ばれるならいい事だ。
俺には関係ない、俺は漫画とは別の道を歩むって決めてるんだから…
「俺は学校に勉強をしに行くだけです、ついでに買い物をしてからこの家に帰る…寄り道はしない…それじゃあダメですか?」
「ユーリが帰ってくるところはここだから」
イヴに何度も念を押されて、頷くと満足そうにしていた。
一瞬学校に通えないなら別の仕事を探す事を考えていたらイヴはそれで許してくれた。
まるで俺の心を見透かしたようだ、そんな事はないんだろうけど…
夕飯を食べ終わり、イヴは仕事があると家を出て行った。
一人家に残された俺は食器を片付けながら考える。
結局魔騎士の話は出来なかった、使用人の分際で深く聞くのは悪いかなと思って口を閉ざした。
イヴを見ていたら魔騎士に関してなにか見えてくるかもしれない、それで判断するしかないよな。
俺が学校に行くのは当然卒業の事もあるが、一人でこの家にいたくないからという理由もある気がする。
広い家で一人ぼっちはやっぱり寂しいと感じる、これは俺の甘えだ。
大人なんだから一人でいなくてはいけない時がある、でもそうならないように常に誰かの傍にいたい。
それは知り合いでも知らない人でもいい、声を掛けなくてもすれ違うだけでいい…それだけでいい。
なんかこれじゃあ使用人というより、夫の帰りを待つ妻のようだと苦笑いする。
イヴに触れられると、普段人に触られ慣れていないからかドキドキしてしまうのは絶対に言えないな。
*視点なし*
「俺のユーリに傷を付けて、無事で終わると思ったか?随分おめでたい頭だな」
外灯を照らす魔術は真っ黒に覆われて、地面には大きな水溜りが出来ていて歩く度に水音が響いていた。
その姿も地面も背景も、全てが黒くてそれが余計に相手に恐怖を与えた。
聞き覚えがないが、頭がクラクラするほどの美しい低音の男だろうか…目の前に立っている。
持っている剣も黒くて、逃げ出したくても水溜りから無数の手が伸びていて大きな体は身動きが出来なかった。
きっと身動きが出来ても、この真っ赤な瞳に見られると誰も逃げ出せないだろう。
剣は振り下ろされて、男の腹を貫通して地面に突き刺さった。
「お前の全ての記憶、存在を消し去ってやる……お前の存在全てがユーリを汚した、ユーリに触れた……俺の、ユーリユーリユーリ」
黒い剣が燃えて、少し周りが明るくなり…黒い姿が見えた。
地面に倒れている騎士服を着た男は驚きで目を見開いていた。
しかし、口にする事がなく口からは真っ黒な液体が溢れていく。
じわじわと魂を燃やす炎は黒く、その瞳は冷たく何も映してはいなかった。
驚いてイヴの方を見ると、手の痣が出来ている腕を舐められた。
突然の事で、驚いていたらヌルッとした感触がしたと思ったら痛みが走った。
イヴに噛まれて、皮膚が破けて暖かな血が流れた。
「い、痛い…イヴさん…」
「我慢して、消毒してるから」
消毒の意味が分からず、俺の腕から流れた赤い血を綺麗に舐めとっていた。
軽く吸われると、ピリッと痛みが走り小さく声を出す。
傷を付けられたところが熱い。
イヴは目を細めて俺を見つめていて、視線が絡み合う。
なんでいきなりこんな事をするのか、戸惑っていたらさっきまであったはずの痣が綺麗になくなっていた。
イヴに腕を離されて、自分で見るとイヴが噛んで血が滲んでいるところ以外はいつもと変わらなかった。
イヴが治してくれたのかな、でも…傷を治すのにまた傷を作っても仕方ない気もする。
「何したんですか?」
「ユーリの体に俺の体液を流して、内側から治療しただけ」
「そう、だったんですか……だから噛んで」
「ふっ」
イヴは小さく笑うだけで噛んだ行為の話はしなかった。
噛むよりナイフで少し傷を付けた方が確実だと思うけど、イヴは自分の口に少し付いた俺の血を舐めた。
明らかに今朝のイヴとは違う姿のイヴに恐怖を感じた。
イヴが一歩前に出るのと同時に俺の足も後ろに下がる。
イヴは俺が後ろに下がるのが不思議でしょうがないという顔をしていた。
イヴは魔騎士になっているのか、それを聞きたかったが言葉に詰まる。
「…ユーリ、なんで外にいたの?今日ので分かった筈だ、外は危ない…ここにいれば俺が誰からも守ってあげられる」
「が、学校があって…卒業するには、休め…なくて」
「学校?……あぁ、忘れていた、ユーリはまだ学生だったのか」
イヴは俺の歳で卒業したから、俺が学生だという事を忘れていたそうだ。
20歳で卒業出来るのは異例なんだから、皆が皆そうだとは思わないでくれ。
イヴはなんで俺を外に出したくないんだ?使用人だから?
確かに今日は危なかったがいつもはちゃんと切り抜けられている。
今日のを見たら説得力が全くないが、学校もあるしずっといるわけにはいかない。
学校を言い訳にしない、ちゃんと使用人の仕事をする…それではダメだろうか。
「俺、ちゃんと働きます!いつも以上に……だから学校に」
「学校で何を学んでいるんだ?」
「え?…体力と勉学と戦闘力の授業を主に取っています」
「勉学と戦闘力は何を専攻している?」
「えっと、経営学と剣術です」
イヴは学校で何をしているのか気になるようでいろいろ聞いている。
きっとイヴは全部の授業を受けた事があるのだろう。
全ての授業を満点で卒業した伝説のように学校で語り継がれているから…
俺の努力はそんなものだと思うだろうけど、俺にとっては必要なんだ。
イヴはクスッと笑っていたから、きっと俺が思っている事は当たっているのだろう。
でも、イヴの口から出た言葉は俺の想像とは違った。
「ユーリがそんなに行きたいなら俺が全ての知恵をユーリに与える」
「え……それってどういう」
「ユーリの学んでいる授業は俺も知ってる、だから俺が教えられる…わざわざ学校にまで行って学ぶ事はない」
「でも、卒業出来ないと一人前のなんでも屋には…」
「ユーリは今俺のところにいる、不特定多数の相手をするなんでも屋じゃない」
イヴは俺に対していつもまっすぐに見つめてくるから、時々…まさか俺を…?なんて思う時がある。
でも、こうしてイヴを見ていると俺への愛ではないと分かる。
男同士とかそういう偏見はないが、漫画ではエマと恋仲になるイヴが当て馬でライバルの俺を好きになるわけないよな。
何だろう、なんか変な感じだな…漫画通りに結ばれるならいい事だ。
俺には関係ない、俺は漫画とは別の道を歩むって決めてるんだから…
「俺は学校に勉強をしに行くだけです、ついでに買い物をしてからこの家に帰る…寄り道はしない…それじゃあダメですか?」
「ユーリが帰ってくるところはここだから」
イヴに何度も念を押されて、頷くと満足そうにしていた。
一瞬学校に通えないなら別の仕事を探す事を考えていたらイヴはそれで許してくれた。
まるで俺の心を見透かしたようだ、そんな事はないんだろうけど…
夕飯を食べ終わり、イヴは仕事があると家を出て行った。
一人家に残された俺は食器を片付けながら考える。
結局魔騎士の話は出来なかった、使用人の分際で深く聞くのは悪いかなと思って口を閉ざした。
イヴを見ていたら魔騎士に関してなにか見えてくるかもしれない、それで判断するしかないよな。
俺が学校に行くのは当然卒業の事もあるが、一人でこの家にいたくないからという理由もある気がする。
広い家で一人ぼっちはやっぱり寂しいと感じる、これは俺の甘えだ。
大人なんだから一人でいなくてはいけない時がある、でもそうならないように常に誰かの傍にいたい。
それは知り合いでも知らない人でもいい、声を掛けなくてもすれ違うだけでいい…それだけでいい。
なんかこれじゃあ使用人というより、夫の帰りを待つ妻のようだと苦笑いする。
イヴに触れられると、普段人に触られ慣れていないからかドキドキしてしまうのは絶対に言えないな。
*視点なし*
「俺のユーリに傷を付けて、無事で終わると思ったか?随分おめでたい頭だな」
外灯を照らす魔術は真っ黒に覆われて、地面には大きな水溜りが出来ていて歩く度に水音が響いていた。
その姿も地面も背景も、全てが黒くてそれが余計に相手に恐怖を与えた。
聞き覚えがないが、頭がクラクラするほどの美しい低音の男だろうか…目の前に立っている。
持っている剣も黒くて、逃げ出したくても水溜りから無数の手が伸びていて大きな体は身動きが出来なかった。
きっと身動きが出来ても、この真っ赤な瞳に見られると誰も逃げ出せないだろう。
剣は振り下ろされて、男の腹を貫通して地面に突き刺さった。
「お前の全ての記憶、存在を消し去ってやる……お前の存在全てがユーリを汚した、ユーリに触れた……俺の、ユーリユーリユーリ」
黒い剣が燃えて、少し周りが明るくなり…黒い姿が見えた。
地面に倒れている騎士服を着た男は驚きで目を見開いていた。
しかし、口にする事がなく口からは真っ黒な液体が溢れていく。
じわじわと魂を燃やす炎は黒く、その瞳は冷たく何も映してはいなかった。
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