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第1章 貴族興亡編
第23話 近親憎悪
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「くっそぉお!! ルディの野郎、運良くプラチナ級の冒険者になれたからって調子に乗りやがってぇ!」
ブレダンが八つ当たりで殴ったタンスの中のガラスがパリーーーンっと割れる。
「あんな犯罪者が次期当主なんて父上もどうかしていますよ!」
食事後、次男のエリックは兄の部屋へと相談にきていた。
「どうしますか、兄さん、ルディのやつ。このままじゃ俺たち……」
「ああ、やばい。あの犯罪者が勘当されるときに庇わなかったと俺たちのこと逆恨みしてやがる。あいつが当主になったらどんな目にあわされるか」
「…………兄さん、ルディの奴いっそのこと……」
「……腐ってもプラチナ級だ。手を打つ時には慎重には慎重を重ねないといけない。だがいよいよ真剣に考えないといけなくなってきたな……」
コンコン
突然のドアのノックの音にブレダンとエリック二人ともビクッとなる。
「…………はい」
ブレダンの部屋に無言で侵入してきたのはルディだった。
「何の用だ?」
不機嫌にブレダンは尋ねる。
「うーーーん、よくないなあ……。まあ、今は許してやるけど」
「何がだ?」
「いや、次期当主に対してその言葉の使い方だよ。何の用だ? ではなくて、何の用でございましょうか? だろ。貴族教育受けてきたはずなんだから、それぐらいはきちんとしてくれよ」
「なにぃっ!? 俺たちは兄弟だぞ?」
弟からの予想外の言葉。ブレダンはプライドとそんな馬鹿なという思いで顔が若干ひきつる。
「俺が当主になったらそうするから。後、うちに役たたずの無能をおいてやるつもりはないから、お前ら俺が当主になったら手に職探せよ?」
「はっ!? 俺たちは二人とも父上から治める領地を……」
「それはすべて俺が当主になったら没収する。お前たちが持つ財産もすべてだ」
兄二人は目の前にいる異次元の考え方をした実の弟に驚愕の眼差しを向けている。
「これからは俺が当主なんだから勘違いした言動をしないようにな。俺が当主になれば俺が法になるんだがら、お前らの処遇に未来、すべてが俺の手にかかっているということをゆめゆめ忘れるなよ。じゃあな」
バタンッ
と乱暴に部屋のドアが閉められる音が辺りに響く。
「…………正気かあいつ?」
ルディが当主になれば酷い目にあうかもしれない。兄二人の予想は当たっていたが、ルディが取ろうとしている行動はその遥かに上をいっていた。
「あいつ俺たちから領地を取り上げて追放するつもりか? そうなったら俺はその先、生きてなんていけないよ、兄さん!」
悲鳴を上げるようにエリックはブレダンに泣きつく。
「………………」
ブレダンは暗い目をして俯いて何かブツブツ言っている。
「兄さん?」
「…………やってやるよ。あのくそ野郎、俺たちをそんな目に合わすっていうなら、殺ってやる!」
そのブレダンの決意にエリックも無言で頷く。
バッサーノ家は後継者争いが代替わりの度に発生してきた。現当主のアクセレイが当主となった時も苛烈な後継者争い、権力闘争が勃発し、アクセレイには兄弟が4人いたが3人は若くして他界し、後の一人は今ではまるで召使いのようにアクセレイに気を使っている。
ブレダンとエリックはそういった争いを人づてに聞いており、兄弟仲が極端に悪くならないようにと気を使っていた。しかしルディという怪物にはそういった今までの気遣いは一切通用しないようである。
殺らなければ殺られる。敗者はとことんまで奪われる。命どころかその人の尊厳までも。こうなればもう一度ほつれた糸を元通りにすることは難しく、憎悪はどこまでも増幅していく。血の繋がりというどうにも断ちがたい縛りにとらわれているが故にそれはより強固なものへとなっていくのであった。
一方、ルディはというと、部屋を出た後に。
「ふん、追放なんて甘っちょろい処分だけで許すわけがないだろう……」
自室までの誰もいない通路でそう呟く。
「何もかも奪って追放してどん底まで落として苦しめた後には、俺があの二人を飼ってやる」
このルディの飼ってやるという言葉。なにかのメタファーではなく言葉通りの意味であった。
「逃げ出さないよう、身動きが取れないように四股、両手と両足を根本から切り落としてダルマにしてやる。そして食事は俺の糞尿を与えてやる。自ら殺してくれと懇願しても精神が壊れるまで攻め抜いて殺してやる。くっくっく……」
ルディは常軌を逸した暗い欲望を呟く。外ではぽつぽつと小雨が降り出していた。こうして外の天気と同様にバッサーノ家にも暗雲が立ち込めはじめていたのであった。
ブレダンが八つ当たりで殴ったタンスの中のガラスがパリーーーンっと割れる。
「あんな犯罪者が次期当主なんて父上もどうかしていますよ!」
食事後、次男のエリックは兄の部屋へと相談にきていた。
「どうしますか、兄さん、ルディのやつ。このままじゃ俺たち……」
「ああ、やばい。あの犯罪者が勘当されるときに庇わなかったと俺たちのこと逆恨みしてやがる。あいつが当主になったらどんな目にあわされるか」
「…………兄さん、ルディの奴いっそのこと……」
「……腐ってもプラチナ級だ。手を打つ時には慎重には慎重を重ねないといけない。だがいよいよ真剣に考えないといけなくなってきたな……」
コンコン
突然のドアのノックの音にブレダンとエリック二人ともビクッとなる。
「…………はい」
ブレダンの部屋に無言で侵入してきたのはルディだった。
「何の用だ?」
不機嫌にブレダンは尋ねる。
「うーーーん、よくないなあ……。まあ、今は許してやるけど」
「何がだ?」
「いや、次期当主に対してその言葉の使い方だよ。何の用だ? ではなくて、何の用でございましょうか? だろ。貴族教育受けてきたはずなんだから、それぐらいはきちんとしてくれよ」
「なにぃっ!? 俺たちは兄弟だぞ?」
弟からの予想外の言葉。ブレダンはプライドとそんな馬鹿なという思いで顔が若干ひきつる。
「俺が当主になったらそうするから。後、うちに役たたずの無能をおいてやるつもりはないから、お前ら俺が当主になったら手に職探せよ?」
「はっ!? 俺たちは二人とも父上から治める領地を……」
「それはすべて俺が当主になったら没収する。お前たちが持つ財産もすべてだ」
兄二人は目の前にいる異次元の考え方をした実の弟に驚愕の眼差しを向けている。
「これからは俺が当主なんだから勘違いした言動をしないようにな。俺が当主になれば俺が法になるんだがら、お前らの処遇に未来、すべてが俺の手にかかっているということをゆめゆめ忘れるなよ。じゃあな」
バタンッ
と乱暴に部屋のドアが閉められる音が辺りに響く。
「…………正気かあいつ?」
ルディが当主になれば酷い目にあうかもしれない。兄二人の予想は当たっていたが、ルディが取ろうとしている行動はその遥かに上をいっていた。
「あいつ俺たちから領地を取り上げて追放するつもりか? そうなったら俺はその先、生きてなんていけないよ、兄さん!」
悲鳴を上げるようにエリックはブレダンに泣きつく。
「………………」
ブレダンは暗い目をして俯いて何かブツブツ言っている。
「兄さん?」
「…………やってやるよ。あのくそ野郎、俺たちをそんな目に合わすっていうなら、殺ってやる!」
そのブレダンの決意にエリックも無言で頷く。
バッサーノ家は後継者争いが代替わりの度に発生してきた。現当主のアクセレイが当主となった時も苛烈な後継者争い、権力闘争が勃発し、アクセレイには兄弟が4人いたが3人は若くして他界し、後の一人は今ではまるで召使いのようにアクセレイに気を使っている。
ブレダンとエリックはそういった争いを人づてに聞いており、兄弟仲が極端に悪くならないようにと気を使っていた。しかしルディという怪物にはそういった今までの気遣いは一切通用しないようである。
殺らなければ殺られる。敗者はとことんまで奪われる。命どころかその人の尊厳までも。こうなればもう一度ほつれた糸を元通りにすることは難しく、憎悪はどこまでも増幅していく。血の繋がりというどうにも断ちがたい縛りにとらわれているが故にそれはより強固なものへとなっていくのであった。
一方、ルディはというと、部屋を出た後に。
「ふん、追放なんて甘っちょろい処分だけで許すわけがないだろう……」
自室までの誰もいない通路でそう呟く。
「何もかも奪って追放してどん底まで落として苦しめた後には、俺があの二人を飼ってやる」
このルディの飼ってやるという言葉。なにかのメタファーではなく言葉通りの意味であった。
「逃げ出さないよう、身動きが取れないように四股、両手と両足を根本から切り落としてダルマにしてやる。そして食事は俺の糞尿を与えてやる。自ら殺してくれと懇願しても精神が壊れるまで攻め抜いて殺してやる。くっくっく……」
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