【1章完結】経験値貸与はじめました!〜但し利息はトイチです。追放された元PTメンバーにも貸しており取り立てはもちろん容赦しません〜

コレゼン

文字の大きさ
35 / 48
第1章 貴族興亡編

第30話 集会と飲み会

しおりを挟む
「それでは最後にレオン商会の主のレオン伯爵よりありがたいお言葉をもらうっす。みな心して聞くように!」

 そう話して壇上から降りたライラの後に続いて、俺が壇上に上がる。全くありがたいお言葉だなんて余計なこと。こういう挨拶なんかできれば御免こうむりたいが、立場上そういうわけにもいかない。レオン商会の商会員たち数十名の視線が俺に集中する。

 王都に来てから1年ほどが経過しただろうか。王族の後援を得た俺たち、というかライラはそれまでの制限をなくして一気に勝負に出た。

 まずは人の採用。最初に5名ほどを採用し、営業や事務、管理業務などを仕込む。そうしてある程度仕込まれた段階で実践に投入していき、更に新人を採用。先に採用したものにも新人の人材育成を一部担わせながら、ある程度仕込まれたら実践に投入して再度新人を採用。というプロセスを繰り返してレオン商会は僅か1年で20名を超える商会員を獲得した。今ではここ本部で経験を積んだ商会員たちが地方に飛んで支店をつくるフェーズにまで至っている。

 
 俺の壇上での挨拶が終わると拍手とともに歓声が沸き起こる。俺は最後に一礼をして壇上を降りた。


 
「ど、どうも今日のご挨拶感動しました! レオンさんのこと尊敬しています! 経験値貸与と強制執行は世界一のスキルだと思ってます! これからもよろしくお願いします!」

「こ、こちらこそお願いします」

 商会員の人と握手をかわすと自席に戻っていった。行列になっていた俺への挨拶も彼が最後だったようだ。

「いやー、レオンの演説よかったすねー。レオン商会を世界一の商会にする! いやー、しびれたっす!」

 すでに出来上がっているライラが赤ら顔で上機嫌にビールジョッキを片手に俺に賛辞を送る。集会が終わり今は懇親会が居酒屋で開催されている。

「これもあれもそれもどれもおいしいのです。おいしい料理がテーブル一杯に所狭しと並べられて食べきれなくて困るのです!」

「きゅきゅきゅぃーーっ!」

 お酒が苦手だというソフィは並べられたご馳走にうれしい悲鳴を上げていた。

 そんな中、ニーナは一人お猪口でちびちびとお酒をなめるように飲んでいた。テンションが上がって騒ぐこともなく、静かにお酒を楽しむタイプなのかなと思っていると、

「おい、レオン、おまぇ最近あたしのこと全然構ってくれてにゃいよな」

 座った目をしたニーナはいきなり俺に絡んできた。あれ、ニーナって酒癖悪かったっけ? 今までの飲み会ではそんなでもなかったけど…………。今日は許容量を超えたとか?

「構ってないっていうか、最近ちょっと商会が忙しくなってきたから……」

「にゃあにがぁ忙しいんだよ。おみゃえなんか、何かあった時に強制執行するか、経験値貸与の魔術契約書に拇印押すだけじゃねぇかよ!」

 まあ確かにニーナの仰るとおりなので俺は反論できない。

「もう一緒のメンバーになって2年近くになるってのに、いつになったらあたしに手ぇだすんだこのにゃろぅ!」

 ニーナのその言葉を聞いてライラとソフィ二人の手が止まる。

「てことはニーナはレオンに手を出されたいんすね。レオンの旦那、ニーナはこういってますけどどうっすか? ピチピチのエルフ少女っすよ!」

 いい酒のさかなを見つけたとばかりにライラは食いついてくる。

「さあ、レオンはニーナに手を出すのです!」

 意味が分かっていってるか? ちなみにまだソフィの記憶は戻っていない。
 
「きゅぃきゅぅぅぅぃーーー?」

 ほんとに分かっているのか分からないがキュイまで俺を煽っているように聞こえる。

 すると突然、ニーナは電池が切れたかのようにバタンという音をたててテーブルに突っ付した。大丈夫か? と一瞬心配したが彼女の寝息が聞こえてきて寝たことが知れる。全く人騒がせな。

「ニーナ、寝ちゃダメっすよ。これからが面白いところなのに!」

 いいよ起こさなくってもう。ニーナは幸せそうな顔をして寝息を立てていた。

 

 次の日。

「あ、あ、あの、レオン?」

 真っ赤な顔したニーナが事務所の俺の執務室へと入ってきた。

「き、昨日のことだけどあれは事故っていうか、ほ、本心じゃないから! お酒の勢いでいってしまったことで!」

 たぶんライラ辺りに昨日の醜態を教えられたのだろう。

「お酒の勢いだったら本心なんじゃないの?」

「ち、ちが、もうレオンのバカっ!!」

 ニーナはそういって赤い顔のままで部屋を飛び出していった。ちょっとからかい過ぎたかな……。でもまあ俺は自分の顔がニヤニヤするのを止めることはできなかった。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

処理中です...