両親が勇者と魔王だなんて知らない〜平民だからと理不尽に追放されましたが当然ざまぁします〜

コレゼン

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第2章 魔術書争奪編

第27話 封印解除

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「そうだ、ああ、そこを重点的にな」

 肩と腰。両サイドを二人の奴隷女にマッサージさせている。
 二人とも高利貸しの利息が払えない事を理由に奴隷落ちさせた女だった。

 コンコンっとドアがノックされる音。

「入れ」

 息を切らしたブルーノが入ってきた。
 なんだ? まさか、もう手に入れたのか?
 ブルーノはそれらしいものを抱えている。

「グラン・グリモワール大奥義書の方、入手しました」
「でかした!」

 オスカーはマッサージを最中の二人を押しのけ立ち上がる。

「こちらに」
「おお、これが……」

 伝承の通り真っ黒な魔術書で魔法封印がなされている。
 これが夢にまで見た一族、悲願の魔術書。

「出発するぞ。ついてこい」
「あ……はい。ですが、どちらへ? さいの最中で余裕がありませんが……」
「魔術書の封印を解除するためだ」

 オスカーはそれだけ言って、部屋から出ていく。



 エデンバラ王国の王都から少し離れた場所にあるとある遺跡。
 何本か建てられていたのだろう、うち廃れた石の巨大な円柱が散在し。
 その奥に本殿と思われる、石造りの建物がある。

 本殿の方へと向かうと一人の人影が見受けられた。
 こんな所に人が? 辺り数キロは人の民家一つ無いような所だ。
 オスカーは訝しみながら進むと、そこには一人の盲目の老人が座っていた。

「これはこれは、大賢者ベイリーどの。こんな所で何を?」
「いや、ここで張っていれば現れると思ってな。闇の眷属であるお前が封印された魔術書を携えて」

 一時は宮廷魔術師たちの指南役となり。
 今でも国王の相談役をしている老賢者。
 只者ではないとは思っていたが、我が一族の事まで把握しているとは。

「それはそれはご苦労な事で。まさか私の素性まで把握しておられるとは」
「わしは大賢者じゃよ。盲目ではあるがわしに隠し事はできんぞ」

 厄介なじじいだ。
 連れてきたブルーノは何のことか? というような顔をしている。
 最側近のブルーノにすら教えてなかった自身の秘密。

「ブルーノ、封印解除までベイリーを抑えていろ」
「かしこまりました」

 ブルーノでベイリーに勝てるか……微妙な所だろう。
 だが少なくとも封印解除までの時間稼ぎにはなるはずだった。

「封印解除した時に開放されるものは当然把握してるんじゃろうな」
「もちろん。まあ、それでもしも世界が滅びようとも私の知ったことではありませんが」
「外道が……」

『ストームファイガ!』
『ストームブリザード!』

 そこへブルーノがベイリーに向かって攻撃魔法を発動し。
 すぐさまベイリーはカウンター魔法を発動して、二人の戦闘が始まった。

 その戦闘の隙にオスカーは本殿へと歩みを進める。

 うち廃れた本殿の中。
 かろうじて伝承の通り、目的の祭壇は残っていた。
 祭壇へ大奥義書を置く。
 そして一族に伝わる解除魔法の呪文を詠唱する為、懐に入れていた小さなメモ帳を取り出した。

「エセカルト……マントルキア……プロメテウス………」

 詠唱をすすめると祭壇に置いた大奥義書が輝き出す。
 おお、封印の解除が進められている証左だ。

「ホーメラボメス……メルギデウス……ハーデス……我が問いかけに応えよ。今こそ封印は解かれん。いでよ冥界の真なる魔神エヴァ」

 その時、天空から一条の光の柱が大奥義書に降り落ちる。
 祭壇からはどこからか訪れた風が吹き荒れ、魔術書からまばゆい光が発せられた、その後。
 風は止み、光も消えて、薄暗い元の本殿へと戻った。
 祭壇上に現れた見知らぬ少女以外は。

「ここは冥界ではないな……封印を解除させよったか。お前は……少しあいつの面影があるが…………残念ながら生まれ変わりではないか」

 少女は紫色の長髪をしており、腰に手を当てて祭壇上で偉そうに話している。
 その背格好から歳は人間なら13才から15才くらいに見える。

 伝承では魔術書には冥界の魔神が封印されているという事だった。
 という事はとてもそうには見えないがこの少女が魔神という事だろうか。
 そしてその魔神は我らが一族の先祖に付き従っていたとか。
 その魔神の名は――

「エヴァよ。お前の封印を解いてやったのは私だ。また我らが闇の眷属に付き従え」

 オスカーのその言葉に少女は眉をひそめたような表情をした後、はっきりと分かる怒気と同時に凄まじい魔力を放出させた。

「誰が我に付き従えと? 以前、我が付き従っていたのはあいつだからだ! 封印されたのもあいつの生まれ変わりにまた会える可能性にかけたからだ! 貴様、冥界の魔神へのその言動、万死に値するぞ」

 エヴァからは真っ黒なその強大な魔力がオーラとして立ち上っている。
 それは人間には到底不可能な凄まじい魔力量にみえた。
 まずい、このままで殺される……。

「まあ、よい。あいつの血を引いているというのは嘘ではないじゃろう。特別に許してやる。そうだな、一度だけ力を貸してやっても良いぞ。そこの魔術書の魔神召喚を使え。それで一度だけ力を貸してやる。気が向けばな。さて、現代はどうかわってるのか……」

 そこまで魔神は一気にしゃべると宙に浮き、どこかへと向かっていった。
 た、助かった……。九死に一生を得たとこはこの事だろう。
 少しでもエヴァの気が変わればどうなっていたか分からない。
 しかし、魔術書を手に入れる事ができた。

 グラン・グリモワール大奥義書を開くと……読める……読めるぞ!
 言い伝えられていたように古代語で書かれている。
 邸宅に持って帰ってゆっくりと熟読したい。
 が本殿の外ではまだベイリーとブルーノの戦闘が続いているようだ。
 ベイリーが邪魔だな。

 どうするか……そういえば魔術書に精神作用を及ぼすものはないか?
 精神作用系の魔法は初見ではまず防げない。
 いかに大賢者であろうともそれは同様であろう。
 魔術書に精神作用を及ぼすものがないかざっと確認してみる。

 …………あった!
 ダークブレイン:暗黒の従属冥魔法。
 なるほど……術式は闇魔法の応用で難しくない。よし!


「やあ、ベイリー」
「くそ! 間に合わなかったか!」

『ダークブレイン!』

 ベイリーに近づくと有無を言わさずオスカーは従属冥魔法をかける。

 ベイリーはその頭を抱えて苦しんでいるがどうだ?
 大賢者だ。異常系魔法に対する耐性強いはず。

 ……しばらく苦しんでいたベイリーは暗い目をしてこちらに向きかえる。
 そしてオスカーの近くまでくると片膝をつき、恭順の姿勢を見せた。
 成功だ! 大賢者にまで効くという事は、どんな人間にも対してもこの魔法は有効だという事。
 素晴らしい!!

「よし、帰るぞ。ブルーノ、ベイリー」
「は、はい!」


 屋敷に戻ったオスカーは自室にこもり魔術書を読みふけった。
 そしてそこに書かれた冥魔法を一晩かけて次々と習得していった。
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