両親が勇者と魔王だなんて知らない〜平民だからと理不尽に追放されましたが当然ざまぁします〜

コレゼン

文字の大きさ
34 / 101
第3章 暗黒世界編

第34話 冒険の旅立ち

しおりを挟む
「おお、ベイリー戻ってたのか! 無事でよかった」
「つい昨日もどってきたわ」

 ベイリーは変わらない姿で言う。
 僅かな期間だが無事再会できた事はうれしい。

「そうだな、積もる話もあるだろうから、朝飯食いながらでもいい?」
「そうじゃな、わしも丁度、腹が減ってきた所じゃ」


 忙しく店内を歩き回っている給仕の女性が俺たちの席に食事を持ってやってきた。

「はい、こちら! お水はセルフでお願いね」

 そういうとすぐにその女性はいそいそと調理場方面に戻っていった。
 湯気を立てた温かそうなスープにパン。
 卵をふわとろに焼いたものにベーコンがそれられている。
 おいしそうだ。

 丁度その時、ミミとソーニャも飲食店に朝食を食べに現れた。
 席につき、それぞれ注文する。
 俺たちは冷めないうちに先に料理を頂く。

「で、世界を回ってみてどうだった?」

 ベイリーは盲目にも関わらず、相変わらず見えているかのようにナイフとフォークをうまく使い、料理を口に運び入れている。

「酷い有様じゃ。被害が少ないのはラゼール帝国と神聖教徒王国ぐらいじゃろう」

 神聖教徒王国は言わずもがな。
 ラゼール帝国は軍事力、経済力、そしてその人口も世界最大の国家だ。

 うん、カリカリに焼けたベーコンのその歯ごたえと丁度いい塩気。
 そして適度なアクセントになり鼻孔を爽やかに抜けていく香辛料。
 それを起点として、フワフワに焼けた卵を追加して頬張りニヤける。
 ベーコンの塩気と旨味と卵が融合して素晴らしいハーモニーを奏でていた。

「例の闇の小人は?」
「ああ、どのスタンビートでも目撃報告があったようじゃ。一体なんなんじゃろうなあ、あれは……」

 俺たちがエデンバラ王都を襲ってきたスタンビートと交戦している時の事だった。
 全身真っ黒の実体の薄い影のようで、人間の子供くらいの大きさの者が魔物の中に紛れていた。
 目も口も空洞で生き物というよりは、幽霊にも見えるようなそんな見た目。
 他の魔物とは明らかに異質な、その闇の小人と戦うが途中で逃げられてしまっていた。
 あいつがスタンビートと何か関連しているような気もするのだが。
 闇の小人に関して、今の所、有用な情報は得られていない。

「黒雲の原因もスタンビートの原因も、どの国でも不明との事じゃ。解決の手がかりはつかめておらん」

 疲れた表情でベイリーは言う。
 強行日程での世界中の旅は堪えたのだろう。
 少しの間流れた沈黙の後で。

「あっ、そう言えば……」

 俺は今朝の事を思い出して伝える。

「なるほど……女神様がそう言われたか…………」

 何か考え込むベイリー。
 しばらくして意を決したように顔を上げ。

「ランス、お前に伝える事がある」

 俺に向き合い真剣な表情になっていう。

「お前のそのユニークスキルじゃが、瞬神しゅんしん皇帝時間エンペラータイム。それらはそれぞれ勇者と魔王の固有スキルだ」
「…………」

 俺はベイリーのその言葉を聞いて思考がフリーズする。
 勇者と魔王の固有スキル?

「……それって……」
「にわかには信じがたいじゃろうが、お前の両親は勇者と魔王じゃ」
「え!? 俺の両親って勇者と魔王?」

 ミミとソーニャも驚愕の表情をしている。

「で、でも、じいちゃんはそんな事、一言も……」
「お前の母の名はエレインじゃろ」
「なんでその名前を……ベイリーに俺、教えてないよな」
「聞いとらん。わしは一時期勇者エレインと同じパーティーに所属しておったからな」

 思考が追いつかない。
 母さんとベイリーが知り合い?

「じゃあなんでじいちゃんは母さんが勇者だって知らなかったんだ?」
「エレインは言っておった。冒険者になったとしか親には言ってないとな。余計な心配をかけたくなかったのじゃろう」
「じゃあ、なんで……なんで母さんは魔王と……」
「それは分からん。魔王討伐の段になった時にはすでにわしはパーティーを抜けてたからな」

 じゃあ俺が適なしと判定されたのは特殊な適正があったからで、大した事ないと思っていたスキルは、ほんとは凄いスキルだったって事か……。
 なんだか、今更っていうか複雑な気持ちだな。

「ランス、お前は特別な人間じゃ。勇者と魔王の子供なんて人間の長い歴史の中で今までいたのかどうか。特別な人間で特別な力があるからこその責任もある。ランス、世界樹の元へ行って来い。そしてその闇を打ち払うのじゃ」
「…………」

 俺の胸に様々な思いが交差する。
 特別な人間なんて言われてもその恩恵を受けて、楽に生きてこられたとは思っていない。
 適なしと認定された日から随分と苦労してきた。
 人生が順調に回りだしたのはつい最近の事だ。
 大変だった時の方が遥かに長い。

「正直、勇者と魔王が両親だからって言われても知らないよっていうのが今の思いかな。じいちゃんに男で一つで育てられて、俺は自分の親はじいちゃんだと思ってる。生んでくれたのは感謝するけど、じいちゃんに対する思いのほうが強い。ただ……」
「ただ?」
「世界樹には行くよ。今の暗黒世界は好きじゃないし、このまま暗黒世界が続けば穀物が育たず、飢餓になるかもしれない。それにみんな前みたいに明るく楽しく生きて欲しいし。そして、何より自分自身の為に」
「そうか」
「ミミとソーニャは今までみたいに力貸してくれる?」
「「はい」」

 よかったミミとソーニャは同意してくれた。
 おそらく世界樹へは今まで俺が経験した事がないような長い旅となるだろう。
 それが自分と世界に一体どんな影響を及ぼすのかは分からない。

「じゃあ、長旅になりそうだから、早速みんな準備しよう! ベイリーはこれからどうするの?」
「わしもまた旅を続けようと思っとる。暗黒世界の原因がまだ何も掴めておらんからな」

 それからは一旦、個々で旅の準備をする事になった。



 そしてその3日後。

「気をつけてね、みんな、それにランス。私、待ってるから」

 俺たち、ミミとソーニャは交易兼、運び屋の乗り合いの馬車に乗り込んでいる。

「クリスティンも大変だろうけど頑張って。必ず戻ってくるよ」

 今や実質的な領主となっているクリスティン。
 いろいろ大変だろうから力添えになりたいけど、暗黒世界の根本原因があるならそちらを叩いた方が早い。
 クリスティンはその目に涙を溜めながら、俺たちの見送りをしている。
 その傍らには老執事のハーバートも健在だ。
 おそらく大丈夫だろう。

 俺たちは互いに大きく手を振り、馬車はカラカス都市を離れていく。
 こうして俺たちの暗黒世界での冒険の旅が始まることとなった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

【薬師向けスキルで世界最強!】追放された闘神の息子は、戦闘能力マイナスのゴミスキル《植物王》を究極進化させて史上最強の英雄に成り上がる!

こはるんるん
ファンタジー
「アッシュ、お前には完全に失望した。もう俺の跡目を継ぐ資格は無い。追放だ!」  主人公アッシュは、世界最強の冒険者ギルド【神喰らう蛇】のギルドマスターの息子として活躍していた。しかし、筋力のステータスが80%も低下する外れスキル【植物王(ドルイドキング)】に覚醒したことから、理不尽にも父親から追放を宣言される。  しかし、アッシュは襲われていたエルフの王女を助けたことから、史上最強の武器【世界樹の剣】を手に入れる。この剣は天界にある世界樹から作られた武器であり、『植物を支配する神スキル』【植物王】を持つアッシュにしか使いこなすことができなかった。 「エルフの王女コレットは、掟により、こ、これよりアッシュ様のつ、つつつ、妻として、お仕えさせていただきます。どうかエルフ王となり、王家にアッシュ様の血を取り入れる栄誉をお与えください!」  さらにエルフの王女から結婚して欲しい、エルフ王になって欲しいと追いかけまわされ、エルフ王国の内乱を治めることになる。さらには神獣フェンリルから忠誠を誓われる。  そんな彼の前には、父親やかつての仲間が敵として立ちはだかる。(だが【神喰らう蛇】はやがてアッシュに敗れて、あえなく没落する)  かくして、後に闘神と呼ばれることになる少年の戦いが幕を開けた……!

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

追放された最強ヒーラーは、美少女令嬢たちとハーレム生活を送る ~公爵令嬢も義妹も幼馴染も俺のことを大好きらしいので一緒の風呂に入ります~

軽井広@北欧美少女 書籍化!
ファンタジー
白魔道師のクリスは、宮廷魔導師団の副団長として、王国の戦争での勝利に貢献してきた。だが、国王の非道な行いに批判的なクリスは、反逆の疑いをかけられ宮廷を追放されてしまう。 そんなクリスに与えられた国からの新たな命令は、逃亡した美少女公爵令嬢を捕らえ、処刑することだった。彼女は敵国との内通を疑われ、王太子との婚約を破棄されていた。だが、無実を訴える公爵令嬢のことを信じ、彼女を助けることに決めるクリス。 クリスは国のためではなく、自分のため、そして自分を頼る少女のために、自らの力を使うことにした。やがて、同じような境遇の少女たちを助け、クリスは彼女たちと暮らすことになる。 一方、クリスのいなくなった王国軍は、隣国との戦争に負けはじめた……。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...