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昼休憩中、人が作った食事を口にして、上司Tは首をかしげた。味が薄いだ濃いだの何のコメントもせず。直接本人に指導せず、黙りこくって首をかしげる姿を披露するのは、ただの失礼でしかない。
どんだけ自分の手料理に自信があるのか知らないが、あなたのは脂っこくて味が濃いから、患者(ガンを患っている)にはどうかと思うよ?上司Hはまだ若いし体も元気で、肉食でこってり系好きだから美味しいと食べてくれるだろうけど。
上司Hが入社後改変した献立は揚げ物が多いし、上司Tはかなり塩っぱい汁物を作るという噂を聞いた。患者の体に影響ないのだろうか?そして逆に味がしない料理を作ることもある(食べたので事実)。
まぁ、料理に関しては私も完璧ではないので、調理師の先輩様に対して失礼なので、注意もしないが首も傾げたりしないけどね。
しかし、日頃上司Tには注意無しで私だけ言われるのは、やはり腑に落ちない。出汁を利かせて薄味で作るのが1番だと思うのだが、上司Hの作る献立を見る限り、あまり出汁を重視してないようだ。
今日はもう一つ嫌なことがあった。片栗粉が底をついたので、容器を洗浄・乾燥し、補充する準備をして置いたら、
「片栗粉使うとき入れるからいいです。」(←文章的には親切で声をかけてるように見えるが、声がプラスされると苛立ちと悪意を含んでいる)
と突然言ってきた。今まで補充しておく方が親切という感覚でやっていたし、何も言われなかった。
この今更言ってくる感じ、誰かさんとそっくりだな。
何故突然言ってきたのかは、6日後に判明する。
〈5/7〉
この日昼食分の洗浄作業中に、突然上司Tから、[調味料を使い過ぎ]と指摘された。
そりゃあんただろとツッコミを入れたいところだが、一応振り返ってみた。食材にしろ調味料にしろ[献立通りに]と管理栄養士様が私には直接おっしゃってくるのでそうしてきたつもりだ。
「計りで測ってるし、献立通りに使ってると思いますけどね~。」
と答えると、
「肉炒める時料理酒使ってるでしょ。」
「あ、ちょっと使ってます。肉を柔らかくするのと、(肉)大量なので火の通り良くするのに。」
「ちょっとどころじゃないでしょ。あんなに入れたら患者さん酔っ払いますよ。」(←あんなに=見張ってる)
突ける所を探し当て話がオーバーになった。ほったらかしたら勢いが増しそうだったので、
「じゃあもう使いません。」
面倒だからケツをまくった。
「使い方としては合ってますけど、量を考えて・・・」
「もういいです。使いません。」
そう言い切って、いつぞやの上司Tのように、話を終わらせてやった。
〈5/8〉
朝一から給湯機故障。おそらく前日夜からと思われる。
洗浄作業はお湯を使用するため、大鍋にお湯を沸かして、ガス台から作業テーブルを挟んで向こう側にある流し台へ、テーブルを受け渡し場所にして、私と大先輩の同僚2人で大鍋リレーを行い、流し台にお湯を貯める作業をした。
その時も、遅番で新人の@@さんが出勤するというのに上司Tは朝も早うからやって来て仕込みを始めていたが、不機嫌な態度でこちらの様子を窺って見張るだけで、上司Tよりずっと体の小さい年輩の部下が熱湯がなみなみ入った重い鍋を持って働いているというのに、何の手助けもしない。
それどころか、鍋に付いた煤が作業テーブルを汚すことを気にして、ギリギリ鍋が収まるくらいの金属のお盆をわざわざ数枚持ってきて、
「(テーブルが汚れるから)コレに乗せて。」
とテーブルにお盆を広げた。
カチンときたし、熱湯がなみなみ入った大鍋を乗せるにはサイズがギリギリ過ぎて、置き所が少しズレたらお盆の縁が邪魔して大鍋のバランスが崩れて私達2人のどちらか、あるいは2人とも熱湯がかかって火傷してしまう危険がある。
「コレ(お盆)危ないですよね?」
と同僚に言うと、
「うん。いいよ使わないで。」
と言ってお盆をどかしてくれた。上司Tのおかしな対処に苛立ちながら、2人で大鍋リレーをして、無事に流し台にお湯を張ることができた。
気に入らなそうに上司Tは傍観していたが、それ以上何も言ってこなかった。
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