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続〈8/6〉〈8/10〉〈8/13〉〈8/14〉

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続〈8/6〉

色々しんどくて忘れていたが、同日こんな事があったのを思い出した。
上司Tが、弁当の盛り付けをする時、

「なんだこれ?」

と私と同僚に聞こえる位の大きな声で、イチャモン開始のゴングを鳴らした。手に持っているのは、弁当の1品となる冷凍ハンバーグ。私が用意しておいたものだ。

「コレ切れてないじゃん。」(←あなたは何故かキレてるけどな)

凍っているのに切れるわけがない。

「レンジで温めないと切れないですよ。」

なんて当然のことを、[学校じゃあるまいし]私はちゃんと教えてやった。

「味は?」

「付けないでいいと前に言ってましたよね?」

「それは味つけが濃いから。」

うん、それはあなたに言われる筋合い無いわぁ~。

「ハンバーグじたいに味が付いているから、付けなくていいって言ってました(あなたが直接私に)。」

と返すと、納得いかなそうに恨めしそうに私を睨みつけ、黙ってレンジで温めていた。
次は例の白身フライ。患者の分は、私が盛り付けるので食べやすく半分に切って盛り付けたが、忙しい調理補助側の盛り付けを手伝いたいので、余裕のある上司Tが盛り付ける弁当用はカットせずにそのまま置いておいた。
すると上司Tが、

「コレダメ。切らなきゃ入らない。」(←あそ。じゃあ切れば?)

苛ついた声で甘ったれた事をぬかしながら、感じの悪い態度で私の前に白身フライを戻してきた。

「そうですかー。切った方がいいですかー。」

と、私はとぼけた口調で言い返し、しょうがなくカットした。
全くもって低レベルでバカバカしいやり取りだ。



〈8/10〉

上司Tが弁当の盛り付け時、冷蔵庫に私が用意しておいた弁当の1品(冷凍オムレツ)が入っているのを見て、

「コレダメ、代えて。」

また始まった。

「オムレツの数足りなくなるから。」

だったら自分で1品用意したらどうですか?毎回忙しい時間にこのやり取りやってられません。
そんな言葉を何とか飲んで、

「じゃあ何作ればいいですか?」

と質問すると、

「・・・・・・・。」

上司Tは、完全無視を決め込んだ。

「1品用の冷凍ハンバーグと肉団子しかないですけど。」

「・・・・・・・。」

上司Tは、再び完全無視を決め込んだ。
たまらず同僚が間に入り、

「上司Tさん、1品の冷凍食品がハンバーグと肉団子しかないんですけど、何作ればいいですか?」

と聞いてくれた。すると、

「主菜は何ですか?」

上司Tが同僚に問いかけ、

「鶏の照り焼きです。」

と同僚が答えてから数秒後、

「じゃあハンバーグ煮れば!!」

私に向かって上司Hは言い放った。
ヒステリーか。
てゆーか本当に大丈夫か?この人。



〈8/13〉

上司Hから、[煮魚が固い]と注意を受けた。確か、先月も同じ事を言われた気がする。これで2度目か・・・。

業務に集中したいのは山々だった。
日々受けている圧力により、精神に負担がかかり過ぎて、もう平常心で職務を遂行出来ないでいた。言い訳や責任転嫁のようだが、本当に精神的負担が大きな要因だった。
今の作業から、次の作業へ移る時、少しでも効率良く動く為に考えを巡らしている時、必ず上司2人の姿が浮かぶようになり、私が動いたことでまた何か上司Hからワケの分からない圧をかけられたり、人格否定されるかもしれない。上司Tからイチャモンをつけられたり、嫌がらせを受けたり、機嫌を損ねて物に当たり、職務への集中力を削がれたりするかもしれない。そんな不安が過り、その都度イチイチ手も思考も止まり、胃痛や頭痛、吐き気を催すようになっていた。
もちろん休日も、仕事のミスと上司2人の事が頭から離れず、心身共に安らぐ事など出来ない。ある日はストレスを何とか解消するために暴飲暴食したり、ある日はストレスに負けて食欲を失ったり、日常生活にまで支障が出ていた。
頭の中を2体の悪霊に占拠されて、心身の機能に障害が起きている。

そうやって、日々部下に圧をかけるわりに、上司2人ともテメーのミスにはとても甘い。
同日、上司Hが病棟から連絡が来て、患者の変更事項を食札に記入した。しかし、患者を取り違え、同じ名字の別患者の食札に記入した事に気づいて、私は記入した上司Hに食事箋に書かれた名前と、食札の名前が違うことをしっかり本人の目で確認させて、

「これ、違うみたいなんだけど。」

と報告。すると、

「あ。」

と声を漏らして、上司Hは無言で食札の訂正を始めた。途中、

「フフフフっ。」

と笑って誤魔化しながら。
そういえば、以前[調理師失格です]なんて言われたなぁ~と、ふと思い出して[栄養士失格だね]と言ってやりたくなった。でももう何もかも面倒で、

「あはははは。」

と、可笑しくもないのに棒読みで笑って済ませた。



〈8/14〉

昼食の調理で、玉ねぎが入る料理が2種類あった。小鉢と主菜で使用するようになっていたのだが、全て主菜に使ってしまった。
今回の主菜は鶏肉で常食(揚げ物)・軟菜(煮物)と2種類別料理を作るようになっていて、スライス状に切ってある少ない玉ねぎを常食の甘酢ダレに、粗みじんに切ってある玉ねぎを軟菜の煮物に使用してしまった。調理中特に違和感を覚えず、弁当数が多く鶏肉を揚げるのにかなり時間がかかって焦りながら仕事をしていた。
やっとのことで揚げ終わり、私が盛り付けに取りかかるのと、上司Hが弁当を盛り付ける時間が一緒になった。いつもは上司Hが盛り付けを始める前に、ほぼ盛り付けは完了しているので、それだけ時間がかかっていたということだ。
理由は、精神的負担が強く、今まですんなり出来ていた事が、余計な不安や緊張が邪魔をして、驚くほど難しくなっていたから。でも、来たからにはやらなくちゃいけない。だから、今出来る精一杯をやっていた。

今回のミスに気づいたのは上司Tだった。
盛り付け時に気づいて、鬼の首を取ったように大きな声で怒鳴ってきた。
確かに私のミスなので、

「すいません。」

と謝罪した。その後上司Tから何を言われたか忘れてしまったが、居合わせた同僚が[ちゃんと謝ってるのにあんな言い方はない]と後で私を慰めてくれたので、他人のミスが大好きな人だから、相当調子こいた口振りだったのだろう。
それよりも、その後の上司2人の対処が不思議でならなかった。まず、上司Tが上司Hへ喜び勇んで報告しに行き、2人で厨房に戻ってくると、上司Tが広げた職員用の弁当の玉ねぎだけを、献立通りにするために、玉ねぎを摘まんで選り分けて、手直しを始めた。患者の食事も手直しするよう指示が来るだろうと思っていたが、何一つ指示を寄越さなかった。
弁当は、町の弁当屋で買ったことがある人は知っていると思うが、その日の
食材によって、メインは変わらなくても周りの脇役達が変わることがある。今回のミスは、物は言いようで[食材の都合により変更しました]で、気の利く上司なら済ませられるレベルの話だ。私が上司なら誰のミスであれそうした。ハッキリ言って、料理の手直しで食材をイジりまくって不衛生にするよりずっといいと思う。
患者に渡す、1週間の献立表の欄外には[メニューが変更になる場合もあります]と、何かあった時の保険として書かれている。
禁止物やアレルギー等の身体への影響がない限り、そのまま提供しても問題はない。
ただ、職員用の弁当を直すなら、患者の食事を直すべきじゃないだろうか?
やっぱり上司2人の考え方にはついていけない。

今回の昼食の料理に使った玉ねぎに関しては、調理だけでなく、仕込みの段階でも以前からよく間違いがあった。殆どが上司Tのミスだった。スライスと粗みじんでカットする所を、1度目は全て粗みじんでカットしてしまっていることがあり、[間違えて切っちゃいました]とヘラヘラ笑いながら、[調理の際に主菜と冷菜の分と分けて使って下さい]と声をかけてきた事や、2度目は本人は全く気づいておらず、冷蔵庫に入っているカットミスした玉ねぎを目にしてようやく気づき、フリーズしていた事もあった。
あの時私も[や~いまた間違えてやんの~!]くらい言ってやれば良かった。


同日、退勤前に更衣室に来月の勤務表が置かれているのを発見。急いでいたので自分の分だけ持ち帰り、後で確認したところ、全体的に従業員の勤務日数が減らされていて、私だけ1日多く減らされていた。
そして、上司Tの勤務日数が増えていた。

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