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おじいちゃんと納涼
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『おじいちゃんと納涼』
夏、到来です。
縁側の窓は全開、網戸だけ閉めた状態で、おじいさんもおじいちゃんも、居間の畳の上に体を投げ出して伸びきっています。
扇風機は梅雨時から出してあり、今となってはフル稼働です。けれど、今日の暑さはもうそれだけでは限界がきていました。
おじいさんはうちわを振る手を止めて、むくりと上体を起こしました。
「これは・・・厳しい。」
おじいさんはゆっくり立ち上がって、若干立ちくらみを覚えながら、庭の物置へ向かいます。
おじいちゃんはそれに気づいていましたが、動くと暑いため体を横たえたまま動きません。仕方がありません。おじいちゃんには、夏毛とはいえ常に大量の毛が全身くまなく生えていますから。
しばらくすると、何やら庭が騒がしくなりました。でも、おじいちゃんは動きません。
今度は、ホースから水が出ている音がし始めました。でも、おじいちゃんは動きません。
「おお~い。」
おじいさんが、おじいちゃんを呼んでいます。でも、おじいちゃんは動きません。
「ほら、おいで。冷たくて気持ちいいぞ。」
(・・・・・・・)
おじいちゃんは動きません。しばらくしてから、のそっと起き上がり、不本意そうに縁側へ向かいました。
すると、庭には大きな金たらいが設置されていて、中には水がたっぷり入っています。ホースの水を出し続けているので、温くならず冷水掛け流し状態です。
そこにおじいさんは足を付けて、時々冷水に漬けた手ぬぐいで、体を拭いています。
その光景に、おじいちゃんの目が若干大きく開かれ、今までクタクタに倒れていた尻尾が、少し上がっています。
「ほら、突っ立ってないでいらっしゃいよ。」
(・・・・・・・)
おじいさんは、たらいの隅へ足を寄せ、おじいちゃんが全身入れるスペースを空けてやりました。
おじいちゃんはゆっくり縁側へ下りて、数秒庭との段差を測ってから、そぉっと庭へ下りました。
(・・・・・・・)
そして、たらいの水を鼻で確認して、次に前足の先で冷たさを確認して、1本ずつそーっと足を入れました。
「どうだ?」
(・・・・・・・)
しばらくすると、おじいさんの問いかけに答えるように、尻尾が上がりきり、小さくユラユラと揺らします。
「そうか。」
おじいさんは笑顔でおじいちゃんの頭を撫でます。すると、おじいちゃんの頭が熱い事に気づいて、水をすくって少し掛けてやりました。
(・・・・・・・!)
プルプルッ
「おぅ。」
おじいちゃんは驚いて、頭を振りました。水滴がおじいさんに飛びます。
けれどだんだん慣れてきて、おじいちゃんはそれを受け入れました。
慣れてきたのを見計らい、おじいさんは今度はホースを上へ向け、ホースの先を指で少し潰して、シャワー状の水を出してやりました。
すると、雲1つない夏空の太陽に照らされて、おじいちゃんの上で水がキラキラと光っては落ちていきます。
おじいちゃんは、しばらくそれを眺めてから顔を下ろすと、目を瞑って気持ちよさそうにしています。
「ずっと仁王立ちして疲れないか?寝たらもっと気持ちいいだろうに。」
(・・・・・・・)
おじいちゃんは、基本濡れるのが嫌いです。今回は緊急措置として、足だけ入っただけなのです。
しかし、シャワー状の水が全身にかかっているのでずぶ濡れなのですが、おじいちゃんは頑として立っています。それだけは譲れないようです。
「はぁ・・・そろそろ冷房も使っていかないとな。どうも私はアレが苦手だね。お前は、毎年快適に過ごしているみたいだが。」
(・・・・・・・)
「あ、まだフィルターの掃除してなかったな。この暑い最中に掃除・・・。はぁ~・・・。」
(・・・・・・・)
「そうだ。お前も使うんだ。たまには代わりに掃除しないか?」
(・・・・・・・)
「掃除したら、ご褒美にスイカをやろう。」
(スイカ・・・・)
スイカに反応して、おじいちゃんはおじいさんを見上げます。
おじいさんは口にしてしまった事を後悔しました。
おじいちゃんは、無類のスイカ好きです。
「いや、すまない。まだ高いから買ってきてないんだよ。もうしばらくしてからな?な?」
(スイカ・・・スイカ・・・)
おじいちゃんの目が、いつもより爛々と光っています。
「じゃあ・・ジャーキーでも食べるか?暑くて消耗してるからな。ちょっと待ってなさい。」
そう言って、おじいちゃんはホースをたらいへ放り込んで、足を拭いて家の中へ入り、ジャーキーを数本持って戻ってきました。
おじいちゃんは、素直にそれをいただきます。食べ終わると、再びおじいさんを見上げます。まだまだ目の奥の光は失っていません。
「う・・・・」
(スイカ・・・スイカ・・・)
おじいちゃんの目の奥にスイカが見えてきそうなくらい、分かりやすく訴えています。
抱きついて離れない、吠えて訴えるといったことは、おじいちゃんはしません。ただただ、ジッと、スイカが出てくるまで、大人しくおじいさんを強く見つめ続けるのです。
おじいさんは困惑しています。
このままでは、夜までおじいちゃんは粘ります。
「・・・まいったなぁ・・・・。」
おじいさんは後頭部をさすりながら、夜の散歩ついでに買ってくるしかないかと思いました。
「こんちはぁ~!いる~?」
突然、玄関から声がしました。おじいさんはその聞き慣れた声に返事を返して、玄関へ向かいました。
そこには、Tシャツにジーパン姿の、体つきの良い中年女性が立っていました。
驚きで、おじいさんはすぐに言葉が出ませんでした。
「おお・・・。誰かと思ったら。」
「なに?まぁたデカくなったなって?育ち盛りだもん。」
「なぁにを寝ぼけたことを。まぁ入りなさい。」
「うん。犬は?」
「いるよ。今、庭で行水中だ。」
「あっはっは!そっか。暑ちぃ~もんねぇ。」
そう言って、家に上がって居間へ荷物を置いて、すぐに庭へ目をやると、中年女性はさらに楽しそうに手を叩いて笑いました。
「あっはっはっは!わぁ~ホントに浸かってるよ!久しぶり~ムク。元気そうじゃん。」
(・・・・・・・)
「あれ?アタシの事覚えてる?」
「嫁いでから2、3度顔見せたくらいじゃ、家族とは認めちゃくれないよ。」
「え~、しょうがないじゃんよ。一応これでも農家の嫁ですからね?毎日忙しいんですのよ~。あ、そうだ。コレ、お義母さんが持って行けって。」
そう言って、台所で冷やしておいた麦茶を用意するおじいさんの足元に、沢山の野菜が入った袋が置かれた。
「おぉこんなに・・・凄いな。ありがとう。お義母さんにしっかり礼を言っておいてくれよ?まさか来ると思ってないから、こっちは何も・・・。」
「いいのいいの。」
「そういうワケにはいかないだろ。後日お返しを送るよ。寄子も、来るなら前もって連絡しなさい。」
「へぇ~い。あ、お母さんに挨拶してくる!」
そう言って、幼少期に暮らしていた我が家を小走りで移動して、おじいさんの寝室へ駆け込んでいきました。
「コラコラ、大人しく歩きなさい。」
もうお気づきと思いますが、この中年女性はおじいさんの1人娘の寄子さんです。寄子さんは市外の農家へ嫁ぎました。農家歴約30年のベテランです。
「ただいまぁ~。アタシは元気にやってるからね。お義母さんとも喧嘩しながら楽しくやってるから安心して。」
そう言って、寄子さんは仏壇に手を合わせて報告しています。
「まだ喧嘩してるのか。」
「お母さんに報告してんの!父ちゃんはいいからムクとスイカでも食べてな。」
「え?」
「入ってるでしょ?袋に。小玉スイカ。」
「・・・・・・・!!」
「・・なに?目ぇひんむいてどうしたの?」
「・・・お前・・・。」
「な、なによ?」
「婆さん・・・。寄子が天使に見えるぞ・・・っ!」
「は?そりゃあ昔っからでしょ。」
「あ・・・まずいな。」
その時です。おじいさんは嫌な予感がしました。
今、おじいちゃんはたらいの水で涼んでいるはずです。きっと、そのはずです。でも、寄子さんは張りのある元気な声で[スイカ]と2回口にしました。もしも、寄子さんの声がおじいちゃんの耳に届いていたら・・・・。
寝室の襖の前に立つおじいさんは、ゆっくり廊下を振り返りました。
すると、
(・・・・スイカ)
1メートル程間を空けて、ずぶ濡れのおじいちゃんが、廊下で綺麗なお座りをして、おじいさんをジッと見つめていました。
「あ~・・・やっぱり。」
「え?なになに?」
(スイカっていった・・・)
「わっ!ちょっちょっ、タオルタオル!」
この後、おじいさんと寄子さんは、おじいちゃんの体を拭いて、びしょ濡れのおじいちゃんが歩いた場所を拭き掃除しました。
そうして一汗かいた後、冷蔵庫で冷やしておいた小玉スイカを4人分切って、1つは仏壇へ、1つはおじいちゃんのご飯皿へ(さすがに1人分は多いので半量)、残りは汗だくのおじいさんと寄子さんが縁側に座って、たらいに足を浸けながら食べました。
「ねぇ。」
「ん?」
「何でエアコン付けないの?」
「何だか、体に合わなくてな。」
「ふ~ん・・・。」
「それに、暑い中掃除するのは億劫だ。」
「今かなり汗かいたじゃん。掃除で。」
「まぁな。」
「ムクだってエアコン付けないとキツいよ?毛皮着てるし。」
「だから、代わりに掃除してくれないか?ってコイツと話してたんだ。で、ご褒美にスイカをやろうと口を滑らせたら・・・というわけだ。」
「なるほどね。しかしだ。アタシの父親は、犬に何頼んでるの。」
「スイカを持ってきてくれて良かった。お前は知らんだろうが、丸一日あの熱視線はたまらんぞ?」
(・・・・・・・)
寄子さんは、隣りで大人しくスイカを食べているおじいちゃんを眺めます。
「美味そうに食べてるね。」
「大好物だからな。」
「・・よし、しゃーない!ムクのために一肌脱いでやるかぁ。スイカ食べたらアタシが掃除してあげるから、ちゃんと使いなよ。」
「・・・・・・・!」
「・・・・・ん?」
「・・婆さん・・・寄子が・・・。」
「もうそれいいから。」
こうして、おじいちゃんの納涼は果たされました。
けれど、おじいさんとおじいちゃんの夏はまだまだ続きます。
夏、到来です。
縁側の窓は全開、網戸だけ閉めた状態で、おじいさんもおじいちゃんも、居間の畳の上に体を投げ出して伸びきっています。
扇風機は梅雨時から出してあり、今となってはフル稼働です。けれど、今日の暑さはもうそれだけでは限界がきていました。
おじいさんはうちわを振る手を止めて、むくりと上体を起こしました。
「これは・・・厳しい。」
おじいさんはゆっくり立ち上がって、若干立ちくらみを覚えながら、庭の物置へ向かいます。
おじいちゃんはそれに気づいていましたが、動くと暑いため体を横たえたまま動きません。仕方がありません。おじいちゃんには、夏毛とはいえ常に大量の毛が全身くまなく生えていますから。
しばらくすると、何やら庭が騒がしくなりました。でも、おじいちゃんは動きません。
今度は、ホースから水が出ている音がし始めました。でも、おじいちゃんは動きません。
「おお~い。」
おじいさんが、おじいちゃんを呼んでいます。でも、おじいちゃんは動きません。
「ほら、おいで。冷たくて気持ちいいぞ。」
(・・・・・・・)
おじいちゃんは動きません。しばらくしてから、のそっと起き上がり、不本意そうに縁側へ向かいました。
すると、庭には大きな金たらいが設置されていて、中には水がたっぷり入っています。ホースの水を出し続けているので、温くならず冷水掛け流し状態です。
そこにおじいさんは足を付けて、時々冷水に漬けた手ぬぐいで、体を拭いています。
その光景に、おじいちゃんの目が若干大きく開かれ、今までクタクタに倒れていた尻尾が、少し上がっています。
「ほら、突っ立ってないでいらっしゃいよ。」
(・・・・・・・)
おじいさんは、たらいの隅へ足を寄せ、おじいちゃんが全身入れるスペースを空けてやりました。
おじいちゃんはゆっくり縁側へ下りて、数秒庭との段差を測ってから、そぉっと庭へ下りました。
(・・・・・・・)
そして、たらいの水を鼻で確認して、次に前足の先で冷たさを確認して、1本ずつそーっと足を入れました。
「どうだ?」
(・・・・・・・)
しばらくすると、おじいさんの問いかけに答えるように、尻尾が上がりきり、小さくユラユラと揺らします。
「そうか。」
おじいさんは笑顔でおじいちゃんの頭を撫でます。すると、おじいちゃんの頭が熱い事に気づいて、水をすくって少し掛けてやりました。
(・・・・・・・!)
プルプルッ
「おぅ。」
おじいちゃんは驚いて、頭を振りました。水滴がおじいさんに飛びます。
けれどだんだん慣れてきて、おじいちゃんはそれを受け入れました。
慣れてきたのを見計らい、おじいさんは今度はホースを上へ向け、ホースの先を指で少し潰して、シャワー状の水を出してやりました。
すると、雲1つない夏空の太陽に照らされて、おじいちゃんの上で水がキラキラと光っては落ちていきます。
おじいちゃんは、しばらくそれを眺めてから顔を下ろすと、目を瞑って気持ちよさそうにしています。
「ずっと仁王立ちして疲れないか?寝たらもっと気持ちいいだろうに。」
(・・・・・・・)
おじいちゃんは、基本濡れるのが嫌いです。今回は緊急措置として、足だけ入っただけなのです。
しかし、シャワー状の水が全身にかかっているのでずぶ濡れなのですが、おじいちゃんは頑として立っています。それだけは譲れないようです。
「はぁ・・・そろそろ冷房も使っていかないとな。どうも私はアレが苦手だね。お前は、毎年快適に過ごしているみたいだが。」
(・・・・・・・)
「あ、まだフィルターの掃除してなかったな。この暑い最中に掃除・・・。はぁ~・・・。」
(・・・・・・・)
「そうだ。お前も使うんだ。たまには代わりに掃除しないか?」
(・・・・・・・)
「掃除したら、ご褒美にスイカをやろう。」
(スイカ・・・・)
スイカに反応して、おじいちゃんはおじいさんを見上げます。
おじいさんは口にしてしまった事を後悔しました。
おじいちゃんは、無類のスイカ好きです。
「いや、すまない。まだ高いから買ってきてないんだよ。もうしばらくしてからな?な?」
(スイカ・・・スイカ・・・)
おじいちゃんの目が、いつもより爛々と光っています。
「じゃあ・・ジャーキーでも食べるか?暑くて消耗してるからな。ちょっと待ってなさい。」
そう言って、おじいちゃんはホースをたらいへ放り込んで、足を拭いて家の中へ入り、ジャーキーを数本持って戻ってきました。
おじいちゃんは、素直にそれをいただきます。食べ終わると、再びおじいさんを見上げます。まだまだ目の奥の光は失っていません。
「う・・・・」
(スイカ・・・スイカ・・・)
おじいちゃんの目の奥にスイカが見えてきそうなくらい、分かりやすく訴えています。
抱きついて離れない、吠えて訴えるといったことは、おじいちゃんはしません。ただただ、ジッと、スイカが出てくるまで、大人しくおじいさんを強く見つめ続けるのです。
おじいさんは困惑しています。
このままでは、夜までおじいちゃんは粘ります。
「・・・まいったなぁ・・・・。」
おじいさんは後頭部をさすりながら、夜の散歩ついでに買ってくるしかないかと思いました。
「こんちはぁ~!いる~?」
突然、玄関から声がしました。おじいさんはその聞き慣れた声に返事を返して、玄関へ向かいました。
そこには、Tシャツにジーパン姿の、体つきの良い中年女性が立っていました。
驚きで、おじいさんはすぐに言葉が出ませんでした。
「おお・・・。誰かと思ったら。」
「なに?まぁたデカくなったなって?育ち盛りだもん。」
「なぁにを寝ぼけたことを。まぁ入りなさい。」
「うん。犬は?」
「いるよ。今、庭で行水中だ。」
「あっはっは!そっか。暑ちぃ~もんねぇ。」
そう言って、家に上がって居間へ荷物を置いて、すぐに庭へ目をやると、中年女性はさらに楽しそうに手を叩いて笑いました。
「あっはっはっは!わぁ~ホントに浸かってるよ!久しぶり~ムク。元気そうじゃん。」
(・・・・・・・)
「あれ?アタシの事覚えてる?」
「嫁いでから2、3度顔見せたくらいじゃ、家族とは認めちゃくれないよ。」
「え~、しょうがないじゃんよ。一応これでも農家の嫁ですからね?毎日忙しいんですのよ~。あ、そうだ。コレ、お義母さんが持って行けって。」
そう言って、台所で冷やしておいた麦茶を用意するおじいさんの足元に、沢山の野菜が入った袋が置かれた。
「おぉこんなに・・・凄いな。ありがとう。お義母さんにしっかり礼を言っておいてくれよ?まさか来ると思ってないから、こっちは何も・・・。」
「いいのいいの。」
「そういうワケにはいかないだろ。後日お返しを送るよ。寄子も、来るなら前もって連絡しなさい。」
「へぇ~い。あ、お母さんに挨拶してくる!」
そう言って、幼少期に暮らしていた我が家を小走りで移動して、おじいさんの寝室へ駆け込んでいきました。
「コラコラ、大人しく歩きなさい。」
もうお気づきと思いますが、この中年女性はおじいさんの1人娘の寄子さんです。寄子さんは市外の農家へ嫁ぎました。農家歴約30年のベテランです。
「ただいまぁ~。アタシは元気にやってるからね。お義母さんとも喧嘩しながら楽しくやってるから安心して。」
そう言って、寄子さんは仏壇に手を合わせて報告しています。
「まだ喧嘩してるのか。」
「お母さんに報告してんの!父ちゃんはいいからムクとスイカでも食べてな。」
「え?」
「入ってるでしょ?袋に。小玉スイカ。」
「・・・・・・・!!」
「・・なに?目ぇひんむいてどうしたの?」
「・・・お前・・・。」
「な、なによ?」
「婆さん・・・。寄子が天使に見えるぞ・・・っ!」
「は?そりゃあ昔っからでしょ。」
「あ・・・まずいな。」
その時です。おじいさんは嫌な予感がしました。
今、おじいちゃんはたらいの水で涼んでいるはずです。きっと、そのはずです。でも、寄子さんは張りのある元気な声で[スイカ]と2回口にしました。もしも、寄子さんの声がおじいちゃんの耳に届いていたら・・・・。
寝室の襖の前に立つおじいさんは、ゆっくり廊下を振り返りました。
すると、
(・・・・スイカ)
1メートル程間を空けて、ずぶ濡れのおじいちゃんが、廊下で綺麗なお座りをして、おじいさんをジッと見つめていました。
「あ~・・・やっぱり。」
「え?なになに?」
(スイカっていった・・・)
「わっ!ちょっちょっ、タオルタオル!」
この後、おじいさんと寄子さんは、おじいちゃんの体を拭いて、びしょ濡れのおじいちゃんが歩いた場所を拭き掃除しました。
そうして一汗かいた後、冷蔵庫で冷やしておいた小玉スイカを4人分切って、1つは仏壇へ、1つはおじいちゃんのご飯皿へ(さすがに1人分は多いので半量)、残りは汗だくのおじいさんと寄子さんが縁側に座って、たらいに足を浸けながら食べました。
「ねぇ。」
「ん?」
「何でエアコン付けないの?」
「何だか、体に合わなくてな。」
「ふ~ん・・・。」
「それに、暑い中掃除するのは億劫だ。」
「今かなり汗かいたじゃん。掃除で。」
「まぁな。」
「ムクだってエアコン付けないとキツいよ?毛皮着てるし。」
「だから、代わりに掃除してくれないか?ってコイツと話してたんだ。で、ご褒美にスイカをやろうと口を滑らせたら・・・というわけだ。」
「なるほどね。しかしだ。アタシの父親は、犬に何頼んでるの。」
「スイカを持ってきてくれて良かった。お前は知らんだろうが、丸一日あの熱視線はたまらんぞ?」
(・・・・・・・)
寄子さんは、隣りで大人しくスイカを食べているおじいちゃんを眺めます。
「美味そうに食べてるね。」
「大好物だからな。」
「・・よし、しゃーない!ムクのために一肌脱いでやるかぁ。スイカ食べたらアタシが掃除してあげるから、ちゃんと使いなよ。」
「・・・・・・・!」
「・・・・・ん?」
「・・婆さん・・・寄子が・・・。」
「もうそれいいから。」
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