永久人生

air

文字の大きさ
2 / 2
第一章 誕生

無限回の10月17日

しおりを挟む

何度目だ?この日は。

俺は19歳になった。なんら変わりない19歳。
しかし、人より経験している・・・・人生を。


10月17日。
俺は何度この日を迎えたんだろう。
東専大学の門をくぐって、いつも通りの日常が始まった。

(明日・・・・俺は死ぬ)

気楽な大学生の中に独り、重い足取りの男がいた。
周りの学生達の顔つきとは明らかに違うその男は、伊藤恵吾。パーカーにジーンズ、リュックを背負ったごく普通の大学生に見える。

(俺は二十歳の誕生日に死ぬ。これは今までの人生で経験済みだ。でも何でだ?この人生がループしてるって気が付いたのは、ここ何回かの人生の中でだ。思い出したかのように、今までの人生が頭に浮かんできた。)

今までの事を思い出して、俺は教室の席に着いた。
まずは状況の整理をしようと、ノートに今までの軌跡を書き綴った。

(これまでにわかったとこは・・・まず二十歳の誕生日には必ず死ぬ。時間と場所は違ったものの、必ず二十歳の誕生日に死ぬ。そして、また生まれた時からスタートする・・・。これの繰り返しだ。途中の人生で多少何かを変えても、結果は変わらなかった。一体全体何が起こっているのやら)

授業の話などお構いなしに、ノート自分のわかっていることを書いていき分析した。それもそのはず。なにせ明日死ぬのに授業を受ける必要なんて無いからだ。それでも大学に来ているのは、日常を壊さない為だった。

(違う大学に入っても、大学に入らなくても、仕事をしてても、ニートでも条件は変わらない。唯一違ったのは、この東専大学大学ルートだけ彼女が出来たことだな。)

LINEを開いて、じっとスマホを見つめた。そして次の瞬間スマホのバイブがなった。

(明日は楽しみにしててね!プレゼントもらったら、恵吾びっくりするとおもうから!)

李咲からのLINEだ。
このタイミングで来ることはわかっている。いつも通りの返信をしてまたノートに向かう。

(これが俺の運命なのか?それとも、俺達人間は死んだらまた同じことを、繰り返し転生して行うだけの生き物なのか?前の俺みたいに気が付かず永遠に・・・・)

幾度となく繰り返される思考に、答えは出なかった。

(いくら考えても答えなんか出ない・・・。今は僅かな変化を見逃さずに、色々行動して試して、未来を変えるしかない!)

そう決意を新たにしたところで授業が終わり、次の教室へと移動した。
わざわざ遠回りをして、教室へ向かう最中の階段でスカートを履いた女の子がつまずいた。その瞬間を見逃さずに俺は上を見上げていた。

(そう、何も変わらない。明日死ぬ事も。見知らぬ女の子のパンツの色だって)

新鮮味のない光景を、後悔しつつも何故か遠回りしてまで見たくなる男心があった。



「おう、恵吾。早く帰ろうぜ」

もうこんな時間か。と思うように、井上の声掛けがアラームのような機能を果たしていた。

「あぁ、そうだな」

俺は素っ気ない返事をして、いつも通り何気ない会話をして帰路についた。どうせ言葉を交わしても意味はない。明日にはいなくなるのだから。
そんな態度を気にしてか、井上がジュースを奢ってくれた。いい奴だ。今までにない行動に少し驚いたが、気にする事なく冷えた炭酸を飲んだ。


10月18日、天気は雨。
毎回のように折りたたみ傘で家を出る。行く必要は無いだろうとも思うが、これには理由がある。
この誕生日に家にこもりっきりだと、家族まで俺の死に巻き込まれるからだ。出来ればそんな苦しみを味わってほしく無い。

待ち合わせの場所に向かった。
そこで思わぬことが起きた。
ブーブーとポケットのスマホがなる。

(ごめん、恵吾。今日風邪ひいちゃって、また今度会えないかな?うつしちゃったら悪いし、、)

李咲からのLINEだった。

(あれ?・・・今までにこんな事なかった。このルートは・・・もしかしたら)

予想外の出来事に動揺した。
この後はどうする?外にいたらトラックが突っ込んでくる。屋内に居ても、火事やら、通り魔やらにやられておしまいだ。どんな状況になってもいいように気を張っておこう。

数時間経過した。近くの公園で誰も巻き込まないように独りベンチに座った。ケツが濡れたがそんなのは関係ない。今までにない展開。いつもは17時には死んでいたはずなのに、今はそれを更新して17時50分だ。もしかしたら・・・。
期待に胸が膨らみつつある。
何かがきっかけで変えられるんだと分かって嬉しかった。希望が持てた。
後6時間、今日を乗り越えられるかもしれない!そう思っていた。


後ろから急加速したトラックが、公園の柵を越えて俺をペシャンコにした。


まただ。

でも分かった。
これは何かが影響してる。
俺の人生のどこか、何かがこの結末へと誘っているんだ。

何かを確信した俺は、何回目かわからない産声をあげた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

25年目の真実

yuzu
ミステリー
結婚して25年。娘1人、夫婦2人の3人家族で幸せ……の筈だった。 明かされた真実に戸惑いながらも、愛を取り戻す夫婦の話。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

処理中です...