上 下
1 / 45

1

しおりを挟む
ふと気付いたら懐かしい場所にいた。
どうしてここにいるのか記憶にない。
ここは俺の地元のクソ田舎。
まばらな街灯の灯が懐かしい。
俺は異世界で神になったはずだ。
ただ地元に帰ってきたのではない。
異世界に持っていけなかったスマホがあるのだから。
「…異世界に行くことになった日か」
スマホに表示された日付は忘れもできないあの日。
―俺が殺された日だ。
「ということは」
過去に戻ったことは明白だ。
本来ならこの後俺は女性を助けるために暴漢と戦いナイフでメッタ刺しにされて死ぬことになる。
同じ過ちを繰り返すわけにはいかない。
俺は走り出した。
俺の神としての能力は失われておらず、人ではあり得ない速さで薄暗い道を疾走し暗がりのほうへと曲がる。
陸上競技県大会予選に参加した俺の走力を侮るなよ?
「いたな」
忘れもしない俺を殺した男、クソニートのリョー。
逆恨みでその後異世界まで追いかけてきて邪神となり多くの人を虐殺した男。
俺が倒しても復活するような厄介な存在だった。
リョーが罪を犯す前に俺が止めてやる。
異世界で起きる大虐殺を今ここで防いでやる。
「お前は今ここで死ぬべきなんだ!殺された恨み!ここで晴らす!」
本気を出すと周囲が壊滅してしまうので手加減して蹴ったら50メートルは吹っ飛んだ。
まあ普通の人間なら死んでいるだろう。
だがリョーは邪神としての力を引き継いでいるのか?
中途半端で放置すると問題が大きくなってしまうかもしれないな。
仕方ない。
「ユータホールインワン!」
リョーを近くに召喚し、一緒に召喚したバットでフルスイングした。
吹っ飛んだリョーの着地点に異世界へ通じる穴を開けた。
「臭いものには蓋!」
穴に吸い込まれたリョーを確認し穴を塞いだ。
ふう、これで大丈夫だろう。
こうして多くの犠牲者が出る未来を防いだ。
まさにこれこそが正義の神としての正しい行いだろう。
だが俺の使命はまだ終わってはいない。
「大丈夫だったか?」
俺はリンに声をかけた。
リンも俺と同じくリョーによって殺されて異世界へ行くことになる女性だ。
その後いろいろあって俺を裏切った女でもある。
過去に戻ったのなら俺を裏切る前のリンということになる。
とりあえず今回は裏切られないよう洗脳魔法を施しておく。
「ありがとうございます、おかげで助かりました」
「俺の名はユータ。覚えているか?」
「すみません、初対面ですよね?」
「まあいい」
やはりリンは記憶を失っているようだ。
正しくは俺と出会う前のリンということになる。
覚えていないならいないで構わない。
また俺と一緒に異世界を旅するのも悪くないだろう。
おっぱいも大きいからな。
今回はR-18ではないから詳しいことは書かないけどな。
まあ力を引き継いだまま過去に戻ったのだから今回はもっと多くの人を救えるはずだ。
救える力があるのだから俺が救ってやる。
「異世界に行くならトラックだよな」
ちょうど都合良くトラックが走ってくるのを見つけてしまった。
「リンも異世界に行くよな?」
「ええ。ユータと一緒ならどこまでも」
なら問題はない。
俺はリンの手をとりトラックの前へと飛び出した。
そして―。
「トラックごときが俺を殺せるはずないだろう」
「さすがユータね」
自動反撃魔法による反撃でトラックが屑鉄になった。
神である俺を殺すにはトラックでは役不足だな。
もしかしたらリョーにナイフでメッタ刺しにされても今回なら死ななかったかもしれない。
わざわざ刺されるような趣味はないけどな。
それに俺が死んでもその後の世界が救われるわけでもない。
まあもうリョーの問題は片付いたのだから問題ないな。
「さて、異世界に行くにはどうするか…」
まあ俺は神だし魔法も自由自在に使える。
異世界への転移魔法でも使ってみるか。
使ったことはないけど俺だから使えるはずだ。
「じゃあ転移魔法を使うぞ。しっかり掴まってろ」
「わかったわ」
リンが俺に抱きついて遠慮なく大きなおっぱいを当ててくる。
まあまあだな。
「―転移」
こうして俺とリンは再び異世界へと旅立った。
しおりを挟む

処理中です...