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花弁舞う季節 《誠一郎side》
エピローグ
しおりを挟むあの日から2人で会うことは無く、咲子は関東の方に嫁いでいった。
何時も隣にあった温度は春に雪が溶けて無くなるように消えていき、残ったのは霙のように中途半端な思いだけだ。
咲子が引越して数ヶ月が経った頃、咲子から郵便が届いた。この日もまた澄清の空であり、夏の暑さが感じられる季節となっていた。包みを持って縁側に行きそこに座り包みを開ける。
そこには黒い箱に丁寧に入れられた、紺色のネクタイと銀に輝くネクタイピンが入っていた。それと一緒に手紙があることに気付く。
『引越しが落ち着いたのでこれを送ります。良ければ
使って頂戴』
簡単に要件を書いてしまう所が彼女らしいと思う。
「便箋、何処にあったかな」
新緑の木々の風に包まれながら呟き空を見上げると、幼少の頃に見た櫻色の花弁が見えた気がした。
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