異世界転生した先の魔王は私の父親でした。

雪月花

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第3話 (無理矢理)異世界に転生しました

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「はっ!?」

 そんな自らの一声と共に、その場に身を起こす。

「……なーんだ、夢オチかー。あははー、安心したー」

 ふう。何やら朝から変な夢を見てしまった。
 気づくと真っ白な空間の中、妙な黒髪の女性に「あなたは死んだのです」とか言われて、異世界に転生される話。
 しかも、そこまでなら良かったんだけど、その後、本物の天使が現れて、私を転生させようとした女性が堕天使で、なにやらわけがわからなくて。
 いやー、夢で良かった良かった。
 前日、ファンタジー物のネットゲームをやってた影響かな?
 あんな妙な夢を見るなんて、よっぽど疲れていたのかなー、私。あはははー。

 と、ひとしきり笑ったところで私は目の前の景色の異常さをだんだんと認識していく。

 ……う、うん?
 な、なんだろうか。気のせいか、見たことのないような平野が広がっている。
 それだけじゃなく、遥か先の地平線には現代では見たことのないような街の景色が広がり、空には真昼だというのに大きなお月さまが二つ見えている。
 更に極めつけは、前方百メートル先を歩く、全身緑の奇妙な生き物。
 異様に鼻が伸びており、手には棍棒のようなものを持ち、腰には布を一枚まとった、なんというかゴブリンっぽい奴が徘徊している。

 は、ははっ、はははっ。ま、まっさかねー。
 そう思っていると目の前を歩いていたゴブリンっぽいものと目が合う。
 次の瞬間、その生き物は口元にヨダレを垂らしながら、棍棒片手に一目散で私に向かって突進してきた!

 ゆ、夢じゃなかった――――!!!
 どどどどどど、どーすんのよこれ―――!!?
 とか、そんな風に慌ててる間にゴブリンが間近に迫ってくる。
 あわやこれまでかと思った瞬間、眼前のゴブリンの頭上から黒い雷が降り注いだ。

「ゴブッ!?」

 そんな短い悲鳴と共にゴブリンの体は黒焦げ死体となり、呆然としている私の前に先程見た黒髪の女性の姿が現れる。

「ご無事ですか?」

 あまりにもさらりとした登場に呆気に取られる私だったが、すぐさま目の前の女性に突っかかる。

「な、何がご無事ですかよー! あ、アンタのせいでこんなことになったんでしょうー!!」

「それは誠に申し訳ありません。当初の予定ではもっと安全な場所に送る予定だったのですが、邪魔が入ったことで位置がズレたようです。しかし、幸いと言ってはなんですが、近くに街があるので、とりあえずはあそこを目指しましょう」

 さも何事もなかったかのように地平線の先に見える街を指して、移動しようとする女性の襟首を私はすかさず掴む。

「ちょっと待たんかーい! それよりも色々と聞きたいことがあるんですけどー! アンタ、さっき出てきた天使の話じゃ堕天使らしいですけど、それって一体どういうことかしらー!?」

「どうもなにも事実ですが。私は堕天使ですよ」

 質問する私に、女性はアッサリとその事実を認めた。

「だ、騙したな―――!!」

 私を転生させるとか言いながら、自分は堕天使とか! 謀ったな貴様ー! と憤慨していると、

「騙すもなにも、私、天使だなんて一言も言ってませんよ」

「…………」

 言われてみればそうだった。
 単に死んだから転生させると言われただけで相手の正体についても詳しく質問しなかった。

 えっと、という事はこれって詳しく聞かなかった私が悪い?
 いやいや、でも、騙してる事に変わりはないし、そもそも後から来たあの天使なら私を普通に地球に蘇らせてくれたのではと? と、そんな風に悩んでいると、

「とにかくここで悩んでいても危険ですし、またあのような魔物に襲われたくなければ、早く移動することをオススメしますよ」

 堕天使からそのような助言をされてしまう。
 いや、元はといえばアンタがこんな危険な世界に転生させたのが原因でしょう……。
 もはや今更としか言えない状況なので、仕方なく私は愚痴をこぼしつつも、そのまま堕天使に連れられるまま街へと移動をするが、その際、ふと気になることがあった。

「あの、そういえばこういう異世界に転生する時って何かしらの特殊な能力なりスキルが与えられるはずですよね? 私もすでにそういうの持ってるんですか?」

 というか私の見た目、以前の姿と変わらないんだけど、服も制服のままだし……。

「いえ、そういうのは女神やその直属の天使でないと出来ませんから。私は単に異世界に送るだけですので」

 はい?
 今、なんて言った?

「……え、ええと、じゃあ、ちょっと待ってください。この明らかに魔物が跋扈する危険溢れる異世界に私は以前と同じ貧弱な生身で転生したってことですか?」

「まあ、そうなりますね」

 さ、詐欺だ―――!! やっぱりこいつ本物の堕天使や――!!

 皆も転生する時は、そいつが本当に天使か女神か確認してから頷こうね。
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