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第11話 デュラハン退治
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「おい、聞いたか! 遂にあの救世主様が魔王軍を壊滅させるために動き出すそうだぞ!」
「しかもその最初の相手があの侵略部隊の将軍デュラハン退治だとよ!」
「マジかよ! あのデュラハン一人で隣国一つが陥落したって話だぜ!」
「しかも廃墟に住まうのは魔王軍の精鋭総勢千人! 一桁代の勇者でもなければ侵入は不可能だと言われている地獄の住処だぜ!」
「いやいや、あの救世主様の力をもってすれば千人の精鋭もデュラハンも恐るるに足りないさ! 何しろ拳一つで魔王をフルボッコにしたって話だぜ!」
「いやいや、オレが聞いた話では対峙しただけで逆に魔王の方が震えあがったって聞いたぜ!」
「ああ、それはオレも聞いたぜ! なんでもあの救世主様はデータでは測れない超越した能力の持ち主なんだとよ!」
「なんにしろ、これであのデュラハン部隊も終わりだな! この国の領土もますます安全になるってものよ!」
和気藹々と先程から街中で私の噂が広がっていた。
あの後、半ば無理やりデュラハン討伐を引き受けることになった私はギルドから出るや否やその場にいた冒険者やギルドメンバーが街中にその事を話し出し、今では一大イベントのように私の活躍に胸を躍らせるように話をしていた。
「お、救世主様! 聞きましたよー! これ、少ないですが薬草です。ぜひ持って行ってください! と言っても勇者様にはこんなのむしろ必要ありませんか。あははははー!」
「勇者様聞きましたよー! いやー、我々もあのデュラハンには苦しめられていたのですが、よもや勇者様お一人で退治に行かれるとはー! 本当なら我々もご一緒したいのですが、逆に勇者様の足を引っ張っては大変ですものね。ここは勇者様が帰るまでこの街の警護に集中しますね!」
そんな感じで私を見かけるとアイテムをくれるお店の人や、ここはオレ達に任せてくれと言ってくれる兵士や冒険者と多数すれ違った。
いや、あの、全然迷惑とかじゃないので、頼むから誰か一緒に来てくださいよ。
もはや私の気分は、死刑台に上がる死刑囚のようであった。
「……このまま廃墟に行くと思わせて、どこか遠くへ行こうかな……」
「それもいいかもしれませんね。私は七海様の行くところでしたら、どこへでもお付き合い致しますので」
ボソリと呟いた私のセリフに隣を歩くイブリスが頷く。
正直なところ逃げ出したい気持ちが九割くらいあったけれど、このまま逃げるのもバツが悪すぎるので、とりあえず行くだけは行って「やっぱり無理でした」と退散しようと思った。
ちなみにデュラハン退治が決まってすぐパパからのメールが受信されて、そこには相変わらずの親馬鹿な内容が書かれていた。
『件名:祝☆七海ちゃんの初依頼!\(^^)/ 内容:七海ちゃんへ、初の依頼おめでとうー!o(*゚▽゚*)o しかもデュラハン退治なんてお父さんビックリしちゃった(>_<;) ちょっぴり心配だけど、七海ちゃんならきっと勝てるってパパ信じてるよ!o(`・д・´)o デュラハン君はいつも真面目で堅物でなかなか融通の効かない奴だけど、あいつも七海ちゃんの可愛さを目の前にしたら思わずメロメロになって手加減しちゃうかもね(^_^;) なんだったらパパの方からお手柔らかにするように言っておくからね(^_^) 追伸:パパも七海の手助けのために色々プラン練ってみたからぜひ楽しみにしててね(^_-)-☆ 追伸の追伸:そういえば、まだ返信が一度も来てないですが、もしかして返信機能が壊れていませんか? 心配です。もしそうでしたらすぐに返信してくださいね(;^_^A』
とりあえずパパの戯言は無視しつつ、デュラハンがいるという廃墟の場所をギルドから受け取った地図で確認する。
街を出る際、街の人達や兵士達がしきりに「頑張ってくださいー! 応援してますよー!」とものすごい数のエールを送ってくれたけれど、誰ひとりとして同行しようとしなかったあたり、人間という生き物の都合の良さをちょっぴり実感したのでした。
そうして、街を出て街道を歩くことしばし、たまーにゴブリンとか魔物に出くわすものの、イブリスさんのおかげでほとんど戦うことなく向こうが勝手に怯えて逃げ出した。
うん、こうやって一緒にいると護衛という役割はちゃんと果たしているんだなとイブリスさんに感謝した。ちょっとだけ。
そんなこんなで街道を歩くことしばし、目的の廃墟にたどり着く前に小さな街を発見した。
あれ? あの街以外にもちゃんと周辺に街はあったんだ。と、そう思った瞬間、あることに気づいた。
そうだ! あの街では私は救世主ということで必要以上にヨイショされてて、ギルドとかに行っても仲間を募るどころか逆に「救世主様の足を引っ張っちゃ悪いですよ」と謎の遠慮をされてしまい、一人っきりになってしまったけれど、さすがにこの街になら私の噂も広がってないだろうし、ギルドか酒場に行って仲間を募集することが出来るかも!
うん、そうなればパーティを組んでの地道なレベル上げとかも出来るかも!
あ、なんかちょっと希望が出てきたかも。ということで私は早速、その街に入ってギルドを探すのでした。
そこは街というよりも、どちらかというと村のようなところであり、森や自然と調和した人里であった。
立派な建物はいくつかあるものの、それでも私がいたあの街に比べると随分田舎な感じはあった。
しかし、さすがに魔物が徘徊する世界ではこのような村でもギルドと言った組織は必要不可欠のようであり、村に入ってすぐにギルドらしき建物を見つけて、私は迷うことなくその中に入っていく。
「し、失礼しまーす」
遠慮がちに扉を開いて中を覗くと、そこには二つの冒険者グループがいた。
一方は若い人達が集まったいかにも駆け出しと言った雰囲気の冒険者グループ。
もう片方は、それよりやや年を重ねているものの歴戦な戦士や冒険者と言った佇まいを持った冒険者グループであった。
私はその二つのグループを交互に観察し、やや躊躇いながらも熟練な雰囲気を纏った冒険者グループへと話しかけた。
「あ、あのー、すみませんー。ちょっとお願いがあるんですけど、よろしいでしょうかー?」
「んー、なんだー。嬢ちゃんー?」
ギロリとそれまで酒を飲んでいた髭面の強面なお兄さんがこちらを睨む。ちょっとというか、かなり怖い。
思わず引け腰になりつつも、ここで逃げてはいけないと必死に自分に言い聞かせる。
「そ、そのー、実は私、とある依頼を遂行中なんですけど、よろしければ、そのお手伝いをしてもらえないかなーと思いまして」
緊張のあまりか、ありのままそう言ってしまった私に対し、そのグループの冒険者達は全員が鳩が豆鉄砲を食らったような顔を向けるが、次の瞬間大爆笑をする。
「がはははは! こいつは傑作だ! 嬢ちゃんみたいなのがオレ達をスカウトしに来たのか!」
「まあ、格好を見ればいかにも駆け出しって雰囲気だが、嬢ちゃんみたいなお子様のお使いを手伝うほどオレ達も暇じゃねーんだよ」
そう言って酒の肴にされて笑われてしまう私。
いかん、前の街では持ち上げられすぎて相手が身を引いてしまったが、今度は舐められ過ぎて相手にされていない。
それに少し頭に来てしまった私は思わずポケットに入れていた勇者証明証を取り出し、それを机に叩きつける。
「た、ただの子供じゃありません! この通り、勇者の証明証を持っています!」
それを見た瞬間、それまで笑っていた冒険者達が一気に水を被せたように静まり、奥にいた冒険者グループもこちらを覗くように視線を向け、カウンターにいたマスターらしき人物ですら息を呑んでいるのが見えた。
「こいつは驚いた……。嬢ちゃん、本物の勇者なのか?」
「確かに……レベルは低いが本物みたいだぜ、これ」
マジマジと私が取り出した証明証を観察する冒険者達。
その後、何やら頷くように私にその証明証を返してくれた。
「いいだろう、勇者様の頼みなら断るわけにはいかねぇ」
「それで依頼はなんだい? 嬢ちゃん」
さっきとは打って変わったように好意的に私に協力してくれようとする冒険者達。
や、やった! これでなんとかなる見込みが出てきたかも! さすがは勇者証明証! すごいよ証明証! ここまでフリーパスだと本当に便利かも!
そんな風に私は証明証に感謝を述べながら、請けてきた依頼を口にする。
「はい! 実はこの先の廃墟にいるデュラハンを退治しに行くところなんです!」
ピキッ――。
私がそう宣言した瞬間、冒険者グループが石になり亀裂が走るような音がした。
え、ええと、今の音は一体? と私が確認するよりも早く、目の前にいた冒険者達が次々と席を立っていく。
「え、ええと、悪いな、嬢ちゃん。ちょっと急用を思い出したので、オレ達はちょっと先に行くよ」
「そうそう! オレ達も例の依頼を請けていたんだったよな!」
「あー、あれな! そうそう! まずはあれから片付けないとな!」
「というわけで悪いな。嬢ちゃん! 次会った時には必ず力になるからさ! デュラハン退治頑張れ!」
そう言って分かりやすいほど、その冒険者達は私が呟いたデュラハン退治から逃げるようにギルドを出て行った。
見ると奥にいた冒険者グループ達もすでに姿を消しており、カウンターにいたマスターですら私に背を向けてコップを拭いていた。
ああ、もうこれ完全に孤立無援だ……。
デュラハン退治なんてやっぱり請けるんじゃなかった……と激しい後悔に打ちひしがれていたその時、
「ねえ、ちょっといいかな」
気づくとひとりの青年が私の傍に立っていた。
年齢はおそらく私と同じくらい。まだ二十には達していない外見であり、黒い髪の爽やかな笑顔が印象的な人だった。
パッと見、かなりの美形。おそらくこんな子がクラスにいれば中心人物になれただろうと思える雰囲気を纏っていた。
しかし、どこか見覚えるのある顔であり、そんなことを私が考えていると、その少年は驚くべきことを口にした。
「オレの名前はオーリ。よかったら、そのデュラハン退治。オレが君に協力するよ」
「しかもその最初の相手があの侵略部隊の将軍デュラハン退治だとよ!」
「マジかよ! あのデュラハン一人で隣国一つが陥落したって話だぜ!」
「しかも廃墟に住まうのは魔王軍の精鋭総勢千人! 一桁代の勇者でもなければ侵入は不可能だと言われている地獄の住処だぜ!」
「いやいや、あの救世主様の力をもってすれば千人の精鋭もデュラハンも恐るるに足りないさ! 何しろ拳一つで魔王をフルボッコにしたって話だぜ!」
「いやいや、オレが聞いた話では対峙しただけで逆に魔王の方が震えあがったって聞いたぜ!」
「ああ、それはオレも聞いたぜ! なんでもあの救世主様はデータでは測れない超越した能力の持ち主なんだとよ!」
「なんにしろ、これであのデュラハン部隊も終わりだな! この国の領土もますます安全になるってものよ!」
和気藹々と先程から街中で私の噂が広がっていた。
あの後、半ば無理やりデュラハン討伐を引き受けることになった私はギルドから出るや否やその場にいた冒険者やギルドメンバーが街中にその事を話し出し、今では一大イベントのように私の活躍に胸を躍らせるように話をしていた。
「お、救世主様! 聞きましたよー! これ、少ないですが薬草です。ぜひ持って行ってください! と言っても勇者様にはこんなのむしろ必要ありませんか。あははははー!」
「勇者様聞きましたよー! いやー、我々もあのデュラハンには苦しめられていたのですが、よもや勇者様お一人で退治に行かれるとはー! 本当なら我々もご一緒したいのですが、逆に勇者様の足を引っ張っては大変ですものね。ここは勇者様が帰るまでこの街の警護に集中しますね!」
そんな感じで私を見かけるとアイテムをくれるお店の人や、ここはオレ達に任せてくれと言ってくれる兵士や冒険者と多数すれ違った。
いや、あの、全然迷惑とかじゃないので、頼むから誰か一緒に来てくださいよ。
もはや私の気分は、死刑台に上がる死刑囚のようであった。
「……このまま廃墟に行くと思わせて、どこか遠くへ行こうかな……」
「それもいいかもしれませんね。私は七海様の行くところでしたら、どこへでもお付き合い致しますので」
ボソリと呟いた私のセリフに隣を歩くイブリスが頷く。
正直なところ逃げ出したい気持ちが九割くらいあったけれど、このまま逃げるのもバツが悪すぎるので、とりあえず行くだけは行って「やっぱり無理でした」と退散しようと思った。
ちなみにデュラハン退治が決まってすぐパパからのメールが受信されて、そこには相変わらずの親馬鹿な内容が書かれていた。
『件名:祝☆七海ちゃんの初依頼!\(^^)/ 内容:七海ちゃんへ、初の依頼おめでとうー!o(*゚▽゚*)o しかもデュラハン退治なんてお父さんビックリしちゃった(>_<;) ちょっぴり心配だけど、七海ちゃんならきっと勝てるってパパ信じてるよ!o(`・д・´)o デュラハン君はいつも真面目で堅物でなかなか融通の効かない奴だけど、あいつも七海ちゃんの可愛さを目の前にしたら思わずメロメロになって手加減しちゃうかもね(^_^;) なんだったらパパの方からお手柔らかにするように言っておくからね(^_^) 追伸:パパも七海の手助けのために色々プラン練ってみたからぜひ楽しみにしててね(^_-)-☆ 追伸の追伸:そういえば、まだ返信が一度も来てないですが、もしかして返信機能が壊れていませんか? 心配です。もしそうでしたらすぐに返信してくださいね(;^_^A』
とりあえずパパの戯言は無視しつつ、デュラハンがいるという廃墟の場所をギルドから受け取った地図で確認する。
街を出る際、街の人達や兵士達がしきりに「頑張ってくださいー! 応援してますよー!」とものすごい数のエールを送ってくれたけれど、誰ひとりとして同行しようとしなかったあたり、人間という生き物の都合の良さをちょっぴり実感したのでした。
そうして、街を出て街道を歩くことしばし、たまーにゴブリンとか魔物に出くわすものの、イブリスさんのおかげでほとんど戦うことなく向こうが勝手に怯えて逃げ出した。
うん、こうやって一緒にいると護衛という役割はちゃんと果たしているんだなとイブリスさんに感謝した。ちょっとだけ。
そんなこんなで街道を歩くことしばし、目的の廃墟にたどり着く前に小さな街を発見した。
あれ? あの街以外にもちゃんと周辺に街はあったんだ。と、そう思った瞬間、あることに気づいた。
そうだ! あの街では私は救世主ということで必要以上にヨイショされてて、ギルドとかに行っても仲間を募るどころか逆に「救世主様の足を引っ張っちゃ悪いですよ」と謎の遠慮をされてしまい、一人っきりになってしまったけれど、さすがにこの街になら私の噂も広がってないだろうし、ギルドか酒場に行って仲間を募集することが出来るかも!
うん、そうなればパーティを組んでの地道なレベル上げとかも出来るかも!
あ、なんかちょっと希望が出てきたかも。ということで私は早速、その街に入ってギルドを探すのでした。
そこは街というよりも、どちらかというと村のようなところであり、森や自然と調和した人里であった。
立派な建物はいくつかあるものの、それでも私がいたあの街に比べると随分田舎な感じはあった。
しかし、さすがに魔物が徘徊する世界ではこのような村でもギルドと言った組織は必要不可欠のようであり、村に入ってすぐにギルドらしき建物を見つけて、私は迷うことなくその中に入っていく。
「し、失礼しまーす」
遠慮がちに扉を開いて中を覗くと、そこには二つの冒険者グループがいた。
一方は若い人達が集まったいかにも駆け出しと言った雰囲気の冒険者グループ。
もう片方は、それよりやや年を重ねているものの歴戦な戦士や冒険者と言った佇まいを持った冒険者グループであった。
私はその二つのグループを交互に観察し、やや躊躇いながらも熟練な雰囲気を纏った冒険者グループへと話しかけた。
「あ、あのー、すみませんー。ちょっとお願いがあるんですけど、よろしいでしょうかー?」
「んー、なんだー。嬢ちゃんー?」
ギロリとそれまで酒を飲んでいた髭面の強面なお兄さんがこちらを睨む。ちょっとというか、かなり怖い。
思わず引け腰になりつつも、ここで逃げてはいけないと必死に自分に言い聞かせる。
「そ、そのー、実は私、とある依頼を遂行中なんですけど、よろしければ、そのお手伝いをしてもらえないかなーと思いまして」
緊張のあまりか、ありのままそう言ってしまった私に対し、そのグループの冒険者達は全員が鳩が豆鉄砲を食らったような顔を向けるが、次の瞬間大爆笑をする。
「がはははは! こいつは傑作だ! 嬢ちゃんみたいなのがオレ達をスカウトしに来たのか!」
「まあ、格好を見ればいかにも駆け出しって雰囲気だが、嬢ちゃんみたいなお子様のお使いを手伝うほどオレ達も暇じゃねーんだよ」
そう言って酒の肴にされて笑われてしまう私。
いかん、前の街では持ち上げられすぎて相手が身を引いてしまったが、今度は舐められ過ぎて相手にされていない。
それに少し頭に来てしまった私は思わずポケットに入れていた勇者証明証を取り出し、それを机に叩きつける。
「た、ただの子供じゃありません! この通り、勇者の証明証を持っています!」
それを見た瞬間、それまで笑っていた冒険者達が一気に水を被せたように静まり、奥にいた冒険者グループもこちらを覗くように視線を向け、カウンターにいたマスターらしき人物ですら息を呑んでいるのが見えた。
「こいつは驚いた……。嬢ちゃん、本物の勇者なのか?」
「確かに……レベルは低いが本物みたいだぜ、これ」
マジマジと私が取り出した証明証を観察する冒険者達。
その後、何やら頷くように私にその証明証を返してくれた。
「いいだろう、勇者様の頼みなら断るわけにはいかねぇ」
「それで依頼はなんだい? 嬢ちゃん」
さっきとは打って変わったように好意的に私に協力してくれようとする冒険者達。
や、やった! これでなんとかなる見込みが出てきたかも! さすがは勇者証明証! すごいよ証明証! ここまでフリーパスだと本当に便利かも!
そんな風に私は証明証に感謝を述べながら、請けてきた依頼を口にする。
「はい! 実はこの先の廃墟にいるデュラハンを退治しに行くところなんです!」
ピキッ――。
私がそう宣言した瞬間、冒険者グループが石になり亀裂が走るような音がした。
え、ええと、今の音は一体? と私が確認するよりも早く、目の前にいた冒険者達が次々と席を立っていく。
「え、ええと、悪いな、嬢ちゃん。ちょっと急用を思い出したので、オレ達はちょっと先に行くよ」
「そうそう! オレ達も例の依頼を請けていたんだったよな!」
「あー、あれな! そうそう! まずはあれから片付けないとな!」
「というわけで悪いな。嬢ちゃん! 次会った時には必ず力になるからさ! デュラハン退治頑張れ!」
そう言って分かりやすいほど、その冒険者達は私が呟いたデュラハン退治から逃げるようにギルドを出て行った。
見ると奥にいた冒険者グループ達もすでに姿を消しており、カウンターにいたマスターですら私に背を向けてコップを拭いていた。
ああ、もうこれ完全に孤立無援だ……。
デュラハン退治なんてやっぱり請けるんじゃなかった……と激しい後悔に打ちひしがれていたその時、
「ねえ、ちょっといいかな」
気づくとひとりの青年が私の傍に立っていた。
年齢はおそらく私と同じくらい。まだ二十には達していない外見であり、黒い髪の爽やかな笑顔が印象的な人だった。
パッと見、かなりの美形。おそらくこんな子がクラスにいれば中心人物になれただろうと思える雰囲気を纏っていた。
しかし、どこか見覚えるのある顔であり、そんなことを私が考えていると、その少年は驚くべきことを口にした。
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