日本円から始まる異世界造り

雪月花

文字の大きさ
4 / 45

第4話 豪邸を作ろう②

しおりを挟む
「魔力を宿した家具ってなんだろうか」

 豪邸の説明を見た際、そこには『一部の家具には魔力が宿る』と書かれていた。
 まあ、ここは異世界であるなら、魔法や魔力といった不思議な現象があってもおかしくはないだろう。
 かくいうオレもそうした魔法といったものはアニメや漫画、小説などで色々見てきたので、実際にそれを見てみたいという衝動はあり、できれば自分も使ってみたい。
 そう思い、豪邸の中に入り家具の一つ一つを確認していくとそれらしいものを発見した。

「あ、ひょっとしてこれか?」

 それは台所に設置された奇妙な宝石であった。
 青色の宝石が流し台のようなところにはめ込んであり、そこには『水魔石』という文字が端に出ていた。
 オレはすぐさまその『水魔石』という文字をタップする。

【水魔石】
 水の魔力を宿した魔石。念じるだけで石に宿った魔力が魔石に宿った属性を生み出す。
 この魔石は『水』の属性を宿しているため、手を触れて念じるだけで水を引き起こす。なお、貯蔵された魔力が切れた際、魔石は光を失いただの石となる。

 なるほど。そういうことか。
 オレはすぐさま手を出し、その宝石に「水」と頭の中で念じる。
 すると宝石から水が溢れてきてオレの両手を洗ってくれる。
 おー、こりゃ便利だ。
 この魔石があれば、わざわざ井戸から水を汲みに行く必要もないな。
 とはいえ、あまり使いすぎると中の魔力がなくなって、ただの石になるみたいだからな。なるべく節約しながら使うか。
 なお水は手を一定距離離すか、「止まれ」と頭で念じると止まるみたいだ。

 その他にも同じく台所に『火魔石』と呼ばれる物が設置されており、こちらも『水魔石』と同じく念じると火を起こす魔石であった。
 これらは調理の際に使用するもののようだ。
 なお、風呂場にも同じく『水魔石』と『火魔石』が合わさったものがあり、それでお湯を出し、浴槽を貯める仕組みのようだった。
 その他にもシャンデリアや、天井に取り付けてあった魔石にも『光魔石』という名前があり、こちらも『水魔石』『火魔石』と同じように魔力を消費して、光を生み出す魔石のようだ。
 この豪邸に関しては、これら魔石を使って地球にいた頃と同じような生活が出来るようだ。
 とはいえ、魔石も消耗品であり、使いすぎると電灯やガスコンロと同じで寿命が来るみたいだから、その前に魔石を日本円で作る実験をしておいた方が良さそうだ。

 いや、待てよ。
 この魔石がこの世界における電気やガス、水道の代わりになるというのなら、これら魔石がある土地がどこかにあってもおかしくないのでは?
 それともこれはオレが『神の通貨』で作ったから生まれたものなんだろうか?
 うーん、あの神様曰く、この世界は七割しか出来ていないと言っていたからな。
 でも逆に考えれば七割はできているというわけで、この世界特有のそうした魔法のアイテムがどこかにある可能性はやはり高いのでは?
 ここらへんも後々調べた方がいいかもしれないな。

「とりあえず、住む場所はこの家でいいとして次は食料の問題か……」

 正直、あの豪邸にオレひとりで住むのもあれだが、問題は食料である。
 いくら住む場所が快適でも食べ物がなくては生きていけない。

 なので次は畑を作ってみようと思う。
 これも神の通貨の説明欄にはなかったが、おそらく可能なはず。
 使うお金は……まずは試しということで1円でいいか。
 そう思って財布を開くオレであったが、

「あれ?」

 そこにあった小銭の数は745円。
 つまり五百円玉が一枚と、百円玉が二枚、さらに十円玉が四枚で、五円玉が一枚である。
 一円玉がもうない。

 そうか、さっきので手持ちの一円玉は全部使ってしまったのか。
 しまったー。となると、最低の金額でも五円玉を使うしかないのか?

 そう思いながらオレは茶色く穴の空いた五円玉を見つめるものの思わず「うーん」と唸ってしまう。
 畑に五円というのも、ちょっとチャレンジが強い気もする。
 しかし、今のところまだお金には余裕があるので五円くらいならいいかも?
 いやいや、それが案外後に響くかも……。

 などと唸っていた時、ふと手に握った五円玉に奇妙な文字が浮かぶ。
 はて、これは? と覗くと、そこには意外な文字が書かれていた。

『両替可能』


残り通貨:13745円
【創造物】
豪邸×1
村×1
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

誰からも食べられずに捨てられたおからクッキーは異世界転生して肥満令嬢を幸福へ導く!

ariya
ファンタジー
誰にも食べられずゴミ箱に捨てられた「おからクッキー」は、異世界で150kgの絶望令嬢・ロザリンドと出会う。 転生チートを武器に、88kgの減量を導く! 婚約破棄され「豚令嬢」と罵られたロザリンドは、 クッキーの叱咤と分裂で空腹を乗り越え、 薔薇のように美しく咲き変わる。 舞踏会での王太子へのスカッとする一撃、 父との涙の再会、 そして最後の別れ―― 「僕を食べてくれて、ありがとう」 捨てられた一枚が紡いだ、奇跡のダイエット革命! ※カクヨム・小説家になろうでも同時掲載中 ※表紙イラストはAIに作成していただきました。

処理中です...