日本円から始まる異世界造り

雪月花

文字の大きさ
10 / 45

第10話 助っ人を作ろう

しおりを挟む
「ゴブゴブ!」
「ゴブ!」
「ゴブブッ!」

 扉越しにゴブリン達が次々と二階にある部屋を調べているのが聞こえる。
 まずい。オレのいる部屋にたどり着くのもすぐだ。
 こ、このままでは殺される!?
 慌てたオレは再び財布を手に取り、お金を取り出す。

 落ち着け。落ち着けオレ。
 オレにはこの『神の通貨』がある。
 さっきは慌てていたため、使えもしない武器を生み出したが、冷静に考えれば、この状況を打開する方法はいくらでもあるはず。
 それを生み出すんだ。

 だが、廊下を走り回るゴブリン達の足音がオレの判断を乱し、恐怖を駆り立てる。
 震える体をなんとか収めようとするが、その瞬間、オレのいる部屋の扉がガチャガチャと音を立てる。

「!?」

 や、やばい。見つかった!?
 オレがそう思うより早く、ゴブリン達が「ゴブー!」と叫び声を上げると、オレのいる部屋の扉を壊そうと武器を振り下ろし、扉をドンドン破壊していく。

 ま、まずい!? もう時間がない!?
 慌てたオレは思わず千円札を取り出し、祈るようにそれを握る。

 ああー、もうー! なんでもいいー!!
 あいつらを倒せるような何か! いや、魔物でもいい! オレを守ってくれる何かを出してくれーッ!!
 その想いのままオレは千円札を放り投げる。
 瞬間、ゴブリン達が扉を破壊し中へ入ると同時にそれは現れた。

「――!?」
「ゴブっ!?」

 眩い閃光。目も眩むような光を部屋を覆い、それが収まると一人の見知らぬ少女がオレとゴブリン達との間に立っていた。

「ふんっ」

 年の頃は恐らく十四、五。身長はオレより低く、ゴブリン達よりは高い。おそらくは年齢相応の身長だろう。ただし、胸はやたらと大きかった。
 黒髪の長い髪をツインテールで結んでおり、身なりの良さそうな制服を身に纏っている。少しゴスロリっぽいデザインであったが、それが少女の見た目によく似合っていた。
 だが、その中で最も気になったのは頭から生えた獣の耳と、スカートなら覗く黒い尻尾であった。
 あれはひょっとして……犬の耳と尻尾なのか?
 そうオレが考えていると少女はゴブリン達を見下すように鼻を鳴らす。

「お前達、下等な魔物の分際で私のご主人様に危害を加えようなんて、いい度胸じゃないの」

「ご、ゴブっ!?」

 少女の吐いたセリフを理解しているのか明らかにゴブリン達が慌てたように下がりだす。
 いや、違う。先程から少女の周囲に黒いオーラのようなものが見える。
 この世界のことをまだよく知らないオレであったが、それは明らかに超常的な何かであり、見ているだけのオレですら寒気を覚えるほどの何かだった。

「覚悟しなさい。下等種族とは言え、一片の肉片も残さず燃やし尽くしてあげる」

 見ると少女の右手からは通常ではありえない黒い炎が吹き出しており、それを見るやいなやゴブリン達が顔を真っ青にして叫びだす。

「ご、ゴブー!!」

 そのまま来た道を反転し廊下に逃げようとするが、それより早く少女の腕にまとっていた炎がゴブリン達の背中に放たれる。

「逃がさないわよ! 地獄の業火に焼かれて消えろーッ!!」

「ゴブううううううううううううううッ!!」

 その絶叫と共にゴブリン達の体は文字通り蒸発し、消え失せた。

「ふぅ……。ご主人様! 大丈夫でしたか!?」

「あ、ああ、大丈夫……だよ」

 振り返りこちらの安否を気遣う少女であったが、彼女の背後には先ほどの炎により消失した扉と壁があり、その向こう側からは気持ちのいい青空が広がっていた。


残り通貨:12621円
【創造物】
豪邸×1
村×1
野菜畑×1
りんごの樹×1
魚達がいる川×1
動物達の森×1
聖剣×1
謎の少女×1
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

誰からも食べられずに捨てられたおからクッキーは異世界転生して肥満令嬢を幸福へ導く!

ariya
ファンタジー
誰にも食べられずゴミ箱に捨てられた「おからクッキー」は、異世界で150kgの絶望令嬢・ロザリンドと出会う。 転生チートを武器に、88kgの減量を導く! 婚約破棄され「豚令嬢」と罵られたロザリンドは、 クッキーの叱咤と分裂で空腹を乗り越え、 薔薇のように美しく咲き変わる。 舞踏会での王太子へのスカッとする一撃、 父との涙の再会、 そして最後の別れ―― 「僕を食べてくれて、ありがとう」 捨てられた一枚が紡いだ、奇跡のダイエット革命! ※カクヨム・小説家になろうでも同時掲載中 ※表紙イラストはAIに作成していただきました。

処理中です...