23 / 45
第23話 街を見てまわろう
しおりを挟む
「信じられない……。ここは村はおろか人や動物すらも見かけなかった無の平原だったはず。なのに、なぜこれだけの動物や施設、村などがあるのだ……」
「ま、まあ、色々ありましたから」
驚き頭を抱えるケインを前にオレはそう答えるしかなかった。
が、しばし頭を抱えた後、ケインは何かに気づいたようにオレを見る。
「そういえば、先ほどから村人達があなたを領主と呼んでいましたが……まさかあなたがこれだけの村や牧場を彼らを率いて作ったのですか!?」
「んー、いやー、まあ、そうとも言えますね」
正確にはオレが彼らや村、牧場そのものを生み出したのですが。
さすがにこのことは黙っておいた方がいいだろうと口をつぐむ。
しかし、それを聞いてケインはなにやら尊敬の眼差しでオレを見る。
「なんて……。恐らくここまでの規模の村や牧場を作るとなったら数年以上の歳月が必要だったでしょう。しかし、なにもない場所にここまでのものを作り上げるとは……! あなたはなんという才覚と器量の持ち主なんだ! 確かに、その年齢で領主と呼ばれるだけはあります! これまで失礼な態度を取り、申し訳ありませんでした。トオル殿」
「ああ、いや、気にしないでください」
急に頭を下げて恐縮するケインをオレは止める。
しかし、実はまだ本命の案内が残っていたりする。
「ええと、それじゃあ、次は街の方を案内しますね」
「……はい?」
オレが告げた単語にケインは呆気に取られた様子を見せる。
「トオル殿。失礼ながら、今なんと?」
「えっと、ですからまだ街の案内が残っていますので、そちらの案内を致しますねと」
「ま、街!? 街ですと!? 街があるというのですか!?」
「ええ、村の先に」
驚くケインをよそにオレは村の先を指す。
しかし、ケインはなにやら苦笑いを浮かべる。
「いやいや、さすがに街というほどのものではないでしょう。この平野に村と牧場を作っただけでも大したものですよ。この上、街なんて……あっ、わかりました! あの村の倍くらいの大きさでしょう? まあ、確かにそれなら街と呼べるほどのものですな」
「はははっ」と笑うケイン。
まあ、説明するよりも見せたほうが早いか。
オレはそんな彼を連れたまま村の先にある例の街へと案内する。
「ここがそうです」
「…………………えーと」
目の前に広がるのは街を取り囲む巨大な壁。
そして、開いた扉の先には先ほど見せた村とは比べ物にならないほどの数の建物や家がそびえ立っており、大通りにはたくさんの街人、商人、冒険者、様々な人々が行き交い活気に満ち溢れていた。
「おお、領主様じゃないですか!」
「領主様。今日もお疲れ様です。隣のその方は?」
「ああ、こちらは旅人のケインさんで今は街を案内してるんだ」
「旅人ですか! それは珍しい」
「ケインさんだったか。ゆっくりしていくといいよ。この街には宿屋もたくさんあるから」
「それから料理だったらうちの食堂を利用するといいよ。隣のレストランは質はいいけど高いからねぇ」
「なにを言ってるんだ。うちは一級品の素材とコックだから、それ相応の値段なだけだ。旅人さん。疲れた体を癒すならうちの豪華料理をぜひ堪能してくれよ」
「他にも土産品なんかも色々売ってるから、ぜひうちに寄って行ってくれ」
「あ、ああ。ありがとう」
街人達の歓迎にさしものケインもうろたえた様子で答える。
やがて、街人達が去っていくとオレはそのまま目的の建物ギルド館へと向かう。
「こ、これは、ギルドなのか!?」
「あっ、やっぱりご存知でしたか?」
「あ、ああ、まあ……」
そう言って驚くケインだったが、なぜかその表情はこれまでと違いどこか居心地悪そうにソワソワしだす。
どうしたのだろうかと不思議に思ったが、あまり気にせずオレ達はそのまま中に入る。
「いらっしゃいませー。あっ、領主様ー!」
「やあ、久しぶり。調子はどうだい?」
「はい、絶好調です。今日も各ギルドが大忙しでフル稼働中。クラトスさん達も例の攻略に勤しんでます」
「そっか、順調そうでなにより」
受付嬢とのいつものやりとりに笑顔を浮かべるオレであったが、一方それを見ていたケインがなにやら慌てた様子で割って入る。
「ち、ちょっといいだろうか、トオル殿。ま、まさかとは思うが……こ、ここには“アレ”があるのか!?」
「アレ?」
なにやら抽象的な言い方に疑問を浮かべるオレ。
だが、すぐさまケインは「ハッ」と何かに気づいたように顔を背ける。
「……い、いや、なんでもない。聞かなかったことにしてくれ。仮にアレがあったとして、それを他者に漏らすわけがないな……。むしろ、こんなことを聞くのは非礼に当たる……。申し訳なかった」
「はあ?」
なにやらよく分からない納得にオレもケルちゃんもアメジストも受付嬢も疑問符を浮かべる。
それにしてアレとは一体、なんのことだろうか?
「ま、まあ、色々ありましたから」
驚き頭を抱えるケインを前にオレはそう答えるしかなかった。
が、しばし頭を抱えた後、ケインは何かに気づいたようにオレを見る。
「そういえば、先ほどから村人達があなたを領主と呼んでいましたが……まさかあなたがこれだけの村や牧場を彼らを率いて作ったのですか!?」
「んー、いやー、まあ、そうとも言えますね」
正確にはオレが彼らや村、牧場そのものを生み出したのですが。
さすがにこのことは黙っておいた方がいいだろうと口をつぐむ。
しかし、それを聞いてケインはなにやら尊敬の眼差しでオレを見る。
「なんて……。恐らくここまでの規模の村や牧場を作るとなったら数年以上の歳月が必要だったでしょう。しかし、なにもない場所にここまでのものを作り上げるとは……! あなたはなんという才覚と器量の持ち主なんだ! 確かに、その年齢で領主と呼ばれるだけはあります! これまで失礼な態度を取り、申し訳ありませんでした。トオル殿」
「ああ、いや、気にしないでください」
急に頭を下げて恐縮するケインをオレは止める。
しかし、実はまだ本命の案内が残っていたりする。
「ええと、それじゃあ、次は街の方を案内しますね」
「……はい?」
オレが告げた単語にケインは呆気に取られた様子を見せる。
「トオル殿。失礼ながら、今なんと?」
「えっと、ですからまだ街の案内が残っていますので、そちらの案内を致しますねと」
「ま、街!? 街ですと!? 街があるというのですか!?」
「ええ、村の先に」
驚くケインをよそにオレは村の先を指す。
しかし、ケインはなにやら苦笑いを浮かべる。
「いやいや、さすがに街というほどのものではないでしょう。この平野に村と牧場を作っただけでも大したものですよ。この上、街なんて……あっ、わかりました! あの村の倍くらいの大きさでしょう? まあ、確かにそれなら街と呼べるほどのものですな」
「はははっ」と笑うケイン。
まあ、説明するよりも見せたほうが早いか。
オレはそんな彼を連れたまま村の先にある例の街へと案内する。
「ここがそうです」
「…………………えーと」
目の前に広がるのは街を取り囲む巨大な壁。
そして、開いた扉の先には先ほど見せた村とは比べ物にならないほどの数の建物や家がそびえ立っており、大通りにはたくさんの街人、商人、冒険者、様々な人々が行き交い活気に満ち溢れていた。
「おお、領主様じゃないですか!」
「領主様。今日もお疲れ様です。隣のその方は?」
「ああ、こちらは旅人のケインさんで今は街を案内してるんだ」
「旅人ですか! それは珍しい」
「ケインさんだったか。ゆっくりしていくといいよ。この街には宿屋もたくさんあるから」
「それから料理だったらうちの食堂を利用するといいよ。隣のレストランは質はいいけど高いからねぇ」
「なにを言ってるんだ。うちは一級品の素材とコックだから、それ相応の値段なだけだ。旅人さん。疲れた体を癒すならうちの豪華料理をぜひ堪能してくれよ」
「他にも土産品なんかも色々売ってるから、ぜひうちに寄って行ってくれ」
「あ、ああ。ありがとう」
街人達の歓迎にさしものケインもうろたえた様子で答える。
やがて、街人達が去っていくとオレはそのまま目的の建物ギルド館へと向かう。
「こ、これは、ギルドなのか!?」
「あっ、やっぱりご存知でしたか?」
「あ、ああ、まあ……」
そう言って驚くケインだったが、なぜかその表情はこれまでと違いどこか居心地悪そうにソワソワしだす。
どうしたのだろうかと不思議に思ったが、あまり気にせずオレ達はそのまま中に入る。
「いらっしゃいませー。あっ、領主様ー!」
「やあ、久しぶり。調子はどうだい?」
「はい、絶好調です。今日も各ギルドが大忙しでフル稼働中。クラトスさん達も例の攻略に勤しんでます」
「そっか、順調そうでなにより」
受付嬢とのいつものやりとりに笑顔を浮かべるオレであったが、一方それを見ていたケインがなにやら慌てた様子で割って入る。
「ち、ちょっといいだろうか、トオル殿。ま、まさかとは思うが……こ、ここには“アレ”があるのか!?」
「アレ?」
なにやら抽象的な言い方に疑問を浮かべるオレ。
だが、すぐさまケインは「ハッ」と何かに気づいたように顔を背ける。
「……い、いや、なんでもない。聞かなかったことにしてくれ。仮にアレがあったとして、それを他者に漏らすわけがないな……。むしろ、こんなことを聞くのは非礼に当たる……。申し訳なかった」
「はあ?」
なにやらよく分からない納得にオレもケルちゃんもアメジストも受付嬢も疑問符を浮かべる。
それにしてアレとは一体、なんのことだろうか?
0
あなたにおすすめの小説
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。
日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。
両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日――
「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」
女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。
目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。
作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。
けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。
――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。
誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。
そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。
ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。
癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
誰からも食べられずに捨てられたおからクッキーは異世界転生して肥満令嬢を幸福へ導く!
ariya
ファンタジー
誰にも食べられずゴミ箱に捨てられた「おからクッキー」は、異世界で150kgの絶望令嬢・ロザリンドと出会う。
転生チートを武器に、88kgの減量を導く!
婚約破棄され「豚令嬢」と罵られたロザリンドは、
クッキーの叱咤と分裂で空腹を乗り越え、
薔薇のように美しく咲き変わる。
舞踏会での王太子へのスカッとする一撃、
父との涙の再会、
そして最後の別れ――
「僕を食べてくれて、ありがとう」
捨てられた一枚が紡いだ、奇跡のダイエット革命!
※カクヨム・小説家になろうでも同時掲載中
※表紙イラストはAIに作成していただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる