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第42話 ダンジョン攻略
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「カエデさん……。それに皆さん……」
オレは眼前に現れたカエデ率いる忍び集団の顔を見る。
彼らの顔は皆、一様に真っ直ぐな目をしていた。
「ホープの領主よ。貴殿には先日、我らを自由にしてもらった恩義がある。我らは忍び。使い捨ての道具にして、誰かに使わなければ生きる道を知らぬ者たち。故に貴殿さえ、よければ我々を使って欲しい。我らは他に行き場所がない。出来ることならば、貴殿の下に仕えることを許していただけるとありがたい」
そう言って頭を下げるカエデさんにオレは慌てる。
「えっと、どうしようか。セバス、ケルちゃん」
「そうですね。少なくとも彼らがトオル様に感謝しているのは事実のようです。私としましては彼らを雇い入れても問題ないかと思いますが」
「まあ、仮に怪しい動きをしても私がご主人様をお守りしますので」
そう言って拳を軽く振るうケルちゃん。
それを見た、カエデは即座に首を振るう。
「そちらのホープの領主殿には恩義がある。我ら一同、受けた恩をぞんざいに返す真似だけはせぬ」
そのカエデの発言には全ての忍び達が頷く。
どうやら彼女達がオレに感謝しているのは本当のようだ。
ならば、ここで断る理由もない。
「分かった。それじゃあ、力を貸してもらうよ」
「感謝します、主様。これより微力ながら我ら一同、そのお力となります」
そう言って即座に片膝をつく忍び達。ううむ、そうかしこまられると対応に困るな。
とは言え、今は目下の問題を片付けないと。
「よし、それじゃあ、セバス。ケルちゃん。オレ達はこのままダンジョンの攻略に向かおう」
「了解ですよ! ご主人様!」
「無論。微力ながらトオル様の力になります」
今、オレ達がするべきは現在、帝国に攻略中のオレが作ったダンジョンを先に攻略すること。
『漆黒の翼』なる連中がどれほどの強者かは分からないが、さすがにオレが作った領土のダンジョンを帝国に完全に奪われるわけにはいかない。
こちらとしてはオレ達がダンジョンを完全制覇したあとも帝国との共有は変えないつもりだが、向こうがそうするとは限らない。
特に今回、ダンジョン踏破者なる連中を引っ張ってきたということは、本格的にオレの領土への進出をはかっているのかもしれない。
いずれにしても、このまま放置するのは最悪の結果を招く。
ならば、こちらが先にダンジョンを制覇する。
正直、ダンジョンはこの町の住人や冒険者達の自由に攻略させたかったが、こうなっては仕方がない。
しかし、問題は戦力だ。
塔の監視をしているメイド達はこの隙に帝国が動かないとも限らないから、監視を続けてもらうとして、この館や町の護衛、何かあった時のためにもガーネット達にも待機していて欲しい。
となると、やはりケルちゃん、セバス、それにここにいる忍び達で行くしかないか。
ダンジョン踏破者とやらが、どれほどの実力なのか未知数だが、最終的にはケルちゃん一人でもなんとかなる気がする。
そう確認したオレはこの場にいる全員に指示を伝え、そのままダンジョンへと向かうのだった。
◇ ◇ ◇
「ここが十階層か……」
そう言ってオレ達はすぐさま十階層へと足を踏み入れる。
すでに九階層まではクラトス達が道を開いていたため、各階層へ移動するための転移陣を使い、すぐさま十階層へと降りられた。
だが、ここから先は完全に未知数。
ギルドにもこの階層の地図はなく、どのような魔物、トラップがあるのかはこのダンジョンを作ったオレですら不明である。
「主殿。どうやら、先客がいるようです」
そう言って忍びの一人が地面を調べながら、オレに声をかける。
見るとそこには複数の足跡が奥へと続いていた。
「恐らく例の『漆黒の翼』という連中でしょう。急いだほうがいいでしょう。彼らがこの階層のボス、ダンジョンボスを倒して、ここを制覇してしまう前に」
セバスの言うことに頷くオレ達。
確かに、今は一刻も早く最深部を目指すこと。途中にある宝箱や魔物は無視してもいい。オレ達の目的はあくまでも、このダンジョンを制覇すること。
そう思い、すぐさま移動を開始するオレ達。
だが、ここはダンジョン。やはり、そう上手く進行できるはずもなく、通路を少し歩くと奥から無数の魔物が現れる。
それもただの魔物ではなかった。
「うお! こいつらは……!」
それは体長三メートルはある屈強な人型の牛の魔物。その隣には全身を鎧に包み、首なしの馬に乗った首なしの騎士。更にその隣には一つ目の巨人。
「ミノタウロス、デュラハン、サイクロプス。さすがはダンジョンの最下層。どれもダンジョンボスとして出てきてもおかしくはない魔物ばかりです」
魔物の姿を見て、即座にセバスがそう反応する。
ううむ。やはり最下層、これは普通に攻略するだけでもかなりの日数がいるのではないのか?
そう思ったオレだが、その瞬間、背後にいた忍び達が即座に動く。
手に持った武器でミノタウロス、デュラハン、サイクロプス達へと斬り掛かる。
いくら忍び達が強いとはいえ相手は上級魔物。ケルちゃん達にも手伝ってもらおうと思ったが、オレのその心配は杞憂となる。
瞬時に魔物達へと斬りかかった忍び達は無数の残像を発生させると縦横無尽に魔物達を四方から囲むように斬り掛かる。
それはまるで一陣の風のように魔物達の間を吹き抜けると、次の瞬間には粉々に砕かれた魔物達の死体が地面に散らばる。
常人のオレにはまさに一瞬の出来事にしか映らなかった。
え、こいつらってこんなに強かったの? 唖然とするオレにカエデ達が振り返る。
「片付きました。主殿」
「あ、ああ、それはわかったけれど、それにしても君達ってそんなに強かったの?」
驚くオレにしかし、カエデ達もどこか釈然としない様子で返す。
「それが……奇妙なことに先日、主殿に枷を外してもらって以来、我らの能力が向上したように見受けられます。我ら自体に異常はないのですが、これは恐らく、あの時、主殿が我らを解放するのに使って何かが関係しているのではと」
オレが忍び達を解放するのに使った何か?
それってひょっとして……神の通貨の事か?
確かに、忍び達を解放するのに数十円ばかり使用した。枷を外すのにそれなりの値段がいるのではと思ったので一桁ではなく二桁の通貨を使用した。
もしかして、その時の余った金額がそのまま忍び達全員のスペックの上昇に繋がったのだろうか?
そう考えるオレに隣にいたセバスも同じ考えだったのか同意するように頷く。
なるほど、これは思わぬ副産物だ。
とは言え、このダンジョン攻略では逆に助かる。
オレ達はその後も十階層の攻略へと向かい、道中に出てくる魔物達は忍び達の手によって返り討ちとなるのだった。
オレは眼前に現れたカエデ率いる忍び集団の顔を見る。
彼らの顔は皆、一様に真っ直ぐな目をしていた。
「ホープの領主よ。貴殿には先日、我らを自由にしてもらった恩義がある。我らは忍び。使い捨ての道具にして、誰かに使わなければ生きる道を知らぬ者たち。故に貴殿さえ、よければ我々を使って欲しい。我らは他に行き場所がない。出来ることならば、貴殿の下に仕えることを許していただけるとありがたい」
そう言って頭を下げるカエデさんにオレは慌てる。
「えっと、どうしようか。セバス、ケルちゃん」
「そうですね。少なくとも彼らがトオル様に感謝しているのは事実のようです。私としましては彼らを雇い入れても問題ないかと思いますが」
「まあ、仮に怪しい動きをしても私がご主人様をお守りしますので」
そう言って拳を軽く振るうケルちゃん。
それを見た、カエデは即座に首を振るう。
「そちらのホープの領主殿には恩義がある。我ら一同、受けた恩をぞんざいに返す真似だけはせぬ」
そのカエデの発言には全ての忍び達が頷く。
どうやら彼女達がオレに感謝しているのは本当のようだ。
ならば、ここで断る理由もない。
「分かった。それじゃあ、力を貸してもらうよ」
「感謝します、主様。これより微力ながら我ら一同、そのお力となります」
そう言って即座に片膝をつく忍び達。ううむ、そうかしこまられると対応に困るな。
とは言え、今は目下の問題を片付けないと。
「よし、それじゃあ、セバス。ケルちゃん。オレ達はこのままダンジョンの攻略に向かおう」
「了解ですよ! ご主人様!」
「無論。微力ながらトオル様の力になります」
今、オレ達がするべきは現在、帝国に攻略中のオレが作ったダンジョンを先に攻略すること。
『漆黒の翼』なる連中がどれほどの強者かは分からないが、さすがにオレが作った領土のダンジョンを帝国に完全に奪われるわけにはいかない。
こちらとしてはオレ達がダンジョンを完全制覇したあとも帝国との共有は変えないつもりだが、向こうがそうするとは限らない。
特に今回、ダンジョン踏破者なる連中を引っ張ってきたということは、本格的にオレの領土への進出をはかっているのかもしれない。
いずれにしても、このまま放置するのは最悪の結果を招く。
ならば、こちらが先にダンジョンを制覇する。
正直、ダンジョンはこの町の住人や冒険者達の自由に攻略させたかったが、こうなっては仕方がない。
しかし、問題は戦力だ。
塔の監視をしているメイド達はこの隙に帝国が動かないとも限らないから、監視を続けてもらうとして、この館や町の護衛、何かあった時のためにもガーネット達にも待機していて欲しい。
となると、やはりケルちゃん、セバス、それにここにいる忍び達で行くしかないか。
ダンジョン踏破者とやらが、どれほどの実力なのか未知数だが、最終的にはケルちゃん一人でもなんとかなる気がする。
そう確認したオレはこの場にいる全員に指示を伝え、そのままダンジョンへと向かうのだった。
◇ ◇ ◇
「ここが十階層か……」
そう言ってオレ達はすぐさま十階層へと足を踏み入れる。
すでに九階層まではクラトス達が道を開いていたため、各階層へ移動するための転移陣を使い、すぐさま十階層へと降りられた。
だが、ここから先は完全に未知数。
ギルドにもこの階層の地図はなく、どのような魔物、トラップがあるのかはこのダンジョンを作ったオレですら不明である。
「主殿。どうやら、先客がいるようです」
そう言って忍びの一人が地面を調べながら、オレに声をかける。
見るとそこには複数の足跡が奥へと続いていた。
「恐らく例の『漆黒の翼』という連中でしょう。急いだほうがいいでしょう。彼らがこの階層のボス、ダンジョンボスを倒して、ここを制覇してしまう前に」
セバスの言うことに頷くオレ達。
確かに、今は一刻も早く最深部を目指すこと。途中にある宝箱や魔物は無視してもいい。オレ達の目的はあくまでも、このダンジョンを制覇すること。
そう思い、すぐさま移動を開始するオレ達。
だが、ここはダンジョン。やはり、そう上手く進行できるはずもなく、通路を少し歩くと奥から無数の魔物が現れる。
それもただの魔物ではなかった。
「うお! こいつらは……!」
それは体長三メートルはある屈強な人型の牛の魔物。その隣には全身を鎧に包み、首なしの馬に乗った首なしの騎士。更にその隣には一つ目の巨人。
「ミノタウロス、デュラハン、サイクロプス。さすがはダンジョンの最下層。どれもダンジョンボスとして出てきてもおかしくはない魔物ばかりです」
魔物の姿を見て、即座にセバスがそう反応する。
ううむ。やはり最下層、これは普通に攻略するだけでもかなりの日数がいるのではないのか?
そう思ったオレだが、その瞬間、背後にいた忍び達が即座に動く。
手に持った武器でミノタウロス、デュラハン、サイクロプス達へと斬り掛かる。
いくら忍び達が強いとはいえ相手は上級魔物。ケルちゃん達にも手伝ってもらおうと思ったが、オレのその心配は杞憂となる。
瞬時に魔物達へと斬りかかった忍び達は無数の残像を発生させると縦横無尽に魔物達を四方から囲むように斬り掛かる。
それはまるで一陣の風のように魔物達の間を吹き抜けると、次の瞬間には粉々に砕かれた魔物達の死体が地面に散らばる。
常人のオレにはまさに一瞬の出来事にしか映らなかった。
え、こいつらってこんなに強かったの? 唖然とするオレにカエデ達が振り返る。
「片付きました。主殿」
「あ、ああ、それはわかったけれど、それにしても君達ってそんなに強かったの?」
驚くオレにしかし、カエデ達もどこか釈然としない様子で返す。
「それが……奇妙なことに先日、主殿に枷を外してもらって以来、我らの能力が向上したように見受けられます。我ら自体に異常はないのですが、これは恐らく、あの時、主殿が我らを解放するのに使って何かが関係しているのではと」
オレが忍び達を解放するのに使った何か?
それってひょっとして……神の通貨の事か?
確かに、忍び達を解放するのに数十円ばかり使用した。枷を外すのにそれなりの値段がいるのではと思ったので一桁ではなく二桁の通貨を使用した。
もしかして、その時の余った金額がそのまま忍び達全員のスペックの上昇に繋がったのだろうか?
そう考えるオレに隣にいたセバスも同じ考えだったのか同意するように頷く。
なるほど、これは思わぬ副産物だ。
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