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16 飲み会
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「ふぅ~、今日も終わったな。お疲れ様」
「うむ。お疲れなのじゃ」
あれから数日。佳祐と刑部姫はいつものように南雲の部屋にアシスタントに行き、今日もその日の原稿を全て描き終え、手伝いを終了する。
「ああ、お疲れ様。おかげで助かったよ。締切まではまだもう少し時間あるし、あとはこっちでなんとかできる。今日でヘルプは終わっていいぜ。二人とも、お疲れ様」
そう言って南雲は受け取った原稿を確認した後、二人にそう伝える。
その際「給料は後日、口座に振り込むからお前の口座を教えてくれ」と南雲が佳祐に伝え、佳祐はそれに対し「それなら、あとでスマホで伝えるよ」と返す。
「それじゃあ、今日でアシスタントは終わりだな。こっちも色々と学ばせてもらったよ。南雲。また機会があったらよろしく頼むよ」
「うむ。たまにはこうして他人の漫画の手伝いをするのも楽しいものじゃ。じゃが、次はわらわ達の漫画に集中したいものじゃ。な、佳祐よ」
「そりゃ勿論」
そう言って二人が部屋から出ていこうとした際、南雲が二人の足を止める。
「ちょっと待て、佳祐」
「ん、どうした? まだ何かあるのか?」
振り返る佳祐に南雲は手に持っていたペンを置いて告げる。
「このあと、ちょっと時間ないか? よければ久しぶりに飲みに行かないか」
そう言って南雲は佳祐に飲みへの誘いをかけた。
◇ ◇ ◇
「~~ぷはぁ! やっぱここの居酒屋のビールは格別だなぁ! おい、佳祐! お前ももっと飲め! 今日はオレのおごりだからじゃんじゃん飲め!」
「飲めってお前、まだ明日も仕事が残ってるんだろう? 大丈夫なのか?」
「大丈夫だって! お前達の協力のおかげで逆に余裕が出来たくらいだ! 明日酔いつぶれても明後日で原稿は仕上げられる。つーわけでいいから飲めよ!」
「うわっと、注ぎすぎだよ。南雲」
その後、二人はかつての行きつけであった居酒屋『夕闇』を訪れる。
そこはかつて二人がまだ漫画家を目指していた際、よく通っていた行きつけの店でもあった。
無論、途中まで刑部姫も一緒だったのだが明らかに見た目が中学、高校生にしか見えないため、一緒に居酒屋に入るのはまずいと佳祐と南雲に言われた。
が、本人は最後まで抵抗し、一緒に付いてくると駄々をこねたが「あとで旨い酒を買って帰る」という佳祐の言葉に渋々と刑部姫は納得し、先にマンションへと戻ったのである。
「いや、しかしお前、マジであの子どこで見つけた?」
「どこでって……そりゃ親戚の子で……」
「ふーん、まあそういうことにしておいてやるよ」
酒が入り、ほどよく酔ったのか顔を赤らめながらそう頷く南雲であったが、その瞳の奥にある理性は薄れておらず、それを見た佳祐がどこまで気づいているのかと一瞬背中に冷や汗が流れる。
「……マジな話。あの子は掘り出し物だ。十年にひとりの逸材だぞ」
そう言って真剣な表情で南雲は呟く。
「あの子、オレのとこにアシスタントに来た時点で漫画の経験ほとんどなかっただろう」
「え、なんでそんな……?」
「見りゃ分かる。こっちはプロだぞ。漫画にどれだけ接してきたか、そいつが漫画を描く態度で分かる。下書きは上手く、ペンの扱いも見事なもんだった。だが握り方がまだどことなくぎこちない。あれはつい最近漫画を描き始めた奴の手だ。その証拠にあいつの手は『綺麗』すぎる。普通あれだけ上手ければペンダコや手に擦り付いた墨とかがあるはずだ。そういうのが一切なかったからな」
そう言ってビール瓶を持つ南雲の手はあっちこっちが何かにぶつけたような小さなタコや墨が染み付いて汚れ切った手になっており、それらは洗ってもどことなく歪な手の甲、手のひらとなっていた。
無論それは佳祐も似たようなものであり、大なり小なりこれまで描いてきた漫画人生の跡が彼ら漫画家の手に染み付いていた。
「それにトーンとか基本的なことも知らなかったらな。オレが見た限り、あの子が漫画に接したのは一ヶ月ちょいだろう。それであの上手さだ。ハッキリ言って化物だぞ」
「……確かに化物かもな」
無論、それは比喩などではなく事実、刑部姫は『城化物』と呼ばれるあやかしであった。
しかし、それを南雲に伝えることはない。
「けどまあ、あの子に言われて色々目が覚めたよ。いや、思い出したっていうのかオレが漫画を描き始めた理由」
そう言って南雲はビールを片手にかつての自分を振り返る。
「最初は雑誌に自分の漫画が載るのが夢だったな。お前と一緒に高校で漫画描いてた時も」
「……そうだな」
「はじめての合同合作の漫画、覚えてるか?」
「ああ、勿論。プリンセスプリンセスだろう」
「懐かしいなー! 当時はオレとお前、二人でタッグを組んで漫画家目指してたよな!」
「ああ。けど、それ最終選考にも残らず、返ってきた原稿にはボロクソな感想が書かれてたじゃん」
「あったあった。「勢いだけで話に脈絡がない」とか」
「あの時はオレもお前もめちゃくちゃ悔しかったよなー」
「確かに。それで高校出てからはお互いに漫画描きあってどちらが先にデビューするかの勝負もしてたよな」
「ああ、けど、デビューはオレが先だよな」
「あ? 何言ってんだよ! 先に賞をもらったのはオレの方だぞ!」
「いいや、オレの方が担当つくのが早かった!」
「それを言うならオレの方が連載するのが――」
そう言ってお互いにオレがオレがと言い合う二人であったが、そんなお互いを見ながら二人は当時ここでよく今描いている漫画について議論したり、デビューしてからもたまにここであってはお互いの漫画にダメだしし合ったのを思い出し、二人して大笑いをするのであった。
「うむ。お疲れなのじゃ」
あれから数日。佳祐と刑部姫はいつものように南雲の部屋にアシスタントに行き、今日もその日の原稿を全て描き終え、手伝いを終了する。
「ああ、お疲れ様。おかげで助かったよ。締切まではまだもう少し時間あるし、あとはこっちでなんとかできる。今日でヘルプは終わっていいぜ。二人とも、お疲れ様」
そう言って南雲は受け取った原稿を確認した後、二人にそう伝える。
その際「給料は後日、口座に振り込むからお前の口座を教えてくれ」と南雲が佳祐に伝え、佳祐はそれに対し「それなら、あとでスマホで伝えるよ」と返す。
「それじゃあ、今日でアシスタントは終わりだな。こっちも色々と学ばせてもらったよ。南雲。また機会があったらよろしく頼むよ」
「うむ。たまにはこうして他人の漫画の手伝いをするのも楽しいものじゃ。じゃが、次はわらわ達の漫画に集中したいものじゃ。な、佳祐よ」
「そりゃ勿論」
そう言って二人が部屋から出ていこうとした際、南雲が二人の足を止める。
「ちょっと待て、佳祐」
「ん、どうした? まだ何かあるのか?」
振り返る佳祐に南雲は手に持っていたペンを置いて告げる。
「このあと、ちょっと時間ないか? よければ久しぶりに飲みに行かないか」
そう言って南雲は佳祐に飲みへの誘いをかけた。
◇ ◇ ◇
「~~ぷはぁ! やっぱここの居酒屋のビールは格別だなぁ! おい、佳祐! お前ももっと飲め! 今日はオレのおごりだからじゃんじゃん飲め!」
「飲めってお前、まだ明日も仕事が残ってるんだろう? 大丈夫なのか?」
「大丈夫だって! お前達の協力のおかげで逆に余裕が出来たくらいだ! 明日酔いつぶれても明後日で原稿は仕上げられる。つーわけでいいから飲めよ!」
「うわっと、注ぎすぎだよ。南雲」
その後、二人はかつての行きつけであった居酒屋『夕闇』を訪れる。
そこはかつて二人がまだ漫画家を目指していた際、よく通っていた行きつけの店でもあった。
無論、途中まで刑部姫も一緒だったのだが明らかに見た目が中学、高校生にしか見えないため、一緒に居酒屋に入るのはまずいと佳祐と南雲に言われた。
が、本人は最後まで抵抗し、一緒に付いてくると駄々をこねたが「あとで旨い酒を買って帰る」という佳祐の言葉に渋々と刑部姫は納得し、先にマンションへと戻ったのである。
「いや、しかしお前、マジであの子どこで見つけた?」
「どこでって……そりゃ親戚の子で……」
「ふーん、まあそういうことにしておいてやるよ」
酒が入り、ほどよく酔ったのか顔を赤らめながらそう頷く南雲であったが、その瞳の奥にある理性は薄れておらず、それを見た佳祐がどこまで気づいているのかと一瞬背中に冷や汗が流れる。
「……マジな話。あの子は掘り出し物だ。十年にひとりの逸材だぞ」
そう言って真剣な表情で南雲は呟く。
「あの子、オレのとこにアシスタントに来た時点で漫画の経験ほとんどなかっただろう」
「え、なんでそんな……?」
「見りゃ分かる。こっちはプロだぞ。漫画にどれだけ接してきたか、そいつが漫画を描く態度で分かる。下書きは上手く、ペンの扱いも見事なもんだった。だが握り方がまだどことなくぎこちない。あれはつい最近漫画を描き始めた奴の手だ。その証拠にあいつの手は『綺麗』すぎる。普通あれだけ上手ければペンダコや手に擦り付いた墨とかがあるはずだ。そういうのが一切なかったからな」
そう言ってビール瓶を持つ南雲の手はあっちこっちが何かにぶつけたような小さなタコや墨が染み付いて汚れ切った手になっており、それらは洗ってもどことなく歪な手の甲、手のひらとなっていた。
無論それは佳祐も似たようなものであり、大なり小なりこれまで描いてきた漫画人生の跡が彼ら漫画家の手に染み付いていた。
「それにトーンとか基本的なことも知らなかったらな。オレが見た限り、あの子が漫画に接したのは一ヶ月ちょいだろう。それであの上手さだ。ハッキリ言って化物だぞ」
「……確かに化物かもな」
無論、それは比喩などではなく事実、刑部姫は『城化物』と呼ばれるあやかしであった。
しかし、それを南雲に伝えることはない。
「けどまあ、あの子に言われて色々目が覚めたよ。いや、思い出したっていうのかオレが漫画を描き始めた理由」
そう言って南雲はビールを片手にかつての自分を振り返る。
「最初は雑誌に自分の漫画が載るのが夢だったな。お前と一緒に高校で漫画描いてた時も」
「……そうだな」
「はじめての合同合作の漫画、覚えてるか?」
「ああ、勿論。プリンセスプリンセスだろう」
「懐かしいなー! 当時はオレとお前、二人でタッグを組んで漫画家目指してたよな!」
「ああ。けど、それ最終選考にも残らず、返ってきた原稿にはボロクソな感想が書かれてたじゃん」
「あったあった。「勢いだけで話に脈絡がない」とか」
「あの時はオレもお前もめちゃくちゃ悔しかったよなー」
「確かに。それで高校出てからはお互いに漫画描きあってどちらが先にデビューするかの勝負もしてたよな」
「ああ、けど、デビューはオレが先だよな」
「あ? 何言ってんだよ! 先に賞をもらったのはオレの方だぞ!」
「いいや、オレの方が担当つくのが早かった!」
「それを言うならオレの方が連載するのが――」
そう言ってお互いにオレがオレがと言い合う二人であったが、そんなお互いを見ながら二人は当時ここでよく今描いている漫画について議論したり、デビューしてからもたまにここであってはお互いの漫画にダメだしし合ったのを思い出し、二人して大笑いをするのであった。
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