20 / 46
20 白縫雪芽
しおりを挟む
「これが噂のオレから連載を奪った新人の漫画か……名前はえっと……白縫(しらぬい)雪芽(ゆきめ)? 女性かな? いや、まあ、漫画家ならペンネームを使うのは当然だし、名前の印象から男女を決めれないのが漫画家の世界だからなぁ」
なにやら呟きながら佳祐は今月発売された『月刊アルファ』を手に取り、それを読み始める。
無論、まず最初に読むのは新人・白縫雪芽による新連載『スノーアイドルフェアリー』であった。
「わらわも一緒に読むぞ! こやつの漫画のせいでわらわ達の漫画がおじゃんになったのじゃろう!」
部屋の中心で座禅を組み雑誌を読み始める佳祐の背中から刑部姫がそれを覗くように見る。
内容は妖精と呼ばれる少女が人間に憧れ、人間界でアイドルを目指す話であった。
「作風は女の子を主人公にした明るい話だな。まあ、ここらへんはオレだけでなくいろんな漫画に当てはまる点だが……」
「うむ。掴みはよいな。話もわかりやすくて入りやすい。絵は……た、確かにうまいが、今のわらわならわらわの方が上じゃ!」
そう言って強がる刑部姫であったが、佳祐からすればこの新人漫画家の絵はかなりのレベルであり、担当の言ったとおり確かに新人離れしている。
そして、それは読み進めていく内に絵だけでなく、ストーリーもそうだと思い知る。
「…………面白い」
ペラペラと読み進めていく佳祐。
最初はいかにこの漫画の欠点を見つけて、自分達の漫画の方が優れているのか。そうした浅ましい点を見つけるべく読み出したのだが気づくと佳祐はそんな当初の目的を忘れて目の前の漫画に夢中になり、読み始めていた。そして、それは刑部姫も一緒であった。
「あっ! ちょっと待て、佳祐よ! 読むのが早いぞ! わらわはまださっきのページのコマを全部見ておらぬ!」
「そうは言うけど気になるんだよ! このあとの続きが!」
「ええい、それはわらわもじゃ! だからちゃんと読ませよ!」
「なら、オレが読んだ後で読めばいいじゃないか!」
「それでは我慢できぬのじゃー! ええい、ならば先にわらわに読ませろー!」
「なんでそうなるんだよ!? 今読んでるのオレなんだよー!!」
最終的には二人して先の展開が気になるばかりに雑誌の奪い合いとなる。
そうして、二人が漫画を読み終わる頃、そこにあったのは完全なる敗北感であった。
「……確かにこりゃ編集部の判断は正しい。作風というか、話の流れがオレがこれまで描いてきた漫画に似ている。その上でそれを更に面白く昇華してて、更に絵もオレの数倍上手い……。こりゃオレの方がパチもんだわ」
「うーむ、悔しいがこれは確かに面白いな……。わらわもあの時、持っていった原稿は世界一面白いと思っておったが、これと比べると正直分からぬ。じゃが絵に関して言えばわらわの方が上じゃ。少なくとも今はな」
そう言って強がる刑部姫であったが、後半はセリフはやや自信なさげであり、佳祐も現状この漫画の作者と刑部姫、どちらが上手いかは一概に言えなかった。
そもそも漫画に世界において、誰が誰よりも上手いというのは主観でしかなく、それこそ漫画界で一番絵の上手い人というのは基本決めることができないものである。
なによりも漫画はその絵と内容があっているかあっていないかも重要であり、それを言えばこの新人の漫画家は自分の話に合う作画を見事に表現している。
それを思えば、佳祐と刑部姫の絵と話はまだどこか噛み合っていない部分もあった。
自分達の欠点をこの漫画を通して見せられたようであり、二人は尚の事へこみ床に倒れていた。
「……はあ、とはいえいつまでもこうして負けた気分のまま突っ伏してるわけにもいかないな。逆にオレはこれを見せられてよかったと思うよ。おかげでこの漫画以上の漫画を描きたいと思わされた」
「! 本当か、佳祐!」
そう言って立ち上がる佳祐に対し、刑部姫も思わず上体を起こし尋ねる。
「ああ、今はまだ内容は決めてないけれど近いうちに前に持ち込んだ原稿以上の……いや、この『スノーアイドルフェアリー』以上の話を考えてやる!」
「おおおおおおおおおお!」
そう宣言する佳祐にキラキラとして目を向ける刑部姫。
しかし、そんな彼女からの視線に対し、佳祐は申し訳なさそうに告げる。
「って、言っても……まだそのネタも話も思い浮かばないんだけどな……」
「構わぬ構わぬ! アイディアとやらがそうそう簡単に出てこないことはわらわも知っておる! それに連載会議まではまだ三ヶ月以上もあるのだろう? ならば、それまでに良い話を考えればよいだけじゃ」
そう言って笑って答える刑部姫に佳祐もまた笑みを返す。
「それじゃあ、オレはちょっとネタ探しにそこらへん散歩してくるよ。刑部姫はどうする?」
「そうじゃのぉ……。わらわはもう少しこの漫画を見てみる。そのあとでわらわももう一度自分の絵柄を確認しようと思う」
「そっか、分かった」
刑部姫からの返答を聞き、佳祐はそのまま軽く着替えると玄関へと向かい、外へと出る。
佳祐がいなくなるのを見送った後、刑部姫は再び雑誌を手に新連載の漫画を見るが、その視線は作者・白縫雪芽を見ていた。
「白縫雪芽……しかし、気のせいじゃろうか? こやつの名前、どこかで聞いたような気がするんじゃが……?」
そう言って首をひねる刑部姫であったが、その答えは出ることはなかった。
なにやら呟きながら佳祐は今月発売された『月刊アルファ』を手に取り、それを読み始める。
無論、まず最初に読むのは新人・白縫雪芽による新連載『スノーアイドルフェアリー』であった。
「わらわも一緒に読むぞ! こやつの漫画のせいでわらわ達の漫画がおじゃんになったのじゃろう!」
部屋の中心で座禅を組み雑誌を読み始める佳祐の背中から刑部姫がそれを覗くように見る。
内容は妖精と呼ばれる少女が人間に憧れ、人間界でアイドルを目指す話であった。
「作風は女の子を主人公にした明るい話だな。まあ、ここらへんはオレだけでなくいろんな漫画に当てはまる点だが……」
「うむ。掴みはよいな。話もわかりやすくて入りやすい。絵は……た、確かにうまいが、今のわらわならわらわの方が上じゃ!」
そう言って強がる刑部姫であったが、佳祐からすればこの新人漫画家の絵はかなりのレベルであり、担当の言ったとおり確かに新人離れしている。
そして、それは読み進めていく内に絵だけでなく、ストーリーもそうだと思い知る。
「…………面白い」
ペラペラと読み進めていく佳祐。
最初はいかにこの漫画の欠点を見つけて、自分達の漫画の方が優れているのか。そうした浅ましい点を見つけるべく読み出したのだが気づくと佳祐はそんな当初の目的を忘れて目の前の漫画に夢中になり、読み始めていた。そして、それは刑部姫も一緒であった。
「あっ! ちょっと待て、佳祐よ! 読むのが早いぞ! わらわはまださっきのページのコマを全部見ておらぬ!」
「そうは言うけど気になるんだよ! このあとの続きが!」
「ええい、それはわらわもじゃ! だからちゃんと読ませよ!」
「なら、オレが読んだ後で読めばいいじゃないか!」
「それでは我慢できぬのじゃー! ええい、ならば先にわらわに読ませろー!」
「なんでそうなるんだよ!? 今読んでるのオレなんだよー!!」
最終的には二人して先の展開が気になるばかりに雑誌の奪い合いとなる。
そうして、二人が漫画を読み終わる頃、そこにあったのは完全なる敗北感であった。
「……確かにこりゃ編集部の判断は正しい。作風というか、話の流れがオレがこれまで描いてきた漫画に似ている。その上でそれを更に面白く昇華してて、更に絵もオレの数倍上手い……。こりゃオレの方がパチもんだわ」
「うーむ、悔しいがこれは確かに面白いな……。わらわもあの時、持っていった原稿は世界一面白いと思っておったが、これと比べると正直分からぬ。じゃが絵に関して言えばわらわの方が上じゃ。少なくとも今はな」
そう言って強がる刑部姫であったが、後半はセリフはやや自信なさげであり、佳祐も現状この漫画の作者と刑部姫、どちらが上手いかは一概に言えなかった。
そもそも漫画に世界において、誰が誰よりも上手いというのは主観でしかなく、それこそ漫画界で一番絵の上手い人というのは基本決めることができないものである。
なによりも漫画はその絵と内容があっているかあっていないかも重要であり、それを言えばこの新人の漫画家は自分の話に合う作画を見事に表現している。
それを思えば、佳祐と刑部姫の絵と話はまだどこか噛み合っていない部分もあった。
自分達の欠点をこの漫画を通して見せられたようであり、二人は尚の事へこみ床に倒れていた。
「……はあ、とはいえいつまでもこうして負けた気分のまま突っ伏してるわけにもいかないな。逆にオレはこれを見せられてよかったと思うよ。おかげでこの漫画以上の漫画を描きたいと思わされた」
「! 本当か、佳祐!」
そう言って立ち上がる佳祐に対し、刑部姫も思わず上体を起こし尋ねる。
「ああ、今はまだ内容は決めてないけれど近いうちに前に持ち込んだ原稿以上の……いや、この『スノーアイドルフェアリー』以上の話を考えてやる!」
「おおおおおおおおおお!」
そう宣言する佳祐にキラキラとして目を向ける刑部姫。
しかし、そんな彼女からの視線に対し、佳祐は申し訳なさそうに告げる。
「って、言っても……まだそのネタも話も思い浮かばないんだけどな……」
「構わぬ構わぬ! アイディアとやらがそうそう簡単に出てこないことはわらわも知っておる! それに連載会議まではまだ三ヶ月以上もあるのだろう? ならば、それまでに良い話を考えればよいだけじゃ」
そう言って笑って答える刑部姫に佳祐もまた笑みを返す。
「それじゃあ、オレはちょっとネタ探しにそこらへん散歩してくるよ。刑部姫はどうする?」
「そうじゃのぉ……。わらわはもう少しこの漫画を見てみる。そのあとでわらわももう一度自分の絵柄を確認しようと思う」
「そっか、分かった」
刑部姫からの返答を聞き、佳祐はそのまま軽く着替えると玄関へと向かい、外へと出る。
佳祐がいなくなるのを見送った後、刑部姫は再び雑誌を手に新連載の漫画を見るが、その視線は作者・白縫雪芽を見ていた。
「白縫雪芽……しかし、気のせいじゃろうか? こやつの名前、どこかで聞いたような気がするんじゃが……?」
そう言って首をひねる刑部姫であったが、その答えは出ることはなかった。
0
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる