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「………………はあ」
「………………むぅ」
担当・美和の電話より翌日。
佳祐と刑部姫は机に突っ伏したまま生気のない顔で明後日の方を見ていた。
「……あれだけの自信作だったのに……」
「……わらわもこれでようやく漫画が描けると思ったのに……」
「まさかそれが……」
「……落ちるとはのぉ」
共に「はぁ」とでっかいため息をつきながら、昨日の会話を思い出す。
◇ ◇ ◇
「……へ? 落ちた?」
『いやー! すまん! 出来は間違いなく君が出してきた原稿の中で一番だった! けれどなー、他の編集がなー納得しなかったというか、今回は見送りになった! いやー、本当にすまん!』
電話の先で必死に謝る美和であったが、佳祐は連載会議に通らなかったという一言と共に足場が崩れたようにその場にへたりこんだ。
「……ど、どうして……どうしてですか、美和さん!? あの原稿は今までのオレの原稿で一番だったんでしょう!? 絵だって今までのオレの下手くそな絵じゃなく、こっちの刑部姫が描いた数段上手い絵でしたよ! 美和さんだって言ってたじゃないですか! これなら連載に通るって!」
『いやー、そうなんだがー、ちょっと予想外のことが起きて……』
「予想外のことってなんですか!?」
思わずそう問いかける佳祐に対し、美和は言いにくそうに告げる。
『先月の新人賞。それで賞を獲った新人がいたんだが、そいつが連載用の原稿を上げてきたんだが、その内容が君の持ってきた漫画とモロにかぶってたんだよ』
「被って……!?」
思わぬ回答に息を呑む佳祐。しかし、諦めきれないと続ける。
「か、かぶってるからなんですか!? それならオレ達の漫画の方が内容も絵もそっちより――」
『いいや、相手の漫画の方が上だった。相手は絵も上手いし、話の統合性も取れている。なによりも新人にしてはあまりに出来すぎた漫画だった。編集部も何度も打ち切られた作家の新連載よりも、先日新人賞で賞を獲った期待の新人漫画家に連載をさせた方が花もあるし見込みがあるとのことだ。それにさっきも言ったとおり、その子の漫画は君の漫画に似ている。編集部は同じ作家は二人もいらないと切るなら君の方と判断をしたんだ』
「そ、そんな……」
美和の説明に佳祐は完全に頭を抱える。
確かに新人ならばまだたくさんの可能性があり、これから売り出すにはちょうど良い。しかも、それが新人賞でいい結果を出した者なら大々的にデビューさせたくなるのが雑誌側の都合。
片や佳祐は何度も打ち切られた、言ってしまえば不人気作家。
そんな二人の漫画が内容的にもかぶったとすれば、編集部としては前者を取る。
当たり前のことであり、誰だってそうする。
だが、それは他人の都合であり、佳祐にとっては今回の原稿は今までとは違い可能性を感じていた。
それをよりにもよって自分と似た作風を持つ新人漫画家に連載を奪われたとなると、そのショックは計り知れない。
『あー、まあ、でも編集部の評価は良かったぞ! 皆、今までの君の漫画とは思えないと褒めていた。特に絵を! なので、今後はもう少し話を今連載している漫画と被らない方向に持っていくといい。まだ連載のチャンスはある! 次の連載会議は三ヶ月後。そこで今連載している漫画とは違うジャンルの何かを描いてくるんだ! なーに、君ならできる! 私は君の才能と姫ちゃんの才能を買っているんだ! 次こそは必ず連載会議に通そう! それじゃあ、そういうことで!』
「あ、ち、ちょっと! 美和さん!? 美和さん!?」
そう言って電話を切る担当に必死に呼びかける佳祐。
「の、のう、佳祐……先程のお主と担当の話が少し聞こえたのだが……お、落ちたとはどういうことじゃ……?」
見ると先程の佳祐と担当の話を聞いていたであろう刑部姫が明らかにショックを受けた様子でそう尋ねるのであった。
「………………むぅ」
担当・美和の電話より翌日。
佳祐と刑部姫は机に突っ伏したまま生気のない顔で明後日の方を見ていた。
「……あれだけの自信作だったのに……」
「……わらわもこれでようやく漫画が描けると思ったのに……」
「まさかそれが……」
「……落ちるとはのぉ」
共に「はぁ」とでっかいため息をつきながら、昨日の会話を思い出す。
◇ ◇ ◇
「……へ? 落ちた?」
『いやー! すまん! 出来は間違いなく君が出してきた原稿の中で一番だった! けれどなー、他の編集がなー納得しなかったというか、今回は見送りになった! いやー、本当にすまん!』
電話の先で必死に謝る美和であったが、佳祐は連載会議に通らなかったという一言と共に足場が崩れたようにその場にへたりこんだ。
「……ど、どうして……どうしてですか、美和さん!? あの原稿は今までのオレの原稿で一番だったんでしょう!? 絵だって今までのオレの下手くそな絵じゃなく、こっちの刑部姫が描いた数段上手い絵でしたよ! 美和さんだって言ってたじゃないですか! これなら連載に通るって!」
『いやー、そうなんだがー、ちょっと予想外のことが起きて……』
「予想外のことってなんですか!?」
思わずそう問いかける佳祐に対し、美和は言いにくそうに告げる。
『先月の新人賞。それで賞を獲った新人がいたんだが、そいつが連載用の原稿を上げてきたんだが、その内容が君の持ってきた漫画とモロにかぶってたんだよ』
「被って……!?」
思わぬ回答に息を呑む佳祐。しかし、諦めきれないと続ける。
「か、かぶってるからなんですか!? それならオレ達の漫画の方が内容も絵もそっちより――」
『いいや、相手の漫画の方が上だった。相手は絵も上手いし、話の統合性も取れている。なによりも新人にしてはあまりに出来すぎた漫画だった。編集部も何度も打ち切られた作家の新連載よりも、先日新人賞で賞を獲った期待の新人漫画家に連載をさせた方が花もあるし見込みがあるとのことだ。それにさっきも言ったとおり、その子の漫画は君の漫画に似ている。編集部は同じ作家は二人もいらないと切るなら君の方と判断をしたんだ』
「そ、そんな……」
美和の説明に佳祐は完全に頭を抱える。
確かに新人ならばまだたくさんの可能性があり、これから売り出すにはちょうど良い。しかも、それが新人賞でいい結果を出した者なら大々的にデビューさせたくなるのが雑誌側の都合。
片や佳祐は何度も打ち切られた、言ってしまえば不人気作家。
そんな二人の漫画が内容的にもかぶったとすれば、編集部としては前者を取る。
当たり前のことであり、誰だってそうする。
だが、それは他人の都合であり、佳祐にとっては今回の原稿は今までとは違い可能性を感じていた。
それをよりにもよって自分と似た作風を持つ新人漫画家に連載を奪われたとなると、そのショックは計り知れない。
『あー、まあ、でも編集部の評価は良かったぞ! 皆、今までの君の漫画とは思えないと褒めていた。特に絵を! なので、今後はもう少し話を今連載している漫画と被らない方向に持っていくといい。まだ連載のチャンスはある! 次の連載会議は三ヶ月後。そこで今連載している漫画とは違うジャンルの何かを描いてくるんだ! なーに、君ならできる! 私は君の才能と姫ちゃんの才能を買っているんだ! 次こそは必ず連載会議に通そう! それじゃあ、そういうことで!』
「あ、ち、ちょっと! 美和さん!? 美和さん!?」
そう言って電話を切る担当に必死に呼びかける佳祐。
「の、のう、佳祐……先程のお主と担当の話が少し聞こえたのだが……お、落ちたとはどういうことじゃ……?」
見ると先程の佳祐と担当の話を聞いていたであろう刑部姫が明らかにショックを受けた様子でそう尋ねるのであった。
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