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24 道山明光
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「道山先生、それでコミカライズ企画の方はいかがでしょうか……?」
「ふむ」
そこは『月刊アルファ』編集部に存在する担当と作家のための相談室。
向かい合った席に座った担当と作家が新連載、あるいは現在の連載についての相談をする対等の場であった。
だが、今ここに座っている二人の間には明らかな立場の差があった。
担当と思わしき人物は目の前に座る老人に対し、機嫌を損なわぬよう気を遣いながら話を伺っているのが見て取れる。
そして問題はその老人であった。
年齢はおそらく八十代。深いシワを刻んだ彫りの深い顔立ちをした人物であり、体格は全体的に枯れ木のような印象を与える。
が、それよりも目を引くのは体の大きさに対し、不釣合いなほどの大きな頭。
更に心なしか後頭部も普通の人間よりも少し膨れているような印象を与え、どことなく不気味な印象を与える老人であった。
「ぜひうちの『月刊アルファ』にて、道山先生の人気作品である『戦国千国』のコミカライズを連載したいのですが、いかがでしょうか……?」
「それについては前にも言ったはずじゃぞ。儂の小説の世界観を描ききれる絵師でなければ頼む気はないと」
道山と呼ばれた老人が目の前の男に対し、そう不機嫌に返すと男は慌てたように傍に控えていた雑誌と原稿を取り出す。
「そ、それはもちろんです! 現在、我が社が確保しております作画担当は複数人おりまして、このとおり原画も先生の世界観を表すのに相応しい画力の持ち主です! それだけではなく現在、我が月刊アルファでは『あやかしロマンス』を始め、実力者の作家が揃っております! 特にこの『スノーアイドルフェアリー』の作者! 新人でありながら驚異的な画力を誇っております! 彼女のイラストならば先生の世界観を表現するにはぴったりかと思いますが……!」
「ふむ……」
そう言って差し出された原稿や雑誌を手に取る道山であったが、そのどれも一瞥しただけですぐに原稿や雑誌を返し、興味なさげな反応を示す。
「どれも平凡な絵柄じゃ。今流行っている漫画の二番煎じ、あるいは人気のある漫画の特徴を真似ただけの作家共ばかり。このようなものでは儂の世界観や『戦国千国』の話を漫画に出来るとは到底思えぬ」
「し、失礼しました! そ、それではこちらの作家とかどうでしょうか……!」
そう言って鼻を鳴らす道山に対し、担当は慌てた様子で他の原稿を取りに行こうとするが、その際近くにあった机に体が当たり、そこに置かれていたとある原稿が床に落ちる。
「ああああ、すみません! 今片付けますので」
足元に散らばった原稿を必死に回収する担当を見ながら、道山は呆れたようにため息を吐く。
その時、担当が拾い上げている原稿に道山の目が行ったのはたまたまであった。
「――ん? ちょっと待て」
「はい?」
急に道山に止められ、拾っていた原稿を持ったまま固まる担当。
だが、そんな担当にお構いなく道山は彼が持った原稿をこちらに寄越せと指示をする。
「おい、その原稿を見せよ」
「え? で、ですが、これはこの間の連載会議に落ちた作家の原稿でして……」
「いいから見せよ」
「は、はい!!」
一際強い命令口調にそのまま従うように原稿を手渡す担当。
受け取ったその原稿をこれまでとは異なりじっくりと見渡す道山。
やがて、原稿を全て読み終わると一言を呟く。
「こやつだ」
「え?」
「この漫画の絵を描いた奴。こやつの絵は儂がイメージしておる世界観のイラストにぴったりじゃ。こやつに儂の小説のコミカライズ――漫画を描くのを任せたい」
「なっ!?」
道山の宣言に驚き、思わず固まる担当。
だが、そんな担当を射抜くように道山は彼を一瞥すると続ける。
「この漫画家はなんという名前じゃ?」
「あ、そ、それがその……この漫画を描いた人物は原作と作画の二人に分かれておりまして……」
「ならば原画の方じゃ。そやつの名前はなんという?」
「その、原画の方の名前はまだ詳しく分かっていないんです……。ただこの漫画の原作は前からうちで描いていた漫画家の田村佳祐という人物になります。彼……あるいは彼の担当の美和に話を聞けば作画を担当している人物も分かるかと……」
「ならば、その者の名前を早く調べよ。そして、その者に儂のベストセラー小説『戦国千国』のコミカライズを担当させよ」
「は、はい! 無論です!!」
その老人――道山(どうさん)明光(あけみつ)の命令に慌てたように部屋から飛び出す担当。
その後、開けっ放しのドアの向こうにて編集部を後にする佳祐と刑部姫の姿があったことにこの時、道山は気付かなかった。
「ふむ」
そこは『月刊アルファ』編集部に存在する担当と作家のための相談室。
向かい合った席に座った担当と作家が新連載、あるいは現在の連載についての相談をする対等の場であった。
だが、今ここに座っている二人の間には明らかな立場の差があった。
担当と思わしき人物は目の前に座る老人に対し、機嫌を損なわぬよう気を遣いながら話を伺っているのが見て取れる。
そして問題はその老人であった。
年齢はおそらく八十代。深いシワを刻んだ彫りの深い顔立ちをした人物であり、体格は全体的に枯れ木のような印象を与える。
が、それよりも目を引くのは体の大きさに対し、不釣合いなほどの大きな頭。
更に心なしか後頭部も普通の人間よりも少し膨れているような印象を与え、どことなく不気味な印象を与える老人であった。
「ぜひうちの『月刊アルファ』にて、道山先生の人気作品である『戦国千国』のコミカライズを連載したいのですが、いかがでしょうか……?」
「それについては前にも言ったはずじゃぞ。儂の小説の世界観を描ききれる絵師でなければ頼む気はないと」
道山と呼ばれた老人が目の前の男に対し、そう不機嫌に返すと男は慌てたように傍に控えていた雑誌と原稿を取り出す。
「そ、それはもちろんです! 現在、我が社が確保しております作画担当は複数人おりまして、このとおり原画も先生の世界観を表すのに相応しい画力の持ち主です! それだけではなく現在、我が月刊アルファでは『あやかしロマンス』を始め、実力者の作家が揃っております! 特にこの『スノーアイドルフェアリー』の作者! 新人でありながら驚異的な画力を誇っております! 彼女のイラストならば先生の世界観を表現するにはぴったりかと思いますが……!」
「ふむ……」
そう言って差し出された原稿や雑誌を手に取る道山であったが、そのどれも一瞥しただけですぐに原稿や雑誌を返し、興味なさげな反応を示す。
「どれも平凡な絵柄じゃ。今流行っている漫画の二番煎じ、あるいは人気のある漫画の特徴を真似ただけの作家共ばかり。このようなものでは儂の世界観や『戦国千国』の話を漫画に出来るとは到底思えぬ」
「し、失礼しました! そ、それではこちらの作家とかどうでしょうか……!」
そう言って鼻を鳴らす道山に対し、担当は慌てた様子で他の原稿を取りに行こうとするが、その際近くにあった机に体が当たり、そこに置かれていたとある原稿が床に落ちる。
「ああああ、すみません! 今片付けますので」
足元に散らばった原稿を必死に回収する担当を見ながら、道山は呆れたようにため息を吐く。
その時、担当が拾い上げている原稿に道山の目が行ったのはたまたまであった。
「――ん? ちょっと待て」
「はい?」
急に道山に止められ、拾っていた原稿を持ったまま固まる担当。
だが、そんな担当にお構いなく道山は彼が持った原稿をこちらに寄越せと指示をする。
「おい、その原稿を見せよ」
「え? で、ですが、これはこの間の連載会議に落ちた作家の原稿でして……」
「いいから見せよ」
「は、はい!!」
一際強い命令口調にそのまま従うように原稿を手渡す担当。
受け取ったその原稿をこれまでとは異なりじっくりと見渡す道山。
やがて、原稿を全て読み終わると一言を呟く。
「こやつだ」
「え?」
「この漫画の絵を描いた奴。こやつの絵は儂がイメージしておる世界観のイラストにぴったりじゃ。こやつに儂の小説のコミカライズ――漫画を描くのを任せたい」
「なっ!?」
道山の宣言に驚き、思わず固まる担当。
だが、そんな担当を射抜くように道山は彼を一瞥すると続ける。
「この漫画家はなんという名前じゃ?」
「あ、そ、それがその……この漫画を描いた人物は原作と作画の二人に分かれておりまして……」
「ならば原画の方じゃ。そやつの名前はなんという?」
「その、原画の方の名前はまだ詳しく分かっていないんです……。ただこの漫画の原作は前からうちで描いていた漫画家の田村佳祐という人物になります。彼……あるいは彼の担当の美和に話を聞けば作画を担当している人物も分かるかと……」
「ならば、その者の名前を早く調べよ。そして、その者に儂のベストセラー小説『戦国千国』のコミカライズを担当させよ」
「は、はい! 無論です!!」
その老人――道山(どうさん)明光(あけみつ)の命令に慌てたように部屋から飛び出す担当。
その後、開けっ放しのドアの向こうにて編集部を後にする佳祐と刑部姫の姿があったことにこの時、道山は気付かなかった。
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