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25 担当からの誘い
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「それにしても、まさかあの『スノーアイドルフェアリー』の作者がわらわと同じあやかしで、しかもこのマンションに住んでおり、お主のファンじゃったとはなぁ……」
「ああ、世界は狭いよなぁ」
後日。編集部にて雪芽と会ったことを思い出した二人が何気なくそのような会話をしていた。
無論、現在もまだ新連載に向けて佳祐はストーリーを練り、刑部姫は画力を磨いていた。
ここ最近の二人は完全にそうしたお互いの作業を分担し、それらを磨く日々を続けている。
「しかし、白縫雪芽か。確かにその名を聞いたときに気づくべきじゃった。白縫と言えば雪女一族に伝わる苗字でもあった。わらわも前にどこかでその名を聞いたことがあると思っておったが……」
「へえ、やっぱりあやかし同士、そういうのって耳にするんだ」
「まあ、そうじゃな。しかし、まさかわらわの他にも漫画家を目指そうとしたあやかしがおったとは予想外じゃった。とはいえあやつの見る目がいいのは確かじゃ。なにせわらわもお主の漫画を見た瞬間からお主の漫画に惚れていた。あれはいわば一目惚れ。お主の作品にはそれだけの魅力がある」
「一目惚れって、刑部姫もすごいこと言うな」
笑いながらそう答える佳祐であったが、それを聞いた刑部姫は瞬時に耳まで真っ赤になりすぐさま否定をする。
「ち、違うぞ! お主に一目惚れしたわけではないぞ! あくまでもお主が描く作品に惚れただけじゃ! か、勘違いするでないわ!」
「あ、ああ、そりゃ勿論わかってるよ」
むしろ、そんなに否定しなくてもいいのにと。心の中で佳祐は思う。
そんなことを思っている内にふと刑部姫がなにやら気になったのか佳祐に尋ねる。
「……のう、佳祐よ。あの時の雪芽からの誘いじゃが、あれはすでにわらわというパートナーがいたから断ったみたいじゃが。もしもわらわと会う前ならば、あやつと組んでいたのか?」
「え?」
突然のその宣言に驚く佳祐。
だが、刑部姫の表情は真剣であり、佳祐は少し考えてから答えた。
「……どうだろうか。その時になってみないと分からないけれど、今のオレの状態で連載を抱えてなくてうまくいってなかったら……雪芽からの誘いにも乗っていたかもな……」
「そうか」
その答えに頷く刑部姫。
佳祐は嘘でも誤魔化すべきだったかと悩むが、それを吹き飛ばすように刑部姫が笑う。
「まあ、当然じゃな。お主にとっては漫画は仕事。チャンスがあるのならばそれを掴むべきじゃ。むしろ、わらわと組むのにこだわらず、あそこで雪芽と組んだほうがお主もすぐに連載出来て良かったのではないのか?」
「ははは、まさか。たとえそうでも今のオレは刑部姫と組んでるんだ。それはこれからも変わらないよ」
「ふふ、そうか。では、早いところわらわとお主の漫画が連載できるよう頑張るとするかの」
そう言って二人共に作業に入ろうとしたその時、佳祐のスマホが鳴り響く。
何事かとスマホに映った電話先の相手を見るとそれは担当の美和であった。
「あれ? また美和さんだ」
昨日呼び出しがあったばかりで今度はなんだろうかと電話に出る。
「もしもし美和さん。どうしたんですか?」
『おお、佳祐君。すまない。実はちょっとした頼みがあってねー』
「頼み……ですか?」
何事かと美和からの頼みを聞くと、その内容は意外なものであった。
「え? 刑部姫を?」
『うんうん、ちょっと頼める?』
「まあ、とりあえず本人に聞いてみます。行くかどうかは本人に任せますので」
『そうか、わかった! いやー、すまないね。期待してるよ!』
要件を聴き終えた後、電話を切る佳祐。
見ると刑部姫は自分の話をしていたのを聞きつけたのか、何事かと佳祐の顔を見ていた。
「一体どうしたのじゃ? 今の電話はなんじゃ?」
「いや、それが刑部姫に用事があるからまた編集部に来てくれって」
「なんじゃ、またか。今度は一体何の用じゃ」
「いや、そうじゃないんだ。今度は刑部姫だけを指定してるんだ。だからオレはついてくるなって言われたんだ」
「なんじゃと?」
佳祐からの内容に眉を潜ませる刑部姫。
「それは一体どういうことじゃ? なぜわらわだけで行かねばならぬのだ?」
「さあ……。よく分からないけれど刑部姫にだけ話したいことがあるんだって。勿論、刑部姫が行きたくないなら無理にはとは言っておいたけれど、どうする?」
佳祐がそう尋ねると刑部姫は少し考えるように悩み、やがてしばし思考した後、答える。
「せっかく向こうからの頼みが来たんじゃ。佳祐がよければわらわは行こうと思うが構わぬか?」
「勿論。刑部姫が行きたいなら行ってきていいと思うよ。もしかしたら有益な話かもしれないしね」
「うむ。もしそうなら土産話としてお主に持ってきてやろう。では、許可も降りたようなのでわらわ一人で編集部に行くとするかの」
「あ、場所は分かるよね?」
「無論じゃ、もう二回もあそこに行ったのじゃ。お主の付き添いがなくとも大丈夫じゃ」
「それじゃあ、気をつけてね。刑部姫」
「うむ」
玄関から出て行く刑部姫を見守りながらそう声をかける佳祐。
その後、ドアを開き刑部姫が出ていくのを確認すると、一人の残った佳祐は机へと向かう。
刑部姫が編集部に行ってる間に次のストーリーのネタを考え、それをまとめなければと自分に課題を出す。
そうしていくつかのネタを手元のノートに書いていると、突然ドアの向こうから呼び鈴が鳴る。
「ん? 誰だろう?」
慌てて振り返った佳祐であったが刑部姫が忘れ物でもしたのかと、すぐに扉を開ける。
だが、開いた扉の先に立っていた人物を見て佳祐は思わず驚きに息を呑む。
「なっ、ゆ、雪芽さん……!?」
「ど、どうも。いきなり訪ねてすみません。佳祐さん……」
そこにいたのは佳祐が先日、編集部で会ったあの白縫雪芽であった。
「ああ、世界は狭いよなぁ」
後日。編集部にて雪芽と会ったことを思い出した二人が何気なくそのような会話をしていた。
無論、現在もまだ新連載に向けて佳祐はストーリーを練り、刑部姫は画力を磨いていた。
ここ最近の二人は完全にそうしたお互いの作業を分担し、それらを磨く日々を続けている。
「しかし、白縫雪芽か。確かにその名を聞いたときに気づくべきじゃった。白縫と言えば雪女一族に伝わる苗字でもあった。わらわも前にどこかでその名を聞いたことがあると思っておったが……」
「へえ、やっぱりあやかし同士、そういうのって耳にするんだ」
「まあ、そうじゃな。しかし、まさかわらわの他にも漫画家を目指そうとしたあやかしがおったとは予想外じゃった。とはいえあやつの見る目がいいのは確かじゃ。なにせわらわもお主の漫画を見た瞬間からお主の漫画に惚れていた。あれはいわば一目惚れ。お主の作品にはそれだけの魅力がある」
「一目惚れって、刑部姫もすごいこと言うな」
笑いながらそう答える佳祐であったが、それを聞いた刑部姫は瞬時に耳まで真っ赤になりすぐさま否定をする。
「ち、違うぞ! お主に一目惚れしたわけではないぞ! あくまでもお主が描く作品に惚れただけじゃ! か、勘違いするでないわ!」
「あ、ああ、そりゃ勿論わかってるよ」
むしろ、そんなに否定しなくてもいいのにと。心の中で佳祐は思う。
そんなことを思っている内にふと刑部姫がなにやら気になったのか佳祐に尋ねる。
「……のう、佳祐よ。あの時の雪芽からの誘いじゃが、あれはすでにわらわというパートナーがいたから断ったみたいじゃが。もしもわらわと会う前ならば、あやつと組んでいたのか?」
「え?」
突然のその宣言に驚く佳祐。
だが、刑部姫の表情は真剣であり、佳祐は少し考えてから答えた。
「……どうだろうか。その時になってみないと分からないけれど、今のオレの状態で連載を抱えてなくてうまくいってなかったら……雪芽からの誘いにも乗っていたかもな……」
「そうか」
その答えに頷く刑部姫。
佳祐は嘘でも誤魔化すべきだったかと悩むが、それを吹き飛ばすように刑部姫が笑う。
「まあ、当然じゃな。お主にとっては漫画は仕事。チャンスがあるのならばそれを掴むべきじゃ。むしろ、わらわと組むのにこだわらず、あそこで雪芽と組んだほうがお主もすぐに連載出来て良かったのではないのか?」
「ははは、まさか。たとえそうでも今のオレは刑部姫と組んでるんだ。それはこれからも変わらないよ」
「ふふ、そうか。では、早いところわらわとお主の漫画が連載できるよう頑張るとするかの」
そう言って二人共に作業に入ろうとしたその時、佳祐のスマホが鳴り響く。
何事かとスマホに映った電話先の相手を見るとそれは担当の美和であった。
「あれ? また美和さんだ」
昨日呼び出しがあったばかりで今度はなんだろうかと電話に出る。
「もしもし美和さん。どうしたんですか?」
『おお、佳祐君。すまない。実はちょっとした頼みがあってねー』
「頼み……ですか?」
何事かと美和からの頼みを聞くと、その内容は意外なものであった。
「え? 刑部姫を?」
『うんうん、ちょっと頼める?』
「まあ、とりあえず本人に聞いてみます。行くかどうかは本人に任せますので」
『そうか、わかった! いやー、すまないね。期待してるよ!』
要件を聴き終えた後、電話を切る佳祐。
見ると刑部姫は自分の話をしていたのを聞きつけたのか、何事かと佳祐の顔を見ていた。
「一体どうしたのじゃ? 今の電話はなんじゃ?」
「いや、それが刑部姫に用事があるからまた編集部に来てくれって」
「なんじゃ、またか。今度は一体何の用じゃ」
「いや、そうじゃないんだ。今度は刑部姫だけを指定してるんだ。だからオレはついてくるなって言われたんだ」
「なんじゃと?」
佳祐からの内容に眉を潜ませる刑部姫。
「それは一体どういうことじゃ? なぜわらわだけで行かねばならぬのだ?」
「さあ……。よく分からないけれど刑部姫にだけ話したいことがあるんだって。勿論、刑部姫が行きたくないなら無理にはとは言っておいたけれど、どうする?」
佳祐がそう尋ねると刑部姫は少し考えるように悩み、やがてしばし思考した後、答える。
「せっかく向こうからの頼みが来たんじゃ。佳祐がよければわらわは行こうと思うが構わぬか?」
「勿論。刑部姫が行きたいなら行ってきていいと思うよ。もしかしたら有益な話かもしれないしね」
「うむ。もしそうなら土産話としてお主に持ってきてやろう。では、許可も降りたようなのでわらわ一人で編集部に行くとするかの」
「あ、場所は分かるよね?」
「無論じゃ、もう二回もあそこに行ったのじゃ。お主の付き添いがなくとも大丈夫じゃ」
「それじゃあ、気をつけてね。刑部姫」
「うむ」
玄関から出て行く刑部姫を見守りながらそう声をかける佳祐。
その後、ドアを開き刑部姫が出ていくのを確認すると、一人の残った佳祐は机へと向かう。
刑部姫が編集部に行ってる間に次のストーリーのネタを考え、それをまとめなければと自分に課題を出す。
そうしていくつかのネタを手元のノートに書いていると、突然ドアの向こうから呼び鈴が鳴る。
「ん? 誰だろう?」
慌てて振り返った佳祐であったが刑部姫が忘れ物でもしたのかと、すぐに扉を開ける。
だが、開いた扉の先に立っていた人物を見て佳祐は思わず驚きに息を呑む。
「なっ、ゆ、雪芽さん……!?」
「ど、どうも。いきなり訪ねてすみません。佳祐さん……」
そこにいたのは佳祐が先日、編集部で会ったあの白縫雪芽であった。
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