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変わった未来

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クラスの一軍を懲らしめた僕は、満足したので仮病を使って帰る事にした。平凡に平凡を重ねた挙句に累乗したぐらいに平凡なうちの学校はお休みを疑いもなくくれた。鼻歌混じりで廊下を歩く僕に、耳の遠い年増なおばさん教諭は気づく事もなかった。

家に帰りまずする事は…なかった。
これまでの人生でさっき程面白かった事はなかっただろう。そのため、僕の人生は趣味というものが著しく欠落していた。両親がいない部屋で一人芸能人のどうでもいい事を誇張表現して大袈裟に見せるコメンテーターに敬意を表する。そこまで他人に突っ込んで何が楽しいのだろうか僕にはさっぱりわからなかった。それを言えば学校での僕の行為についても謎が多かった。あれだけ人に関心のない僕なのにあの行動に出た事が不思議で仕方がなかった。屋上で会ったあの男が原因で僕はこんな事をしてしまったかもしれない。そんな事を悩んでいる間に僕の意識は深く深く沈んでいった。

目が覚めたのはチャイムの音がしてからだった。両親は夜遅くまで仕事なので夕方のニュースがやる時間になっても帰ってくる事はあまりない。宅配便だろうと思い、ドアを開けるといじめられっ子の少女がいた。
学校から急いで来たのか、髪は乱れていて息も絶え絶えだった。思ってもいない相手に取り敢えず、扉を閉めた。
扉を閉められたのが余程のショックだったのか、インターホンで見ているとじわじわと涙がこぼれてきていた。
しかし、ここで終わってしまっては僕の性格が許さないのでもう少しだけいぢめてみることにした。
簡単に言うと、もう少しインターホンから観察ということだ。
しかし、彼女の方がそろそろ限界そうなので扉を開けることにした。
いざ扉を開けると彼女の方はそれまでの泣き顔が嘘のように明るくなっていくのがわかった。
さながらひまわりのように…柄に合わないこと言うとお腹が痛くなるね。
「そこまでお金のない我が家にカツアゲの御用でしょうか?それとも別の用事でしょうか?ついでに言うと新聞は結構です」
彼女の方は即答で
「その他の用事です」
今度は噛まずに言えたと心の中で言っているのだろう。
「ではどんな用事で?」
これだけは僕の豊かな想像力を使ってもわからなかった。
「今日のことについてです。」
今日?…思い返しても思い出せなかった。
ひねるにひねりまわして出て来た回答はあの化粧が濃くお世辞でもブスとしか出てこないJKに少しイタズラしたことだった。
「あのことは別に」
言い終わる前に彼女は僕の目の前からいなくなっていた。
話し相手がいなくなったのに外に出て会話してるのも馬鹿らしいので家の中でぐーたらすることにした。
春の寒さが心地よい日だった。
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