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こうちゃんの選んだ道 2
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「私が見ていたこうちゃんは、幻……?」
絶望で膝から崩れ落ちる。
「はぁ~、もしもーし。ボクの声、聞こえます~?」
誰もいないはずのこの部屋から、まだ声変わりしていない幼い男の子の声が聞こえてくる。
「誰?」
その声の方向すら分からずに部屋の中をぐるぐると見回す。
「やあやあはじめまして。
信じられないかもしれないけど、ボクは死神。
キミの知っている佐々木幸介と契約した死神だよ」
「いや、契約していた、というべきかな……」と、最後に一言付け足す。
「死神?」
死神って、人間の魂を刈り取るとか……そういうやつ?
「死神だよ。生きているキミにはボクの姿は見えないけどね。
ボクは死の間際の人間の前にだけ現れるんだ。
そしてその人間と契約を交わし、ボクの力で生かすことができる。
ただし、契約を破ったものは死んでボクに命を食われる」
「じゃあこうちゃんは契約を……?」
「そう、彼はボクと契約を交わし、そしてそれを破った。
だから彼はあの時倒れた。
ちなみにこの1年間の彼に関する記憶は全ての人間から消した。
キミ以外、ね」
「私以外……?」
死神と名乗る者の話全てに疑問で返し続ける。
こうちゃんが実は1年前に事故でこの世を去っていて、私と話したあの時、契約を破った──
ここまでの話を整理し、無理やりに理解する。
「そこでボクはキミに選択肢を与えようと思う。
ボクならこのまま無償でキミの記憶から彼と再会した記憶、すなわちこの1ヶ月間の記憶を消去することができる」
この1ヶ月間の記憶の消去……
つまり私は桃子の文化祭でこうちゃんに会うことも、連絡先を交換することも、2人で遊ぶこともなかったことになるんだ。
「他の選択肢は?」
「もう1つはね、ボクと契約をすること。
本来ならまだ死なない人間と契約をすることはないんだけど……まあ、今回は特別。
この1ヶ月間のキミの記憶を消さずにとっておくよ。
ただし、そのことを誰かに話した場合、キミの命をもらう」
命をもらう。
つまり私はこの1ヶ月間のことを誰かに話すと死んでしまうということだ。
記憶を消すか、残すか……
そんなの決まっている。
「死神さん、私の記憶を消して」
こんな辛い想いを持ち続けたくない。
私もこうちゃんみたいに何もかも忘れれば、きっと楽になれる。
「本当にいいの?」
同じことを2度聞いてきたところで私の意思は変わらない。
こんな思い出、私は持っていられない……
「キミはこれを見ても同じことが言えるのかな?」
その言葉と同時に床についていた私の手元が光り出し、そこに1冊のノートが現れた。
「1年前、この部屋で見つけて奪っておいたものだよ」
古いノート。
その1ページ目を開く。
幼いころのこうちゃんの字。
友達と遊んだこと、学校のテストでいい点を取ったこと、サッカーでシュートを決めたこと。
何ページにも渡って、こうちゃんの楽しかったもの、嬉しかったものがたくさん詰まっていた。
そしてそれは途中から私のことを書き留めるものへと変わっていた。
私と初めて会った日のことから始まって、7人での色々な思い出まで。
全て細かく書かれていた。
絶望で膝から崩れ落ちる。
「はぁ~、もしもーし。ボクの声、聞こえます~?」
誰もいないはずのこの部屋から、まだ声変わりしていない幼い男の子の声が聞こえてくる。
「誰?」
その声の方向すら分からずに部屋の中をぐるぐると見回す。
「やあやあはじめまして。
信じられないかもしれないけど、ボクは死神。
キミの知っている佐々木幸介と契約した死神だよ」
「いや、契約していた、というべきかな……」と、最後に一言付け足す。
「死神?」
死神って、人間の魂を刈り取るとか……そういうやつ?
「死神だよ。生きているキミにはボクの姿は見えないけどね。
ボクは死の間際の人間の前にだけ現れるんだ。
そしてその人間と契約を交わし、ボクの力で生かすことができる。
ただし、契約を破ったものは死んでボクに命を食われる」
「じゃあこうちゃんは契約を……?」
「そう、彼はボクと契約を交わし、そしてそれを破った。
だから彼はあの時倒れた。
ちなみにこの1年間の彼に関する記憶は全ての人間から消した。
キミ以外、ね」
「私以外……?」
死神と名乗る者の話全てに疑問で返し続ける。
こうちゃんが実は1年前に事故でこの世を去っていて、私と話したあの時、契約を破った──
ここまでの話を整理し、無理やりに理解する。
「そこでボクはキミに選択肢を与えようと思う。
ボクならこのまま無償でキミの記憶から彼と再会した記憶、すなわちこの1ヶ月間の記憶を消去することができる」
この1ヶ月間の記憶の消去……
つまり私は桃子の文化祭でこうちゃんに会うことも、連絡先を交換することも、2人で遊ぶこともなかったことになるんだ。
「他の選択肢は?」
「もう1つはね、ボクと契約をすること。
本来ならまだ死なない人間と契約をすることはないんだけど……まあ、今回は特別。
この1ヶ月間のキミの記憶を消さずにとっておくよ。
ただし、そのことを誰かに話した場合、キミの命をもらう」
命をもらう。
つまり私はこの1ヶ月間のことを誰かに話すと死んでしまうということだ。
記憶を消すか、残すか……
そんなの決まっている。
「死神さん、私の記憶を消して」
こんな辛い想いを持ち続けたくない。
私もこうちゃんみたいに何もかも忘れれば、きっと楽になれる。
「本当にいいの?」
同じことを2度聞いてきたところで私の意思は変わらない。
こんな思い出、私は持っていられない……
「キミはこれを見ても同じことが言えるのかな?」
その言葉と同時に床についていた私の手元が光り出し、そこに1冊のノートが現れた。
「1年前、この部屋で見つけて奪っておいたものだよ」
古いノート。
その1ページ目を開く。
幼いころのこうちゃんの字。
友達と遊んだこと、学校のテストでいい点を取ったこと、サッカーでシュートを決めたこと。
何ページにも渡って、こうちゃんの楽しかったもの、嬉しかったものがたくさん詰まっていた。
そしてそれは途中から私のことを書き留めるものへと変わっていた。
私と初めて会った日のことから始まって、7人での色々な思い出まで。
全て細かく書かれていた。
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