25 / 27
私の記憶 2
しおりを挟む
カランカランと、氷とグラスのぶつかる音。
なんだか風鈴のような優しい涼しさを感じられた。
「明日から学校だねー」
と、桃子が口を開く。
「桃子、宿題終わった?」
「もちろん! 終わってなきゃ今ここに来られてないよ!」
ちょっぴり膨れっ面になりながら返事をしてくる。
中学の頃は最後の1週間で桃子の残り半分の宿題を2人で終わらせようと必死になったこともあった。
私からすればただの懐かしい思い出だが、桃子はかなり辛かったらしい。
あれ以来、桃子は夏休みの宿題を1週間以上前に終わらせるようになった。
今年もその恐怖を思い出して頑張ったのだろう。
それからはお互いの夏休みの思い出や、これからの予定など、2時間ほど喋った。
「私このあと塾あるから、もう少ししたら帰らなきゃ」
桃子がスマホを見ながら申し訳なさそうに言う。
「来年、受験だもんね、私も頑張らなきゃ」
ポジティブに返事をしたつもりだったのだが、桃子の顔がまるで何か悪いものを目にしたかのように、唐突に曇った。
「あ、あのさ、琴音……」
さっきよりも明かに暗い声で話しかけてくる。
「な、なに?」
桃子に釣られて、私まで変に緊張した返事になる。
「前に琴音の好きな人のこと話してくれたでしょ? 覚えてる?」
桃子の口から恐る恐る発せられた言葉。
私の好きな人。
間違いない、こうちゃんのことだ。
「覚えてるよ」
「そのことで、琴音に言わなきゃいけないことがあるんだ」
桃子の顔がますます曇る。
私は桃子が何を言おうとしているのかわかってしまった。
あれから確かめられなかったこと。
そうか、契約を交わさなかったらここでこうちゃんの話を聞くことになったのか。
私はこの先を、桃子の口から言わせていいのだろうか。
こんなに辛そうな顔をしている桃子に。
「言わないで」
桃子が口を開くより先に言った。
本当は自分が聞きたくないだけかもしれない。
たとえそんな私の我儘だったとしても。
「こうちゃんのこと、全部知ってるから、大丈夫」
無理して笑ってるってバレているかもしれない。
それでもこれが1番、私も桃子も辛い思いをしないであろうと考え、必死に笑う。
でも、こんなにも笑っているはずなのに、桃子の顔が歪んでいく。
どうして?
「こと、ね……?」
名前を呼ばれてようやく気がついた。
私は、泣いていた。
あんなに泣いたはずなのにまだ涙が出るなんて。
「ごめん。
こうちゃんが、もういないって、知ってたの」
死神に真実を告げられ、誰にも話さないと誓った。
「でもね、本当はずっと、信じたくなかった」
こうちゃんがもうこの世にいないこと。
私しかこうちゃんのことを覚えていないこと。
真実をまた突き付けられるのが怖かった。
「ごめん、辛いこと、言わせようとして」
「私こそ、ごめん……辛いこと思い出させて」
なんだか風鈴のような優しい涼しさを感じられた。
「明日から学校だねー」
と、桃子が口を開く。
「桃子、宿題終わった?」
「もちろん! 終わってなきゃ今ここに来られてないよ!」
ちょっぴり膨れっ面になりながら返事をしてくる。
中学の頃は最後の1週間で桃子の残り半分の宿題を2人で終わらせようと必死になったこともあった。
私からすればただの懐かしい思い出だが、桃子はかなり辛かったらしい。
あれ以来、桃子は夏休みの宿題を1週間以上前に終わらせるようになった。
今年もその恐怖を思い出して頑張ったのだろう。
それからはお互いの夏休みの思い出や、これからの予定など、2時間ほど喋った。
「私このあと塾あるから、もう少ししたら帰らなきゃ」
桃子がスマホを見ながら申し訳なさそうに言う。
「来年、受験だもんね、私も頑張らなきゃ」
ポジティブに返事をしたつもりだったのだが、桃子の顔がまるで何か悪いものを目にしたかのように、唐突に曇った。
「あ、あのさ、琴音……」
さっきよりも明かに暗い声で話しかけてくる。
「な、なに?」
桃子に釣られて、私まで変に緊張した返事になる。
「前に琴音の好きな人のこと話してくれたでしょ? 覚えてる?」
桃子の口から恐る恐る発せられた言葉。
私の好きな人。
間違いない、こうちゃんのことだ。
「覚えてるよ」
「そのことで、琴音に言わなきゃいけないことがあるんだ」
桃子の顔がますます曇る。
私は桃子が何を言おうとしているのかわかってしまった。
あれから確かめられなかったこと。
そうか、契約を交わさなかったらここでこうちゃんの話を聞くことになったのか。
私はこの先を、桃子の口から言わせていいのだろうか。
こんなに辛そうな顔をしている桃子に。
「言わないで」
桃子が口を開くより先に言った。
本当は自分が聞きたくないだけかもしれない。
たとえそんな私の我儘だったとしても。
「こうちゃんのこと、全部知ってるから、大丈夫」
無理して笑ってるってバレているかもしれない。
それでもこれが1番、私も桃子も辛い思いをしないであろうと考え、必死に笑う。
でも、こんなにも笑っているはずなのに、桃子の顔が歪んでいく。
どうして?
「こと、ね……?」
名前を呼ばれてようやく気がついた。
私は、泣いていた。
あんなに泣いたはずなのにまだ涙が出るなんて。
「ごめん。
こうちゃんが、もういないって、知ってたの」
死神に真実を告げられ、誰にも話さないと誓った。
「でもね、本当はずっと、信じたくなかった」
こうちゃんがもうこの世にいないこと。
私しかこうちゃんのことを覚えていないこと。
真実をまた突き付けられるのが怖かった。
「ごめん、辛いこと、言わせようとして」
「私こそ、ごめん……辛いこと思い出させて」
0
あなたにおすすめの小説
すべてはあなたの為だった~狂愛~
矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。
愛しているのは君だけ…。
大切なのも君だけ…。
『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』
※設定はゆるいです。
※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。
好きって伝えたかったんだ。
まいるん
恋愛
ごめんなさい。
あの時伝えてれば。素直になれていたら。
未来は変わったのだろうか。
ずっと後悔してる。
もしもう一度君に会えたら。
もしもう一度君と話せたら。
高校1年生のすいは、同い年で幼なじみの蓮のことが好きだけど、告白できずにいた。想いを伝えることはできるのか。2人は結ばれるのか。
幼なじみ同士の少し不思議で切ない物語。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる