20 / 27
大切な記憶 4
しおりを挟む
ふと公園内で遊んでいた子供たちを見ると、最初に比べて何人か増えて、7人になっていた。
7人──、
「そう。それから私たちは7人で遊ぶようになったんだよ」
みゆちゃん、ゆうきくん、あきとくん、ともかちゃん。
みんなの名前を、目の前の子ども達に当てはめるように。
「それからこの前会ったひろゆきくんに、私とこうちゃん」
きっとこうちゃんの記憶には、私以外の6人しかいないんだろうけど──
「それからね、中学に上がった後にこうちゃんが家の鍵を忘れて帰れなくなって。
私のお母さんの家に来たこともあったんだよ」
きっとその記憶は、何もかも無かったことになっているんだろうけど──
「ほんとに、ほんとうに……」
真っ直ぐこうちゃんを見つめる。
その瞳から、大粒の涙がこぼれ続ける。
覚えていると言って欲しい訳では無い。
覚えていないと謝って欲しい訳では無い。
「ずっと、好きだったの……」
自分の想いを伝える。
私はそのために来たんだから。
「こうちゃんのことが、昔も今も好きなの」
ちゃんと、最後まで伝えるために。
「例え私のことを忘れてしまっていても、それでも大好きなの……っ!」
何1つ悔いなく、全てを伝えた。
でも、こうちゃんは下を向いてしまった。
「こうちゃ──」
最後まで発することなく、私の口は動きを止めた。
「ごめ……ほんと、ごめん……」
消えるような声。
これが耳元でなければ聞き逃してしまいそうなほど。
私より大きいはずのこうちゃんの体、手。
そのどちらもが優しく、弱々しく、それでも簡単に私を包み込む。
白の服が、私のでは無い涙で濡れた。
「俺も、俺もことねのことが大好きだよ」
こうちゃんから言われた言葉。
ずっと知りたかったこうちゃんの気持ち。
「ありがとう、こうちゃん」
私はこうちゃんの背中に手を回す。
「ことね、ありがとう」
その言葉の後に、小さく「さよなら」と聞こえた気がして──
私は驚いて手を解いてしまった。
するとこうちゃんの体から全ての力が抜け、やがて倒れた。
世界中の時間が止まったように感じた。
「こうちゃん……こうちゃん!!」
自分の声が、耳鳴りのように聞こえた。
こうちゃんが動かなくなってからどれくらいの時間が経ったんだろう。
気がつけば私は救急車の中。
倒れたこうちゃんを見て動けなくなってしまった私の代わりに、近くにいた人がすぐに救急車を呼んでくれた。
どんなに声をかけてもこうちゃんは目を覚さない。
「心肺停止!」
理解できない言葉が聞こえてきた。
いや、正確には理解したくない言葉。
私の心臓はこんなにもうるさいのに、こうちゃんの心臓は全く音を出さない。
「誰か助けてよ……こうちゃんを、助けてよ……!」
誰でもいい。
神様でも仏様でもなんでも。
こうちゃんを殺さないで。
そんな私の祈りはただの願いで終わった。
こうちゃんはもう、居ない。
7人──、
「そう。それから私たちは7人で遊ぶようになったんだよ」
みゆちゃん、ゆうきくん、あきとくん、ともかちゃん。
みんなの名前を、目の前の子ども達に当てはめるように。
「それからこの前会ったひろゆきくんに、私とこうちゃん」
きっとこうちゃんの記憶には、私以外の6人しかいないんだろうけど──
「それからね、中学に上がった後にこうちゃんが家の鍵を忘れて帰れなくなって。
私のお母さんの家に来たこともあったんだよ」
きっとその記憶は、何もかも無かったことになっているんだろうけど──
「ほんとに、ほんとうに……」
真っ直ぐこうちゃんを見つめる。
その瞳から、大粒の涙がこぼれ続ける。
覚えていると言って欲しい訳では無い。
覚えていないと謝って欲しい訳では無い。
「ずっと、好きだったの……」
自分の想いを伝える。
私はそのために来たんだから。
「こうちゃんのことが、昔も今も好きなの」
ちゃんと、最後まで伝えるために。
「例え私のことを忘れてしまっていても、それでも大好きなの……っ!」
何1つ悔いなく、全てを伝えた。
でも、こうちゃんは下を向いてしまった。
「こうちゃ──」
最後まで発することなく、私の口は動きを止めた。
「ごめ……ほんと、ごめん……」
消えるような声。
これが耳元でなければ聞き逃してしまいそうなほど。
私より大きいはずのこうちゃんの体、手。
そのどちらもが優しく、弱々しく、それでも簡単に私を包み込む。
白の服が、私のでは無い涙で濡れた。
「俺も、俺もことねのことが大好きだよ」
こうちゃんから言われた言葉。
ずっと知りたかったこうちゃんの気持ち。
「ありがとう、こうちゃん」
私はこうちゃんの背中に手を回す。
「ことね、ありがとう」
その言葉の後に、小さく「さよなら」と聞こえた気がして──
私は驚いて手を解いてしまった。
するとこうちゃんの体から全ての力が抜け、やがて倒れた。
世界中の時間が止まったように感じた。
「こうちゃん……こうちゃん!!」
自分の声が、耳鳴りのように聞こえた。
こうちゃんが動かなくなってからどれくらいの時間が経ったんだろう。
気がつけば私は救急車の中。
倒れたこうちゃんを見て動けなくなってしまった私の代わりに、近くにいた人がすぐに救急車を呼んでくれた。
どんなに声をかけてもこうちゃんは目を覚さない。
「心肺停止!」
理解できない言葉が聞こえてきた。
いや、正確には理解したくない言葉。
私の心臓はこんなにもうるさいのに、こうちゃんの心臓は全く音を出さない。
「誰か助けてよ……こうちゃんを、助けてよ……!」
誰でもいい。
神様でも仏様でもなんでも。
こうちゃんを殺さないで。
そんな私の祈りはただの願いで終わった。
こうちゃんはもう、居ない。
0
あなたにおすすめの小説
すべてはあなたの為だった~狂愛~
矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。
愛しているのは君だけ…。
大切なのも君だけ…。
『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』
※設定はゆるいです。
※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。
好きって伝えたかったんだ。
まいるん
恋愛
ごめんなさい。
あの時伝えてれば。素直になれていたら。
未来は変わったのだろうか。
ずっと後悔してる。
もしもう一度君に会えたら。
もしもう一度君と話せたら。
高校1年生のすいは、同い年で幼なじみの蓮のことが好きだけど、告白できずにいた。想いを伝えることはできるのか。2人は結ばれるのか。
幼なじみ同士の少し不思議で切ない物語。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる