命の記憶

桜庭 葉菜

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大切な記憶 4

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 ふと公園内で遊んでいた子供たちを見ると、最初に比べて何人か増えて、7人になっていた。

 7人──、

「そう。それから私たちは7人で遊ぶようになったんだよ」

 みゆちゃん、ゆうきくん、あきとくん、ともかちゃん。

 みんなの名前を、目の前の子ども達に当てはめるように。

「それからこの前会ったひろゆきくんに、私とこうちゃん」

 きっとこうちゃんの記憶には、私以外の6人しかいないんだろうけど──

「それからね、中学に上がった後にこうちゃんが家の鍵を忘れて帰れなくなって。
私のお母さんの家に来たこともあったんだよ」

 きっとその記憶は、何もかも無かったことになっているんだろうけど──

「ほんとに、ほんとうに……」

 真っ直ぐこうちゃんを見つめる。

 その瞳から、大粒の涙がこぼれ続ける。

 覚えていると言って欲しい訳では無い。

 覚えていないと謝って欲しい訳では無い。

「ずっと、好きだったの……」

 自分の想いを伝える。

 私はそのために来たんだから。

「こうちゃんのことが、昔も今も好きなの」

 ちゃんと、最後まで伝えるために。

「例え私のことを忘れてしまっていても、それでも大好きなの……っ!」

 何1つ悔いなく、全てを伝えた。

 でも、こうちゃんは下を向いてしまった。

「こうちゃ──」

 最後まで発することなく、私の口は動きを止めた。

「ごめ……ほんと、ごめん……」

 消えるような声。

 これが耳元でなければ聞き逃してしまいそうなほど。

 私より大きいはずのこうちゃんの体、手。

 そのどちらもが優しく、弱々しく、それでも簡単に私を包み込む。

 白の服が、私のでは無い涙で濡れた。

「俺も、俺もことねのことが大好きだよ」

 こうちゃんから言われた言葉。

 ずっと知りたかったこうちゃんの気持ち。

「ありがとう、こうちゃん」

 私はこうちゃんの背中に手を回す。

「ことね、ありがとう」

 その言葉の後に、小さく「さよなら」と聞こえた気がして──

 私は驚いて手を解いてしまった。

 するとこうちゃんの体から全ての力が抜け、やがて倒れた。

 世界中の時間が止まったように感じた。

「こうちゃん……こうちゃん!!」

 自分の声が、耳鳴りのように聞こえた。

 こうちゃんが動かなくなってからどれくらいの時間が経ったんだろう。

 気がつけば私は救急車の中。

 倒れたこうちゃんを見て動けなくなってしまった私の代わりに、近くにいた人がすぐに救急車を呼んでくれた。

 どんなに声をかけてもこうちゃんは目を覚さない。

「心肺停止!」

 理解できない言葉が聞こえてきた。

 いや、正確には理解したくない言葉。

 私の心臓はこんなにもうるさいのに、こうちゃんの心臓は全く音を出さない。

「誰か助けてよ……こうちゃんを、助けてよ……!」

 誰でもいい。

 神様でも仏様でもなんでも。

 こうちゃんを殺さないで。

 そんな私の祈りはただの願いで終わった。

 こうちゃんはもう、居ない。
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