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思わず吸血鬼の能力を・・・
しおりを挟む「おねえちゃん、ちょっと来て!」
ゼンとリリアが会場を取り囲むように立ち並ぶ露店の方から駆け寄ってきた。
「もう、どうせまた、何か買って、でしょ?」
「えへへ・・・。」と、ゼンは憎めない顔。
「しょうがないわね、今日は特別だから、まあいいわ。」そう言う間にもリリアとゼンに急かされて、ラヴィは両手を引っ張っられ腰を上げた。「ごめんなさい、ほかの子供たちをお願い。」
「ああ。」
レインは、ほかの孤児院の子供たちがモニュメントのそばを駆け回っている姿を見守った。木造のアーチが複雑に組まれたその建造物の中や周りにいる。宵祭りの日、それには大きな鐘やランタンや球体の飾りが吊り下げられる。
「また吸血鬼が出たそうだ。」
不意に、近くからそんな気になる話し声が聞こえた。目を向けてみれば、露店の店員三人が、客の呼び込みに飽きた様子で立ち話をしている。
条件反射でサッとフードを被ったレインは、密かに聞き耳をたてた。
「最近、よく聞くな。」
「同日、ほぼ同時刻にあちこちで出没するらしい。そもそも少し前からほかの町では起こっていたことのようだが、この町ももう狙われてるんじゃないか?」
なんだって・・・?
レインは眉をひそめた。
集団で行動してるってことか?狩りがしづらくなるから、普通、俺たちは群れることを避けるが・・・。吸血鬼が複数人で表立って好きに動けば、いよいよ町全体が警戒態勢に入る。討伐隊も拡大されるぞ・・・いったい、どういうつもりだ。
「さっき店に来た客の夫婦も、つい一か月ほど前に娘さんが襲われて亡くなったって。そこにキャンドルグラスを置いて行ったよ。」
「気の毒にな・・・。」
つい意識が逸れたと気づいて視線を戻したその時、はしゃぎすぎた子供たちがモニュメントにぶつかるところをレインは目撃し、ハッとした。
中にいる子供たちの頭上にあるランタンが不安定に揺れ動いて・・・落ちてくる!
目の前に置かれていったキャンドルグラスの塊を飛び越え、レインは下にいたその二人を片腕ずつ、人間ならあり得ないスピードと力で助けていた。突風のように動いたせいで頭からフードが外れてしまう。輝く銀髪と、ひと目を引く美貌が露に。
そして間一髪、留め具が壊れたランタンが落下して砕け散った。
騒ぎに気づいた群衆は足を止め、何が起こったのかを理解して息をのんでいる。
「うそ・・・。」
「すごい・・・。」
「今、どう動いたの?」
しまった、つい咄嗟に・・・!不自然だと分かりながらも、レインはサッとフードをかぶり、よろめいて膝をついた。
人々が集まってくる。
「急に・・・気分が・・・。」
レインは苦しそうに胸をつかんだ。演技だ。
助けられた子どもたちも気をとられ、お礼は体調を心配する声に変わった。周囲にいる人々の反応も同様だ。驚愕のざわめきが、とたんに気遣う声にすり替わった。
「あの、ちょっと休みたいんで・・・失礼します。」
「お兄ちゃん、大丈夫っ?」と、リュークが体を支えてくれた。
「ぼく、お姉ちゃん呼んでくるっ。」と、アレンが駆けだした。
「ウチの店で少し休んでいくかい?すぐそこだから。」と、どこかの店員さん。
「お兄ちゃんは持病があるの。」と、セラ。
場が静まりかえった。
え・・・病弱なのに、さっきの超人的な動きは・・・?という周囲の不可解そうな顔。意識が引き戻された。
マズい、不審がられる・・・!
「いや、たまたま近くにいたし、たいした病気じゃないし、ただの眩暈です!寝不足と疲労でっ!」
周囲にいる人々はみな黙ったままで、それを一瞬でも目撃した者たちはまだ気になる様子。
離れた所から飛んできたような動きだったのは、見間違えか・・・。
そこへ、呼びに向かったアレンと一緒に、急いで戻ってくるラヴィが見えた。
「レイン・・・!」
「ああラヴィ、ゴメン、先に帰っててもいいかな。」
「それなら、みんなで帰りましょう。聞いたわ、途中で倒れたらどうするの。」
「そこまでヒドくないから。まだ買い物も終わってないだろ?じゅうぶん楽しんで帰ってきて。」
心配ないというように手を振りながら、レインは会場の外へ出た。
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