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エピローグ ~ 永遠の命も君とともに ~
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トン・・・カンカン・・・トントン、カンカンカン・・・
朝から絶《た》え間なく響く金槌《かなづち》を打ちつける音。嵐がこの地域を横断する予報が出たため、森の孤児院はあわただしい。窓を板で覆う役目はレインを中心に年上の男子が、それに必要な材料を運ぶのは年下の男児が担当し、女の子はみな、ラヴィと一緒に水や食料の確保にいそしんでいる。
これまではラヴィが出来る範囲で頑張っていたけど、これからはレインがいるから心強い。なんせ吸血鬼《ヴァンパイア》の身体能力を堂々と見せられるようになり、空まで飛べるのだから。
「レインお兄ちゃん、持ってきたよー。」
両手いっぱいに板をかかえて近づいてくるルイに気づいて、二階の窓の作業に取りかかっていたレインは地面におりた。
「サンキュー。じゃあ、あと3枚。」
「ええーっ、ちょっと休憩。」
「早くしっかり補強しておかないと、嵐にやられるぞ。」
その時、勝手口の方から声がかかって、レインとルイは一緒に目を向けた。
ラヴィが声をあげながら手まねきしている。
「お昼ご飯できたわよ。そろそろ休憩にして戻ってきて。」
「ラッキーだったな。」と笑って、レインはルイの頭に手を置いた。
ルイは大喜びで食堂へ走り、ほかの子供たちにも声をかけるために外へ出て来たラヴィのわきをすり抜けて行った。
レインはその場で少し待っていた。ラヴィが外で作業をしている子供たちを呼び集めたら、こう言おうと思っていたから。
「ラヴィと二人で、あそこの庭のベンチで食べたいな。光を浴びながら。」
嵐が来る前ぶれで強い風が吹いているけど、空はまだ青く、景色は明るい。
「いいわ。じゃあ、みんなにそう伝えてくるから、ちょっと待ってて。」
ラヴィがいったん食堂へ戻るのを見送ったあと、レインは顔を上げて、北の空をあおいだ。
あれから1ヶ月が経った。今のところ平穏無事《へいおんぶじ》に過ごすことができている。街の方でも不思議なほど吸血鬼による被害は聞かなくなった。
やつらは人間界を支配するなどと言っていたが、人間の方がずっと賢《かしこ》い。そうやすやすと思い通りになどさせないだろう。実際、討伐隊《とうばつたい》の勢力も大きく、強力になっている。だからこそ手に入れたかっただろう “ 永久に最強の王 ” なんてのになれる力 は、あいにく俺がもらってやったしな。
ラヴィが戻ってきて、二人は空き地にあるベンチ椅子に座った。
サンドイッチを膝《ひざ》に広げたラヴィに、レインは甘えて口を開けてみせると、ラヴィは食べさせてあげるふりをして、手を引っ込めた。
「レイン・・・まだ血が欲しくなる?」
「ええっと・・・正直に言うと、たまにね。」
「じゃあ、私のをあげる。だから、ほかの人に噛みついたりしないでね。」
「ほかの人のは欲しくないよ。」
その返事に満足したラヴィの手からレインはサンドイッチをもらって、ひと口パクリ。
「じゃあさ・・・その時は、いつものようにしていいかな。」
「いつものように・・・って?」
「君と出会う前にしてたこと。美味しそうだなって思った女の人に、こんなふうに近づいて・・・ベッドに誘って・・・優しく触れて・・・キス ――」
レインは胸を両手で思いきり突き飛ばされた。
「ごめん、冗談・・・調子に乗り過ぎた。」
「違う・・・。」
「え・・・?」
「・・・そんなことしてたの?」
知ってたけど。
「あ・・・やきもち?」
ラヴィはパッと右にずれて、レインから一歩離れた。
レインは困ったようにほほ笑んだ。
「ねえ、ラヴィ。聞いて。俺の覚悟。」
「なに・・・急に。」
ラヴィはまだ怒って、ムスッとしている。
レインは立ち上がり、そんなラヴィの真正面へ。それから騎士のように胸に手を当てて、片方の膝《ひざ》をついてみせた。
「君に捧《ささ》げる。」
ラヴィはきょとんとした目で赤面し、それを見てレインはくすっと笑った。
あの日、ラヴィについて知り、俺は生まれ変わった。分かったこともある一方で、謎もできた。
普通の吸血鬼《ヴァンパイア》ではない君がいつまで生きられる体なのか。その血をもらって人間のようになれた俺の一生もどうなったのか。もともとの飽きるほど長い寿命のままなのか、もしかしたら、人と同じ数十年の有限に変わった可能性はないのか・・・どれも実際にはよく分からない。時の流れに任せるしか確認するすべはない。
だから決めたんだ、同じ時間を生きるって。こんなふうに言えば君は怒《おこ》ったかもしれないな・・・。
俺の命は、君次第だ。
・✶・✶・ 完 ・✶・✶・
朝から絶《た》え間なく響く金槌《かなづち》を打ちつける音。嵐がこの地域を横断する予報が出たため、森の孤児院はあわただしい。窓を板で覆う役目はレインを中心に年上の男子が、それに必要な材料を運ぶのは年下の男児が担当し、女の子はみな、ラヴィと一緒に水や食料の確保にいそしんでいる。
これまではラヴィが出来る範囲で頑張っていたけど、これからはレインがいるから心強い。なんせ吸血鬼《ヴァンパイア》の身体能力を堂々と見せられるようになり、空まで飛べるのだから。
「レインお兄ちゃん、持ってきたよー。」
両手いっぱいに板をかかえて近づいてくるルイに気づいて、二階の窓の作業に取りかかっていたレインは地面におりた。
「サンキュー。じゃあ、あと3枚。」
「ええーっ、ちょっと休憩。」
「早くしっかり補強しておかないと、嵐にやられるぞ。」
その時、勝手口の方から声がかかって、レインとルイは一緒に目を向けた。
ラヴィが声をあげながら手まねきしている。
「お昼ご飯できたわよ。そろそろ休憩にして戻ってきて。」
「ラッキーだったな。」と笑って、レインはルイの頭に手を置いた。
ルイは大喜びで食堂へ走り、ほかの子供たちにも声をかけるために外へ出て来たラヴィのわきをすり抜けて行った。
レインはその場で少し待っていた。ラヴィが外で作業をしている子供たちを呼び集めたら、こう言おうと思っていたから。
「ラヴィと二人で、あそこの庭のベンチで食べたいな。光を浴びながら。」
嵐が来る前ぶれで強い風が吹いているけど、空はまだ青く、景色は明るい。
「いいわ。じゃあ、みんなにそう伝えてくるから、ちょっと待ってて。」
ラヴィがいったん食堂へ戻るのを見送ったあと、レインは顔を上げて、北の空をあおいだ。
あれから1ヶ月が経った。今のところ平穏無事《へいおんぶじ》に過ごすことができている。街の方でも不思議なほど吸血鬼による被害は聞かなくなった。
やつらは人間界を支配するなどと言っていたが、人間の方がずっと賢《かしこ》い。そうやすやすと思い通りになどさせないだろう。実際、討伐隊《とうばつたい》の勢力も大きく、強力になっている。だからこそ手に入れたかっただろう “ 永久に最強の王 ” なんてのになれる力 は、あいにく俺がもらってやったしな。
ラヴィが戻ってきて、二人は空き地にあるベンチ椅子に座った。
サンドイッチを膝《ひざ》に広げたラヴィに、レインは甘えて口を開けてみせると、ラヴィは食べさせてあげるふりをして、手を引っ込めた。
「レイン・・・まだ血が欲しくなる?」
「ええっと・・・正直に言うと、たまにね。」
「じゃあ、私のをあげる。だから、ほかの人に噛みついたりしないでね。」
「ほかの人のは欲しくないよ。」
その返事に満足したラヴィの手からレインはサンドイッチをもらって、ひと口パクリ。
「じゃあさ・・・その時は、いつものようにしていいかな。」
「いつものように・・・って?」
「君と出会う前にしてたこと。美味しそうだなって思った女の人に、こんなふうに近づいて・・・ベッドに誘って・・・優しく触れて・・・キス ――」
レインは胸を両手で思いきり突き飛ばされた。
「ごめん、冗談・・・調子に乗り過ぎた。」
「違う・・・。」
「え・・・?」
「・・・そんなことしてたの?」
知ってたけど。
「あ・・・やきもち?」
ラヴィはパッと右にずれて、レインから一歩離れた。
レインは困ったようにほほ笑んだ。
「ねえ、ラヴィ。聞いて。俺の覚悟。」
「なに・・・急に。」
ラヴィはまだ怒って、ムスッとしている。
レインは立ち上がり、そんなラヴィの真正面へ。それから騎士のように胸に手を当てて、片方の膝《ひざ》をついてみせた。
「君に捧《ささ》げる。」
ラヴィはきょとんとした目で赤面し、それを見てレインはくすっと笑った。
あの日、ラヴィについて知り、俺は生まれ変わった。分かったこともある一方で、謎もできた。
普通の吸血鬼《ヴァンパイア》ではない君がいつまで生きられる体なのか。その血をもらって人間のようになれた俺の一生もどうなったのか。もともとの飽きるほど長い寿命のままなのか、もしかしたら、人と同じ数十年の有限に変わった可能性はないのか・・・どれも実際にはよく分からない。時の流れに任せるしか確認するすべはない。
だから決めたんだ、同じ時間を生きるって。こんなふうに言えば君は怒《おこ》ったかもしれないな・・・。
俺の命は、君次第だ。
・✶・✶・ 完 ・✶・✶・
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