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第6章 決 戦
12. 決着の時
しおりを挟むアベルは、どんなに兄のもとへ駆け寄りたいか知れなかった。だが、まだその時ではないとわきまえて、我慢した。今は両者ともに疲れ切って動きがないが、中断しているだけでまだ決着はついていない。それに、兄は怖いほど鋭く険しいまなざしをしていた。まるで別人のようだ。いつも穏やかな表情と優しい声で話す兄。こんな顔は一度も見たことがない。
エウロンは、無様にボロボロにされた盾をにらみつけた。もう使う気にならないような有様だ。それで、彼はその盾を自分の兵士に受け取らせた。
それを見たアレンディルも、ひどく欠けて痛んだ盾をエドリックに預けた。
両者、剣だけを構えて再び臨戦態勢をとった。互いに顔を見合い、様子をうかがう。
「行くぞ!」とエウロンが怒鳴って、王たちは再び闘志を燃え上がらせた。
お互い無闇やたらに斬りつけるようなことはしない。ひっきりなしに繰り出される剣技の数々。白い刃が空中を走り回る。鎧を少し引き裂き合った。アレンディルの腕から、エウロンの腰のあたりから、避けきれずにつけられた掠り傷から鮮血がしたたる。
危ない! という瞬間には、アベルは思わず目を背けた。だが、慌てて振り戻した。リマールも同じだ。だが、エドリックとマクヴェインは、厳しい顔で一度も戦いから目を放さなかった。
アレンディルは攻撃を飛び退いてかわしたあと、さらに一歩さがった。次いで、剣の柄を両手で握り締め、右の肘を後ろへ引いた水平の構えで突進した。
そして・・・!
苛立ちと焦りが仇となったか、アレンディルの突き入れた剣が、ついにエウロンの胸の上をとらえた! 必死で戦っていたので、アレンディルは、それがどんなふうに決まるのかなど考えていなかった。
だがそれは、見事に王エウロンの鎧を打ち砕き、鎖帷子を斬り裂き、肉体を深く刺していた。それほどの威力があった。
アレンディルは、パッと剣を手放した。わざとだ。
エウロンがよろめく。それから、現実を受け止められない様子で、何か言いたげにアレンディルの顔を見つめながら、後ろへ倒れた。もはや声は出ない。彼自身、体が死にかけているのが分かった。勝敗を決めた若い王の剣は、自分の肩に近い部位に、真っ直ぐに突き立てられたままだ。栄光を手にし、勝ち誇る剣。これを引き抜かれたら、死はもっと早く、瞬く間にやってくるだろう。
エウロンは刃をつかみ、なんと自ら白刃を引き抜いた。
アレンディルが慌てて膝をつき、両手で傷口を押さえる。もし間に合うなら、命を救いたいと思ったのだ。負ければ潔く野心を捨てると言った、その言葉を信じて。
粉々になった鎖帷子は、血で赤く染まっている。救えるか。
すると、王エウロンが少し頭を起こした。いきなり腕を動かして、アレンディルの手首につかみかかったのだ。
アレンディルは驚いて王の顔に目をやったが、それは残る気力を振り絞った力で、それ以上は何も起こらなかった。ただその時、エウロンはまだ敵意に満ちた目つきで、何か短い言葉をしゃべった。恨み言を口にしたのか、アレンディルはその動きをしっかりと見たが、一文字も聞き取れはしなかった。
エウロンは苦しそうに歯を食いしばり、地面に頭をつけた。
「手当てを!」
アレンディルが大声で言った。そして、身動きできずにいた自分の兵士たちの方へ首を向け、叱るようにもう一度。
「手当てを、早く!」
その命令に従って、見習い軍医のリマールが救命処置を施した。それと同時に、両国の従者たちも駆け寄ってきた。もちろん、アベルも。
リマールが事態を先生に知らせに行くようエドリックに頼み、瀕死のエウロンの体はすぐに処置室へ運び込まれた。
結果、エウロンは生きながらえた。
そうしてバラロワ王国の君主は、立場としては捕虜となったが、客人としての待遇を受け、王宮の別館で療養することとなった。
その後、まだ潜んでいるバラロワ王国の部隊は、約束通りにことごとく撤退させた。回復したら必ず送り届けると誓って、近衛兵も残さなかった。王が敗れた今、彼らはそれをきくしかなかった。
王エウロンは、隣国でたった一人になった。
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