5 / 8
第5話 どうしても嫌なこと
しおりを挟む
「ねぇニナ。私ね、常々考えていることがあるの。」
勉強する手を止めて私は話しかけた。彼女は読書する手を休めることなく私に返答してくれた。
「どうかされましたか?私であればいつでも相談に乗りますよ。何でも言ってください。」
「ありがと。それじゃあ質問…というより相談になるのよね。私ってこれからどうしていけば良いのかしら。」
「と言いますと?」
「私はこの家の長女…つまりいつかは他家に嫁がないと行けないのでしょう?」
「まぁ…基本的にはそうなりますね。」
「でも私、結婚願望ないのよ。というかそんな事まだ考えたくもないわ。」
「ふふっ…お嬢様は恋をしたことがないからそんな事が言えるのですよ。お嬢様のように可愛い方でしたら、王子様が求婚してくれますよ‼」
彼女は少し興奮気味になりながら、私に詰め寄ってきた。
「ちょっニナ近い‼」
「あっすみません‼とはいえ…お嬢様は今後について考えていらっしゃったのですね。」
「えぇそうよ。私は今後どんな風に生きていけば良いのか少し考えちゃってね。」
前世では両親に勝手に結婚相手を決められて、それが嫌で飛び出してしまった。
ここだけを見れば無謀な子にしか見えないだろう。
それに今まで貴族の一員としてぬくぬく温室で育ってきたような人間が、普通馴染めるわけ無いと考えられたのだろう。
呼び止められたりすることもなければ、特段なにか言われることもなかったのを覚えている。
あの頃の両親とは関係が冷え切っていた。原因としては私の嫉妬から始まったことだが、だとしてもあんな扱いをされたくはなかった。
とはいえ…私にも原因の一端があったのは事実だ。
私には一人の弟がいる。いわゆる長男というやつだ。
しかし彼は生まれながらに病弱で、正直彼が当主を務めることなど不可能だった。
しかし貴族というのはとても面倒な物で、男が当主を務めることが多い。
女性でも当主を務めている所はあるが、とても少ない。
私がここの家を飛び出した時も変わらずにそのままだったことから…今世でも同じと考えられるだろう。
「そうですねぇ…私としてはお嬢様には、誰かに強制されることなく自由に生きてほしいと思っています。整備された甘い道を行くのではなく、あえて茨の厳しい道を歩んでほしいと考えています。」
「そうなの?」
「えぇ。あくまで私の考えです。真に受けなくて大丈夫ですよ。それにお嬢様なら大丈夫です。お嬢様には私よりも強い魔法の力や基礎的な学力があります。」
「お世辞でも褒めてくれて嬉しいわ。」
「お世辞ではないですよ。さて…勉強を再開しましょう。」
私はそれからというもの、勉強と魔法に傾倒する日々を送っていた。
両親との良好な関係を築くことも忘れずに行い、前世のときとは違い、病弱な弟とも積極的に関わっていき良好な関係になれたと思っている。
しかし…そんな幸せな毎日を壊そうとするイベントがやってきた。
前世の時一番の苦行だと感じていた、社交界というものだ。
華々しくて、きれいな男女がダンスを嗜んだり音楽を聞いたりしながら食事を取っている光景を想像できるかもしれない。
だがダンスが嫌いな人間にとって…一般な人にとっては楽しい馬鹿もしれないが、そんな人たちにとっては忌むべき地獄へと変貌する。
しかもダンスをしなければ、他家の令嬢から馬鹿にされ令息にも冷ややかな視線で見られることになる。
ダンスをしても下手であれば同様に馬鹿にされ、冷ややかな視線を向けられるだろう。
私自身、ダンスはとても苦手だ。
だからこれまで何かと理由をつけて避けてきたのだが…今回はどうやらそうもいかないらしい。
「頼む…今回だけは出てくれないか。侯爵家である我が家としては流石にこれに出ないわけにはいかないのだ。頼む‼」
「ごめんね…貴方がダンスを苦手にしてることは分かるわ。でも今回だけ…今回だけで良いから出てくれない?お願い‼」
私の両親が娘である私に頭を下げている理由…それは、第二王子が約1ヶ月後に誕生日を迎え、10歳になるからだ。
貴族というのは何かと理由を付けて社交界を開いたり、パーティーを開くが今回もその一環なのだろう。
今までのパーティーなどは体調不良などを理由にして乗り越えてきたが、第二王子の誕生日ともなれば流石の両親でも参加を見送ることは出来ないらしい。
もっとも当日に熱を出しても行かせるつもりだろう。なにせ王子だ。息子や娘が仮に仲良く慣れれば縁ができる。その縁を使えば何だってやれるだろう。
「はぁ…私は嫌です。参加したくありません。」
「そうだよなぁ…どうにかして断りたくても今回は面倒くさい人が担当しててさ…正直厳しいんだよね。」
「一体誰が担当してるんです?」
「宰相だよ。まぁ宰相の事は気にしないでくれ。どうにか断れないか試してみるから。」
「…分かりました。もしそれでも駄目でしたら構いません。頑張って行きます。」
「ありがとう。帰ってきたら良いものを用意しておくからね。」
お父さんが言っていた『良いもの』…それに心当たりはなかった。
でも…それでも…行きたくないなぁ…
本日もご覧いただきありがとうございます‼
次話は明日の7:10に投稿予定なので是非見ていただけると幸いです‼
勉強する手を止めて私は話しかけた。彼女は読書する手を休めることなく私に返答してくれた。
「どうかされましたか?私であればいつでも相談に乗りますよ。何でも言ってください。」
「ありがと。それじゃあ質問…というより相談になるのよね。私ってこれからどうしていけば良いのかしら。」
「と言いますと?」
「私はこの家の長女…つまりいつかは他家に嫁がないと行けないのでしょう?」
「まぁ…基本的にはそうなりますね。」
「でも私、結婚願望ないのよ。というかそんな事まだ考えたくもないわ。」
「ふふっ…お嬢様は恋をしたことがないからそんな事が言えるのですよ。お嬢様のように可愛い方でしたら、王子様が求婚してくれますよ‼」
彼女は少し興奮気味になりながら、私に詰め寄ってきた。
「ちょっニナ近い‼」
「あっすみません‼とはいえ…お嬢様は今後について考えていらっしゃったのですね。」
「えぇそうよ。私は今後どんな風に生きていけば良いのか少し考えちゃってね。」
前世では両親に勝手に結婚相手を決められて、それが嫌で飛び出してしまった。
ここだけを見れば無謀な子にしか見えないだろう。
それに今まで貴族の一員としてぬくぬく温室で育ってきたような人間が、普通馴染めるわけ無いと考えられたのだろう。
呼び止められたりすることもなければ、特段なにか言われることもなかったのを覚えている。
あの頃の両親とは関係が冷え切っていた。原因としては私の嫉妬から始まったことだが、だとしてもあんな扱いをされたくはなかった。
とはいえ…私にも原因の一端があったのは事実だ。
私には一人の弟がいる。いわゆる長男というやつだ。
しかし彼は生まれながらに病弱で、正直彼が当主を務めることなど不可能だった。
しかし貴族というのはとても面倒な物で、男が当主を務めることが多い。
女性でも当主を務めている所はあるが、とても少ない。
私がここの家を飛び出した時も変わらずにそのままだったことから…今世でも同じと考えられるだろう。
「そうですねぇ…私としてはお嬢様には、誰かに強制されることなく自由に生きてほしいと思っています。整備された甘い道を行くのではなく、あえて茨の厳しい道を歩んでほしいと考えています。」
「そうなの?」
「えぇ。あくまで私の考えです。真に受けなくて大丈夫ですよ。それにお嬢様なら大丈夫です。お嬢様には私よりも強い魔法の力や基礎的な学力があります。」
「お世辞でも褒めてくれて嬉しいわ。」
「お世辞ではないですよ。さて…勉強を再開しましょう。」
私はそれからというもの、勉強と魔法に傾倒する日々を送っていた。
両親との良好な関係を築くことも忘れずに行い、前世のときとは違い、病弱な弟とも積極的に関わっていき良好な関係になれたと思っている。
しかし…そんな幸せな毎日を壊そうとするイベントがやってきた。
前世の時一番の苦行だと感じていた、社交界というものだ。
華々しくて、きれいな男女がダンスを嗜んだり音楽を聞いたりしながら食事を取っている光景を想像できるかもしれない。
だがダンスが嫌いな人間にとって…一般な人にとっては楽しい馬鹿もしれないが、そんな人たちにとっては忌むべき地獄へと変貌する。
しかもダンスをしなければ、他家の令嬢から馬鹿にされ令息にも冷ややかな視線で見られることになる。
ダンスをしても下手であれば同様に馬鹿にされ、冷ややかな視線を向けられるだろう。
私自身、ダンスはとても苦手だ。
だからこれまで何かと理由をつけて避けてきたのだが…今回はどうやらそうもいかないらしい。
「頼む…今回だけは出てくれないか。侯爵家である我が家としては流石にこれに出ないわけにはいかないのだ。頼む‼」
「ごめんね…貴方がダンスを苦手にしてることは分かるわ。でも今回だけ…今回だけで良いから出てくれない?お願い‼」
私の両親が娘である私に頭を下げている理由…それは、第二王子が約1ヶ月後に誕生日を迎え、10歳になるからだ。
貴族というのは何かと理由を付けて社交界を開いたり、パーティーを開くが今回もその一環なのだろう。
今までのパーティーなどは体調不良などを理由にして乗り越えてきたが、第二王子の誕生日ともなれば流石の両親でも参加を見送ることは出来ないらしい。
もっとも当日に熱を出しても行かせるつもりだろう。なにせ王子だ。息子や娘が仮に仲良く慣れれば縁ができる。その縁を使えば何だってやれるだろう。
「はぁ…私は嫌です。参加したくありません。」
「そうだよなぁ…どうにかして断りたくても今回は面倒くさい人が担当しててさ…正直厳しいんだよね。」
「一体誰が担当してるんです?」
「宰相だよ。まぁ宰相の事は気にしないでくれ。どうにか断れないか試してみるから。」
「…分かりました。もしそれでも駄目でしたら構いません。頑張って行きます。」
「ありがとう。帰ってきたら良いものを用意しておくからね。」
お父さんが言っていた『良いもの』…それに心当たりはなかった。
でも…それでも…行きたくないなぁ…
本日もご覧いただきありがとうございます‼
次話は明日の7:10に投稿予定なので是非見ていただけると幸いです‼
20
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜
侑子
恋愛
小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。
父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。
まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。
クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。
その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……?
※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる