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十三 不意の再会
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祖父からの着信だ。何事だろうかと思いながら応じると、電話のむこうで、祖父は決まり悪そうに謝ってよこした。
「いま、石井くんから報告の電話があった。採用だと。千草に事情を伝えとかいで悪かったの。もろもろ、山田くんに頼み込まれて、断れなんだ」
あの課長は、石井というらしい。頭に刻みこみ、千草は電話口でも表情が相手に伝わるように、頬を上げた。
「いいよ、じいやんのせいじゃないんだし。これから帰るね。詳しいいきさつは、また、夕食のときにでも聞かせてよ」
ごく軽い調子で言い、通話を終えようとするのを遮って、祖父はもごもごっと何かを告げた。
「えっ? ……なあに? もう一回言って」
「うちで預かる若い衆が空港に着いたと。迎えに行ってくれんか」
聞いてない! さっき、初めて地域おこし協力隊員が製藍所に来るのだと、他人から聞かされて知ったばかりなのに、そのひとたちをいまから迎えに行けとは、さすがに横暴だ。反発心が芽吹くが、電話でのケンカは、面と向かっての口論とは違って、感情が伝わりにくくてよくない。
アンガーマネジメントの研修を思い出して、五秒間ぐっとこらえきり、千草はふっと息を吐いた。
「──確か、うちに来るのは、三人だったよね。なんて名前のひと?」
「マツダ、カンダ、スバル。男がふたりに、女がひとり」
「連絡先は?」
祖父が読み上げる電話番号を手の甲にメモして、千草は状況に耳を傾ける。
当人たちは連絡しあって同じ便に乗り合わせ、十一時にこちらへ到着したばかりだそうだ。これからタクシーでむかうという一報が入ったので、迎えに行ってやるから待機していろと命じたものの、千草が自家用車を使って出かけていたため、目算が狂ったようだった。
実家には他に農作業用の軽トラックもあるが、大人四人が乗れるのは千草の乗るこの車だけだ。祖父に車を返しに行けば、そのぶんの時間のロスがある。空港までは片道三十分ほど。いますぐに出なければ、余計に待たせることになる。
「わかった。どうにかする。そっちに戻るのはお昼時になるから、おかあさんに人数分のお昼を頼んでおいてくれる?」
「ああ、俊子さんには、日付を伝えてあるけん、いけるやろう」
祖父や叔母からやたらと信頼をおかれている母とて、スーパーマンでも超能力者でもなんでもない。到着時刻を正確に教えられていなければ、夕飯の準備しかしないはずだ。母に伝言するよう念を押して電話を切ると、千草はカーナビを起動して、空港までの経路を検索しながら、どう向かおうかと考える。
高松自動車道に乗るか、一般道で行くか。祖父も、大急ぎで行けとは言わなかった。高速道路でも、制限速度を守っていくなら、到着時刻に大きな差は出ないはずだ。あとは、渋滞情報いかんだ。
カーナビの示す経路に、渋滞の警告はなかった。問題ない。下道で行こう。
──それにしても、カンダはともかく、マツダにスバルなんて、なんだか自動車メーカーみたいな名前だ。スバルって、漢字は昴? それ、下の名前じゃなくって?
祖父からの情報をいまひとつ信用しきれずに、首をかしげる。
車を発進させてから、手の甲にメモした電話番号が視界に入った。相手方にいつごろ着くからどこどこで待っているようにと、連絡を一本入れておくべきだったなと気づいたが、あとのまつりだ。
千草が自動車運転免許を取ったのは、高校三年生のうちだった。だれもが自動車の運転くらいできるのがこちらのスタンダードだ。兄も姉も高校生のうちに取得したから、自分もそうするのがあたりまえだと思っていた。
東京で、短大に入りたてのころ、キャンパスまでの一駅ぶんをダイエットのために歩いていると語る先輩に出会って、驚いたのなんの。当時の千草の感覚では、五分、十分歩く距離は、車を出す距離だった。
東京での生活では、社用車以外、まったくと言っていいほど車の運転とは無縁だった。その社用車も、台数が限られ、営業時には専用の交通系ICカードの用意があった。健康のために歩くことは礼賛されていたし、発達した交通網のおかげで、プライベートで車を所有する必要性はなかった。千草の住んでいたマンションも、涼真のマンションも単身者用のせいか、駐車場はついていなかった。
都心部は、ICカードが一枚あれば、現金を持たずに暮らしていける。便利さに慣れると、おつりが出ないようにきっちりと乗車賃を握りしめてバスに乗るといった感覚は、どうしたって薄れる。
──どんなひとたちが来るのだろう。町に、なじめるのかしら。
徳島阿波おどり空港の敷地脇を走る。右手の高い塀が途切れると同時に、空港まであと一キロの看板が出た。塀の代わりに有刺鉄線とフェンスに囲われた草原が見通せる。このどこかに滑走路があるはずだが、千草の位置からはわからない。
空港の建物自体も、いまだ見えてはこなかった。一地方都市の空港は、巨大な羽田空港や成田空港などと引き比べるものではない。あれはこの国の首都のための空港だ。わかっていても、都会のひとはきっと、規模の違いに愕然とするだろう。
駐車場に車を停め、ターミナルビルを目指す。入ってすぐのロビーで、男女三人組を探しながら首をめぐらせて、千草は心臓が止まりそうになった。
松葉がいる。意思の強そうな太い眉、高い身長、分厚いからだつき。
見間違いだ、そうに違いない。自分に言い聞かせながら、目をそらし、手の甲に書き留めた電話番号をスマホに打ち込む。
「──え」
入力を終えた電話番号の下にパッと、表示が出る。『東洋海産 松葉』。その文字に、見間違いではないことを悟る。
──だれだ、マツダなんて言ったのは!
単純に、祖父が氏名を聞き違えていたか、こちらがうまく聞き取れなかったのか。原因はともかく、千草が迎えに来た三人組のひとりは、彼で間違いないようだった。
通話しながら、近づいていく。千草の気配に気づいたか、視線がかちあう。驚いたように眉があがる。
「お久しぶりです、松葉さん」
電話のむこうに呼びかけると、彼は破顔し、通話を切った。
「お世話になる先も深見さんとは知っていましたが、まさか、こちらでまたお会いできるとは、思ってもみませんでした」
優しい声が低く響いてくる。
「うわあ、松葉さんが、上板町の地域おこし協力隊員だったなんて」
我ながら、間抜けな声だ。松葉は目を細め、頭を下げる。
「神田といっしょに、しばらくお世話になります」
「神田さんまでっ?」
ことばを失った千草の前で、松葉は千草の電話番号をスマホに登録し、さらにLIMEのIDを求めてくる。流されるまま、連絡先を交換し、残りの二名を目で探す。松葉の足元にふたりぶんのスーツケースはあるものの、姿はない。トイレにでも行っているのかと思ったが、千草の視線の動きを追った松葉は、階上を指さした。
「三階に展望スペースがあるでしょう。暇を持てあまして、遊びにいきました」
「仲が良いんですね。女性のかたとも元々お知り合いだったんですか?」
松葉はかぶりを振り、暑そうにポロシャツのボタンをひとつだけくつろげた。
「須原さんとは、ほぼ初対面です。協力隊員になる際の面接で、ちらっと見かけたくらいですね。彼女のほうから神田に連絡がなければ、徳島への入りも別々の日になったはずで」
「あ、じゃあ、神田さんとは……」
「ああ、ですから、あいつとも初対面なんですよ。あいつは、あのご面相ですし、そういう反応に慣れていますから」
ああ、イケメンだから、女性が群がるということか。ほどよく濁すような口ぶりに状況を察して、千草は相槌を返すだけに留めた。
「今日は、このあとどんなふうに過ごす予定なんですか?」
「とりあえず、滞在先を整えるつもりです。──あの、深見さん。ぶしつけなお願いかもしれませんが、お互い同年代だと思うので、敬語、やめませんか」
「いいですよ。ついでに、わたしのことは、千草と呼んでください。祖父も両親もいるから、紛らわしいし」
応えて松葉が口を開こうとしたタイミングで、駆け寄ってくる音が聞こえた。神田と、小柄な女性だ。
女性のほうは、パーマをかけたショートボブ、眼鏡の奥の目元にはくっきりと濃いめのアイラインが引かれている。背丈に対して裾長に感じるロングスカートのせいで、かえって子どもっぽい印象がある。年齢はわからないが、同年代か年下に見える。彼女が須原だろう。
神田は相変わらずの美々しさだ。明るめの茶色の髪も健在で、息を切らせて叫ぶように言うさまさえ、子犬のようだった。
「ごめんなさい、お待たせしちゃいました! ……ああっ?」
びしぃっと指をさされて、千草はにこっとしてお辞儀をする。
「ご無沙汰しています、神田さん」
「わあ! わあ、深見さんだぁ! すごい偶然! こっちのご出身だったんですね!」
手を叩いて喜んでくれる神田の隣で、須原はあからさまに不機嫌そうな顔になった。その表情に一抹の不安ととっつきにくさを覚えながら、千草は笑顔を装備しなおし、三人を見回した。
「いま、石井くんから報告の電話があった。採用だと。千草に事情を伝えとかいで悪かったの。もろもろ、山田くんに頼み込まれて、断れなんだ」
あの課長は、石井というらしい。頭に刻みこみ、千草は電話口でも表情が相手に伝わるように、頬を上げた。
「いいよ、じいやんのせいじゃないんだし。これから帰るね。詳しいいきさつは、また、夕食のときにでも聞かせてよ」
ごく軽い調子で言い、通話を終えようとするのを遮って、祖父はもごもごっと何かを告げた。
「えっ? ……なあに? もう一回言って」
「うちで預かる若い衆が空港に着いたと。迎えに行ってくれんか」
聞いてない! さっき、初めて地域おこし協力隊員が製藍所に来るのだと、他人から聞かされて知ったばかりなのに、そのひとたちをいまから迎えに行けとは、さすがに横暴だ。反発心が芽吹くが、電話でのケンカは、面と向かっての口論とは違って、感情が伝わりにくくてよくない。
アンガーマネジメントの研修を思い出して、五秒間ぐっとこらえきり、千草はふっと息を吐いた。
「──確か、うちに来るのは、三人だったよね。なんて名前のひと?」
「マツダ、カンダ、スバル。男がふたりに、女がひとり」
「連絡先は?」
祖父が読み上げる電話番号を手の甲にメモして、千草は状況に耳を傾ける。
当人たちは連絡しあって同じ便に乗り合わせ、十一時にこちらへ到着したばかりだそうだ。これからタクシーでむかうという一報が入ったので、迎えに行ってやるから待機していろと命じたものの、千草が自家用車を使って出かけていたため、目算が狂ったようだった。
実家には他に農作業用の軽トラックもあるが、大人四人が乗れるのは千草の乗るこの車だけだ。祖父に車を返しに行けば、そのぶんの時間のロスがある。空港までは片道三十分ほど。いますぐに出なければ、余計に待たせることになる。
「わかった。どうにかする。そっちに戻るのはお昼時になるから、おかあさんに人数分のお昼を頼んでおいてくれる?」
「ああ、俊子さんには、日付を伝えてあるけん、いけるやろう」
祖父や叔母からやたらと信頼をおかれている母とて、スーパーマンでも超能力者でもなんでもない。到着時刻を正確に教えられていなければ、夕飯の準備しかしないはずだ。母に伝言するよう念を押して電話を切ると、千草はカーナビを起動して、空港までの経路を検索しながら、どう向かおうかと考える。
高松自動車道に乗るか、一般道で行くか。祖父も、大急ぎで行けとは言わなかった。高速道路でも、制限速度を守っていくなら、到着時刻に大きな差は出ないはずだ。あとは、渋滞情報いかんだ。
カーナビの示す経路に、渋滞の警告はなかった。問題ない。下道で行こう。
──それにしても、カンダはともかく、マツダにスバルなんて、なんだか自動車メーカーみたいな名前だ。スバルって、漢字は昴? それ、下の名前じゃなくって?
祖父からの情報をいまひとつ信用しきれずに、首をかしげる。
車を発進させてから、手の甲にメモした電話番号が視界に入った。相手方にいつごろ着くからどこどこで待っているようにと、連絡を一本入れておくべきだったなと気づいたが、あとのまつりだ。
千草が自動車運転免許を取ったのは、高校三年生のうちだった。だれもが自動車の運転くらいできるのがこちらのスタンダードだ。兄も姉も高校生のうちに取得したから、自分もそうするのがあたりまえだと思っていた。
東京で、短大に入りたてのころ、キャンパスまでの一駅ぶんをダイエットのために歩いていると語る先輩に出会って、驚いたのなんの。当時の千草の感覚では、五分、十分歩く距離は、車を出す距離だった。
東京での生活では、社用車以外、まったくと言っていいほど車の運転とは無縁だった。その社用車も、台数が限られ、営業時には専用の交通系ICカードの用意があった。健康のために歩くことは礼賛されていたし、発達した交通網のおかげで、プライベートで車を所有する必要性はなかった。千草の住んでいたマンションも、涼真のマンションも単身者用のせいか、駐車場はついていなかった。
都心部は、ICカードが一枚あれば、現金を持たずに暮らしていける。便利さに慣れると、おつりが出ないようにきっちりと乗車賃を握りしめてバスに乗るといった感覚は、どうしたって薄れる。
──どんなひとたちが来るのだろう。町に、なじめるのかしら。
徳島阿波おどり空港の敷地脇を走る。右手の高い塀が途切れると同時に、空港まであと一キロの看板が出た。塀の代わりに有刺鉄線とフェンスに囲われた草原が見通せる。このどこかに滑走路があるはずだが、千草の位置からはわからない。
空港の建物自体も、いまだ見えてはこなかった。一地方都市の空港は、巨大な羽田空港や成田空港などと引き比べるものではない。あれはこの国の首都のための空港だ。わかっていても、都会のひとはきっと、規模の違いに愕然とするだろう。
駐車場に車を停め、ターミナルビルを目指す。入ってすぐのロビーで、男女三人組を探しながら首をめぐらせて、千草は心臓が止まりそうになった。
松葉がいる。意思の強そうな太い眉、高い身長、分厚いからだつき。
見間違いだ、そうに違いない。自分に言い聞かせながら、目をそらし、手の甲に書き留めた電話番号をスマホに打ち込む。
「──え」
入力を終えた電話番号の下にパッと、表示が出る。『東洋海産 松葉』。その文字に、見間違いではないことを悟る。
──だれだ、マツダなんて言ったのは!
単純に、祖父が氏名を聞き違えていたか、こちらがうまく聞き取れなかったのか。原因はともかく、千草が迎えに来た三人組のひとりは、彼で間違いないようだった。
通話しながら、近づいていく。千草の気配に気づいたか、視線がかちあう。驚いたように眉があがる。
「お久しぶりです、松葉さん」
電話のむこうに呼びかけると、彼は破顔し、通話を切った。
「お世話になる先も深見さんとは知っていましたが、まさか、こちらでまたお会いできるとは、思ってもみませんでした」
優しい声が低く響いてくる。
「うわあ、松葉さんが、上板町の地域おこし協力隊員だったなんて」
我ながら、間抜けな声だ。松葉は目を細め、頭を下げる。
「神田といっしょに、しばらくお世話になります」
「神田さんまでっ?」
ことばを失った千草の前で、松葉は千草の電話番号をスマホに登録し、さらにLIMEのIDを求めてくる。流されるまま、連絡先を交換し、残りの二名を目で探す。松葉の足元にふたりぶんのスーツケースはあるものの、姿はない。トイレにでも行っているのかと思ったが、千草の視線の動きを追った松葉は、階上を指さした。
「三階に展望スペースがあるでしょう。暇を持てあまして、遊びにいきました」
「仲が良いんですね。女性のかたとも元々お知り合いだったんですか?」
松葉はかぶりを振り、暑そうにポロシャツのボタンをひとつだけくつろげた。
「須原さんとは、ほぼ初対面です。協力隊員になる際の面接で、ちらっと見かけたくらいですね。彼女のほうから神田に連絡がなければ、徳島への入りも別々の日になったはずで」
「あ、じゃあ、神田さんとは……」
「ああ、ですから、あいつとも初対面なんですよ。あいつは、あのご面相ですし、そういう反応に慣れていますから」
ああ、イケメンだから、女性が群がるということか。ほどよく濁すような口ぶりに状況を察して、千草は相槌を返すだけに留めた。
「今日は、このあとどんなふうに過ごす予定なんですか?」
「とりあえず、滞在先を整えるつもりです。──あの、深見さん。ぶしつけなお願いかもしれませんが、お互い同年代だと思うので、敬語、やめませんか」
「いいですよ。ついでに、わたしのことは、千草と呼んでください。祖父も両親もいるから、紛らわしいし」
応えて松葉が口を開こうとしたタイミングで、駆け寄ってくる音が聞こえた。神田と、小柄な女性だ。
女性のほうは、パーマをかけたショートボブ、眼鏡の奥の目元にはくっきりと濃いめのアイラインが引かれている。背丈に対して裾長に感じるロングスカートのせいで、かえって子どもっぽい印象がある。年齢はわからないが、同年代か年下に見える。彼女が須原だろう。
神田は相変わらずの美々しさだ。明るめの茶色の髪も健在で、息を切らせて叫ぶように言うさまさえ、子犬のようだった。
「ごめんなさい、お待たせしちゃいました! ……ああっ?」
びしぃっと指をさされて、千草はにこっとしてお辞儀をする。
「ご無沙汰しています、神田さん」
「わあ! わあ、深見さんだぁ! すごい偶然! こっちのご出身だったんですね!」
手を叩いて喜んでくれる神田の隣で、須原はあからさまに不機嫌そうな顔になった。その表情に一抹の不安ととっつきにくさを覚えながら、千草は笑顔を装備しなおし、三人を見回した。
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