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二十八 師匠と弟子
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藍草の苗を植え終えると、しばらくは手が空く。朝のいっときは畑の世話をするが、そのあとは自由だ。千草は役場へ向かうし、協力隊の三人には、それぞれに職務があるらしい。技の館で藍染めの指導員をしたり、藍に関するイベントに出たり、新しい地域振興企画を考えたりと、彼らの仕事は幅広い。
そのうえ、松葉も神田も、必ず土日が休みになるようなスケジュールは組まれていなかった。技の館のシフトが入るのだ。指導員の仕事をするようになって益々、千草には彼らの予定や居場所が把握できない日が増えた。
松葉とのやりとりは、LIMEばかりが多くなった。声が響く母屋で電話をかけようとは思えないし、夜の勉強会は、神田に松葉との仲を冷やかされて以来、ごぶさただ。そのため、夕食後の時間はもっぱら、公務員試験の勉強にあてている。
松葉と夕食をともにできたところで、家族の前で仲をにおわせる話題が出せるわけもない。
土曜日にあさぎが茶を飲みに深見家へ寄ったとき、千草は切実に話し相手を求めていた。
「叔母さん。あのさ、いまの時期のうちに藍染めを本格的に習いたいんだけど、どこかオススメの教室とかって、ある?」
弟子は取らないと言っていた叔母のことは端から考えに入れずに問うと、あさぎは湯呑みの縁をなでた。
「あたしが教えてもええよ? 藍の建てかたなら、タダで教えたる」
「えっ、いいの?」
がばっと顔をあげると、あさぎはころころと笑った。
「わかっとるやろうけんど、かんたんやないわよ? いま言うたとおり、染め液が出来たところで、布地を染めるのにだって技術と勘がいるもの。やけんど、せっかくちーちゃんの気持ちが藍にむいとるんだし、しばらくこっちにおるんやったら、一度くらい試してみたってええちゃうん」
善は急げと行動するのがあさぎらしい。三十分後には、千草とふたりでホームセンターに乗りこみ、七五リットルのポリバケツと長い木の棒、pH試験紙を買いこんだ。さらに一時間後には、祖父に小口での蒅の購入を打診していた。
「七十五リットルで作るなら、蒅は五キロから一〇キロね」
一俵十五貫、五六・二五キログラムが本来の購入単位だと言う。そこから五キロなんて半端に売ってしまっては、残りはどうなるのかと思いきや、近頃は趣味で藍染めにチャレンジする層というのが一定数いるそうだ。そうした層むけの小ロットも用意があるから、だいじょうぶなのだという。
「知らなかった。案外、身近なんだ」
感動しているところに、あさぎはにやりとして囁いた。
「蒅は一キロ五千円するけど、何キロにしとく?」
最低量の購入にかかる金を計算して、千草は凍りついた。
「ちょ、ちょっと待った! これ、すごくお金かかるんじゃないの?」
「うふふ、よう気がついた! やけんど、もう遅いぞ!」
楽しそうに、歌うような調子で言って、あさぎはバンッと、傍らに置いた青いポリバケツの蓋を叩いた。
「まあ、たとえば、ハンカチやワンピースを一枚だけ染めるにはごっつい割高やけんど、藍はそういうものやないけん、ブラウスでもスカーフでも、なんやって染めてみればええのよ。まあ、すべては上手う藍建てできたらのお話やけんどね」
気軽に言うあさぎを信じられない気持ちで凝視していると、叔母は口角をあげたまま、小首をかしげてみせた。
「あの、須原っていうコがね、あれから何度か工房に来るのよね、弟子入りしたいって。やけんど、弟子を取るなら、あたしだって相手ぇ選びたいわ。藍建ての仕方なら、ちーちゃんに教えたるけん、あとはあんたが責任持って、勝手にやってかぁな」
──それが本心か!
ほぞを噛んだが、手遅れだった。すでに入手してしまったポリバケツなどなどの道具を無駄にできるほど、千草の懐は暖かくない。
「ひどい! わたし、ちゃんと講習料だって素材代だって払って、お客さんとして行っただけだもん。藍染め体験のあとで須原さんがそんな行動取ったからって、その責任までは背負えないよ!」
文句を垂れた姪を見ても、あさぎはこころが揺らがなかったらしい。顔色ひとつ動かさなかった。
「いやあ、ちーちゃんのせいだと思うけんどね。『千草さんのハンカチと同じ柄を染めてみたい』って、いがっとったわよ」
絶句して、千草は蒅の保管倉庫の前で立ち尽くした。あさぎは腕を組み、肩をすくめる。
「弟子入りは無理でも、その柄のハンカチを一枚染めるための講習料を取って、講座にしてしまえばいいじゃない。何がダメなの?」
「船渡さんの大事な型、貸しとうない」
子どもっぽくくちびるを尖らせたあさぎに、頭が痛くなる思いがした。
「前に言ってたワンピース、自分で染めてみるのもええね。木綿か絹か麻か、袖の有無やAラインかフレアかでも、だいぶ変わってくるとは思うけんど、大きな素材を均一に染めあげるのは、結構な手間よ。催事用のは別にあたしが作るけん、楽しくやりな」
藍建ては、灰汁をつくるところから始めるのだと言う。翌日に材料を手に入れる手はずをあさぎが整えてくれるという。おまかせして、千草はまず、どこで藍建てをするかを考えた。
何せ、七十五リットルのポリバケツだ。染め液がいっぱいになれば、ひとりでは動かせなくなる。汚れても良い場所となると、庭の隅が適当だが、染め液が酸化してはならないのなら、これから暑くなる屋外は論外だろう。先日の藍染めの手順から行くと、水栓に近いほうがいいし、物干し場もあると、なお良い。
前庭の納屋が良さそうだと思ったが、扉を開けてみると、思いのほかガラクタが詰まっていた。この納屋は、製藍所ではなくて深見家のプライベートな物置なので、許可権者は母だ。
千草は母の許しを得て、半日かけて納屋を掃除し、藍染めのためのスペースを確保したのだった。
灰汁の材料は、木灰だ。またホームセンターに買いにいくのかと思いきや、あさぎがむかったのは、近くの旅館だった。その旅館では、大浴場の湯を薪で焚いているのだと、あさぎは言った。
「このあたり一帯はIT企業のテレワークで流行ったし、別荘やオフィスで薪ストーブ使うひとも多いの。そういう企業や個人から分けてもらうって手もあるけんど、ようけ建てるときは、それを何軒分も集める必要があるやろ? それやったら、こっちのほうが品質が安定するし」
千草は車窓に見える真新しい別荘群の主を知って、意外に感じた。そして、旅館の女将と顔つなぎができたことの価値に気づいた。これは、何十年もかけて、あさぎが築いてきたひととの縁だ。そう思うと、むやみに触れられないなと感じた。きっと、次に木灰が要るときも、あさぎを頼ったほうがいい。
深見家に戻り、納屋に据えられたポリバケツを見て、あさぎは目を丸くした。
「ええね!」
短く簡潔な賞賛だったが、こころからの笑顔が添えられていた。千草は子どものようにうれしくなった。
灰汁を取るには、熱湯が要る。木灰に熱湯を加え、上澄み液を取る。これが一番灰汁だ。湯を足し、二番灰汁、三番灰汁と掬っていき、それぞれpH試験紙でアルカリの度合いを確かめる。使う灰汁を決め、保管する。さらにその灰汁を沸騰させる。
蒅をほぐし入れたポリバケツに沸騰した灰汁を少量ずつ足して練る。温度を保って発酵を促し、日を置いて、また熱い灰汁を足して練る。そうして、徐々に嵩を上げるのだ。
「攪拌して空気ぃ入れ過ぎんように気ぃつけて。pHが一〇.五を切ったら、一番灰汁か石灰を追加。アルカリ性を保つのが肝心」
教えられたのはそれぐらいで、あさぎはそのあとしばらく、千草のようすもポリバケツの中身も見に来なかった。千草は毎日、まるでぬか床の世話をするように、藍の世話を続けた。ひたすら言われたとおりにpHをはかり、熱い灰汁を足し、練った。
三週間後の日曜日、千草の藍は建った。ひさしぶりに顔を見せたあさぎの指示で染め液に浸したティッシュペーパーは、水洗いすると、鮮やかな藍色に染まった。
「初めてにしてはええ具合ね。あたしの教えかたが良かったんかえ? 試しに何か染めてみたら」
あさぎは満足げだったが、少し大人げなくもあった。千草はつい噴きだしつつも、思い立って、離れへ駆けた。急な階段に手をついて、上に向かって叫ぶ。
「ねえ! このあいだの藍染めのときの白いTシャツ、まだあるっ?」
呼びかけに、松葉が顔を覗かせる。片手には文庫本を開いたまま、何事かという顔でこちらを見下ろす。聞こえなかったかと繰りかえそうとした千草と、目が合ったとたんに、彼は微笑んだ。
「いま持っていく」
返事を寄越して引っ込んだ松葉と入れ替わりに、神田が部屋から這い出てくる。興味津々といった顔つきで千草を見下ろしながら、問いかけてくる。
「何、何? 僕のも持って行っていい?」
「うん、いいよ!」
「やったあ!」
楽しそうにバンザイして、神田も部屋に戻っていく。それを見届けて、千草はいったん、離れを出た。
そのうえ、松葉も神田も、必ず土日が休みになるようなスケジュールは組まれていなかった。技の館のシフトが入るのだ。指導員の仕事をするようになって益々、千草には彼らの予定や居場所が把握できない日が増えた。
松葉とのやりとりは、LIMEばかりが多くなった。声が響く母屋で電話をかけようとは思えないし、夜の勉強会は、神田に松葉との仲を冷やかされて以来、ごぶさただ。そのため、夕食後の時間はもっぱら、公務員試験の勉強にあてている。
松葉と夕食をともにできたところで、家族の前で仲をにおわせる話題が出せるわけもない。
土曜日にあさぎが茶を飲みに深見家へ寄ったとき、千草は切実に話し相手を求めていた。
「叔母さん。あのさ、いまの時期のうちに藍染めを本格的に習いたいんだけど、どこかオススメの教室とかって、ある?」
弟子は取らないと言っていた叔母のことは端から考えに入れずに問うと、あさぎは湯呑みの縁をなでた。
「あたしが教えてもええよ? 藍の建てかたなら、タダで教えたる」
「えっ、いいの?」
がばっと顔をあげると、あさぎはころころと笑った。
「わかっとるやろうけんど、かんたんやないわよ? いま言うたとおり、染め液が出来たところで、布地を染めるのにだって技術と勘がいるもの。やけんど、せっかくちーちゃんの気持ちが藍にむいとるんだし、しばらくこっちにおるんやったら、一度くらい試してみたってええちゃうん」
善は急げと行動するのがあさぎらしい。三十分後には、千草とふたりでホームセンターに乗りこみ、七五リットルのポリバケツと長い木の棒、pH試験紙を買いこんだ。さらに一時間後には、祖父に小口での蒅の購入を打診していた。
「七十五リットルで作るなら、蒅は五キロから一〇キロね」
一俵十五貫、五六・二五キログラムが本来の購入単位だと言う。そこから五キロなんて半端に売ってしまっては、残りはどうなるのかと思いきや、近頃は趣味で藍染めにチャレンジする層というのが一定数いるそうだ。そうした層むけの小ロットも用意があるから、だいじょうぶなのだという。
「知らなかった。案外、身近なんだ」
感動しているところに、あさぎはにやりとして囁いた。
「蒅は一キロ五千円するけど、何キロにしとく?」
最低量の購入にかかる金を計算して、千草は凍りついた。
「ちょ、ちょっと待った! これ、すごくお金かかるんじゃないの?」
「うふふ、よう気がついた! やけんど、もう遅いぞ!」
楽しそうに、歌うような調子で言って、あさぎはバンッと、傍らに置いた青いポリバケツの蓋を叩いた。
「まあ、たとえば、ハンカチやワンピースを一枚だけ染めるにはごっつい割高やけんど、藍はそういうものやないけん、ブラウスでもスカーフでも、なんやって染めてみればええのよ。まあ、すべては上手う藍建てできたらのお話やけんどね」
気軽に言うあさぎを信じられない気持ちで凝視していると、叔母は口角をあげたまま、小首をかしげてみせた。
「あの、須原っていうコがね、あれから何度か工房に来るのよね、弟子入りしたいって。やけんど、弟子を取るなら、あたしだって相手ぇ選びたいわ。藍建ての仕方なら、ちーちゃんに教えたるけん、あとはあんたが責任持って、勝手にやってかぁな」
──それが本心か!
ほぞを噛んだが、手遅れだった。すでに入手してしまったポリバケツなどなどの道具を無駄にできるほど、千草の懐は暖かくない。
「ひどい! わたし、ちゃんと講習料だって素材代だって払って、お客さんとして行っただけだもん。藍染め体験のあとで須原さんがそんな行動取ったからって、その責任までは背負えないよ!」
文句を垂れた姪を見ても、あさぎはこころが揺らがなかったらしい。顔色ひとつ動かさなかった。
「いやあ、ちーちゃんのせいだと思うけんどね。『千草さんのハンカチと同じ柄を染めてみたい』って、いがっとったわよ」
絶句して、千草は蒅の保管倉庫の前で立ち尽くした。あさぎは腕を組み、肩をすくめる。
「弟子入りは無理でも、その柄のハンカチを一枚染めるための講習料を取って、講座にしてしまえばいいじゃない。何がダメなの?」
「船渡さんの大事な型、貸しとうない」
子どもっぽくくちびるを尖らせたあさぎに、頭が痛くなる思いがした。
「前に言ってたワンピース、自分で染めてみるのもええね。木綿か絹か麻か、袖の有無やAラインかフレアかでも、だいぶ変わってくるとは思うけんど、大きな素材を均一に染めあげるのは、結構な手間よ。催事用のは別にあたしが作るけん、楽しくやりな」
藍建ては、灰汁をつくるところから始めるのだと言う。翌日に材料を手に入れる手はずをあさぎが整えてくれるという。おまかせして、千草はまず、どこで藍建てをするかを考えた。
何せ、七十五リットルのポリバケツだ。染め液がいっぱいになれば、ひとりでは動かせなくなる。汚れても良い場所となると、庭の隅が適当だが、染め液が酸化してはならないのなら、これから暑くなる屋外は論外だろう。先日の藍染めの手順から行くと、水栓に近いほうがいいし、物干し場もあると、なお良い。
前庭の納屋が良さそうだと思ったが、扉を開けてみると、思いのほかガラクタが詰まっていた。この納屋は、製藍所ではなくて深見家のプライベートな物置なので、許可権者は母だ。
千草は母の許しを得て、半日かけて納屋を掃除し、藍染めのためのスペースを確保したのだった。
灰汁の材料は、木灰だ。またホームセンターに買いにいくのかと思いきや、あさぎがむかったのは、近くの旅館だった。その旅館では、大浴場の湯を薪で焚いているのだと、あさぎは言った。
「このあたり一帯はIT企業のテレワークで流行ったし、別荘やオフィスで薪ストーブ使うひとも多いの。そういう企業や個人から分けてもらうって手もあるけんど、ようけ建てるときは、それを何軒分も集める必要があるやろ? それやったら、こっちのほうが品質が安定するし」
千草は車窓に見える真新しい別荘群の主を知って、意外に感じた。そして、旅館の女将と顔つなぎができたことの価値に気づいた。これは、何十年もかけて、あさぎが築いてきたひととの縁だ。そう思うと、むやみに触れられないなと感じた。きっと、次に木灰が要るときも、あさぎを頼ったほうがいい。
深見家に戻り、納屋に据えられたポリバケツを見て、あさぎは目を丸くした。
「ええね!」
短く簡潔な賞賛だったが、こころからの笑顔が添えられていた。千草は子どものようにうれしくなった。
灰汁を取るには、熱湯が要る。木灰に熱湯を加え、上澄み液を取る。これが一番灰汁だ。湯を足し、二番灰汁、三番灰汁と掬っていき、それぞれpH試験紙でアルカリの度合いを確かめる。使う灰汁を決め、保管する。さらにその灰汁を沸騰させる。
蒅をほぐし入れたポリバケツに沸騰した灰汁を少量ずつ足して練る。温度を保って発酵を促し、日を置いて、また熱い灰汁を足して練る。そうして、徐々に嵩を上げるのだ。
「攪拌して空気ぃ入れ過ぎんように気ぃつけて。pHが一〇.五を切ったら、一番灰汁か石灰を追加。アルカリ性を保つのが肝心」
教えられたのはそれぐらいで、あさぎはそのあとしばらく、千草のようすもポリバケツの中身も見に来なかった。千草は毎日、まるでぬか床の世話をするように、藍の世話を続けた。ひたすら言われたとおりにpHをはかり、熱い灰汁を足し、練った。
三週間後の日曜日、千草の藍は建った。ひさしぶりに顔を見せたあさぎの指示で染め液に浸したティッシュペーパーは、水洗いすると、鮮やかな藍色に染まった。
「初めてにしてはええ具合ね。あたしの教えかたが良かったんかえ? 試しに何か染めてみたら」
あさぎは満足げだったが、少し大人げなくもあった。千草はつい噴きだしつつも、思い立って、離れへ駆けた。急な階段に手をついて、上に向かって叫ぶ。
「ねえ! このあいだの藍染めのときの白いTシャツ、まだあるっ?」
呼びかけに、松葉が顔を覗かせる。片手には文庫本を開いたまま、何事かという顔でこちらを見下ろす。聞こえなかったかと繰りかえそうとした千草と、目が合ったとたんに、彼は微笑んだ。
「いま持っていく」
返事を寄越して引っ込んだ松葉と入れ替わりに、神田が部屋から這い出てくる。興味津々といった顔つきで千草を見下ろしながら、問いかけてくる。
「何、何? 僕のも持って行っていい?」
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「やったあ!」
楽しそうにバンザイして、神田も部屋に戻っていく。それを見届けて、千草はいったん、離れを出た。
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