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わたしがわたしになるまで
【第14話:やさしさしあわせ】
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アミュアの操る馬車もまた、湖が見える丘の頂上まで街道を進んでいた。
頂上はビューポイントとして人気なのか、駐車スペースにはほどほど馬車が停まっていた。
ミーナもアミュアも土地勘がないので、看板だけで判断し寄ることとした。
「みて、ミーナ。見晴らしがいいんだって」
「ふむふむ、有名ですよねアウシェラ湖。綺麗らしいです」
二人は馬車から降り、小高い展望台がある丘に登りながら会話が続く。
「ミーナはアウシェラ湖の伝説しってますか?」
ちょっと得意気な顔には理由があり、前回の雪月山脈越えでカーニャの下調べ力に感心したアミュアは、今回の旅に当たり下調べをしっかりして来ていた。
「うんうんロマンチックだよね!アウシュリネ様の伝説。私も大好きだよ」
ガーンという背景を背負っているような顔でアミュアは、衝撃を受けた。
「ん?どうしたのアミュア?」
そうして理由不明の落ち込みを見せるアミュアの背中を押しながら、階段になった道を登るミーナ。
「あの一節。『届かない愛を見ては胸を痛め』ってのが素敵です!」
とアミュアが説明しようと頑張って覚えてきたことをペラペラ話すのだった。
「すごいです!絶景です!」
ふにゃふにゃのアミュアを上まで押してきたところ、湖が見えたとたんに駆けだすアミュア。
置いて行かれたミーナも慌てて追ったのだった。
端の手すりに乗り上げるいきおいのアミュアは背伸びして景色を眺めていた。
「ほんとだ!すごい!」
ミーナもついに隣まで追いつき、湖が見えた瞬間に感動で震え上がったのだった。
ユア達より少し遅かったので、今や湖の紫は輝くほどの発色で目を打つのだった。
右手の山に沈む夕日も映り込み、波はオレンジも交え複雑な色合いで迫った。
それ以上は言葉も無く見つめる二人はどちらともなく手をつなぎじっと凄絶なショーに魅入られるのだった。
おかげでミーナのやりいたいことリストは、いくつもここで叶えられたのだった。
一番下に小さくうすく書かれていた願いもまた。
『大好きな人と手をつないで夕日を見る』
丘の展望台から次の宿場はすぐで、暗くなる前にたどり着くアミュア達。
待ち合わせの広場にはユアとカーニャがもう来ていた。
「お、きたきた。こっちだよー!」
元気に手を振るユアとお淑やかに待つカーニャが対照的である。
今日はユアも鎧が無いので、あちこち露出して涼しげである。
いつものブーツもやめて、ちょっとお姉さんなヒールのある革サンダルである。
白いホットパンツからは今日の快晴で健康的な小麦色になった足が、惜しげもなくさらされている。
(ユアって足長いな?半ズボンのせいでそう見えるのかな?)
なんだか思った以上にスタイルのいい相方にちょっと違和感なアミュアであった。
実際はハイヒールマジック+折り返しホットパンツのバフだった。
「お待たせしましたユアさん。姉さまもお待たせです」
礼儀のできたミーナはしっかり挨拶出来るのだった。
しかりと教育の差がでるのだった。
アミュアもユアも全く気にしないのだが。
こうして合流した4人は、通りから少しだけ離れたレイクヴューのホテルに入っていった。
この宿場では3本の指に入る宿である。
受付カウンターにはカーニャとユアで対応し、二人は荷物番である。
玄関ホールの広いスペースを見ながら、端に設置されたソファーに座っている。
二人の手には、お昼に作った花冠セットの指輪と木工の指輪がおそろいではまっているのだった。
ひざに乗せた手を見ながら、ニコニコがとまらないミーナとアミュア。
見た目は姉妹のようだが、中身は同い年ムーブなのだった。
「おまたせー」
二人で足をプラプラさせて待っていると、ユア達が戻ってきた。
「奮発したよ!最上階だよ!」
鼻息荒く言うユアにすぐさまアミュア。
「せつやくですよ、もっと安い所にしましょう」
そういうアミュアの肩に手を置きカーニャ。
「まぁまぁ、ここは私が出したから気にしないでゆっくりして、アミュアちゃん」
まんまるになった眼でカーニャを見上げるアミュア。
「ぶ、ぶるじょわじいです」
と、どこで覚えてきたのか驚きを表現したのだった。
実際はこのクラスのホテルなら、スイートでも常宿にできる収入があるのだカーニャには。
Aクラスハンターとはそれほどのモノであった。
「馬車で散財したろうし、誘ってくれたお礼よ」
そう言ってパチリとウインクするカーニャのお姉さんスキルに、くらくらのアミュアとユアであった。
「すごいね!湖の中に建ってるみたい!」
「うっすら紫色もすごいです」
大きな出入り可能な窓をあけ、テラスにでたユアとアミュアである。
アウシェラ湖は時間と場所で様々な表情をみせる。
もう日は山の向こうに去ってしばらくたったが、まだ空は紫と青のグラデーションであった。
西側にはポツポツと星も見えてきている。
今日はまだ早いが、この時間にでる月はさらに風情があるとして絵はがきなどで見ることが出来る。
手すりまで行って見ている二人をテラスのテーブルセットに座るカーニャとミーナが見ている。
「ミーナ、体調は大丈夫かしら?無理はしていないかしら?」
カーニャもミーナも姉妹の間の方が、丁寧な会話になる不思議な性質があった。
「はい、姉さま。とても調子いいですよ。なんだかお腹もすいてきました」
と返しにっこりはにかむミーナ。
ぽー、かわゆす。となり頬が赤いカーニャ。
カーニャはミーナが大好きなのだった。
テラスからはユアとアミュアのきゃっきゃという声が響き渡っていた。
宿から苦情が来そうであった。
頂上はビューポイントとして人気なのか、駐車スペースにはほどほど馬車が停まっていた。
ミーナもアミュアも土地勘がないので、看板だけで判断し寄ることとした。
「みて、ミーナ。見晴らしがいいんだって」
「ふむふむ、有名ですよねアウシェラ湖。綺麗らしいです」
二人は馬車から降り、小高い展望台がある丘に登りながら会話が続く。
「ミーナはアウシェラ湖の伝説しってますか?」
ちょっと得意気な顔には理由があり、前回の雪月山脈越えでカーニャの下調べ力に感心したアミュアは、今回の旅に当たり下調べをしっかりして来ていた。
「うんうんロマンチックだよね!アウシュリネ様の伝説。私も大好きだよ」
ガーンという背景を背負っているような顔でアミュアは、衝撃を受けた。
「ん?どうしたのアミュア?」
そうして理由不明の落ち込みを見せるアミュアの背中を押しながら、階段になった道を登るミーナ。
「あの一節。『届かない愛を見ては胸を痛め』ってのが素敵です!」
とアミュアが説明しようと頑張って覚えてきたことをペラペラ話すのだった。
「すごいです!絶景です!」
ふにゃふにゃのアミュアを上まで押してきたところ、湖が見えたとたんに駆けだすアミュア。
置いて行かれたミーナも慌てて追ったのだった。
端の手すりに乗り上げるいきおいのアミュアは背伸びして景色を眺めていた。
「ほんとだ!すごい!」
ミーナもついに隣まで追いつき、湖が見えた瞬間に感動で震え上がったのだった。
ユア達より少し遅かったので、今や湖の紫は輝くほどの発色で目を打つのだった。
右手の山に沈む夕日も映り込み、波はオレンジも交え複雑な色合いで迫った。
それ以上は言葉も無く見つめる二人はどちらともなく手をつなぎじっと凄絶なショーに魅入られるのだった。
おかげでミーナのやりいたいことリストは、いくつもここで叶えられたのだった。
一番下に小さくうすく書かれていた願いもまた。
『大好きな人と手をつないで夕日を見る』
丘の展望台から次の宿場はすぐで、暗くなる前にたどり着くアミュア達。
待ち合わせの広場にはユアとカーニャがもう来ていた。
「お、きたきた。こっちだよー!」
元気に手を振るユアとお淑やかに待つカーニャが対照的である。
今日はユアも鎧が無いので、あちこち露出して涼しげである。
いつものブーツもやめて、ちょっとお姉さんなヒールのある革サンダルである。
白いホットパンツからは今日の快晴で健康的な小麦色になった足が、惜しげもなくさらされている。
(ユアって足長いな?半ズボンのせいでそう見えるのかな?)
なんだか思った以上にスタイルのいい相方にちょっと違和感なアミュアであった。
実際はハイヒールマジック+折り返しホットパンツのバフだった。
「お待たせしましたユアさん。姉さまもお待たせです」
礼儀のできたミーナはしっかり挨拶出来るのだった。
しかりと教育の差がでるのだった。
アミュアもユアも全く気にしないのだが。
こうして合流した4人は、通りから少しだけ離れたレイクヴューのホテルに入っていった。
この宿場では3本の指に入る宿である。
受付カウンターにはカーニャとユアで対応し、二人は荷物番である。
玄関ホールの広いスペースを見ながら、端に設置されたソファーに座っている。
二人の手には、お昼に作った花冠セットの指輪と木工の指輪がおそろいではまっているのだった。
ひざに乗せた手を見ながら、ニコニコがとまらないミーナとアミュア。
見た目は姉妹のようだが、中身は同い年ムーブなのだった。
「おまたせー」
二人で足をプラプラさせて待っていると、ユア達が戻ってきた。
「奮発したよ!最上階だよ!」
鼻息荒く言うユアにすぐさまアミュア。
「せつやくですよ、もっと安い所にしましょう」
そういうアミュアの肩に手を置きカーニャ。
「まぁまぁ、ここは私が出したから気にしないでゆっくりして、アミュアちゃん」
まんまるになった眼でカーニャを見上げるアミュア。
「ぶ、ぶるじょわじいです」
と、どこで覚えてきたのか驚きを表現したのだった。
実際はこのクラスのホテルなら、スイートでも常宿にできる収入があるのだカーニャには。
Aクラスハンターとはそれほどのモノであった。
「馬車で散財したろうし、誘ってくれたお礼よ」
そう言ってパチリとウインクするカーニャのお姉さんスキルに、くらくらのアミュアとユアであった。
「すごいね!湖の中に建ってるみたい!」
「うっすら紫色もすごいです」
大きな出入り可能な窓をあけ、テラスにでたユアとアミュアである。
アウシェラ湖は時間と場所で様々な表情をみせる。
もう日は山の向こうに去ってしばらくたったが、まだ空は紫と青のグラデーションであった。
西側にはポツポツと星も見えてきている。
今日はまだ早いが、この時間にでる月はさらに風情があるとして絵はがきなどで見ることが出来る。
手すりまで行って見ている二人をテラスのテーブルセットに座るカーニャとミーナが見ている。
「ミーナ、体調は大丈夫かしら?無理はしていないかしら?」
カーニャもミーナも姉妹の間の方が、丁寧な会話になる不思議な性質があった。
「はい、姉さま。とても調子いいですよ。なんだかお腹もすいてきました」
と返しにっこりはにかむミーナ。
ぽー、かわゆす。となり頬が赤いカーニャ。
カーニャはミーナが大好きなのだった。
テラスからはユアとアミュアのきゃっきゃという声が響き渡っていた。
宿から苦情が来そうであった。
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