ワールドメイク 〜チート異能者の最強くん〜

プーヤン

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第2章 シャクンタラー対ファウスト

第20話 ピーピング瀬川

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俺たちは壁を崩しながら隣の部屋に侵入する。

「これはまた、えらく気持ちの悪い部屋が出てきたな?」

そうして出てきた瀬川の闇の部分に触れて、南が苦虫を嚙み潰したような顔で一言、喉元から絞り出すように漏らした。

その部屋の壁一面にびっしりとおびただしい数の北条さんの写真が貼られており、机の上にはまだ作業途中であろう写真やらファイルやらが散乱していた。それは笑った顔、怒った顔、悲しそうな顔などバリエーションに富んだラインナップである。
北条美樹デラックスパックとでも言おうか。

そして、この部屋の主が撮ったであろうことを裏付けるのは、どの表情の北条さんも背景はすべてこの本部だということだ。

「ああ。気味が悪い部屋だな。出歯亀の部屋って感じだな。」

部屋の中央に入る俺たちに向けて何百人もの北条さんはあどけない表情を見せる。

「なんとも気持ちが悪い。…………これ見ろよ。」

そういって南は部屋の机の上にあるファイルを手にとる。

そこには、「北条 美紀ちゃんのマル秘写真」というタイトルが付けられており、昭和臭のするそのファイルの中から南は一枚、写真を取り出す。

「うぇ。これ北条のパンツ写真だな。なんてアングルしてやがる…………一体どこから撮っているのやら。恐るべしピーピングトム。」

「うん。いいから。とりあえずポケットにしまわずファイルに戻せ。」

「いや、これは資料にと思ってだな…………………あ。はい。すいません。」

南の馬鹿は置いておいて、俺はその壁の写真やら、ファイルの写真を見ながら大体同じ角度で撮られていることから、これらが定点カメラですべて撮られていることを推察する。

俺は南に頼み、彼のテレキネシスですべての写真を手元に集め、焼却することにする。その他、部屋の机の中にはCDもあったが、そこには北条さんと宮ちゃんの会話が入っていた。

「亜里沙、最近どう?私は最近ちょっと大きくなった気がするの。どう?」

「なんでそんな事、私に聞くの?分かったから。うん。ちょっと大きくなったかも?」

「はぁ~。Ⅽくらいまでにはなりたいのよね。」

とかなんとか。

5分ほどの会話が入っていたトラック1から、北条さんの先ほどの会話の「はぁ~」という部分だけが切り取られてトラック2に入っていた。そこからは聞く気にもなれず、CDもすべて処分した。

何故か南が欲しがっていたが、一度殴れば大人しくなり、出歯亀の秘蔵コレクションはすべて処分した。

その後、本部内の隠しカメラを破壊して回っていれば、外は暗くなっていた。

 

 

 

「さて、ここで奴をどうにかしないといけないわけだが、北条さんにお力添え願おうと思う。」

「まぁ。あいつに頼むのが一番楽だが、少し酷な気がするな。あんなピーピング野郎と会いたくもないだろ?」

「まあ、幸い。北条さんはあいつが出歯亀だと知らない。……………………しかしまあ、酷だな。」

「ああ。そう思い。彼女を呼んだ。」

「おお。」

俺たちは出歯亀の所持物を破棄した帰りにはもう奴をどうにかするための会議を開いていた。あんな色んな意味で危険な奴が普通にそこらを歩いていると思うと、身の毛もよだつ。
それに、奴はテレパシー使いだ。あの異能を悪用されたら困る。いままでも、発見が遅れた異能者に対して何をしていたか考えただけでも気味が悪い。

そうして、始めは奴の処理に当たって北条さんに助力願おうとしていたが、南が呼んだある人物によりその必要はなくなった。
というより、始めから彼女に頼めばこうも時間を労することもなかった気がする。

「でぇ~。こんな時間に呼び出してなんの用?」

目の前には南が呼びつけた沙代里がいた。

昼間にも会っていたが、またその夜に呼び出したわけだ。なにかしら奢ってやると言って呼び出したらしいが、フットワークの軽い子でよかった。

無論、今思ったことは皮肉ではない。

そして、またもや北端に位置するコーヒーショップに来ていた。

一応、俺等なりに彼氏持ちの彼女に配慮した結果である。

「瀬川をここに呼び出してほしいだ。」

「え~。瀬川っちを?」

「そうだ。奴はヤバイんだよ…………。」

南は事の重要性を沙代里に説く。

その話を聞いた沙代里は顔を顰めて、口直しにオレンジジュースをガブ飲みする。

「気持ち悪い。あの人。本当に気持ち悪い。なにそれ。本当に生理的に無理。」

「おい。あまりの衝撃にこの子、話し方変わってるぞ。」

「まぁいい。だからあいつを無力化した方が世のため、人のためだと思わないか?」

「うん。そうだね。」

俺たちはコーヒーショップから公園に移動する。もう九時をまわっていることから人気はない。

「じゃあ、さっさと呼ぶねぇ。」

そう言うや否や、彼女は指をパチリと鳴らした。

その瞬間、俺たちの目の前にだんごっ鼻の気の弱そうな男が驚いた表情で固まっていた。

「どこだ…………ここ?は?おい。宮沙代里!これは君の能力か?…………ん?なんだ君ら?確か新人の…………」

そいつは公園に現れると、高くこもった声で五月蠅く喚いた。
沙代里は先ほどの話があまりに衝撃的だったのか顔を背けて、あとはお願いと公園の椅子に腰かけていた。

「えっと、瀬川。お前、なんでここに呼ばれたかは分かるな?」

南が一歩前に出て脅しをかける。

それでやっと理解できたのか、こちらを見て瀬川は笑みを浮かべる。

「ああ。状況が分かりました。…………でも残念。今、この電話を鳴らせばファウストの人間がすぐに来ますよ。君らでは勝てないんじゃないかなぁ?」

ニタニタと嫌らしい笑みを浮かべる瀬川。こいつの裏を知っていながら相対すると醜悪で姑息な笑みに見えてくる。

「はったりはいい。もうお前に選択肢はないぞ?」

「なんだ?今僕はその男と話している。邪魔はよしてもらおう。」

「そんなこと言っていいのか?出歯亀野郎。」

そうして、俺はポケットから一枚の写真を取り出す。そこには北条美紀が着替えをしている様子が写し出されていた。

その写真を見た瞬間、瀬川は先ほどの余裕をなくし取り乱す。

「ちょっと待て!!なんでそのSランク写真を持っている!?ふざけるな!それは俺のお宝だ!!さっさと返せ!!クソが!!」

「ちょっと待て!!なんで西京がそれを持っている!?俺にも寄越すんだ!!」

「南は黙ってろ!!!」

確かに、すべての写真にはAだのBだのアルファベットの大文字が書いてあった。なるほど。

この男、自分で撮った写真にレアリティを付けていたのか。

うーむ。度し難い変態である。

もしかしたら、この男が異能に初めてレベルを付けたのかもしれない。

そう思うとあのレベルの曖昧さも頷けるというものだ。

瀬川は激昂しこちらに走ってくる。しかし、すぐに元いた位置に戻される。

その行程を10回ほど繰り返していると、気が付いたのか沙代里に向かって吠える。
何回走ってんだよ。もっと早く気づけよ。

「邪魔すんじゃねぇぞ!!クソガキがぁ!!」

瀬川はまたしてもこちらに走って近づこうと試みるも、沙代里の指パッチンで元の位置に戻る。

「クソがぁぁぁぁ!!!!」

息を切らして、たんごっ鼻を汗で濡らす瀬川に俺は一つ忠告する。

「あ。瀬川さん。瀬川さん。後、貴方のお宝は全部焼却しといたから。あしからず。」

「え?」

「いや。だから全部焼却。処分したんだ。あんな気味の悪い物残しておく方がおかしい。そして…………」

瀬川は俺が今からやろうとしていることを察する。

「ま…………待て。やめろ!!やめて。俺の美紀だぞ!!!!」

俺は最後の北条さんの写真を彼の前に突き出す。

「最後の一枚もこれで終わりだ。」

そう言うと、最後の一枚も破り捨てた。

「こいつの異能を消しさり、記憶も消去だ。まあ。どちらにしても異能が消えた時点でこいつの記憶は消えるだろうが…………」

南はため息混じりに承認し、こうして瀬川は異能を失った。

沙代里は最後まで苦い顔をしており、気絶して倒れる瀬川に対して死体蹴りをしていた。それを南が止めている姿を見て、やはりまた少し沙代里に好意を持てた。

多分、もう彼女の話し方にもイラつきはしないだろう。

 

 

 
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