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第3章 ワールドメイク
第44話 最後の戦い①
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俺は腑に落ちないといった表情の南と別れ、文学同好会の部室の前にいた。
東は大体、放課後はいつもこの教室で本を読んでいることが多い。彼女は誰にも邪魔されず本を読んでいさえいれば幸せだと思っていた。
だが、この現状を考えるとそうではなかったということだ。
しかし、彼女のその胸の内を聞こうともしてこなかったことから、今この世界が成り立っているなら、俺はとんだ計算違いをしていたことになる。
彼女のことを分かっていると思い込んでいたにすぎない。本当は何一つ理解していなかったのかもしれない。
そう思うと、目の前のドアは酷く重く感じられた。
彼女にすべてを聞くことの意味を軽く感じていたながら、目の前にその壁が迫りくると、途端に逃げ腰になる。自分の意思の弱さを痛感するのだ。
しかし、もうここまできては駄目だ。南が苦しみ、他にも俺が知らないだけで傷付いた人が大勢いるだろう。この世界はもう駄目だ。それを彼女も理解しているからこそ、時を急いているのかもしれない。
そうして、俺は部室のドアを開いた。
しかし、そこには彼女はいなかった。
かわりに亜里沙ちゃんがその部室の椅子でくつろいでいた。澄んだ顔でスマホゲームを楽しんでいる。
「あれ?俺、部室間違えた?」
「え?あ!西京さん!探してましたよ!!」
亜里沙ちゃんはこちらに気がつくと、何やら己の本分を思い出したように、こちらに近寄る。
そして、すぐにスマホゲームの画面を見ると、今、目を離したことでゲームに負けたのか、悔しそうな顔で事の次第を俺に説明する。
「西京さん。大変です。西京さんのお友達のえっと…………東 彼方さん。ファウストに攫われました。」
「は?どういう意味だ?」
「なんでも植木さんが言うには、今日の午後17時半に何者かから連絡を受けたそうです。市立北山高校の東 彼方を預かったと。なんでその東女子を攫ったのかはわかりませんが、それをシャクンタラーのメンバーである西京 肇。南 和樹、両名に伝えろと。」
「…………わかった。とりあえず、シャクンタラーの本部に一度行ったほうがいいか?」
「そうですね。あの人に連絡します。多分、もう南さんは着いてると思いますが。」
「わかった。」
その後、亜里沙ちゃんが連絡し、それを受けた沙代里の異能により、俺はシャクンタラーの本部に瞬間移動された。
あの人って沙代里のことだったのか。この子徹底しているなぁと思いながらも、着いて早々、植木が着々と練っていく東奪還作戦について聞いていた。
それは平たく言えば、これからファウストの本部に乗り込んで、東を奪還するというだけの内容だった。
北条に亜里沙ちゃん、そしてシャクンタラーのレベルAである平上 佳乃(ひらうえ よしの)と名乗る女子も来てくれるそうだ。彼女は金髪にパーカーを羽織り、ジーンズの下からスポーツシューズを履いており、みたまんまスケボー選手のようないで立ちでいた。ストリートスタイルとでもいうのか。
彼女は興味なさそうに植木の説明を聞いていた。
「そうなんだ。そのお嬢さんが連れさられて、私たちはその子を救出すればいいのか。漫画みたいな話だね。エモい。」
と脱力感の籠る声で漏らした。
「佳乃さん…………よろしく。」
北条さんは気を遣ってなのか、彼女に声をかける。
「はい。よろしく。美紀ちゃんと話すのなんて何カ月ぶりだろう。エモいね。」
この女、なんだなんだ。語尾にそのエモいって言葉を付けないと話せないのか?いちいち感傷に浸っている彼女に何も言うことはなく、俺はただ傍観していた。
植木の作戦は本当に小学生が考えたような幼稚な作戦であるが、沙代里がファウスト内部の構造を知っているであろうことからこの作戦の成功確率も高いのではないだろうか。
まぁ。失敗しても俺単体で乗り込んで、全員気絶させればいいのだが。
協力してくれようとしている人がこんなにいるのだ。止めることはない。一緒に行ってもらおう。
と、その時、南が声をかけてくる。
「西京。大丈夫か?」
「あ?何がだ?」
「いや。東が危険な目に合っているんだぞ?平気か?いつもならもっと取り乱しているだろ?」
「ああ。別に問題ない。これはある種、シナリオ通りなんだ。まぁどこまでその通りに進むのかわからないが。」
「そうか。…………とにかく早く助け出そう。」
「ああ。そのつもりだ。」
そうして、俺と南。北条さんに亜里沙ちゃん、沙代里、平上の六人でファウスト本部に向かう。
他のメンバーはファウストとの抗争でいっぱいいっぱいであり手の空いている者はおらず、植木も司令としての業務があるとかなんとかで本部に残るみたいだ。俺は彼がなにか仕事しているところを見たことはないが、まぁ忙しいというからにはそうなのだろう。
そうこうしている内に俺と南以外の四人が一箇所に集まっていた。
そこに俺たちも合流する。
「じゃ。飛ぶねぇ。」
「は?」
沙代里がそう言うと、一気に視界が暗転し、シャクンタラー本部からファウストのどこかの部屋に飛ばされていた。
え?普通。こういう最終決戦っていろいろな知略を巡らせたり、情報戦争の末、内部に侵入するんじゃないのか?
こうも簡単に侵入して大丈夫なのか?
勿論、他のメンバーも驚いていた。
未だ、視界が暗いが、沙代里が「ああ。ごめん。ここ倉庫なのぉ。」とすぐさま蛍光灯の電気をつけたため、急に光が目に入ってしまい、眩しく、何も見えない。
おお。やっと見えてきたと視界が回復するころには、目の前に北条さんの顔があった。その顔は何故か酷く歪んでおり、今にも吐きそうな顔をしている。
どうしたのだろうと、心配になって彼女を見ていると、南の間抜けな声が聞こえた。
「おお。ここはファウストの瀬川の部屋だろ?どうだ沙代里正解か?」
「おお!南くん凄い~。正解~!」
いえーいとハイタッチしている二人はさておき、亜里沙ちゃんは心配そうに北条さんをいたわり、平上は「エモい」とアホの子のように同じ言葉を吐いた。
そう、この部屋はあのシャクンタラー本部の隠し部屋と同じく北条さんの写真が壁一面にところ狭しと貼られていたのだ。
しかしながらこの部屋を沙代里が選んだことも頷ける。こんな気持ちの悪い部屋ならば普通の人は近づかないだろうからな。
「南。」
「ああ。分かってるよ。ほらよ!!」
前の部屋と同じく、南の異能ですべての写真をかき集めて、処分した。
その様子を見て、安心したのか脱力した様子の北条さんは、自分のカバンからペットボトルを取り出し、中の水を飲もうとする。
しかし、その水は底に引っ付き離れない。
水が重力に反するように、ペットボトル内で浮かび上がり、生き物のようにくねくねと不自然な動きを見せたのだ。
異変に気が付いた北条さんはすかさず、そのペットボトルを床にたたきつけた。
その時、その部屋のドアの向こうから声が聞こえる。
野太い男の声だった。
「おいおい。もう侵入者が来てるじゃねぇか。どうなってるんだ?」
その声とともにドアが乱暴に開かれた。
そこには五人ほどの男たちが待ち構えており、こちらを睥睨していた。
その中でも目立っている青髪の強面男が
沙代里を確認すると、ニヤリと笑みを浮かべた。
「おいおい。裏切り者の沙代里もいるじゃねぇか。」
沙代里はその男の顔を見ると、嬉しそうに騒ぎだす。
「あ。たっくんだ。この人、水使いのたっくん。レベルSの露出狂なのぉ。」
「ん?それは異能のレベルがSなのか?それとも露出度がSなのか?」
すかさず、南が沙代里に突っ込む。
「えっと両方ぅ?」
「ふざけんな!!くそ女が!!いいぜ。ここで殺してやろう!!」
「やりますか!?橘幹部!俺、そこの足の長い美女貰いますね!!嘗め回してぇ!!ひやっはー!!」
男どもは口々に品のない言葉を吐き散らし、たっくんを先頭にこちらに襲い掛かってくる。
「ちょっと黙ってて、今南くんと話してるから。」
そう言うと、沙代里は面倒そうに彼らに手を伸ばす。そして指を鳴らすと次の瞬間にはたっくん率いる、ファウストの男たちはいなくなっていた。
五人もいた男たちは一瞬でこの部屋から消え去ったのだ。
「えっとね。それで~たっくんの後ろの五郎はすごい足好きなのぉ。多分、北条ちゃんの足が好みぃ!」
「おお。それは俺と気が合いそうだな。」
「そうなのぉ~?南くんキモイ。」
「うわ。それ女子から言われると傷つくわ。泣きそう。」
「あ~嘘嘘。気持ち悪い。」
「それの方がダメだわ。でもキモッのほうが傷つくからまだ大丈夫だ。」
「そうなのぉ~?うちの彼氏は喜ぶんだけどなぁ。」
「それは君の彼氏が変態なんだよ。」
「そっかぁ。…………あれ?たっくん達みんな飛ばしちゃった?」
そこで沙代里はやっと南からドアの方に顔を向けて、現状を把握する。
「そうみたいだな。」
「そっかぁ。じゃあ、とりあえず行こっか。多分この最上階にその東ちゃん?だっけ?その子いると思うしぃ。」
快活に笑う彼女を見て、他の四人必要なかったなと思った。正直、この子一人いれば、この本部を空き巣状態に出来るだろうと。
その荒技を見て皆が感嘆の声を漏らす中、亜里沙ちゃんだけは一人、わなわなと体を震わせて、その力を恐れるような強張った表情でいた。
たしかに、彼らが何処に飛ばされたのか想像するも恐ろしい。
俺は沙代里の指示通りついて行くことにした。
東は大体、放課後はいつもこの教室で本を読んでいることが多い。彼女は誰にも邪魔されず本を読んでいさえいれば幸せだと思っていた。
だが、この現状を考えるとそうではなかったということだ。
しかし、彼女のその胸の内を聞こうともしてこなかったことから、今この世界が成り立っているなら、俺はとんだ計算違いをしていたことになる。
彼女のことを分かっていると思い込んでいたにすぎない。本当は何一つ理解していなかったのかもしれない。
そう思うと、目の前のドアは酷く重く感じられた。
彼女にすべてを聞くことの意味を軽く感じていたながら、目の前にその壁が迫りくると、途端に逃げ腰になる。自分の意思の弱さを痛感するのだ。
しかし、もうここまできては駄目だ。南が苦しみ、他にも俺が知らないだけで傷付いた人が大勢いるだろう。この世界はもう駄目だ。それを彼女も理解しているからこそ、時を急いているのかもしれない。
そうして、俺は部室のドアを開いた。
しかし、そこには彼女はいなかった。
かわりに亜里沙ちゃんがその部室の椅子でくつろいでいた。澄んだ顔でスマホゲームを楽しんでいる。
「あれ?俺、部室間違えた?」
「え?あ!西京さん!探してましたよ!!」
亜里沙ちゃんはこちらに気がつくと、何やら己の本分を思い出したように、こちらに近寄る。
そして、すぐにスマホゲームの画面を見ると、今、目を離したことでゲームに負けたのか、悔しそうな顔で事の次第を俺に説明する。
「西京さん。大変です。西京さんのお友達のえっと…………東 彼方さん。ファウストに攫われました。」
「は?どういう意味だ?」
「なんでも植木さんが言うには、今日の午後17時半に何者かから連絡を受けたそうです。市立北山高校の東 彼方を預かったと。なんでその東女子を攫ったのかはわかりませんが、それをシャクンタラーのメンバーである西京 肇。南 和樹、両名に伝えろと。」
「…………わかった。とりあえず、シャクンタラーの本部に一度行ったほうがいいか?」
「そうですね。あの人に連絡します。多分、もう南さんは着いてると思いますが。」
「わかった。」
その後、亜里沙ちゃんが連絡し、それを受けた沙代里の異能により、俺はシャクンタラーの本部に瞬間移動された。
あの人って沙代里のことだったのか。この子徹底しているなぁと思いながらも、着いて早々、植木が着々と練っていく東奪還作戦について聞いていた。
それは平たく言えば、これからファウストの本部に乗り込んで、東を奪還するというだけの内容だった。
北条に亜里沙ちゃん、そしてシャクンタラーのレベルAである平上 佳乃(ひらうえ よしの)と名乗る女子も来てくれるそうだ。彼女は金髪にパーカーを羽織り、ジーンズの下からスポーツシューズを履いており、みたまんまスケボー選手のようないで立ちでいた。ストリートスタイルとでもいうのか。
彼女は興味なさそうに植木の説明を聞いていた。
「そうなんだ。そのお嬢さんが連れさられて、私たちはその子を救出すればいいのか。漫画みたいな話だね。エモい。」
と脱力感の籠る声で漏らした。
「佳乃さん…………よろしく。」
北条さんは気を遣ってなのか、彼女に声をかける。
「はい。よろしく。美紀ちゃんと話すのなんて何カ月ぶりだろう。エモいね。」
この女、なんだなんだ。語尾にそのエモいって言葉を付けないと話せないのか?いちいち感傷に浸っている彼女に何も言うことはなく、俺はただ傍観していた。
植木の作戦は本当に小学生が考えたような幼稚な作戦であるが、沙代里がファウスト内部の構造を知っているであろうことからこの作戦の成功確率も高いのではないだろうか。
まぁ。失敗しても俺単体で乗り込んで、全員気絶させればいいのだが。
協力してくれようとしている人がこんなにいるのだ。止めることはない。一緒に行ってもらおう。
と、その時、南が声をかけてくる。
「西京。大丈夫か?」
「あ?何がだ?」
「いや。東が危険な目に合っているんだぞ?平気か?いつもならもっと取り乱しているだろ?」
「ああ。別に問題ない。これはある種、シナリオ通りなんだ。まぁどこまでその通りに進むのかわからないが。」
「そうか。…………とにかく早く助け出そう。」
「ああ。そのつもりだ。」
そうして、俺と南。北条さんに亜里沙ちゃん、沙代里、平上の六人でファウスト本部に向かう。
他のメンバーはファウストとの抗争でいっぱいいっぱいであり手の空いている者はおらず、植木も司令としての業務があるとかなんとかで本部に残るみたいだ。俺は彼がなにか仕事しているところを見たことはないが、まぁ忙しいというからにはそうなのだろう。
そうこうしている内に俺と南以外の四人が一箇所に集まっていた。
そこに俺たちも合流する。
「じゃ。飛ぶねぇ。」
「は?」
沙代里がそう言うと、一気に視界が暗転し、シャクンタラー本部からファウストのどこかの部屋に飛ばされていた。
え?普通。こういう最終決戦っていろいろな知略を巡らせたり、情報戦争の末、内部に侵入するんじゃないのか?
こうも簡単に侵入して大丈夫なのか?
勿論、他のメンバーも驚いていた。
未だ、視界が暗いが、沙代里が「ああ。ごめん。ここ倉庫なのぉ。」とすぐさま蛍光灯の電気をつけたため、急に光が目に入ってしまい、眩しく、何も見えない。
おお。やっと見えてきたと視界が回復するころには、目の前に北条さんの顔があった。その顔は何故か酷く歪んでおり、今にも吐きそうな顔をしている。
どうしたのだろうと、心配になって彼女を見ていると、南の間抜けな声が聞こえた。
「おお。ここはファウストの瀬川の部屋だろ?どうだ沙代里正解か?」
「おお!南くん凄い~。正解~!」
いえーいとハイタッチしている二人はさておき、亜里沙ちゃんは心配そうに北条さんをいたわり、平上は「エモい」とアホの子のように同じ言葉を吐いた。
そう、この部屋はあのシャクンタラー本部の隠し部屋と同じく北条さんの写真が壁一面にところ狭しと貼られていたのだ。
しかしながらこの部屋を沙代里が選んだことも頷ける。こんな気持ちの悪い部屋ならば普通の人は近づかないだろうからな。
「南。」
「ああ。分かってるよ。ほらよ!!」
前の部屋と同じく、南の異能ですべての写真をかき集めて、処分した。
その様子を見て、安心したのか脱力した様子の北条さんは、自分のカバンからペットボトルを取り出し、中の水を飲もうとする。
しかし、その水は底に引っ付き離れない。
水が重力に反するように、ペットボトル内で浮かび上がり、生き物のようにくねくねと不自然な動きを見せたのだ。
異変に気が付いた北条さんはすかさず、そのペットボトルを床にたたきつけた。
その時、その部屋のドアの向こうから声が聞こえる。
野太い男の声だった。
「おいおい。もう侵入者が来てるじゃねぇか。どうなってるんだ?」
その声とともにドアが乱暴に開かれた。
そこには五人ほどの男たちが待ち構えており、こちらを睥睨していた。
その中でも目立っている青髪の強面男が
沙代里を確認すると、ニヤリと笑みを浮かべた。
「おいおい。裏切り者の沙代里もいるじゃねぇか。」
沙代里はその男の顔を見ると、嬉しそうに騒ぎだす。
「あ。たっくんだ。この人、水使いのたっくん。レベルSの露出狂なのぉ。」
「ん?それは異能のレベルがSなのか?それとも露出度がSなのか?」
すかさず、南が沙代里に突っ込む。
「えっと両方ぅ?」
「ふざけんな!!くそ女が!!いいぜ。ここで殺してやろう!!」
「やりますか!?橘幹部!俺、そこの足の長い美女貰いますね!!嘗め回してぇ!!ひやっはー!!」
男どもは口々に品のない言葉を吐き散らし、たっくんを先頭にこちらに襲い掛かってくる。
「ちょっと黙ってて、今南くんと話してるから。」
そう言うと、沙代里は面倒そうに彼らに手を伸ばす。そして指を鳴らすと次の瞬間にはたっくん率いる、ファウストの男たちはいなくなっていた。
五人もいた男たちは一瞬でこの部屋から消え去ったのだ。
「えっとね。それで~たっくんの後ろの五郎はすごい足好きなのぉ。多分、北条ちゃんの足が好みぃ!」
「おお。それは俺と気が合いそうだな。」
「そうなのぉ~?南くんキモイ。」
「うわ。それ女子から言われると傷つくわ。泣きそう。」
「あ~嘘嘘。気持ち悪い。」
「それの方がダメだわ。でもキモッのほうが傷つくからまだ大丈夫だ。」
「そうなのぉ~?うちの彼氏は喜ぶんだけどなぁ。」
「それは君の彼氏が変態なんだよ。」
「そっかぁ。…………あれ?たっくん達みんな飛ばしちゃった?」
そこで沙代里はやっと南からドアの方に顔を向けて、現状を把握する。
「そうみたいだな。」
「そっかぁ。じゃあ、とりあえず行こっか。多分この最上階にその東ちゃん?だっけ?その子いると思うしぃ。」
快活に笑う彼女を見て、他の四人必要なかったなと思った。正直、この子一人いれば、この本部を空き巣状態に出来るだろうと。
その荒技を見て皆が感嘆の声を漏らす中、亜里沙ちゃんだけは一人、わなわなと体を震わせて、その力を恐れるような強張った表情でいた。
たしかに、彼らが何処に飛ばされたのか想像するも恐ろしい。
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