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1−7−03 可能性は無限大

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「俺の住んでいた地球がコピー? もしかして、地球と同じ食い物があるのも、そのせいか?」

「どちらもそうじゃの。コハクの済む人間の世界の他にも、エルフの世界、ドワーフの世界と、それぞれ別の次元に存在しておる。星の箱庭で、特定の種族が滅びた場合のバックアップじゃの。そのため、この世界は他の全ての世界とリンクしておる」

 それで、星の箱庭で種族が滅びた場合は、異世界転移によって移住させるということらしい。
 そんなことがあり得るのか。

「じゃが、問題が発生しての。こちらの世界が滅びる際に、リンクしてある世界全てが巻き添えになる、という事態になってしまったという訳じゃ」

「一応は理解した」

 なるほど、事情はわかった。
 そういえば、あの時は全てが消えた後に、1週間前へと戻ってたよな。

「その上で聞くんだが、もしかして滅ぶ前に戻せるんじゃないのか?」

 すると、すぐに思った通りの答えが帰ってきた。

「うむ。わしは時の精霊じゃからの。ちなみに、今の所は時を戻す回数制限については心配ないからの。そうでなければ、こう悠長にはしておらぬよ」

「精霊、爺さんがか」

 今まで精霊って単語だけで姿が見えなかったが、ようやくお出ましってわけか。
 それにしても、時間を戻すのに回数制限はなしか。
 焦らす、じっくりやれるって訳だな。

「そうじゃ、敬ってくれてもよいのじゃぞ? まあ、つまりの。お試しで世界がどういった状況にあるのか、知って欲しかったのじゃ。単純にはい、滅びましたじゃと現実味が薄いじゃろ?」

「それで、俺に普通に異世界生活をさせたと」

「そういうことになるの。それで、知り合いが死んだ感想はどうじゃ? お主と共にパーティーで依頼をこなした者、冒険者になったことで知り合った、全ての者がいなくなったが」

 ……っ。
 元に戻せるとしても、このジジイ性格悪すぎるだろ!

「ま、その顔を見れば理解したようじゃの。お主は元の世界で5度、世界が滅ぶのを繰り返した」

「それは……」

「ああ、それを攻めているわけではないからの。これからやって貰うことに、しっかりと意識を向けて欲しかったのじゃよ」

 やっぱり、異世界転生なんてのがあるのは、こういうことが起きるからなんだな。
 ようやく引き寄せ体質から解放されたと思ったら、今度は世界の危機か。
 でも、やりなおしが効くみたいだし、その辺りは安心だが。

「さて、色々話してやりたいのはやまやまなのじゃが。今は重要な事だけを伝え、残りはおいおい教えていくからの。すまんが、それでよいか?」

「ん、今話すんじゃダメなのか? 時間を戻せるぐらいだし、時間に制限はないと思ったんだが」

「時間はそうじゃがの。少々、お主が来る前にトラブルが発生しての」

「トラブル?」

 すると、袖が引かれた。
 さっきから見ているだけだった、……リーフって言ったか? そいつの仕業だった。

「ごめん、ボク達の失敗。一部の記憶、隠された」

 記憶が隠された?
 消されたではなく?

「わしらと相対する相手の攻撃での、記憶にもやがかかっておるのじゃ。おそらく関係する物に触れることで元に戻ると思うのじゃが。そのせいで全てを話せないのじゃよ」

 物ってことは、なにか形のあるものってことだろうか。

「よくわからないが、話さないんじゃなく話せないのはわかった」

「すまんのう。それでなのじゃが重要な話は2つある。1つはまおうの復活じゃ」
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