童話短編集

木野もくば

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ホトトギスの夢

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 現在より、だいぶ昔、長く続く戦乱せんらん飢饉ききんに人々が苦しめられていた時代。

 ある山奥で、年齢ねんれいが十代にもたない幼い子どもが、食べられる物を探して山の中を歩いていた。食糧難しょくりょうなんに苦しんでいた親から、口減くちへらしのため山に捨てられて、数日がっていた。
 
 体はガリガリにせ細り、大きくくぼんだ瞳は、もう何も映していないかのように薄暗うすぐらい色をしていた。

 あてもなく彷徨さまよっていると、一つだけ実をつけたビワの木を見つけた。子どもはビワの実を採ろうと必死で木によじ登ろうとしたが、そんな力はすでに残っていなかった。
 木の下にドスンと落ちると、もう体が動かせなくなった。

 仰向あおむけにたおれた子どもの体の下には、かやの葉がしげっており白い綿わたのような花が咲いていた。そして、その隙間すきまから青くかがやく空が見えた。

 それを子どもが、うつろな瞳で見つめていた時だった。

『ピピピ……』 

 子どものすぐ横に、弱っている様子のホトトギスがいた。ケガをしている様子がないので、疲労ひろう病気びょうきで落ちてしまったのだろうかと思いながら、子どもは手をのばしてみた。

 れようとした瞬間しゅんかん、逃げるようにホトトギスが飛び上がるとビワの木の枝にまった。しかしなぜか、すぐに先ほどと同じ場所にり立つと子どもの近くからはなれなかった。

 まるで子どもの命の灯火ともしびが消える時が近いことを分かっていてなぐさめているかのようだった。

 そんなホトトギスの姿を見ていた子どもの瞳に、うっすらと光が宿やどる。そして最後の力をしぼると、フラフラと立ち上がり草むらの中で何かを探し始める。

 しばらくしてもどった子どもは、ホトトギスの前に葉っぱの上に乗せた毛虫けむしを差し出した。それをホトトギスは、警戒けいかいすることもなく食べ始めた。
 その後も何度か子どもが、同じ行動を繰り返し続けていた時だった。少しだけ元気になった様子のホトトギスが空に向かって飛び上がった。

 それを笑顔で見送った子どもは、ゆっくりと横になった。最後に少しだけ役に立てたかもしれないと思うと気分が良かった。
 今なら幸せな夢を見ることができそうだと目を閉じる。

 おなかいっぱいに、ご飯を食べれる夢。

 たくさん遊ぶことができる夢。

 やさしい両親に抱きしめられる夢。

 またホトトギスと出会う夢。

 うすれゆく意識のなか、遠くの方からひびいてくる鳴き声を聞いた気がした。

『トッキョキョカキョク』

 長い長い時をて、再び意識が目覚めた時、子どもは温かい水の中にいた。とても安心して眠っていられる心地ここちの良いかごのような場所だった。

 だれかのおだやかな声が聞こえた。

『向こうの方から、聞こえたね』

 別のだれかのやさしい声も聞こえてくる。

『この子にも聞こえたかな? 今、おなかをけったよ』

『きっと聞こえたよ』

『来年も、三人でホトトギスの鳴き声を聞こうね』

『テッペンカケタカ』
 
 その声を聞きながら、なんて幸せな夢なのだろうと子どもは思った。







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