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七将編(剛腕将軍グラドン)
第17話 陰口を聞いちゃった勇者
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翌朝、鉱山都市の市場は、いつもの賑わいをすっかり失っていた。
広場に並ぶはずの露店は半分以上が閉ざされ、木箱や布で入口を塞いでいる。
かろうじて開いている商店も、品物は少なく、値段は跳ね上がっていた。
干し肉を売る老婆が値札を書き換える。
「昨日よりさらに二倍だ……こんな値で誰が買える」
通りすがりの客が顔をしかめ、舌打ちする。
「買えなくても仕方ねぇ。坑道が止まれば、物資は入ってこねぇんだ」
広場の一角に、豪勢な服を着た数人の商人が集まっていた。
彼らは帳簿を小脇に抱え、声を潜めながらも苛立ちを隠さない。
「勇者様が来たが……状況は何も変わらんじゃないか」
「むしろ、あの方の存在で市民の不安は増している。魔王軍が絡んでると広まっちまった」
「結局、王都の都合で派遣されたんだろう? 俺たちのためじゃない」
別の男が鼻で笑う。
「どうせ莫大な見返りを要求するさ。領主に恩を売って、税の軽減だの独占権だの……勇者ってのは、結局、国の上に立つ新しい支配者ってわけだ」
頷く者、吐き捨てる者。言葉は次第に辛辣になり、陰口はもはや止まらなかった。
そのすぐ背後を、のそのそと歩く影があった。
「……俺、何もしてねぇのに悪者扱いかよ」
勇者・悠だった。
眠そうに欠伸を噛み殺しながら歩いていたが、耳に入った言葉に眉をひそめた。
商人たちは振り返り、勇者の姿を認めて凍り付く。
沈黙。広場のざわめきが一瞬だけ遠のいたかのようだった。
「ゆ、勇者様……! い、今のは、その……」
「冗談ですとも! 市民を安心させるための、軽口で……!」
必死に取り繕う商人たちに、悠は肩をすくめて吐き捨てる。
「冗談にしては、つまらなすぎだろ。……俺はそんな暇人じゃねぇ」
そのまま悠は歩き出した。商人たちは冷や汗をかき、誰も追いかけようとはしなかった。
リオネルが慌てて追いつき、小声で言う。
「勇者様……お気になさらぬよう。彼らは恐怖ゆえ、心ない言葉を吐いたのです」
「気にしてねぇさ。……ただな」
悠は耳を掻きながらぼそりと呟く。
「何にもしないうちから悪人扱いされるのって、地味にダルいんだよ」
その声音には、苛立ちというよりも、諦めに近い疲労が滲んでいた。
リオネルは拳を握りしめ、声を強める。
「必ず、市民は勇者様の真価を理解します。……私がそうさせてみせます」
悠は「勝手にやれ」とばかりに視線を逸らした。
その時、市場の向こうで怒号が響いた。
「金を出せ! 命が惜しけりゃ早くしろ!」
武装したゴロツキの一団が商人を取り囲み、商品棚を蹴り倒していた。
人々が悲鳴を上げ、四方に散る。子供が転んで泣き叫び、母親が必死に抱き上げる。
「くそっ、治安が……!」
リオネルが剣に手をかける。しかし、彼よりも先に悠が歩みを進めた。
「休ませてもくれねぇのかよ……ほんと面倒」
悠は剣すら抜かず、軽く足を振り抜いた。
――次の瞬間、衝撃波のような風が広場を駆け抜け、ゴロツキどもは木の葉のように宙を舞った。
壁に叩きつけられ、呻き声を上げる暇もなく気絶する。
広場は一瞬、静まり返った。
人々が信じられないものを見たように勇者を凝視する。
そして次いで、子供たちの声が弾けた。
「すげぇ! 勇者様だ!」
「ゴロツキが一瞬で……!」
「やっぱり本物なんだ!」
泣き顔だった子供たちに笑顔が戻り、彼らは勇者を囲んで跳ね回る。
大人たちも目を見開き、つい先ほど陰口を叩いていた商人でさえ、声を失ってその背中を見つめていた。
悠はうんざりしたように耳を塞ぎ、ぼそりと呟いた。
「……またうるせぇ。俺はヒーローショーの役者じゃねぇんだぞ」
それでも、その姿は人々の目に希望の象徴として焼き付いていた。
広場に並ぶはずの露店は半分以上が閉ざされ、木箱や布で入口を塞いでいる。
かろうじて開いている商店も、品物は少なく、値段は跳ね上がっていた。
干し肉を売る老婆が値札を書き換える。
「昨日よりさらに二倍だ……こんな値で誰が買える」
通りすがりの客が顔をしかめ、舌打ちする。
「買えなくても仕方ねぇ。坑道が止まれば、物資は入ってこねぇんだ」
広場の一角に、豪勢な服を着た数人の商人が集まっていた。
彼らは帳簿を小脇に抱え、声を潜めながらも苛立ちを隠さない。
「勇者様が来たが……状況は何も変わらんじゃないか」
「むしろ、あの方の存在で市民の不安は増している。魔王軍が絡んでると広まっちまった」
「結局、王都の都合で派遣されたんだろう? 俺たちのためじゃない」
別の男が鼻で笑う。
「どうせ莫大な見返りを要求するさ。領主に恩を売って、税の軽減だの独占権だの……勇者ってのは、結局、国の上に立つ新しい支配者ってわけだ」
頷く者、吐き捨てる者。言葉は次第に辛辣になり、陰口はもはや止まらなかった。
そのすぐ背後を、のそのそと歩く影があった。
「……俺、何もしてねぇのに悪者扱いかよ」
勇者・悠だった。
眠そうに欠伸を噛み殺しながら歩いていたが、耳に入った言葉に眉をひそめた。
商人たちは振り返り、勇者の姿を認めて凍り付く。
沈黙。広場のざわめきが一瞬だけ遠のいたかのようだった。
「ゆ、勇者様……! い、今のは、その……」
「冗談ですとも! 市民を安心させるための、軽口で……!」
必死に取り繕う商人たちに、悠は肩をすくめて吐き捨てる。
「冗談にしては、つまらなすぎだろ。……俺はそんな暇人じゃねぇ」
そのまま悠は歩き出した。商人たちは冷や汗をかき、誰も追いかけようとはしなかった。
リオネルが慌てて追いつき、小声で言う。
「勇者様……お気になさらぬよう。彼らは恐怖ゆえ、心ない言葉を吐いたのです」
「気にしてねぇさ。……ただな」
悠は耳を掻きながらぼそりと呟く。
「何にもしないうちから悪人扱いされるのって、地味にダルいんだよ」
その声音には、苛立ちというよりも、諦めに近い疲労が滲んでいた。
リオネルは拳を握りしめ、声を強める。
「必ず、市民は勇者様の真価を理解します。……私がそうさせてみせます」
悠は「勝手にやれ」とばかりに視線を逸らした。
その時、市場の向こうで怒号が響いた。
「金を出せ! 命が惜しけりゃ早くしろ!」
武装したゴロツキの一団が商人を取り囲み、商品棚を蹴り倒していた。
人々が悲鳴を上げ、四方に散る。子供が転んで泣き叫び、母親が必死に抱き上げる。
「くそっ、治安が……!」
リオネルが剣に手をかける。しかし、彼よりも先に悠が歩みを進めた。
「休ませてもくれねぇのかよ……ほんと面倒」
悠は剣すら抜かず、軽く足を振り抜いた。
――次の瞬間、衝撃波のような風が広場を駆け抜け、ゴロツキどもは木の葉のように宙を舞った。
壁に叩きつけられ、呻き声を上げる暇もなく気絶する。
広場は一瞬、静まり返った。
人々が信じられないものを見たように勇者を凝視する。
そして次いで、子供たちの声が弾けた。
「すげぇ! 勇者様だ!」
「ゴロツキが一瞬で……!」
「やっぱり本物なんだ!」
泣き顔だった子供たちに笑顔が戻り、彼らは勇者を囲んで跳ね回る。
大人たちも目を見開き、つい先ほど陰口を叩いていた商人でさえ、声を失ってその背中を見つめていた。
悠はうんざりしたように耳を塞ぎ、ぼそりと呟いた。
「……またうるせぇ。俺はヒーローショーの役者じゃねぇんだぞ」
それでも、その姿は人々の目に希望の象徴として焼き付いていた。
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