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七将編(剛腕将軍グラドン)
第53話 怪物と互角に立つ勇者
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――ドオォォォンッ!
祭壇の広間に雷鳴のような衝撃が響いた。グラドンが巨体を揺さぶりながら突進し、大斧を振り抜いたのだ。刃は空気を裂き、通った軌跡に火花が散る。振り下ろされた瞬間、床の石板が爆ぜ、粉塵が巻き上がった。
「うわあっ!」
「ひ、ひいいっ!」
兵士たちは悲鳴を上げ、咄嗟に後退する。しかし足元は容赦なく割れていき、崩れた石床に飲み込まれそうになった。
「下がれ! 全員、下がれ!」
リオネルの怒声が響く。彼自身も剣を握りしめながら、兵士たちを必死に退避させていた。
グラドンの一撃はまさに大地そのものを揺るがす。身の丈三倍の巨躯から繰り出される怪力。人間であれば、その影を浴びるだけで心が折れるだろう。
しかし。
その斧を、悠は片手で受け止めていた。
広間全体に響き渡る轟音。火花と衝撃波の嵐。兵士たちの耳は軋み、視界は揺らぎ、ただただ恐怖にすくむ。
だが悠は、あくまで気怠そうに言った。
「……やっぱ重いな」
彼の肩は微動だにしない。押し潰されるどころか、むしろ斧の衝撃を片腕一本で吸収してしまっていた。
グラドンの眼が血走る。
「ぬうぅぅっ! 人間が……我が剛腕を止めるだと!?」
獣の咆哮のような声が広間を揺らす。天井から砂塵が降り注ぎ、柱がきしみを上げる。
悠は肩をすくめ、口を開いた。
「力比べとか……子供かよ」
軽い調子。だがその拳は一歩も退いていない。
再び大斧が振るわれた。今度は横薙ぎ。空気が切り裂かれ、轟音が耳を劈く。
「ひいいっ!」
「伏せろ!」
兵士たちが悲鳴をあげ、慌てて身を屈める。だが悠は――ただ片手をかざしただけだった。
――ガギィィンッ!
斧の刃は拳に触れた瞬間、金属が悲鳴を上げた。火花が奔り、衝撃が大気を裂く。
「ば、馬鹿な……本当に人間か?」
グラドンが呻く。彼の膂力は、岩山をも砕くと恐れられてきた。だが今、その力が人間ひとりに阻まれていた。
「いや、人間だし」
悠は淡々と答えた。
兵士たちの目は見開かれたまま。誰もが信じられなかった。目の前で繰り広げられている光景が、人の常識を超えていたからだ。
グラドンは怒号を上げた。
「小僧ォォォッ! ならばこの祭壇ごと砕き潰してくれる!」
斧を構え、全身の筋肉を隆起させる。その力はまさに怪物。石造りの柱が次々とひび割れ、地鳴りが広間を揺らす。
「やめろ、建物壊すなよ」
悠が眉をひそめる。
「修理が面倒だろ……」
そして次の瞬間、両者は再び激突した。
――ゴガァァァァァンッ!
爆発音に近い轟音。石片が弾け飛び、天井の装飾が崩れ落ちる。粉塵の嵐の中、拳と斧が互角に押し合っていた。
「ぬぅぅぅぅっ! 化け物が、我が力と……!」
「いや、だから人間だっての。それに化け物はお前だし」
互角の押し合い。兵士たちは誰も声を発せなかった。恐怖と、そして――畏怖が入り混じっていたからだ。
リオネルの手が震える。
「勇者様……」
押し合いの最中、悠は大きなあくびをした。
「……もう眠いんだよ」
その瞬間だった。
悠の拳が、淡く光を帯びた。
魔力。
それは怒りや使命感からではない。ただ「眠い」「早く終わらせたい」という怠惰が、戦意を超えて力に変換されたのだ。
光は瞬く間に拳を包み、静かな唸りを上げる。
リオネルが息を呑み、叫んだ。
「……勇者様が、本気に!」
兵士たちの胸に、絶望の中で小さな希望が灯る。
グラドンはその光を見て、顔を歪めた。
「な、何だと……!? その力は……」
悠は目を細め、片手で斧を押し返す。
「……もう終わりにしようぜ。眠いんだよ」
広間に緊張が走る。
剛腕将軍の怪力と、勇者の無造作な一撃。
次の瞬間が、この戦いの均衡を大きく揺るがす――。
祭壇の広間に雷鳴のような衝撃が響いた。グラドンが巨体を揺さぶりながら突進し、大斧を振り抜いたのだ。刃は空気を裂き、通った軌跡に火花が散る。振り下ろされた瞬間、床の石板が爆ぜ、粉塵が巻き上がった。
「うわあっ!」
「ひ、ひいいっ!」
兵士たちは悲鳴を上げ、咄嗟に後退する。しかし足元は容赦なく割れていき、崩れた石床に飲み込まれそうになった。
「下がれ! 全員、下がれ!」
リオネルの怒声が響く。彼自身も剣を握りしめながら、兵士たちを必死に退避させていた。
グラドンの一撃はまさに大地そのものを揺るがす。身の丈三倍の巨躯から繰り出される怪力。人間であれば、その影を浴びるだけで心が折れるだろう。
しかし。
その斧を、悠は片手で受け止めていた。
広間全体に響き渡る轟音。火花と衝撃波の嵐。兵士たちの耳は軋み、視界は揺らぎ、ただただ恐怖にすくむ。
だが悠は、あくまで気怠そうに言った。
「……やっぱ重いな」
彼の肩は微動だにしない。押し潰されるどころか、むしろ斧の衝撃を片腕一本で吸収してしまっていた。
グラドンの眼が血走る。
「ぬうぅぅっ! 人間が……我が剛腕を止めるだと!?」
獣の咆哮のような声が広間を揺らす。天井から砂塵が降り注ぎ、柱がきしみを上げる。
悠は肩をすくめ、口を開いた。
「力比べとか……子供かよ」
軽い調子。だがその拳は一歩も退いていない。
再び大斧が振るわれた。今度は横薙ぎ。空気が切り裂かれ、轟音が耳を劈く。
「ひいいっ!」
「伏せろ!」
兵士たちが悲鳴をあげ、慌てて身を屈める。だが悠は――ただ片手をかざしただけだった。
――ガギィィンッ!
斧の刃は拳に触れた瞬間、金属が悲鳴を上げた。火花が奔り、衝撃が大気を裂く。
「ば、馬鹿な……本当に人間か?」
グラドンが呻く。彼の膂力は、岩山をも砕くと恐れられてきた。だが今、その力が人間ひとりに阻まれていた。
「いや、人間だし」
悠は淡々と答えた。
兵士たちの目は見開かれたまま。誰もが信じられなかった。目の前で繰り広げられている光景が、人の常識を超えていたからだ。
グラドンは怒号を上げた。
「小僧ォォォッ! ならばこの祭壇ごと砕き潰してくれる!」
斧を構え、全身の筋肉を隆起させる。その力はまさに怪物。石造りの柱が次々とひび割れ、地鳴りが広間を揺らす。
「やめろ、建物壊すなよ」
悠が眉をひそめる。
「修理が面倒だろ……」
そして次の瞬間、両者は再び激突した。
――ゴガァァァァァンッ!
爆発音に近い轟音。石片が弾け飛び、天井の装飾が崩れ落ちる。粉塵の嵐の中、拳と斧が互角に押し合っていた。
「ぬぅぅぅぅっ! 化け物が、我が力と……!」
「いや、だから人間だっての。それに化け物はお前だし」
互角の押し合い。兵士たちは誰も声を発せなかった。恐怖と、そして――畏怖が入り混じっていたからだ。
リオネルの手が震える。
「勇者様……」
押し合いの最中、悠は大きなあくびをした。
「……もう眠いんだよ」
その瞬間だった。
悠の拳が、淡く光を帯びた。
魔力。
それは怒りや使命感からではない。ただ「眠い」「早く終わらせたい」という怠惰が、戦意を超えて力に変換されたのだ。
光は瞬く間に拳を包み、静かな唸りを上げる。
リオネルが息を呑み、叫んだ。
「……勇者様が、本気に!」
兵士たちの胸に、絶望の中で小さな希望が灯る。
グラドンはその光を見て、顔を歪めた。
「な、何だと……!? その力は……」
悠は目を細め、片手で斧を押し返す。
「……もう終わりにしようぜ。眠いんだよ」
広間に緊張が走る。
剛腕将軍の怪力と、勇者の無造作な一撃。
次の瞬間が、この戦いの均衡を大きく揺るがす――。
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